痕の軌跡   作:オサシミの化身

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空の軌跡で全然書くの捗らない……。ゆえにちょっと短めです。


実技テスト

 

 

ついに、実技テスト当日を迎えた。申請書類の出し忘れと不備でハインリッヒ教頭とナイトハルト教官にしこたま怒られたのか、随分とローテンションなサラ教官により告げれれた予定時刻より早くグラウンドに集まった俺たちは、未だに得体の知れないテストにそれぞれの思いを持ちながら、武器の確認や準備運動を行っていた。

 

「何やるんだろうね」

「さぁ。でも武器使うってことは模擬戦とかじゃねぇの」

「めんどくさいのは嫌だな」

「お前なら楽勝だろ」

「まね」

 

全身の健を伸ばすようにストレッチをしていると、ひょこひょことフィーが歩いてきた。

 

グラウンドで武器を使った実技テスト、まだ最初ということもあって、やるとしたら簡単な模擬戦だろうか。人数的にツーマンセルの総当たり戦だろうか。

 

生き残り戦(サバイバルゲーム)とかがいいな」

「独擅場じゃねぇか」

「まね。でも、流石にアロイスには負けないよ」

「うるせぇ」

 

すました顔でブイサインを作るフィーを小突き、その際にスカートのポケットから僅かに見えた柄付き手榴弾の影に、そんなものを使うんじゃねえだろうなと冷や汗がこぼれる。俺ならともかく、エマやエリオットがモロに喰らえば確実に致命傷だ。

 

「ふむ、2人は随分と落ち着いているな」

「さすがにね」

「この程度でプレッシャーなんて感じねーよ」

「凄いですね……。私はもう、緊張でどうにかなってしまいそうで」

「エマ、緊張しすぎ」

「いや、ふたりがラフすぎるだけよ」

「アリサも随分とかたいな。リラックスリラックス」

「無理よ……」

 

ちょうど男女の境で話していたからか、俺たちを見て感心したような様子のラウラが、そしてそれぞれの得物を固く握りしめたアリサとエマが話に合流する。

 

「やるとしたらタッグ線かチーム戦とかだろうし、まぁ、アリサとエマは前衛の援護に徹してりゃ悪い評価は下らないだろうよ」

「うむ、もし私と同じチームなら背中は任せた」

「あはは……。はい、最前は尽くしますね」

「アーリサ、もし同じチームになったら前は任せろ。ただ、ケツに刺すなよ?流石に痛そうだし」

「刺さないわよっ、っもう」

「サバイバル……」

「やめてフィー」

「その線はねぇ。てか、あってたまるか」

「ちぇ」

 

つまらなさそうに小石を蹴り始めるフィーと頭を抱えたアリサに挟まれる。ラウラとエマはいい感じなのに、なんだかこっちは雰囲気が悪かった。

 

それでも、今朝から挨拶のひとつもしないユーシスとマキアスよりかはマシだろうか。てか、そろそろマキアスに蹴った石を当てるのやめなさい。

 

「ちょっとちょっと、もうみんな集まってるの?まだ5分前なのに。これじゃ私が遅刻したみたいじゃない」

 

ユーシスに鼻で笑われ、見たことの無いほどの青筋を浮かべ、ついに我慢の限界のきたマキアスがこちらにガンを飛ばしてきたあたりで、校舎の方からサラがすっ飛んできた。

 

「サラ教官、来ましたか」

「遅刻じゃねーの」

「待ちくたびれた」

「まだ集合時間前だからセーフよ」

 

心底面倒くさそうな顔をしていたサラだったが、手をひとつ叩いて全員の注目が集まっていることを確認した。

 

「それじゃ、予告通りこれから実技テストを始めるわ」

 

思っていたよりラフな感じのサラに若干拍子抜けしつつ、話の続きを聞く。

 

「前もって言っておくけど、このテストは戦闘能力を測るものじゃなく、“状況に応じた適切な行動”を取れるかどうかを見るテストになるわ」

「状況判断……?」

「そ、だからアロイスやラウラ、エリオットやエマみたいに戦闘の向き不向きは関係ないわ」

「ちっ」

「ほう」

「よかった……」

 

簡単に行くと思ってい故に思わず舌打ちしてしまう。近くではラウラごワクワクとした様子で腕を組み、エリオットとエマは一安心したようだ。

 

「なんの工夫もなしに力ずくでテストを乗り越えても意味は無い、か」

「ただ殴り倒せばいいってわけに行かねぇのか。めんどくさいな」

「そそ、爆弾ポイっで終わると思ったのに」

「そこのバカ2人、適当なのはナシよ」

 

俺とフィーが適当な返事を返すのに呆れるも、気を取り直して。

 

「ふぅ……。それでは、これより4月の実技テストを開始する。リィン、エリオット、ガイウス。まずは前に出なさい」

「っ、はい」

「いきなりかぁ……」

「承知」

「よろしい。それじゃあ、とっとと呼ぶとしますか」

 

前に出る3人の姿に頷きそういうと、サラは指を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……っ!?」

「魔獣!?」

「いや、これは……」

 

サラの指鳴らしと共に現れたのは、宙に浮かぶ謎の物体だった。そしてそれを視界に収めた刹那、隣にアロイスが懐から小型の銃を取り出したのを見た。

 

「ちょっ」

「あんたどういうつもりだ?」

「アロイス!?」

「えぇっ!?」

 

─────目が、本気だ。

遅れて気がついた全員のどよめきの中、ひとり戦慄を覚えた。普段の温和な彼はそこには居ない。暗い何かが蠢く、黒く濁った目が能面のような顔に張り付いている。

 

「なんでそんなもんがここにある。あそこにあったのと同じものが。あぁ。“教団”か“蛇”だよな、そうだよな。見間違えるもんか」

「アロイス」

「なぁサラ、教えてくれよ。なんであんたが─────」

「落ち着きなさい、アロイス。」

 

銃口をサラに向け、引き金に指をかけた状態で淡々と話すアロイスに、サラは至って冷静に対応する。

 

「あんたの事情も知ってるけど、はっきり言っておくわ。これはあくまでここに押し付けられたものよ。そして、なんの危険性もないわ」

「正気か」

「もちろん」

「─────」

 

数秒の静寂。そして構内どころかトリスタの街まで届いていそうなけたたましい轟音が3回響いた。導力銃が一般となった今ではまず聞くことの無い、火薬の炸裂音だ。

 

放たれた弾丸は当然目視できず、ただ風切り音と謎の物体にぶつかり弾ける音でだけ伝わってきた。

 

「……ほんとに動かねぇな」

「ちょ、ちょっとアロイス!びっくりするじゃない!」

「アロイス、それは一体……」

「というか、何してんのよアンタは!」

「い、いきなり撃つやつがあるか」

 

謎の物体は衝撃に身を捩らせるもそこから動き出す様子はなく、それを見てアロイスはやっとリボルバーを下げる。顔もいつものそれに戻っていた。

 

「……ふぅ」

「うむ……」

「アロイスさん……?」

「一体、何が……」

 

それを感じてかリィンやラウラは手にしていた武器を下ろし、サラやアリサ、ユーシスが非難し怒鳴り飛ばす。エリオットやマキアス、エマといった面々は今も何がなにやらといった様子だ。

 

あとが悪そうに悪い、とつぶやくと雑に頭を搔くアロイスに、サラがじとりとした目を向ける。

 

「まったく、あんたの事情も知ってるけど、実技テストに水を差すのやめてくれる?」

「……なにを」

「リベールでもクロスベルでも活躍は聞いてるけど、結局まだまだ子供(ガキ)ってことね。感情に飲まれすぎよ」

「……いきなりそんなもん出す方が悪いだろ」

「なんか言ったかしら」

「……なにも」

 

見るからにしょぼくれた顔でそっぽを向いてしまうアロイスに溜息をつき、手を叩いたサラが。

 

「気を取り直して、リィン、エリオット、ガイウスのテストを始めるわよ」

 

今度こそ、実技テストの始まりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“戦術殻”相手にあの程度とは、まだまだ足りぬな」

に頂いたOzの廃棄品もかなり少なくなってきた。そろそろ完成に近ずけねばな」

「聞けば、クロスベルでDの器たる少女の目覚めも近いという」

「共和国のロッジでは凄まじい感応力を持つ少女を作ったらしい。なんでも人の心を読み、獣とも心を通わせるとか」

「それはいい。Dの再降臨の暁には、うちの“騎士”とともに活躍してくれるだろう」

 

暗い部屋で、老若男女が円卓を囲って笑う。

 

ヨアヒム殿の作られる神薬の完成もすぐだとか」

「あの人ほど、今の教団でもっとも必要な方だろう」

「1度、我らのロッジにもお見えにならぬだろうか」

「うちの“騎士”にも、調整を加えていただきたいものだ」

 

数人が、部屋の隅に座る少年を見た。

 

「今で9つだったか」

「そのはずだ。昼間は帝都で年相応に振舞っとるらしいの」

「その歳にしては強くなったな」

「だが、まだDの騎士足りえぬ」

 

少年から目が離れ、再び全員が円卓の中央を向く。妖しげな瞳をもつモノリスに6つの翼に光輪のついたエンブレムが、ロウソクに照されている。

 

「そういえば、アルタイルのものたちが遊撃士に付け回されている、と言っていたな」

「我らもそうだぞ。帝国軍の情報局とやらが、我らを捉えようとしているらしい」

「そうなのか」

「そうなのだ」

「“剣聖”2人に“不動”。各国正規軍に警察まで動いている」

「まずいな」

「それはまずい」

「良くないな。それは」

 

今度は全員の視線が少年へと向けられた。

 

「急がねば」

「急がねば」

「“騎士”の完成を急がねば」

「急がねば」

「急がねば」

Dの再降臨の日のために」

「急がねば」

「急がねば」

「忌々しい女神を、今度こそ否定するために」

 

その光景を、少年は暗い瞳で眺めていた。心もなく、記憶に残ることもなく。だが、他に見ることの無い少年は、自分を見つめる数多の目を、ボーッと見つめ返すだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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