痕の軌跡   作:オサシミの化身

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空の軌跡楽しすぎる


実技テストⅡ

 

 

 

思い出すのは、掠れた記憶のようななにか。くすんだ白髪と土色の肌が特徴的な少女達の姿。みんな酷く痩せこけていて、生気がなくて、言葉も上手く話さなくて。そして不思議と、かわいらしいその顔はみんな同じものだった。

 

彼女たちは基本的に、不思議な魔物を連れていた。陶器のようになめらかで、それでいて金属のように硬い。だが球体の挟まれた関節はスムーズに可動し、自立思考で攻撃を仕掛けてくる。

 

─────まさに、今目の前に居るのに似たようなヤツだ。

 

「ちょっとちょっと、随分と不甲斐ないわねあんたたち」

 

サラの声にハッとする。ユーシスとラウラ、マキアスとフィーの4人が行ったテストは、散々な結果だったようだ。前衛が2人、後衛が1人、遊撃が1人とバランスはいいはずだが、いかんせんマキアスが前衛2人に対して突出してしまい、前衛が後手に回ってしまったことで苦しい戦いになってしまっていた。

 

「次、アロイス、アリサ、エマの3人。前に出なさい」

「おう」

「はい」

「はい……!」

 

いがみ合うユーシスとマキアス。それを見て不服そうなラウラと無表情のフィー。4人と入れ替わるように俺とアリサ、エマが前に出た。

 

「もう変なことはしないでよ」

「わかってるって。すまなかった」

「本当かしら」

「その、大丈夫なんですか?」

「大丈夫だイインチョ。ちょっと取り乱しちまっただけだからな」

 

横に並んだ怪訝そうなアリサとこちらを心配するエマに手を挙げる。4人と入れ替わるように前に出て、小銃に着剣して、そして深呼吸をすればいつも通りだ。

 

なにも、問題は無いのだ。

 

「戦術リンクはどうするの?」

「俺とアリサが組むのがいいと思う。エマは補助アーツメインで、隙を見て解析を頼む」

「了解です」

「わかったわ」

「ま、戦術リンクがあるなら後ろから撃たれることもねぇだろ」

「もとより当たらないから安心してちょうだい」

 

ARCUS間でリンクが繋がれたことを確認し、それぞれが獲物を構えたところでサラへ合図を送る。向こうも了承したようにひとつうなづいた。

 

「それではこれより、アロイス、アリサ、エマのテストを始める。3人とも、準備はいい?」

「おう」

「はい」

「はいっ」

「それじゃ、初め!」

「─────っ」

 

実技テストの開始を告げるサラの声と共に、全力で走り寄り、上段からの振り下ろし、下段からの斬り上げ、突き。そして不気味な手応えと共に突き刺さった銃剣を引き抜き、後退しざまに銃撃を食らわせる。敵単体へと素早く4連続の集中攻撃を繰り出す戦技(クラフト)、フォーチェインだ。

 

「アリサ!」

「任せなさい!」

「ARCUS、駆動っ!」

 

後退する俺とすれ違うようにアリサの放った矢が導力光を纏って進み、未だによろける戦術殼へと立て続けに直撃する。俺のほぼ真後ろから射っているというのに、こちらの動きに合わせているから決して俺には当たらない。それでいて痒いところに手が届くような、的確な援護射撃が確かに刺さる。

 

─────やっぱりすごいなこれ。

 

「アロイスさん、いきます!」

「おう!」

「フォルテ!」

 

片手に青く光るARCUSを、もう片手でその光を受ける導力杖を振り上げると、それは火の七曜石(セプチウム)と同じ赤い光になって俺に飛んでくる。

 

エマが使ったのは“フォルテ”。しばらくの間俺の力を底上げしてくれる火の補助アーツだ。

 

「助かる!」

「このまま解析に移ります!」

「早めに頼むぜ」

「はい!敵ユニットの傾向を解析……」

 

再び魔導杖を構えて解析を始めたエマに感謝しつつ、腰から抜いたリボルバー片手にアリサの攻撃でバランスを崩したままの敵へ銃撃を加えながら走り出す。

 

「おらぁ!」

『─────』

 

通常の導力銃より重たい火薬式の弾丸を受けて更によろめくも、姿勢を取り直して空中で一回転し、尻尾のような細長いボディを振り下ろしてくる。即座にリボルバーを投げ捨て、片手で持っていた小銃を盾に攻撃を防いだ。

 

「解析、完了しました!いきます!」

『─────っ!』

「よいっ……しょっ!」

『─────っ!?』

 

解析を完了したエマが続けざまに魔導杖を振り抜くと、数発の導力弾が発生して戦術殼の側面を叩き、それに意識を逸らした瞬間、フォルテで底上げされたパワーで拮抗していたボディをはじき飛ばした。

 

ガラ空きになったボディに全力の拳を叩き込むと、今度こそバランスを大きく崩した戦術殼の動きが止まるのを見て、俺は即座にしゃがみこみ、叫んだ。

 

「今だアリサ!」

「任せてっ。燃え尽きなさい……っ!」

 

俺の真後ろ、戦術殼からはちょうど死角になるそこで、アリサが導力弓に矢をつがえて待っていたのだ。すでに通常の矢とは違う、炎を纏った矢が放たれるのを今か今かと待っている。

 

だが、俺がしゃがむのを合図に、それは放たれた。

 

「─────ファイア!」

『─────っ!』

 

俺の頭の上を通って、炎の矢は戦術殼のコアへと突き刺さる。それを見届けた俺は体制を立て直して距離をとったが、その一撃を受けて力尽きたのか、戦術殼は少し空を漂ったあと、光をなくして地面へと崩れ落ていった。

 

「……」

「やった……?」

「やりましたか……?」

 

その様子を見てアリサとエマの安堵の声が聞こえた。だが。

 

「─────エマ、アリサ。まだ武器下げんな」

「え?」

「ちょ、ちょっと」

「2人とも、アーツは使えるな?準備しといてくれ。俺が爆薬を仕掛ける。合図したらボーン、だ」

 

動かなくなった戦術殼から目を離さないように小銃をベルトで背中にまわし、移動してリボルバーを拾いあげた。

 

決して警戒は解かず、リボルバーの背に着いているストッパーを親指で弾いて真ん中からふたつに折り、空薬莢を捨ててポーチから出したスピードリローダーで弾を込める。

 

まだ動き出すかもしれない。そういう前提だ。テストだからそういうこともあるだろう。

 

「─────よし、フィーも爆薬くれ。徹底的に破壊するぞ」

「ヤー」

「って、やらせるわけないでしょ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく。これも一応学園の備品なんだから。壊そうとするのはやめてくれる?」

「ここにあるべきものじゃねぇのが悪い。爆破だ爆破」

「久しぶりに派手なの見たかったな」

「ちょっと怒られるの私なのよ!?いい加減にしときなさいよあんたたち!」

 

サラの絶叫にも近い声が校庭にこだまし、不服そうなアロイスとフィーを除く全員が苦笑する。

 

「本気……だったのかな?」

「……まさかな」

「どうだろう……」

「そもそも爆弾なんて持ってないでしょ」

 

しょげながら戻ってきた2人がアリサの言葉に。

 

「持ってるよ?乙女のたしなみ」

「俺も持ってるけど、錠を破壊できるくらいだぜ。そこまでスペースないし」

「私は鉄扉破壊できるくらいかな」

「なんなのよこいつら……」

 

アロイスがベルトのポーチから。フィーがスカートのポケットからそれぞれ中小の粘土のような何かを取り出す。実家で見ていたカタログの片隅を思い出し、それが何かを理解したアリサは今度こそ頭を抱えた。

 

「さて、実技テストはこれまで。前にも話した通り、ここからはⅦ組ならではの特別なカリキュラムについて説明させてもらうわ。……ふふ、みんな気になってたみたいね」

 

その言葉に全員が雑談をやめてサラに集中した。それを確認して微笑ましそうに笑うとひとつ咳払いをして。

 

「Ⅶ組の特別カリキュラム。それはズバリ─────“特別実習”よ!」

 

自身げにそういうサラだが、それに対するⅦ組の反応はあまり芳しくなかった。思っていたより中身の見えない“特別実習”の言葉に、全員が首を傾げている。

 

リィンとエリオットとガイウスが、エマとアリサとラウラが、欠伸をしていたフィーとアロイスが、さらにはいがみ合っていたはずのユーシスとマキアスでさえ、目を見合せた。

 

「と、特別実習、ですか……?」

「パッとしない名前だな」

「……なんだ、嫌な予感しかしないんだが」

「君たちにはこちらで指定するA班、B班に別れて指定した実習地を訪れ、用意された課題をクリアしてもらうわ」

「学園に入学したばかりなのに、もう外に実習に行くんだ……」

 

ざわつきを無視してサラが説明を続けた。そして一区切りしたあたりで、やけに目を輝かせるアロイスが手を挙げる。

 

「はーいしつもーん」

「アロイスくんどうぞ」

「クロスベルにも行けるのか!?」

「行かないわ」

「リベールは!」

「行かない。実習地は帝国国内なの。はい他に質問ある人ー」

 

クロスベル自治州。リベール王国。アロイスにとっては片や自身の出身地で片や思い入れのある国。どちらかもしくは両方に行けるのではないかというアロイスの希望は、サラによってあっさり否定された。

 

分かりやすく落ち込むアロイスの頭を背伸びしたフィーがぺしぺしと叩く中、リィンが手を挙げて発言する。

 

「その口ぶりだと、教官が着いてくる、といった様子ではなさそうですね」

「そりゃそうでしょ、私が着いて行ったらあんた達のためにならないもの。ほら、獅子は我が子を千尋の谷にっていうじゃない」

「はぁ」

「うむ、これも修行なら望むところなのだが……」

 

ざわつきが大きくなる中、不遜そうなユーシスがバレスタイン教官と呼ぶ声が響く。

 

「結局、俺たちに何時何処へ行けと言うんだ」

「オーケー。なら本題に進みましょ。さっきも言った通り、君たちにはふたつの班に別れてもらうんだけど、それはこの紙に書いてあるわ」

 

1部ずつ取るように言われたプリントが一番左端にいたアロイスに渡され、右端のユーシスに向かって渡されていく。2枚のプリントがまとめられたそれに全員が目を通す。1枚のプリントはとても簡素で、それでいて全員の視線を引き付けた。

 

 

4月特別実習

A班 (実習地:交易地ケルディック)

・リィン ・アリサ ・ラウラ ・エリオット ・アロイス

B班 (実習地:紡績町パルム)

・エマ ・マキアス ・フィー ・ユーシス ・ガイウス

 

「ええええ!?」

「ほう、興味深い班分けだ」

「ケルディックとパルム、どちらも帝国の町なのか?」

「うん、ケルディックは東にある、交易が盛んな場所だっけ」

「はい。パルムは帝国南部にある、紡績で有名な街ですね」

「リベールとの国境付近にあるんだぜ。……ハーケン門にボース、懐かしいなぁ」

「あそこか、めんどくさいな」

「場所はともかく、この面子は……っ」

「……ありえんな」

お気楽な様子で何かの歌詞を口ずさむアロイスや実習地について話すリィンとエリオットといった和気あいあいとしたA班を見て、次に無言で佇むガイウスとフィー、いがみ合うユーシスとマキアスの様子を覗き見たエマが頬を引き攣らせるが、そんなこともお構い無しにサラが話し出す。

 

「日時は今週末、実習期間は2日間くらいの予定ね。A班、B班共に鉄道を使って目的地に向かうことになるわ。各自、それまでに準備を整えて、英気を養って起きなさい」

 

そうしてサラの解散の掛け声とエマの号令で。第1回の実技テストは幕を閉じた。

 

 

 





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次会、ケルディック!
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