痕の軌跡   作:オサシミの化身

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2話連続とーこーしてみるぜ


特別オリエンテーリングIV

 

 

 

 

「おっ。いたな」

「だね」

 

ダンジョン区画の後半部分。すでに終点までの距離が近づく中、ようやく俺たちは金髪男子の後ろ姿を捉えた。

 

騎士剣を片手に、ARCUSを片手にする彼の前には1匹のグラスドローメ。周囲にはいくつかのセピスが転がっていることから、群れをひとりで倒したとこなのだろうか。

 

最後に左手に持ったARCUSを掲げ、そこに風の力を帯びた魔力を貯め、グラスドローメ目掛け放った。

 

「エアストライク!」

「─────っ」

 

風の剛球は強かにグラスドローメを叩き、それがトドメとなったのか静かに力尽き、セピスをのこして消えていった。

 

「腕に覚えがある、的なことは言ってたが」

「結構よゆーそうだね」

「アーツもなかなかの威力だったな。貴族ってのはすごいんだな」

「私もできるよ」

「俺はできねぇかも。ARCUS慣れねぇし」

「アーツが下手くそなんじゃなくて?」

「それ言われると、言い返せねぇんだよなぁ」

「……そこ、後ろで長々と感想会でもするつもりか?用がないなら他所に行きたまえ」

 

騎士剣を納刀しARCUSをしまったユーシスが眉間に皺を寄せながら振り返りそう言った。

 

「いよっ、さすがユーシス様。けっこーなお手前で」

「適当に煽てるのはやめろ。不快だ」

「ひでぇ……」

 

眉間のシワをさらに深めるユーシスに、両手を合わせてスマンと謝る。隣でフィーも同じような仕草をしたあと、こちらに耳打ちをしてくる。

 

「気をつけた方がいい。相手は大貴族。それも名門中の名門。場合によっては……」

「よ、よっては……?」

「─────ギロチンか絞首刑。牛裂きもあるかも」

「まじで!?帝国こっわ……。ハルトマン議長もそういう意味では大変なのかなぁ」

「だれ?」

「クロスベル悪くしてるおっさん」

「本当に何をしに来たんだお前たちは……?」

 

怒りを通り越して呆れた様子でそう言うと、改めて自己紹介をも前置きし。

 

「先も名乗ったが、ユーシス・アルバレアだ」

「アロイス・アイスナーだ。よろしく」

「フィーだよ」

「それと言っておくぞ。たしかに貴族の中にはなんの誇りもない不遜な輩も少なくは無いが、少なくともこのユーシス・アルバレア、貴族の義務《ノブレス・オブリージュ》に則り、けして後ろめたいことなど無いと言っておく」

 

ユーシスの真剣な顔に、少しふざけていたことに申し訳なさができた。フィーもまた横で気まずそうに顔を逸らしている。

 

そういえば、と脳裏に青髪の運送屋一家の姿が過ぎった。たまたま聞いた話ではあるが、あの3人も元は帝国の貴族だったといい、借金返済の為に仕方なく空賊に身をやつしていたという。

 

─────たしかにあいつらも、根っから悪いやつだったわけじゃないしな。

 

「悪いユーシス。おふざけが過ぎたな」

「いやいい。たまたま兄上からクロスベルからの留学生がいると聞いていてな。それがお前だろう」

「っと、そうだな」

「ならば仕方あるまい。貴族制への理解のないクロスベルの人間に、帝国に来たからには理解れとは言わん」

「……なーんか腹立つ言い方だなそれ」

「ふんっ」

 

むしろ貴族制のメリットってなんだよ。という言葉を飲み込みつつ、それは今後帝国にいるうちに学べばいいかと結論ずける。

 

「さて、そろそろ先へ向かうぞ」

「そだね。そろそろ終点だしいいよ」

「まじ?じゃあユーシス、残りは一緒に行こうぜ」

「……なぜ、終点だと知っている?」

 

ケロりと答えたフィーに、怪訝そうにユーシスが問いかける。だがフィーは素知らぬ顔で。

 

「もう奥まで行ってきたし」

「なっ」

「……いや、俺はまだだぞ。こいつが折り返してきたところで合流しただけだし」

 

信じられない、と言った様子のユーシスが、お前もかと言わんばかりにこちらへを見るのではっきり否定しておく。

 

そんなに早く奥へ向かえるほど俺の足は速くないし、そこまでのやる気は無いのだ。

 

「まぁ、まぁいい。では、行くとしよう」

「おう、頼むぜユーシス」

「がんばってね」

「お前もがんばるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンの最奥、一際開けた空間で、俺とエリオット、ガイウスにマキアスを加えた4人パーティは石像から変異した大きな魔獣と相対していた。

 

だがその魔獣、イグルートガルムはこれまでの魔獣とは一線を画すほどに手強かった。

 

「─────っ!」

「くっ」

「うわぁっ!」

「なにっ!?」

「まだ立ち上がるのか……っ!」

 

マキアスとガイウスの戦技で一度は倒れたと思ったイグルートガルムは、しかし再びけたたましい咆哮と共に再び立ち上がり、力強く羽ばたいて空に飛び上がってみせた。

 

「ひぃっ」

「力を取り戻したのかっ」

「そんなことが……っ」

 

─────みんなの体力は、限界か。

 

元々荒事に慣れていないのだろう、既にエリオットは完全に及び腰で悲鳴をこぼし、マキアスも迫力のあまり呆然としている。頼みの綱のガイウスも既に限界が近いのか、槍こそ構えているが呼吸が荒い。

 

─────こうなったら、あの力を……っ!

 

乱れた呼吸を深呼吸して強引に落ち着け、胸の前に手をあてがう。そしてさぁ行くぞと気張った刹那だった。

 

「下がりなさいっ!」

 

一筋の導力光が身体の横を掠めて飛び、続いて2射、3射と立て続けにイグルートガルムへと殺到する。

 

─────これは、弓矢かっ!?

 

6射目のそれを受けて集中をその弓矢の元へと向けたところで、続いて死角となるマキアスの背後から細長い杖を構えた女子が走りより、アーツで追撃を行なう。

 

3つの大ぶりなアーツ弾をまともに喰らい、ついに体制を崩したところで。

 

「はぁ!」

「─────っ!」

 

俺の背後から現れた青髪の女子の大剣が気迫の声と共に振り下ろされ、イグルートガルムの頭頂部を強かに叩いた。

 

流石に鱗は断てなかったようだが、それでも頭頂部に尋常ではない衝撃を受けたのだろう。地面を転がる姿を見て、そして導力弓の少女が走りよってくるのに気がつく。

 

「き、君たちはっ!」

「追いついたかっ」

「た、助かった……」

「ふふっ、みんな無事みたいね」

「す、すみません、遅くなりました!」

 

ラウラ、エマ、そしてアリサ。先程自己紹介しあった同級生の姿に、3人も緊迫させていた顔を緩ませる。

 

石の守護者(ガーゴイル)……暗黒時代の魔導の産物か。どうやら、凄まじく硬いようだな」

「うん、しかもどんどんと回復していくんだっ」

「よもや私の剣も通らぬとはな。それに回復とは面妖な」

 

横でラウラが大剣を構えた。その横では呼吸を整えたガイウスが槍をひと回しし、エリオットとマキアスも回復アーツで回復すると共に、エマとアリサに並んで戦闘に備えている。

 

「だが、この人数なら勝機さえ掴めれば……っ!」

「─────!」

 

太刀を下段に構えた刹那、イグルートガルムが叫びとともに向かってくる。─────だが。

 

「まぁ、仕方ないか」

「協力してやろう」

「いっちょかましてやんよ!」

「よっ」

「ARCUS駆動……っ。エアストライク」

「ぶち抜くっ」

 

全員が驚いて声の方を見ると、ARCUSを構えたユーシスと共に、白髪の男子と銀髪の女子が入口にたっていた。

 

「─────っ!!!!!」

「ふっ」

「おらァ!」

 

少女が高く飛び上がり、イグルートガルムの意識がそちらへと向いた瞬間、ユーシスのアーツが炸裂し、さらに男子の戦技であろう凄まじい勢いの突進が直撃。さらに両手に持った拳銃を乱射しながら着地した女子が、素早い動きで懐に潜り込み、拳銃で何度も切りつけていく。

 

こんどこそ、イグルートガルムは羽を下ろし地面へと這いつくばった。

 

─────チャンスだ。

 

「─────っ」

「勝機だ!」

「あぁっ、一気に行くぞ!」

 

その瞬間、ARCUSを中心に俺たちの身体を青い光が包み込んだ。そして、全員の動きが、思考が、直感的に伝わってきたのだ。

 

そこから先は驚きの連続だった。

 

それぞれが全員の動きを把握した上での連携は確実で、尚且つ非常に素早いものだった。

 

ラウラの大剣が、ユーシスの騎士剣が、ガイウスの槍が、灰髪の男子の銃剣が。

 

銀髪の女子の不意打ちが、エリオットの回復アーツが、エマの攻撃アーツが、アリサの牽制が、マキアスの射撃が。

 

イグルートガルムに反撃の隙を与えない連撃の末、ついにその時は来た。

 

「今だ!」

「任せるがよいっ!」

 

上段に構えられたラウラの大剣が、ついにイグルートガルムの首を跳ね飛ばした。

 

 

 

 

 

 

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