なんか書き始めたら一気にここまで行っちゃったから投稿。
お気に入りとか高評価とか、ありがとうございます!まだの方はよかったら是非に。
「やった……?」
「よかった、これで……っ」
「あぁ、一安心だな」
その言葉に、全員が緊張の糸が切れたように脱力した。特に男子組は長く戦っていたらしく、酷く消耗しているようだった。
「無事に倒せたか」
「なんか一気に疲れちゃったわ」
「あはは、皆さんお疲れ様でした」
後半から参戦した女子組も初めて目の当たりにする強力な魔獣に気疲れしたのか、ラウラ以外のふたりに余裕は無さそうだ。
「もーちょい早くても良かったかもな」
「このくらいでよかったんじゃない。めんどくさいし」
「ふん、俺たちのひと押しが決め手となったのだ。悪くないタイミングだろう」
「なっ、もう少し早く来て協力してくれても」
「なんだ、まさか助力が必要でした、とは言わぬな?」
「ぐっ」
1番最後の3人組はとかに疲れた様子もなく、飄々としていた。だがそんな中でも肩で息をしながらユーシスに突っかかるマキアスに全員が苦笑する。
「それにしても、最後のあれはなんだったのかな」
「そういえば、何かに包まれたみたいな……」
「あぁ、僕を含めた全員が淡い光に包まれて……」
「─────気のせいだろうか」
全員が首を傾げる中、ラウラが神妙な面持ちで話し出す。
「あの瞬間、皆の動きが“視えた”気がしたが……」
「たしかに、そうだが」
「前衛の攻撃タイミングもだが、アーツのタイミングも初対面の連携じゃなかったしな」
「……多分、気のせいじゃないと思う」
「あぁ、もしかしたらさっきの力が」
「─────そう、ARCUSの真価ってわけ」
確信めいたリィンの声に、聞き覚えのある女性の声が答える。突然のことにフィーを除く全員が驚いた。
声の方に視線を向ければ、空間の奥の階段の上、まさに今扉から出てきたといった様子のサラが腰に手を当ててニヤリと笑っていた。
「いやぁ、やっぱり友情とチームワークの勝利っていいわぁ。まさに青春ね。うんうん、お姉さん感動しちゃったわ♡」
「サラじゃん」
「なんか年寄りクセェよな、ユーシス」
「知らん。俺に振るな」
「あんた、ほんとに撃ち抜くわよ?」
慌ててハンズアップで特に考えの無さそうな謝罪を述べるアロイスにため息を吐きつつ、ゆったりとした足取りで階段を降りたサラ。
沈黙する全員の前に立ち、顔を一通り見渡して話し出す。
「これにて、入学式の特別オリエンテーリグは終了なんだけど。……なによ、せっかくならもっと喜びなさいよ」
「よ、喜べるわけないでしょう!」
「正直、疑問と不信感でいっぱいなんですが」
「あら?」
「─────単刀直入に問おう」
怒り混じりのマキアスとアリサに、不思議そうなサラは首を傾げる。そこにユーシスが声をあげた。
「特科クラス“Ⅶ組”とやら、一体何を目的としているんだ」
「身分や出身問わず、と言うのはわかりましたが」
「何故我らか選ばれたのか。結局のところ疑問ではあるな」
「そうね……」
マキアスとユーシス、アロイスとガイウスを見たエマ、真剣な顔をしているラウラが同調する。
そしてそれに対し、ついに真面目な顔をしたサラが。
「君たちがこの“Ⅶ組”に選ばれたのには色々と理由があるんだけど……。1番わかりやすいのはこれ、ね」
「それって」
「……ARCUS?」
懐から取り出したARCUSを片手にサラは続ける。
「この戦術オーブメントに……?」
「やっぱり何か仕込まれてやがったか」
「エプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した最新鋭の戦術オーブメント。アーツが使えたり、通信機能を備えていたり、まぁそこのアロイスが知っていそうな機能は一通り備えているけど……」
「まぁ、そうだな」
「その真価は“戦術リンク”、先ほど君たちの体験した現象にある」
「“戦術リンク”……」
その言葉にエリオットがしげしげと声をもらす。
「それって、さっきみんながそれぞれ繋がっていたような感覚の……」
「えぇ、そうね。それが戦場に与える影響って物凄いのよ。どんな状況下でもお互いの行動を把握でき、常に最大限の連携をこなせる精鋭部隊。仮にそんなものが存在すれば、あらゆる作戦行動が可能になる」
「それは……」
「まさに、戦場における革命ね」
「ふむ、確かに」
「理想的かも」
「戦車やら飛行船よりも厄介かもな、これは」
ラウラ、フィー、アロイスが頷くのを見て、今度はユーシスの方を見る。
「長くなったわね。まぁここまで話しといてなんだけど、ARCUSって現時点では適正の個人差がすごくてね。そこで新入生の中で特に適正の高い君たちが選ばれたの。それが、あなたたちが身分や出身を問わずに選ばれた主な理由ね」
「なるほどな」
「な、なんて偶然だ……」
「……主な?」
「ま、色々あるのよ。色々、ね」
それぞれがそれぞれの反応を見せる中、サラが手を1つ打ち鳴らして全員の視線を集める。
「トールズ士官学院はARCUS適合者として君たち10名を見出した。でも、やる気のない者や気の進まない者を参加させられるほどの予算的な余裕はないわ」
1部の視線がマキアスとアロイス、そしてフィーに向いた。マキアスは気まずげに顔を逸らしているが、アロイスたフィーは何処吹く風と言った様子だ。
「それと、本来所属する予定のクラスよりもハードなカキリュリラムになる予定よ。それを覚悟してもらった上で、このⅦ組に参加するかどうか─────。改めて聞かせてもらいましょうか」
サラが再び全員を見渡し、一人一人としっかりと目を合わせていく。その顔は真剣そのものだ。
「あっ、ちなみに辞退するなら本来のクラスに配属になるわ。とくにペナルティがある訳でもないし、そこまで重く捉えなくていいわよ?」
そう補足されるが、はたしてどう出るべきか、それぞれが顔を見合せたり、顔をふせて考え込むなどして暫し続いた沈黙の中、リィンが1歩前に出た。
「リィン・シュヴァルツァー。参加させてもらいます」
「え……」
「り、リィンっ」
「一番乗りは君か」
自分を高められるのなら。そう語るリィンに続きラウラ、ガイウスが前に出た。
「そういうことなら、私も参加させてもらおう。もとより修行中の身、此度のような試練は望むところだ」
「俺も同じく、異郷の地から訪れたからには、やり甲斐のある道を選びたい」
「新入生上位の実力者にノッポの留学生くんも参加と。さぁ他には?」
急かすサラに、今度はエマとエリオットが前に出る。
「私も参加させて下さい。奨学金をいただいている以上、少しでも力になりたいので」
「ぼ、僕も参加します。これも縁だと思うし、みんなとは、上手くやれそうな気がするから」
「魔導杖のテスト要員もふたり参加と。ARCUSと同じテスト段階の技術だから、ふたりのレポート期待してるわよ?」
「─────私も参加します」
「っ!」
微笑むエマの横ではやまったかと再び思い悩むエリオット。そして、リィンの横にいたアリサが声を上げた。
「あら、てっきり反発して辞退するかと思っていたのだけれど」
「たしかに、テスト段階のはずのARCUSがこんなところで配備されているのは、個人的に気になりますけど。この程度で腹を立てていたら、キリが無さそうですから」
「……ふふっ、それもそうね」
手元の名簿に6人分の何かを書き込み、そしてボケっとアロイスの影に立っているフィーへと視線を向ける。
「フィー、あんたはどうするの」
「……べつに、どっちでも」
「駄目、あんたが決めなさい。自分のことは自分で決める。そう約束したじゃない」
「めんどくさいなぁ。まぁ、おもしろそうだした参加で」
本当に面倒くさそうに顔を歪めて1歩前に出る。当然のように次はその横にいたアロイスへと集まった。
「俺は断れねぇんだろ?」
「理事長からそう聞いているわ。断るようなら10発くらい撃ってもいいって」
「……ったく、女に雑に扱われて喜べるのはお前だけだろっての。あのスチャラカ演奏家め」
「あんた、外国人とはいえよくそんなこと言えるわね……」
「王女様とお友達になってた時点で、不敬だのなんだのを考えるのはやめたよ。ことあいつに関しては」
呆れた様子のサラ。ガシガシと雑に頭をかいたアロイスもまた1歩前に出た。
「アロイス・アイスナー。参加するぜ」
「問題児の留学生も参加と」
「……俺、問題児か?」
「入学式に参加しなかったしね」
「ならお前もじゃん」
「ぶい」
「あんたら揃いも揃って問題児だっての」
グッドサインとブイサインを交わし合う問題児ふたりに鋭い視線を向けたあと、残った別の意味での問題児ふたりの方へ向いた。
「残りの2人はどうするつもりなのかしら」
「…………………………」
「…………………………」
「なんか言いなさいよ。まぁ、あんたたちにも色々あるとは思うけど。そんなに深く考えなくてもいいんじゃない?今日みたいに一緒に青春の汗でも流せば、そのうち仲良くなれる日が来ると思うんだけどなぁ」
「そ、そんなわけないでしょうっ!それに─────」
「─────ならば、話は早い」
続くマキアスの弁舌を聞いて、ユーシスが一歩前に出た。
「ユーシス・アルバレア。Ⅶ組への参加を宣言する」
「っ!?な、なぜだ……?君のような大貴族の子息が平民と同じクラスになるだなんて、我慢できないはずだろう!」
「……勝手に決めつけるな。アルバレア家からしてみれば、他の貴族も平民と大差ないと言うだけのことだ。むしろ、勘違いした取り巻きに巻かれることも無いのだ。好都合と言うものだろう」
「─────」
絶句するマキアスを後目に、ユーシスは続ける。
「かと言って、無用に吠える犬を手元に置いておく趣味もない。どうだ、ここで袂を分かつというのは。いい考えだと思わないか」
「誰が君のような傲慢扶桑な輩の言うことを聞くものか!マキアス・レーグニッツ、特科クラスⅦ組に参加する!」
敵対心を隠そうともしないマキアスに見下すようなユーシスの視線が油に火を注ぎ、今にも掴み合いになりそうな雰囲気を醸し出しはじめる。
「貴族と平民の溝ってのは、そんなに深いもんなのか?」
「私もそんなに詳しくない」
「うむ、我が故郷では当主である父も私も、平民と共に生活してきたが故に、あまりそういったことには明るくないのだ」
「俺も留学生だからな。あまり貴族については詳しくないんだ」
「ダメだこりゃ」
マキアスとユーシスの喧騒とともに全員の空気が柔らかくなり、それぞれが雑談をし始める。だが、そんな中サラの拍手が響いた。
「はいはい、雑談は後にして、早く終わらせたいから」
「お酒飲みたいだけでしょ」
「うっさい。……まぁ、これで10人、めでたく全員参加ってことね」
「教官が酒飲みてぇからって早く締めようとしてんのどうなんだ?」
「…………。それでは、この場を持って特科クラスⅦ組の発足を宣言する!これから1年間、ビシバシ扱いてあげるから、楽しみにしてなさい♪」
「無視しやがった!?」
ついに火を噴いたサラの大型導力拳銃の炸裂する音と共に、波乱の特別オリエンテーリングは終わり、特科クラス“Ⅶ組”の1年がスタートした。
△
「ひっとしたら彼らこそが、新たな光となるかも知れません。動乱の足音が迫り来る帝国において、対立を乗り越えられる唯一の光に─────」
「ほぅ」
「あっ」
頭に直撃弾をくらい倒れるアロイスをみて、金髪の青年が情けない声を上げた。
「まったく、締まらないねぇ。彼は」
「そういえばお知り合いでしたかな」
「あぁ、彼とはリベールで少しね」
懐かしむように目を瞑る青年に、横で控える筋骨隆々の老人が笑いかける。
「よほど、楽しかったのですな」
「あぁ、あの日々はなかなかいいものだったよ。とくに、彼と は大切な親友でね─────」
刹那、青年の顔面を導力光が襲った。
「で、殿下……っ」
『あ、アロイス!?突然どうしたの!?』
『いったい、何に向かって発砲した』
『いや、なんかイヤーな空気を感じてな。タチの悪い魔獣かなんかがいたんだろ』
『……あんた、そのうちマジで不敬罪とかにならないでよ……?』
「ふっ、大丈夫だよ学院長」
低威力だったのだろうか、導力銃の芯弾を指で遊びつつ、青年が立ち上がった。
「これもまた、彼からの愛じょ─────っ」
「殿下……っ!?」
頬を赤く染め、恥じらうような青年に、再び導力光が迫り、股間へと炸裂した。こんどこそ老人は心の底から肝を冷やしたという。
そのころ、ニヤリと笑うアロイスの顔面に、再びサラの銃撃がヒットしていた。