魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第12話 高慢王3

「ソーニャが出たのです! あれが芋虫の本体みたいなものなのです!」

「どうやら向こうもこのまま討伐されるつもりはないようですね。来ます、気をつけてください」

 

 戦闘で荒れ果てた緑の丘の前、埋まったままだった芋虫の後方部がついに姿を現す。

 その姿はこりす達が洞窟神殿で対峙した時と同じ、メイの下半身をモンスターの集合体である黒い巨体が飲み込んだもの。だが、その体から突き出した黒晶石の数は先程よりも増していた。

 

『拙者が魔王へと至る邪魔をした報い、拙者の体の一部となることで支払ってもらいますぞー』

 

 黒晶石で縫い付けられた前方部分に代わり、メイを取り込んでいる後ろ部分から触手も生やし、ソーニャが隙あらば襲いかかろうと一同に狙いを定める。

 

「あれ、ルミカが配信で倒してた融合モンスターの亜種!? レイドモンスターやメイまでくっついてんの!?」

「ルミカの倒した融合体は今回のために行われた実証実験です。あの融合モンスターの使役者であるソーニャは、他のモンスターや人間などを吸収し、魔王へと至ることを目標としているようです」

 

 ラブリナの説明に、リオが最悪じゃんと乾いた笑いを漏らす。

 

「はいはーい、質問でございまーす。上の辺りに人の体が見えるでございますが、そのまま斬り刻んじゃってもよろしゅうございますか?」

「ぜ、絶対にダメなのです! あれは取り込まれているだけなのです! 他にも沢山の人や怪人が入っているのです!」

 

 両手に刀を構えて今にも飛び掛かろうとしているねねを見て、両腕で×を作ったミコトが必死にノーと訴える

 

「で、でも、助けるために必要なら、ちょっとぐらい真っ二つにしてもいい気もするのです。断面とかに黒晶石が混ざってなければ多分くっつけられるのです……」

「いや、ダメに決まってんじゃん。毎回こりっちゃんに蘇生前提で人命軽視するなって言われてるっしょ、いい加減覚えなって」

「ぐむむー」

 

 が、ちょっと日和りそうになったミコトに対し、今度はリオが毅然とノーを突き付けた。

 

「やり取りの意味はよくわからないが、状況は全て理解した。ただでさえ難儀なレイドモンスターが超強化され、人質まで手にしているわけだ。実に面倒なことだ」

「ハハッ、それでもオレ達がやることは変わらないんだがな!」

 

 二人の会話に少し呆れつつも、傷が癒えたスーツの男が防御体勢に入り、その後ろで筋骨隆々の大男が剣を構える。

 

「人質は後方先端部付近に密集しているはずです、まずは後方と前方を分断してしまいましょう。敵の戦闘力さえ削ぎ落せば人質を解放できる算段があります。ただし、敵は先程魔王の欠片を取り込みました、ここから徐々に力が増していきます」

「魔王の欠片ってラブ……」

 

 言いかけて、リオが慌てて口を噤む。

 大勢がレイド配信を見ているこの状況、ラブリナが黒晶石の魔王である事実の露呈はマイナスにしかならないと気づいたのだ。

 

『くふっくふっ、なにやら大層な青写真を描いておりますが当然そうはいきませんな。養分たる人質の救出などさせませんぞー!』

 

 メイの顔でソーニャが嘲笑い、芋虫の体から生え出た触手がツルを巻くように芋虫の体へと巻き付いていく。

 

「ミッション開始だ。可及的速やかに妨害しろ! 相手の意図は不明だが、私の経験上好きにさせるべきではない!」

 

 スーツの男がカバンを構えて体当たりし、触手を弾き飛ばすと、

 

「同感さんでございます。ずんばらりんと参りましょ」

 

 ねねが間髪入れずに飛び込んで、触手を手当たり次第に斬り飛ばす。

 それを追う様に炎を纏った魔法剣が飛来し、芋虫の体を焼き斬っていく。

 

「おねねさん、上! 飛び退いて!」

「おおっとでございます!」

 

 リオの声に合わせてねねが飛び退き、さっきまでねねが居た場所に無数の黒い塊が飛来する。

 飛来した黒い塊が粘土を捏ねるように形を変え、地面の黒晶花を巻き込んで黒い体の怪人へと変化していく。

 

「各々、気をつけてください。あの怪人、全て黒晶石個体のようです」

 

 その正体を看破したラブリナがそう注意を促すと同時、怪人達が一斉に襲いかかる。

 

「あおおー! ご、護身術の出番なのですっ! バキバキにするのです!」

 

 怪人に狙いを定められたミコトが、手をぱたぱたと動かして迎え撃とうとする。

 

「設楽、ミコトの護衛は任せました」

「怪人相手は私の本職だ、任せてくれ!」

 

 大剣を振るうラブリナが怪人を両断し、設楽がミコトの手を引いて怪人達の攻撃を掻い潜る。

 歴戦の面々が集まっているだけあって、一同は怪人の猛攻などものともしない。

 だが、レイドパーティが怪人を相手取っている隙に、触手は完全に芋虫の体を包み込み、芋虫を守る繭のような物体を作り上げていた。

 

「クロウのおっさん! あの芋虫、なんかセルフ魔王城みたいになってんだけど!?」

 

 怪人に紛れて襲ってくるモンスターを槍で捌きつつ、繭と化した芋虫に気付いたリオが叫ぶ。

 

「おお、初めて見るパターンだ! これは……魔王城と言うよりも繭だな。繭だとすれば実に厄介な状況だぞ、中にはサナギが居る!」

「変体……チッ、本当に魔王とやらになるつもりか!?」

 

 大男とスーツの男が繭へと急ぎ攻撃を仕掛けようとするが、モンスターと怪人に阻まれて中々近づくことができない。

 

「リオ、ピンク髪の方とポジションチェンジでございます。ここはおねねさん達レイドパーティが突破口を開き、中身にデカい一撃をお見舞いする他ないでございますよ」

「それしかないか、わかった!」

「そう言うことだ。そこのピンクのお嬢さん、危険な役回りだがオレ達に代わって頼めるか!」

 

 大男は魔法剣を振り回してモンスターを蹴散らしながら、大声でラブリナに打診する。

 

「はい、引き受けました。この場はその策が最良でしょう」

「ラブリナ! メイは傷つけないようにお願いしたいのです!」

「心得ていますよ、ミコト。可能な限り人命を尊重したいのは私達も同じです」

「ほいきた! それでは突撃でございますよっ!」

 

 一番槍は自分だと主張するように、ねねが怪人の群れに飛び込んで蹂躙。

 それによってできた突破口を維持するため、リオがスーツの男と大男と合わせて割って入る。

 それを阻止しようと別方向からモンスターが迫るが、拘束アンカーの援護射撃によって捕縛され、その体を地面に縛り付けられていく。

 

「後方支援、いい仕事してくれるじゃん! ラブさん、今のうち!」

「はい!」

 

 すかさずリオが飛び退き、ラブリナとポジションチェンジ。

 ラブリナはそのままレイドパーティによってお膳立てされた突破口を疾走し、触手を掻い潜りながら繭に向けて大剣を振り下ろす。

 繭を悠々斬り裂き、そこでラブリナが動きを止める。

 

「やったのか!?」

「いいえ、まだです」

 

 繭がめくれ、その中身が露わになる。

 ラブリナの振り下ろした大剣は、中に有る巨大黒晶石を僅かに掠めるに留まっていた。

 メイの体が黒晶石を守る肉盾代わりにされていたからだ。

 

『くふっくふっ、流石に肝が冷えましたぞ。いやはや、ラブリナ殿が甘さを見せねば危なかったですな』

 

 メイの体を使うソーニャが下卑た顔でそう言って、傷ついた黒晶石を守るように抱きかかえる。

 

「……人質か!」

「これじゃウチ等は迂闊に手出しできないじゃん。あの芋虫、図体デカい癖にやり口メッチャ姑息だし!」

『くふっくふっ、姑息とは失礼な。人質は立派な戦術、特に人間相手はよく効きますな』

 

 歯噛みするリオを嘲笑い、勝ち誇った顔をするソーニャ。

 

「なるほど、ですが同じ策を使い過ぎです。私には通用しませんよ」

 

 そこでラブリナが一瞬セレナと入れ替わり、黒晶石の目の前で止まっていた大剣の先端に光が集まる。

 黒晶石の前で光が小さく炸裂し、その衝撃でソーニャが守っていた黒晶石が弾け飛ぶ。

 

「致命打です」

『ホッ、ホアッ? ヴァアアアアアアアアアアアアアアア!?』

 

 大穴の穿たれた黒晶石。

 振り返ったソーニャが張り裂けんばかりの絶叫をし、最期の反撃を受けぬようラブリナが飛び退いて間合いを取る。

 

『ありえない! ありえないですぞ!? 拙者がこんな志半ばで倒れていいはずがありませんぞ!?』

 

 砕けた黒晶石を必死に手でかき集め、往生際悪く繋ぎ止めようとするソーニャ。

 その努力もむなしく、ソーニャ本体であろう黒晶石は灰になり始めていた。

 

『灰になる! 拙者が灰になる!! 許されない。許されない蛮行ですぞ!』

 

 灰になろうと黒晶石をかき集め続けるソーニャの下、芋虫の黒い巨体が溶け始め、溶けた体に触れた周囲のモンスターや怪人を手当たり次第に取り込んでいく。

 

「お、芋虫溶け始めてんじゃん」

「本体が壊れて維持できなくなったのでございましょうかね?」

「いえ……あの中にある私の欠片が弱まっていません、嫌な予感がします」

 

 ようやく終わったのかと事の成り行きを見守る一同、だがその中でラブリナだけは重苦しい顔をしたままだった。

 そんな彼女の懸念は、程なくして的中してしまう。

 

『ガッ!? グガッ!? なんですぞ、これはこれはッ!? グガガガガガガガ!!』

 

 ソーニャが苦悶の叫びをあげたかと思えば、突如芋虫の体から少女のような腕が生え、メイの体と黒晶石の破片をその体内へと勢いよく引きずり込んだ。

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