魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第12話 高慢王6

「ルミカ、それが君の答え?」

「そうさ、これが僕様の答えであり意地だ!」

 

 ルミカちゃんは隠し持っていたラブリナさんの欠片を手に取ると、自らの胸元に押し当てる。

 間違いない。ラフィールの時と同じ、ラブリナさんの欠片を使った変身だ。

 

「マナチェンバー、イグニッション!」

 

 瞬間、黒晶石の翅がルミカちゃんを包むように黒い繭を作りあげ、その姿が黒衣の魔法少女へと変化する。

 

「僕様こそは魔王、黒晶石の魔王が一人! 高慢王ルミカ! 来いよ、エリュシオン! 歪んだ僕様を否定できるだけの在り方を見せてみろ! 僕様が憧れた魔法少女であるお前の姿をもう一度焼き付けてみせろ!」

 

 変身の余波で地面の黒晶花が花吹雪のように舞い上がる中、ルミカちゃんは黒晶石で作った仮面を着けて臨戦態勢を取る。

 私に向けられたその言葉は、まるで自分を倒し越えていって欲しいように聞こえた。多分、ルミカちゃんにとってのエリュシオンはそう言う存在なのだ。

 

「悪を断つ銀のシリウス、魔法少女エリュシオン。私は皆の強さを信じる、勿論君の強さも信じてる……だからこそ、私は君を倒すよ」

 

 だから、私は決着をつける覚悟を決めた。

 ルミカちゃんの覚悟に応えるのなら、私は魔法少女エリュシオンとして真っ直ぐに勝つしかない。

 

「望むところだ! ぶち貫け、螺旋奔流イクリプスインペールッ!」

 

 構えたランスを更に黒く禍々しく変形させ、ルミカちゃんが必殺の一撃を放つ。 

 

「貫き駆ける瞬撃の槍<エリュシオンフィスト>」

 

 私はその一撃を避けず、受け止めず、真っすぐに突き進んで貫く。

 踏み込んで放った拳が黒い閃光を斬り裂き、ランスを砕き、ラブリナさんの欠片ごとルミカちゃんの胸を貫いた。

 

「君の想いは間違っていない……けど、順序が逆になっているんだよ。君は守りたいから強くなったのであって、強いから守る責任を負ったわけじゃない。そして、誰かを守りたいのは魔法少女だけじゃない、他の皆も同じなんだよ」

「ああ、そうだったな。僕様はお前に助けられる姉様を見て、自分も強くなって姉様を助けたいって思って魔法少女になったんだ。……どうしてそんな単純なことを忘れてたんだろうな」

 

 寂しげに笑ってルミカちゃんが崩れ落ちる。

 貫かれた胸は黒晶石で埋められているけれど、その体は既につま先から灰になり始めている。

 今話せているのはラフィールの時と同じロスタイム、少しだけほろ苦いけれどこれで決着だ。

 

「全く、お前は昔から強情だな」

 

 そんなルミカちゃんの所へ、優しい顔をした設楽さんが歩いて来る。

 

「姉様!? 何やってんだよ! 本物のルミカは黒晶石の中に居るんだぞ!? 僕様はなんだか訳わかんない存在なんだから近寄るなよ!」

「それでも、ルミカと同じ顔で私を姉と呼んでくれるじゃないか。強情な中身だってそっくりだ」

 

 そして、灰になりつつあるルミカちゃんを抱き上げた。

 

「ふざけんなよ! 姉様はすぐそうやって無謀なことをする! その使命感、僕様がどれだけ心配したと思ってるんだよ!」

「さっき赤頭巾みたいなフードの子に諭されたよ。お前が無茶をするのは、私が無茶をしているからだってな」

「アイツに言われるまで気づいてなかったのかよ!? そうだよ、そうに決まってるじゃないか!」

 

 抱き上げられているルミカちゃんが、拗ねた子供みたいに設楽さんへ頭突きをする。

 本物のルミカちゃんは別に居るはずなのに、このルミカちゃんと設楽さんは本物の姉妹にしか見えない。ううん、少し歪んでしまったけれど想い自体は本物だったのだ。

 

「潜入捜査をしていた那由他会でメイの寂しそうな顔を見ていたら、見過ごせなくてつい深入りした……すまん、気をつけるよ。私が無茶をすることで大事なお前を危険に晒してしまうんだな」

「気付くのが遅すぎるんだよ。姉様もいい年した大人なんだから、さっさと理解してくれよな」

 

 そう軽口を叩くルミカちゃんの体はもうほぼ灰になりかけている。

 残り時間は後僅かだ。

 

「……姉様、僕様が消えたら白い輝石が残ると思う。黒晶石の中で眠ってる方のルミカを目一杯反省させたら、僕様だったものを渡してやってくれ。僕様の輝石、魔法少女変身アイテムの核にできるはずだから」

「わかった、約束しよう」

「姉様、これに懲りたら絶対に無茶するなよ。約束だからな。ほんと……どいつもこいつも危なっかしくてさ、僕様口出ししたくてたまんないよ……」

 

 そう言って、ルミカちゃんは完全に灰となって消え去り、灰が零れ落ちた設楽さんの手の中には白い輝石だけが残る。

 

「……終わったみたいだね」

「そのようだ」

 

 設楽さんはしんみりとした顔で白い輝石を握ると、黒晶石から解放されたメイちゃんの所へと急ぐミコトちゃんの行く手を遮った。

 

「シタラー、私は急いでいるのです!」

「わかっている。だが、こんな私でも一応大人の責任と言うものがあるんだ。だから教えてくれ、君はメイの所に戻るのか」

「戻らないのです、連れ出すのです!」

 

 即答するミコトちゃん。

 

「私もルミカに負けず劣らず過保護のようだ。またルミカに何か言われそうだな」

 

 その言葉を聞いた設楽さんは、白い輝石を少し強く握って道をあける。

 ミコトちゃんはその脇をすり抜けるように走ると、いじけるように木の陰に隠れるメイちゃんの前に立った。

 

「待たせたのです、メイ」

 

 でも、メイちゃんはプイとミコトちゃんから顔を逸らすと、木の陰に隠れてしまう。

 

「待たせたじゃないんだよー。姫巫女様、帰って来てくれないんだもんねー。聞こえてたんだよー」

「それはそうなのです。私にとっての那由他会は、あの芋虫と同じ存在になってしまったのです」

「ふーんだ。そうやって、どんどん私を置いて行っちゃうんだよー」

「確かに私は戻らないのです。……でも、今度は置いては行かないのです」

 

 そう言って、ミコトちゃんはメイちゃんの隠れる木まで歩いて行く。

 

「さあ、行くのです。」

 

 そして、慌てるメイちゃんの腕を掴んで強引に引っ張り出す。

 

「姫巫女様……」

「エリュシオン様に手を引かれ、今はこりす達に引っ張られ、私もまだまだふらふら歩き。それでも、今のメイぐらいなら手を引いてあげられるのです」

 

 手を引っ張られ、よろめきながら木の陰から出て来るメイちゃん。

 いつも天真爛漫なミコトちゃん。もしかすると、ミコトちゃんは今まで閉じた鳥籠の世界に居た分、色々なものを体当たりで覚えている真っ最中なのかもしれない。

 

 そんなことを考えながらミコトちゃんを眺めていると、不意にミコトちゃんと目が合う。

 ミコトちゃんは私に向かって大きく手を振ってお辞儀をすると、キラキラと目を輝かせて拠点へと帰っていく。

 青空の中、小高い緑の丘を二人で歩くミコトちゃんとメイちゃん。その姿はまるで爽やかな名画のようだった。

 

 ……あ、そんなことない。暗黒だ。

 後ろで感涙にむせぶ黒フードの信者さん達がゾロゾロついて行ってる。やだ、なんか凄く怖い。

 変身解除したら即ダンジョンホットラインに通報しよう。そう心に誓いつつ、私はまだモンスターと戦っている冒険者さん達の手助けに向かうのだった。

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