魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第14話 波涛の魔王1

 

  第二話 波涛の魔王

 

 かくして、いつものパーティにねねちゃんを加え、私達は旧攻略最前線"海岸丘陵"の先にある新しい三層"砂海"に来ていた。

 魔石を持って地上から海岸丘陵を越え、今は出来たてほやほやの砂海拠点で魔力登録を済ませ、これから階層未算出の未整備エリア"魔力の海"へと足を伸ばそうとしている所だ。

 

 転移装置用の魔石は魔力干渉だのがあって転移装置では転移させられないらしい。だから、道中全ての階層を歩いて突破する必要があるのだ。

 そんな話を聞く度、ミコトちゃんの開門能力ってズルいなって思う。その分、誘拐されそうになったりトラブルも沢山呼び込んじゃうけど。

 

「セレナちゃん、後は運んで来た魔石を入れれば必要な荷物は全部詰め込めるよ」

「ありがとうございます、こりすちゃん。それではチェックをしていきますね」

 

 そんな砂海拠点、リオちゃん達に探索ルートの選定を任せ、私とセレナちゃんは建設中の"魔力の海"拠点へ持って行くコンテナの準備をしていた。

 事前に準備されていた荷物をアイテムコンテナへと格納し、忘れ物がないようにチェックリストにチェックを入れていく。

 

「……こりすちゃんは黒薔薇の鍵守の目的、どう考えますか?」

 

 私がリストと睨めっこしていると、荷物の最終チェックをしていたセレナちゃんが尋ねてくる。

 

「うーん……。ここまで派手にやってきたら、流石にシンボルとして鍵のスペアを奪っただけとは考え難い、かな」

「リスクとリターンが釣り合わないと考えるんですね」

 

 私はセレナちゃんに小さく頷く。

 勿論シンボルとして手に入れたいのもあるんだろうけれど、それだけが理由じゃ流石に割に合わないと思う。

 あれだけ派手に研究施設を襲撃した以上、こっちだって相応の対応を取るに決まってる。いくら魔法省経由で圧力をかけたって完全封殺できるわけがない。相手だってそれぐらい百も承知のはずだ。

 

「確かに見えている限りだと、リスクとリターンは釣り合っていないように見えますね。……念のため確認しますけれど、スペアキーで楽園の扉は開かないんですよね?」

「うん、大丈夫。そこはにゃん吉さんにも確認してあるよ。そもそも、エリュシウムの鍵は高い魔力に耐えうる変身用マジックアイテムでしかないんだって。封印された扉を開ける秘密があるんなら、失われた核の方にあったんじゃないかって推測してた」

 

 失われた核って言うのは、黒晶石に取り込まれたセレナちゃんを助ける時、私が自壊変身で壊してしまったものだ。

 絶対に助けたかったから後悔はしていないけど、申し訳なさがないと言えば嘘になる。私のせいで楽園の扉が二度と開かなくなっちゃったとかはない、と思いたい。

 一生ものの瑕疵になるから、是非とも大丈夫であって欲しい。切実に思う。

 

「では黒薔薇の鍵守達はそれを知らず、あるいは確かめるために奪った可能性もありますね」

「それも不自然だよ。マジックアイテム知識で影響力を得てる組織なんだから、わざわざ施設を襲撃しなくてもデータ位なら手に入れられるんじゃないかな」

 

 私はチェックし終えたリストをセレナちゃんに手渡しつつ言う。

 黒薔薇の鍵守は魔法省経由でダンジョン庁に圧力をかけられるぐらいだ、こっそりデータを貰う位は簡単だろう。

 

「ううん、やはり現物が欲しかったとしか考えられませんね。どうしても現物が必要だった理由、そこが問題ですね」

「……魔王。この前のルミカちゃんみたいに、無理矢理変身させて魔王にさせるためとか?」

 

 集団戦の時のルミカちゃんみたいに、魔法少女を黒晶石で変身させて魔王を作り上げる。それならリターンがリスクを上回る。

 黒晶石の魔王が一人増えただけでも、人類にとってはとんでもない脅威だ。

 

「でも、そう都合よくいくでしょうか? 黒晶石は白い輝石に浄化できます。現に今ルミカさんの使っているペンダントは、黒晶石に侵食された輝石が再び白く浄化されたものですよ」

「確かに……。元々連中に協力的な魔法少女でもない限り、逆に変身ペンダント付きで強力な魔法少女を誕生させちゃうリスクがあるよね」

「それに黒晶石の魔王は総じて我が強い。上手く魔王へと成ったとして、黒薔薇の鍵守に御せる保証はありません」

 

 最終チェックを終えたリストを近くの係員さんに手渡し、セレナちゃんと交代したラブリナさんが言う。

 確かに魔王のルミカちゃんは歪んでいても人を守る気があった。怪人が人に牙を剥いていたら、多分魔王ルミカちゃんは怪人の方を容赦なく倒していたはずだ。

 

「だとすると、やっぱり魔法少女を魔王にするとは考えにくい、のかな……?」

「現状の私達では結論付けることはできないでしょう。様々な状況を想定して行動する他はありませんね」

 

 結局、私達にはまだ判断材料が足りない。

 注意して冒険するしかないと言う、なんとも言えない結論を出し、私達はタイヤとソリを装着したコンテナを外へと運んでいく。

 

「そこのお二人さん、コンテナさんの準備はおわったでございますか? 後はお二人のコンテナさん待ちでございますよ」

 

 と、そこにねねちゃんがお迎えにやってくる。

 

「ねねちゃん、ついてきてくれてありがとう。ねねちゃんが居るのは凄く頼もしいよ」

 

 丁度いいタイミングだと思ったので、私はねねちゃんにお礼を言っておく。

 私もラブリナさんも全力で戦うのには制限がある。懸念が尽きない現状、冒険慣れしていて高レベルのねねちゃんが同行してくれるのは凄く心強い。

 実際、砂海拠点に着くまでに出会ったモンスターは全部ねねちゃんが輪切りにしてくれた。

 

「お気になさらずでございますよー。実はおねねさんも私的に怪人捜索に行きたかったのでございます」

「そうなんですか? 黒薔薇の鍵守と因縁があるとは聞いていませんでしたけれど」

「特に因縁はないでございますよ。おねねさんは敵と戦えればハッピーさんで、そう言う立派なお題目はない人なんでございますよねぇ」

 

 小首を傾げるセレナちゃんに、ねねちゃんがからりと笑って言う。

 呆れた。なんて私が思っていると、

 

「乳頭巾ちゃんさん、呆れたと思ったでございましょ?」

 

 私の考えなんてお見通しだとねねちゃんが笑って言う。

 

「う……。うん、ごめん。正直ちょっと思った」

「心配ナッシングでございますよ。皆そう思うでございますし、おねねさんもそう思うでございます」

「じ、自分で思うなら改めなよぉ!?」

 

 ねねちゃんがあまりにあっけらかんと言うから、私は思わず突っ込んでしまった。

 

「おねねさん、もう割り切れてるんでございますよ。我ながら社会不適合者なのかなーとか、昔はちょっと悩んだりもしたんでございますけどね。とある人がこのペンダントを手渡しながら言ってくれたんでございますよ」

 

 言いながら、ねねちゃんは首からさげている変身用ペンダントを手で弄ぶ。

 

「別にどんな気持ちで戦おうと、どんな力を振るおうと、刃を向ける方向さえ間違えなければ正義の味方になれる。貴方自身は楽しむ目的でもいいから、その刃は誰かを助ける為に戦いなさい。それで貴方は立派な魔法少女になれる、と」

「凄い人だね」

 

 私は嘘偽りのない気持ちで言った。

 ペンダントを誰かに渡すと言うことは、自分が魔法少女になれなくなると言うこと。その人は自らが魔法少女であることを捨ててまで、ねねちゃんの心を救いたかったのだ。

 その選択をするのにはどれだけの勇気が必要なのか、私も魔法少女だからその凄さがわかる。

 

「実はその人、ハンナ先輩なんでございますよ」

「昨日の! あの人、元魔法少女だったんだ!」

「元セブカラのオニキスなんでございます。だからおねねさん、ハンナ先輩が意気消沈しているのは見るに堪えないんでございますよねぇ。怪人さんを気分よく切り刻んで、先輩の憂いもついでに払ってあげたいのでございます」

「ねねちゃん、せっかくいいこと言ってるんだから、もう少し言葉選んだ方がいいよ!?」

 

 意外なことにねねちゃんは魔法少女として立派に考えてた。でも言葉が酷い!

 ねねちゃんの問題、中身じゃなくて言葉の方な気がしてきた!

 

「おねねさん、そこら辺の葛藤も済んでるんでございます。ささ、リオとミコミコちゃんがお待ちかねでございますよ~」

 

 そこまで話して満足したのか、ねねちゃんは先に外へと歩いて行ってしまう。

 

「ねねちゃん、凄いマイペースだね……」

「そうですね。彼女の言う通り、己の力の使い方に折り合いが付いているのでしょう。黒晶石の身である私としては少し羨ましいです」

 

 セレナちゃんに言ったつもりだったのに、言葉を返してきたのはラブリナさんだった。

 思わずラブリナさんの顔を見ると、ラブリナさんが少し憂いのある微笑み返した。

 

「ラブリナさんは気にし過ぎだよ。私はラブリナさんだってねねちゃんと同じだと思う。振るう力が黒晶石のものでも、ちゃんと皆の助けになることをしているんだから。力も想いも、どんなものかじゃなくて、どう使うかだと思うよ」

 

「ありがとうございます、こりす。貴方の煌めきは私の迷いをいつも払ってくれます。ねねにとってのハンナのように、私も貴方に道を正して貰っているのかもしれませんね」

「わ、私はそんなに大したものじゃないよ! 私だって、いつもセレナちゃんが諭してくれるから……あっ!」

 

 謙遜しながらそう言って、目の前のラブリナさんがセレナちゃんでもあることを思い出してしまう。

 恥ずかしい! いつも感謝してるのは確かだけど、こんなタイミングで口にする予定はなかった。うっかり過ぎる!

 案の定、ラブリナさんから戻ったセレナちゃんは、今にも緩みそうな表情をなんとか自制しようとぷるぷるしていた。あれ、迂闊に射程圏内に入ると変なスイッチが入っちゃうパターンだ!

 

「い、急ごう、セレナちゃん! 皆を待たせちゃいけないもんね!」

 

 私は照れ隠しで赤いフードを被ると、セレナちゃんを刺激しないよう、さっさかと速足で拠点の外に出ていこうとする。

 そんな私の後ろ、ついに辛抱堪らなくなったセレナちゃんがにゅっと手を伸ばし、私を後ろから抱きしめて揉みくちゃにした。

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