魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第14話 波涛の魔王2

 それから私達は何事もなく砂海を突破し、まだ階層算出が済んでいない未整備エリア"魔力の海"との境界前に到着した。

 ねねちゃんが片っ端からモンスターを切り刻んでいくので、私達はコンテナを運んで歩くだけでよかった。高レベルの人にグイグイ引っ張ってもらう冒険は、ある意味新鮮な体験だ。

 

「んじゃ、今から未整備エリアに入るから。怪人の発見とか奪われた変身アイテムの奪還を目標にせず、物資を届けるぐらいの目標でいくこと。こりっちゃん、いいね?」

 

 真っ赤な髪についた砂を払いながら、配信準備をしているリオちゃんが私に釘を刺す。

 その横には私達が砂海拠点で準備したコンテナが置かれている。コンテナの中には拠点の作業員さん達に届ける食料だけでなく、ライブカメラの杭とか道中でエリア整備するための物資なども入っている。

 

 ダンジョン各所に設置されているライブカメラは、映像が見られるだけでなくビーコン機能も内蔵されている。冒険者が使う地図アプリなどはそれを利用して現在位置を割り出しているらしい。

 つまり、未整備エリア探索はライブカメラを設置しながら観測可能領域を増やし、その先に拠点を作り上げてを繰り返して進んでいくのだ。

 

「わ、わかってるよ! 私だって好き好んで無茶してる訳じゃないし!」

 

 一人での冒険ならいざ知らず、私だって体調不安のセレナちゃんに無理をさせたくはない。

 怪人を倒してスペアキーを取り戻すのが大きな目標ではあるけれど、それでセレナちゃんに負担をかけてしまったら本末転倒だ。

 

「おねねさんが居るからって、ウチが仕切ってる限り絶対に無茶はさせんから。こりっちゃんが無茶しそうだったら、そのデカ乳後ろから鷲掴みにして強制撤退するからそのつもりでいなー」

「リオちゃん! どうしてさっきから無茶するのは私前提なのぉ!?」

 

 さっきから、ピンポイントで私ばっかり狙い撃ちされている! 不服を申し立てる!

 攻める時は一番弱い所からとか、そう言う奴なの!? 確かに配信前から緊張してるけど!

 

「いやいや。だって、いつも一番無茶するのこりっちゃんじゃん」

「しかも、コンテナのハンドルを持ってやる気満々なのです!」

 

 先端にライブカメラの付いた杭を振り回しながら、ミコトちゃんがリオちゃんに同意する。

 いくら魔力の海が未整備エリアと言っても、流石に砂海境界付近にはライブカメラが設置されている。ライブカメラ起動をやってみたいんだろうけど、ちょっと気が早い。

 

「こりすちゃん一人でコンテナを運ぶ必要はないんですからね? いくら私の体調に不安があると言っても、コンテナ運搬の手伝いぐらいはできますよ」

「ううん、セレナちゃん気にしないで。今回はねねちゃんに戦闘を任せられるからサポートに専念できるし……むしろコンテナ運搬役なら、公式配信にあんまり映らなくていいかなって」

 

 そう説明しながら、配信準備をしているリオちゃんとねねちゃんの姿をチラリと一瞥する。

 正直な所、コンテナ役を引き受けているのは、あんまり配信に映りたくないって打算の方が大きい。

 なにしろ、政府公認魔法少女であるセブンカラーズはアイドル扱い。その中でもねねちゃんは国連の大規模討伐とかにも引っ張りだこの有名人、しかも痴女。

 そんなねねちゃんが元セブカラのリオちゃんと未整備エリアの攻略配信をするんだから、当然注目度は高い。と勝手に思ってる。

 

「なるほど、確かにそうですね。比較的注目度の高い階層でもありますし、視聴者数はいつもの配信よりも多いはずです。こりすちゃんが目立ちたくないのなら、コンテナ役の方がいいかもしれません」

「普段の配信ですら戦々恐々なのに、今日は一瞬たりとも気が抜けないよ。迂闊な行動一つ、言動一つがネットの海に刻み込まれて人生終了のカウントダウンになるんだから!」

「大袈裟なんですから。変に心配し過ぎて、挙動不審になる方が余程怪しいと思いますよ」

 

 考えすぎだと苦笑するセレナちゃん。甘い、警戒はしてもし過ぎることはない。

 特に私はエリュシオンの正体、限りなく目立ちたくない身の上なのだ。有名人のご相伴に預かって悪目立ちするのは絶対に避けたい。

 

「んじゃ皆の衆、魔力の海に入ったらそのまま配信しながら拠点目指して進むから、しっかり事前準備しとくんよ」

「わかったのです!」

「おねねさんも了解でございますよー」

 

 引率の先生みたいにリオちゃんが声をかけ、はいっとミコトちゃんとねねちゃんが手をあげる。

 

「いやいや、おねねさんは引率役になって貰わないとウチが困んだけど」

「おねねさんが引率したら迷走確定でございますねぇ」

「開き直んな」

 

 眉を吊り上げたリオちゃんが、ねねちゃんの背中を押して次元の裂け目に押し込み、自分も次元の裂け目を越えていく。

 それに続いて、私もコンテナを引っ張って次元の裂け目を越えた。

 

 砂海と魔力の海を隔てる次元の裂け目を越えた先、そこはまたも砂の地面。

 ただし、砂漠ほどではないけれど暑かった砂海とは打って変わって、少し肌寒い空気が周囲に満ちている。

 届く光の弱さを不思議に思って周囲を見回せば、空気全体がどことなく青みがかっていた。生えている草も昆布や海藻みたいで、まるで海の底に居るようだ。

 

「おっおおー! まるで海の中に居るみたいなのです!」

 

 好奇心に目を輝かせ、興奮した様子で周囲を見回すミコトちゃん。

 勝手に浮かぶ魔石スマホを持っているはずなのに、ミコトちゃんはライブカメラの杭を自撮り棒代わりにして、スマホをブィンブィン振り回しながら大興奮……危ない!

 

「風景が青みがかっているのは、特殊な魔力の流れが光を屈折させているからだそうですよ」

「そうなんだ。流石ダンジョン、色々な場所があるんだねぇ」

 

 さりげなくコンテナを押してくれているセレナちゃんの説明を聞きながら、私はちらりとスマホの通信状態を確認する。

 魔石スマホのアンテナはしっかり立っていて、地上とも通信可能。魔力異常地帯とはまた少し違う感じらしい。

 

「さーて、おねねさんと一緒は気が乗らんけど、政府案件だし配信やりますか」

 

 言って、リオちゃんは浮かべていたスマホを手繰り寄せて手で持つと、ねねちゃんと顔を寄せ合わせながら配信を始めるのだった。

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