魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第14話 波涛の魔王3

「はいはーい、セブカラチャンネルでございまーす。今回はリオのパーティと一緒に未整備エリアを大行進でございますよー」

「ってワケで今回は政府の無茶振りでコラボ案件でーす……はぁ、おねねさんとのコラボ回とかマジで鬱い」

 

 スマホに向けて営業スマイルをする二人。

 でもそれも束の間、視聴者さんへのご挨拶が済むと、リオちゃんはいつも以上に気怠そうな顔になってしまった。

 

 "お、攻略配信が始まった"

 "あれ、リオちゃん秒で嫌そうな顔してんじゃん。別におねねさんと仲悪くなかったよね?"

 "それは仕方ない、リオちゃんはおねねさんとのコラボ回でいい思い出がないんだ"

 

「リオちゃん、冒険前から嫌がってたけど、ねねちゃんが居ると何か問題でもあるの?」

 

 私は最後尾でコンテナを運びながら、なんだか因縁の対決を見届ける感じなコメント欄を見て小首を傾げる。

 ここまでの道中を見る限り、別にリオちゃんとねねちゃんの仲は悪くない。むしろ仲がいい。

 じゃあ、リオちゃんはどうして嫌そうなんだろう。ねねちゃんはセブンカラーズの一員だけあって美少女だし、配信受けもいいはず。しかも、強いし……。

 

「ででーん。正解はおねねさんの恰好が気に入らないから、だそうでございますよ」

 

 襲ってきたカジキマグロみたいなモンスターをくるっと回って三枚おろしにしつつ、ねねちゃんが水着のズレを直しながら言う。

 

「ほら、おねねさんの私服、マイクロビキニかよって感じじゃん? 激しく戦闘すると見えかねないんよ」

「見えるって、なにが?」

「おねねさん薄着でございますからね。こう、激しく戦闘するとものの弾みで見えちゃうんでございますよ、乳首」

 

 言って、ねねちゃんが白ビキニの紐を引っ張って、胸とビキニの間に空間を作って見せる。

 それを見たリオちゃんが、ねねちゃんの手を高速でひっぱたいた。

 

「おねねさん、言ってる傍からやるのはやめい! ダメと言われたらやるクソガキか! 開始三分でウチをアカバン寸前に追い込まないで欲しいんだけど!?」

 

 "AI判定さんが早速アップを始めました"

 "これは絶望的な戦いだぞ。リオちゃん、おねねさんとのコラボ回でのアカウント凍結率100%だからな"

 "酷い凍結率だろ。政府公式配信なんだぜ、これ"

 

「と、まあ、ダンつべは乳首禁止らしいのでございます。乳頭巾ちゃんさんも気をつけるんでございますよ」

「それ気にする必要あるの、多分ねねちゃんだけだよぉ!?」

 

 私は普通の制服だし! 乳首見える頃には多分臓物まで一緒に見えてるし!

 

「そうそう、今回は国の公式配信でございますからね、スパチャはアラ500レス1000でお願いするでございます。この近辺、怪人の目撃報告もあるのでご協力お願いするでございましょ」

 

 全く懲りず、悪びれず、ねねちゃんはマイペースに配信しつつ、近くで見かけたモンスターを片っ端から容赦なく斬り裂いていく。

 普段通り実にフリーダム、どう見ても制御不能。リオちゃんが嫌がるのもよくわかる。

 

「ねえ、セレナちゃん、ねねちゃんが唱えてた謎の呪文はなに?」

「強いパーティが危ないエリアや未知エリアで生配信する時に使う用語で、アラート¥500、レスキュー¥1000の略なのです!」

 

 セレナちゃんに尋ねた私に、横から割って入ったミコトちゃんがむっふと胸を張って教えてくれる。

 ミコトちゃんって基本的には世間から隔絶された姫巫女なのに、配信は私よりよく見てるよね。

 もしかして、ダンジョン配信を見てエリュシオンが居ないかチェックしているんだろうか。

 

「スーパーチャットだと他のコメントより表示時間が伸びますからね。近くに危険そうな何かがあれば五百円、援護が必要な冒険者などが居たら千円で教えてください、って実利を重視した冒険配信文化なんだそうです」

「この時は普通のスパチャはマナー違反になるのです! やるなら最後にするのです!」

 

 情報教えて貰った上にお金まで貰っちゃうなんて欲張りさんじゃないの、ってあんまり配信見ない私は思うけど、そこはダンジョン情報や助け合いで皆納得済みってことなんだろうか。

 

 "なんか後ろで首輪巫女ちゃんが解説してるけど、コラボ回のアカバン率100%だからな。実はそんな機会が来たことはないんだ"

 "ぴゃっ、ひっどぉい……"

 

「へぇー、そうなんだ。ミコトちゃんって意外と配信に詳しいよね。よく見てるの?」

「見てると言うか、布教に使っているのです」

「えっ、布教……?」

 

 意外な返答に驚く私。

 ミコトちゃんがやってるとなると、どうしても好きなコンテンツを皆に広める方じゃなく、暗黒教団の教えを皆に広める方をイメージしてしまう。

 

「人生相談やお喋りしながら皆に教えを説いているのです! 顔出しで布教すると何故かトラブルを引き寄せるから、最近はVtuberやっているのです!」

「暗黒教団系Vtuber!?」

 

 本当にそうだった! あまりに有害なコンテンツ、邪悪な存在過ぎる! 

 アカウント凍結されるべきは乳首ではなくこっちでは!?

 

「見てくれる人も沢山いて、お布施もいっぱい貰えるのです! 便利なのです!」

「それはそうだろうけどぉ!?」

 

 自慢げに語るミコトちゃんに私はドン引きしていた。

 暗黒教団の姫巫女であるミコトちゃんは、喋るだけで他人を洗脳できてしまう天性のカリスマを持っている。ネット越しだろうとそれは健在で、登録者数も爆増間違いなしだろう。

 

 ただし、それは視聴者ではなく信者で、更に言えば配信じゃなくて洗脳放送だ。

 こんな危険人物が堂々とネットで配信できちゃうなんて、現代司法の限界を感じざるを得ない。

 

「こほん! リオさんが嫌々ながらも配信しているのは、階層算出されていない階層で救助の受け皿になるためなんです。ねねさんの戦闘力の高さは知られていますし、何よりセブンカラーズはダンジョン庁所属の公務員扱い、同じ冒険者に助けを求めるより心理的ハードルは低いですから」

 

 ミコトちゃんとの会話に慄いている私の背中をこっそり押して、セレナちゃんが会話の軌道修正をしてくれる。

 うっかりしてた。視聴者さん達の前で迂闊なことを沢山口走る所だった! こんな会話、お外でしていいものじゃない。全てなかったことにして押し流さないと!

 

「そ、そうだよね! 同じ冒険者だと申し訳ないって気持ちが先に来て、限界ギリギリまでは自分で頑張ろうって無理しちゃうかも!」

「乳頭巾ちゃんさん、それは悪癖でございますよ。限界ギリギリは次に支障が出てしまうでございますからね。退くも進むも自分で決められるよう、早めの救援要請が一番でございますよ」

 

 半魚人モンスターと交戦しているねねちゃんが、二本の刀でチョキンと半魚人の首を切り落としながら言う。

 

「うん、その通りだね。わかった」

 

 正論だ。私は後ろから襲って来てる半魚人の首を撥ね飛ばしつつ、ねねちゃんに同意する。

 

 "え、待って。今前向いたまま背面からの攻撃受け流して、更にそのままノールックで敵の首切り落とした!?"

 "さてはリオちゃんパの配信は初めてだな? 乳頭巾ちゃん、赤頭巾の皮を被った狼だぞ。掠り傷一つ受けたことないし、攻撃が全部敵の弱点に吸い込まれてく"

 "そんなバケモノが野に潜んでたのか……"

 

「んで、おねねさん、何回か交戦した感じモンスターの手応えどうよ? こりっちゃんが即死させてるから、そこまでのレベルじゃないとは思うけど」

「そうでございますねぇ。ウロコがチョイ硬でございましたし、おねねさん的にはレベル12~15辺りでないかと思うでございますよ」

「類似種のグレートサハギンがレベル13相当モンスターですからね、妥当なラインだと思います。銛を持っていた分レベルが上昇していると考えて、14程度ではないでしょうか」

「ほーん、じゃあ体感は十四層辺りね。砂海の三層と十層以上レベル差があるとなると、かなり早いうちから救援要請が来そうだね」

 

 そんなリオちゃんの読みはすぐに当たった。

 

 "襲われてます、助けてください! ¥1000"

 

 そんなコメントと共に、救援先の座標が転送されてきたのだ。

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