魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

121 / 190
第14話 波涛の魔王4

「ほーら、早速おいでなさった! ウチはおねねさんと先行するから、こりっちゃん達はコンテナ運びながらゆっくり来な!」

 

 救援要請のコメントを確認するや否や、リオちゃんはねねちゃんと一緒に駆け飛んでいく。

 

「こりす、運ぶの手伝うのです!」

「あ、ありがとう、ミコトちゃん!」

 

 後を追う私達は三人がかりでソリのついたコンテナを引っ張り、先行する二人を追いかける。

 大きな岩をぐるりと回ると視界が開け、冒険者パーティとモンスターの群れが戦っている姿が見えた。

 指定された座標よりもかなり手前だけど、理由を考えるのは後回しだ。まずは助けないと!

 

「リオちゃーん、こっちです! 助けてくださーい!」

 

 半魚人モンスターに襲われていた金色ビキニの三人パーティが、リオちゃんとねねちゃんの姿を発見して必死に存在をアピールする。

 

「おねねさん、あそこ! おねねさん族の子達が襲われている!」

「なんでございましょ、その一味は」

 

 "全員金ビキニ、確かにねねちゃん族だ"

 "クッソ、リオちゃんのひっでぇネーミングなのに納得しちまった"

 

 言うが早いか、先を行くねねちゃんが加速し、通り様に半魚人モンスターをさっくり三枚おろしにしてしまう。

 変身前でもレベル30を超えるねねちゃんの前には、推定十四層のモンスター如き相手にならないのだ。

 

「あっけなかったでございますねぇ」

「むむむー。この三人、どこかで見たことがある気がするのです」

 

 ビキニトリオの傷を治すために駆けよったミコトちゃんが、既視感のある光景に小首を傾げる。

 

「湖畔エリアではお世話になりました! おかげさまで登録者数も微妙に増えましたよ!」

「あー、誰かと思えばいつぞやのビキニトリオじゃん。元気そうでなによりなにより」

 

 ぐっとドヤ顔でサムズアップする三人組に、リオちゃんが緩い感じで挨拶を返す。

 

「リオちゃん、ミコトちゃん、油断しないで。この子達を襲ってたのは、あの半魚人モンスターじゃないはずだから、だよね?」

 

 私の言葉に、ビキニトリオが真剣な顔に戻って頷く。

 予想通りだ。ここは境界からある程度進んだ場所、ここまでの道中で一度も敵に遭わなかったとは考えにくい。つまり、この子達でも普通のモンスターは倒せるはず。

 それに、送られてきていた座標はここより大分奥だった。多分、本当の脅威から逃げてくる途中でモンスターとかち合ったんだろう。

 

「はい! その通りです! 実はモンスターだけじゃなくて……」

「わかったから跳んで避けて!」

 

 ビキニトリオが言い終わるよりも早く、強烈な殺気を感じた私はミコトちゃんの手を引っ張りそう叫ぶ。

 直後、私達の目の前に水の弾丸が次々と着弾、地面の砂を大きく巻き上げた。この水の弾丸には見覚えがある、これは怪人の攻撃だ。

 

「っ!? なに、なんなん!?」

「この水撃には見覚えがあるでございますよ。怪人、ライオネルフィッシュさんでございますね」

 

 ビキニトリオを守るように抜刀したねねちゃんが、巻き上がった砂の先を見据える。

 そこに居たのは予想通りの怪人、ライオン頭に魚人の体を持つ怪人ライオネルフィッシュだ。

 

 "うわぁ、出た。予想通り出ましたよ"

 "リオちゃん相変わらず引き強いな。またトラブル引き当ててるよ……"

 "いや、今回は織り込み済みだろ。おねねさん連れてるんだからさ"

 

「不確定要素を排除しておこうと来てみれば新手が居たか……資料によれば、あれが国家公認魔法少女の黒部ねねか。ふぅむ、これは不運と言うべきか、僥倖と言うべきか、実に悩ましい」

 

 タブレットを脇に浮かべたライオネルフィッシュが、ねねちゃんへと値踏みするような視線を向ける。

 私はその姿に違和感を覚える。確かに姿はライオネルフィッシュそのもの、でも雰囲気や何かが違う。あれは本当にライオネルフィッシュなんだろうか。

 

「こりす、気をつけるのです! あの怪人、エリュシオン様の動画で見た時よりも邪な気配を感じるのです!」

 

 訝しむ私に、ミコトちゃんが注意を促してくれる。どうやらミコトちゃんも同意見らしい。

 私は確証を得るため、ミコトちゃんを引っ張ってさりげなくセレナちゃんの横に立つ。

 

「ラブリナさん、あの怪人どこかおかしいよね」

「はい、先日の集団戦のあれ等と同じです。後付けの黒晶石によって別の何かが混ざっています」

 

 小声で尋ねる私の意見を、ラブリナさんが肯定する。

 

「やっぱり……! リオちゃん、ねねちゃん、気をつけて! あれの中身、ライオネルフィッシュじゃないから!」

「ほう、わかるのかね。人間は肉の体で個体を識別すると聞いていたが、それ以外にも識別方法を持っているらしい。今後の研究材料が増えたよ」

 

 ライオネルフィッシュは脇に浮かべたタブレットを操作すると、まるで実験動物を見るような目で私達を見回す。

 

「如何にも。私はライオネルフィッシュにあらず、黒薔薇の鍵守ワイズとでも名乗っておこうか」

 

 "怪人が体乗っ取られてんの!?"

 "怪人って言ってもモンスター化してるからな"

 "むしろ、モンスターの体乗っ取れる方が怖くない!? こっちこそ研究材料にしたいんだけど"

 

 ワイズの名乗りに配信のコメント欄も慌ただしくなっていく。

 

「出た出た、黒薔薇の鍵守! おねねさん、まずは一発斬り込める? 中身違うなら強さも違うでしょ、確かめんと!」

「合点承知の助さんでございましょ」

 

 リオちゃんが配信中のスマホをワイズの方へ向け、ねねちゃんがワイズへと斬りかかる。

 

「あっ! そうだった! リオちゃん配信中ですよね! 一度配信は止めてください!」

 

 その様子を見て何かを思い出したビキニトリオが、慌ててリオちゃんに制止をかける。

 ねねちゃんの斬り込みじゃなくて、リオちゃんの配信の方を止めたいの? どういうこと!?

 

「なになに、どういう意味なん!?」

 

 リオちゃんが小首を傾げる前、ワイズへ向けたねねちゃんの斬撃を黒い巨大な腕が遮った。

 

「おおっと!? 硬いでございますねっ!?」

 

 刀を弾かれたねねちゃんが、現れた巨大な腕を蹴って間合いを取り直す。

 

「黒部ねね、君が高性能であることは把握済みだ。それでも私が敗北する可能性は低いが、万が一のことを考えれば自ら戦う気にはならんね」

 

 そう言うワイズの後ろ、攻撃を受け止めたモンスターの正体が明らかになる。

 岩場の影から姿を現したそれは、全身黒晶石で作られたゴーレムのようなモンスター。

 その上半身には全裸の女の人が埋め込まれている。全裸だから当然乳首とかも丸出しだ。

 ビキニトリオがリオちゃんを止めた意味、今理解した。あのモンスター、映すとアカウント凍結される奴!

 

「リオちゃん! アカウント凍結!」

「へ、あ……! はあああぁ!? これ、そう言うことなん!?」

 

 槍を構えて身構えていたリオちゃんが、自分のスマホを見て素っ頓狂な声をあげる。

 リオちゃんのスマホには、黒背景で『利用規約に違反したため、アカウントが凍結されました』の文字が表示されていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。