魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第16話 大海嘯5

「ミコっちゃん! ってことは……」

「うむ、待たせたな。約束通り援軍に来たぞ」

 

 リオの横を金髪幼女の怪人クロノシアが通り抜け、

 

「余達が怪人退治を受け持つ! お前達はその隙にスライムを削り取れ! ミレイ!」

「ほいきたにゃ!」

 

 それに続いて登場した紫紺の髪の猫耳怪人、ミレイが杖を構える。

 ミレイは風の魔法を発動し、スライムから生みだされる怪人を次々と斬り裂いていく。

 それを阻止しようと殺到する怪人の群れへとクロノシアが飛び込み、怪人達の動きを足止めする。

 

 "うは! 突然現れた幼女が怪人の群れに飛び込んだ!?"

 "あの服ダンジョン庁の制服じゃん。援軍が到着したのか!"

 

「リオ! お前、何をボケっとしてるんだよ。お前が遊んでられるほど楽なレイドじゃないだろ、これは!」

 

 それに続いて颯爽と登場したしたルミカが、クリーム色の髪を風に靡かせながら言う。

 

「ルミカ!」

「待たせたな。僕様が来たからにはもう安心だ」

「いや、そうじゃなくてさ。転移装置設置したんだよね? 防衛せずに全員前に出てきてどうすんの」

 

 ドヤ顔のルミカを見て、そうじゃないと小さく手を横に振るリオ。

 

「安心しろ。お前等、"魔力の海"拠点でダン特助けたんだってな。連中が志願して防衛にあたってくれてる」

 

 言いながら、ルミカが顔を後ろに向ける。

 

「桃園君、こっちは俺達に任せてくれ!」

「借りは早く返さないと気分が悪いからな!」

 

 社の前、"魔力の海"拠点で会ったダン特隊員達が、後方支援は任せろとサムズアップしていた。

 

「はっ。流石ダン特、頼りになんじゃん。後……ルミカ、国家戦略級魔法少女の実力あてにしてるよ」

「ふん。素直に頼れるなんて、お前も少しは成長したじゃないか。ほら、使え」

 

 照れくさそうに言うリオに、ルミカが自らのペンダントを投げ渡す。

 

「って、いやいや……何してんの。ウチ、変身してないルミカは全くあてにしてないんだけど。今褒めたの返しな」

「大丈夫です、リオ。ルミカは魔王が変じた白い輝石を持っています。あれはそこに在るだけで黒晶石の侵食を押し返す存在です」

 

 ラブリナが説明する通り、ルミカが駆けつけてからスライムの増殖速度は目に見えて衰えている。

 どうやら、スライムの増殖は黒晶石の侵食と連動しているらしい。

 

「そもそもだ、どうして僕様が白い輝石を変身用ペンダントにしてると思ってるんだ」

「いや……それで変身できんの? ルミカ、結局いつもの支給用ペンダント使ってんじゃん」

「それはこいつのご機嫌次第だ。このペンダントは意志があるみたいに気分屋だからな」

「ならばできるでしょう。魔王だったルミカは、形こそ歪んでいても人々を守るという想いのために力を振るっていたのですから」

 

 魔王のペンダントを手で弄びながら言うルミカに、ラブリナがにこりと微笑む。

 ルミカはその言葉に頷くと、

 

「ふん、当然だろ。そうじゃなきゃ、僕様と同じ名前なんて名乗らせてやるもんか!」

 

 魔王の核を持つ変身ペンダントを構える。

 

「さあ力を貸せ、もう一人のボクっ! エクリプスチェンバー、イグニッションッ!」

 

 ペンダントからあふれる黒と白の魔力が螺旋の奔流となり、ルミカの体を包み込む。

 通常の正規変身とは違う淫靡な黒いドレスの上に白い防具を纏い、ルミカはモノトーンの魔法少女へと変身する。

 

 "うわぁ、ここで新フォーム!?"

 "前回ルミカちゃん取り込んだ怪人の衣装に似てるな。あれか、その力を得た的な奴なのか!?"

 "えっ、これ光と闇が合わさって最強的な奴なの!?"

 

「僕様こそは魔王にして魔法少女! さあラブリナ、僕様にここまでさせたんだ。お前も魔王らしい働きって奴を見せてみろ!」

 

 変身を終えたルミカが黒いランスを構えてスライムへと猛突進し、

 

「はい、任せてください。セレナや皆と共に在る魔王の欠片として、貴方に劣らぬ働きを約束しましょう」

 

 ラブリナは黒晶石の大剣を更に巨大化させ、ルミカの後に続く。

 

「まずは手始め、ぶち貫く! 一撃突破、螺旋奔流イクリプスインペールッ!」

 

 螺旋状の魔力を纏ったルミカが、ランスでスライムを捩じり壊しながら突撃し、

 

「なるほど。ルミカ、貴方も黒晶石の力を他者の為に使えるのですね」

 

 それによって跳ね上がったスライムの飛沫を、ラブリナが大剣を振るって次々と叩き潰していく。

 

 "新フォームルミカちゃん、つっよ……"

 "これ、単騎でレイドパーティ級の戦闘力があるのでは?"

 

 その圧倒的戦闘力を見て、配信のコメント欄には感嘆のコメントが濁流のように流れていく。

 

「ルミカの奴やるじゃん。あんなの見せられちゃ、ウチもサボってられんね! マナチェンバー、イグニッション!」

 

 その八面六臂の活躍を見たリオは、自分も負けていられないと魔法少女へ変身。怪人やモンスター達を次々とねじ伏せていく。

 この瞬間、完全に形勢は逆転した。

 

『ぐぐぅ! 久方ぶりに裏界の外に出られたと思えば!』

 

 その様子を見て、形勢が不利と判断した宿り木怪人達は、戦場からこっそり逃走しようと試みるが、

 

「おおっと、どこに行くおつもりでございましょ? おねねさん、放置されては寂しいでございますよ」

「ここまでして逃げるなんてウチ等が許さないっての。好き放題やってんだからさ、相応の報いは受けなー」

 

 その前にねねと変身したリオが立ち塞がり、逃げ惑う怪人達を各個撃破していく。

 だが、その間にもスライムからは怪人達が次々と出現し、出現と同時に蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。

 

「なんだ、こいつら! まともに戦う気がないぞ!?」

 

 スライムに大穴を空けながら突撃し続けるルミカが、自分の横を迷わず素通りしていく怪人の姿を思わず二度見する。

 

「当然なのです! クライネの話だと、宿り木達は故郷と体を捨て、黒晶石として生き永らえることを望んだ輩なのです! そんな連中の仲間は、当然生き汚いに決まっているのです!」

「ふむ、己の保身以外考えていないとは見下げた連中だな」

「ま、あの隠れ家を見れば納得の振る舞いだにゃ」

 

 クロノシアが逃げる怪人の行く手を遮り、ミレイが風魔法でクロノシア諸共怪人達を一網打尽にする。

 

「クロちゃん達、絶対に見逃がしちゃいかんよ。この怪人達は平気で人様を実験動物扱いする輩だって、ウチ等はこの目で見て来てるからさ!」

「同感なのです! 私も怪人を逃がさない手伝い、するのです!」

「えっ、ちょい待ち! ミコっちゃんは大人しく……」

 

 慌てて制止しようとするリオの前、皆の奮戦に触発されたミコトは戦闘の余波で折れた倒木の前に立つと、

 

「癒しの権能にはこういう使い方もあるのです!」

 

 倒木に対して癒しの権能を使う。

 瞬く間に倒木の裂け目が塞がり、倒木を食い破るように肉々しいピンクの触手が無数に生え出した。

 

 "あああ、怖いよーっ!?"

 "癒しisどこ"

 "元が木なんだから、生やすにしても枝とか根とかあるんじゃないのぉ?"

 "邪悪なネクロマンサーだってもう少し素材を選ぶぞ……"

 

「さあ、絡めとるのです!」

 

 ミコトがピンク色の触手塊となった倒木の幹を叩くと、倒木がぶるぶると震えて回転しながら動き出し、

 

『やめろぉ! 俺はお前達を支配するものなんだぞ!』

『戦う気のない我々にこの仕打ち! 未開文明の野蛮人どもめぇ!』

 

 無数の触手をうごめかせながら怪人を次々と触手の隙間に取り込んでいく。

 

「リオ、今のうちに倒木ごと倒すのです!」

「言われんでもやるよー。その倒木って名前のクリーチャー、外に出しちゃいかん奴じゃん」

 

 呆れ顔のリオは、逃げる怪人達を飲み込んだ倒木が"魔力の海"へ漏れ出さぬよう、炎をまとった槍を振り下ろして怪人諸共に焼き払う。

 

「ルミカ! ミコっちゃんがこれ以上変な物体作る前に近くの怪人処理して!」

「なんだそりゃ!? お前のパーティは変な奴が揃ってるなぁ!」

 

 スライムを貫通したルミカは、勢いそのままに草で覆われたビルの壁を駆け上り、上空から怪人達を攻撃しようとランスを構える。

 だがそれよりも早く、体表から怪人を生み出したスライムが、逃げようとする怪人を即座に捕まえ、再びスライムの体の中に呑み込んでしまった。

 

「ラブリナー! スライムが自分の足を食べるタコのような動きを始めたのです!」

「はい。こちらでも確認しています、ミコト。ですがこのタイミング、怪人を捕食して力を蓄える暇などないはずですが……」

 

 両手をあげて皆に警戒を促すミコトを守りながら、ラブリナが顎に手を当ててスライムの奇行を訝しむ。

 スライムが突然動きを変え始めた理由は、程なくしてわかった。

 

『おまえらあああああ! どうして逃げてるの! お前達みたいな愚鈍な連中は体を持つ権利すらないの! アンジーの栄養になるがいいのおぉ!』

 

 スライムが波打つように全身を震わせながら、憤怒の咆哮をあげる。

 怪人も、ラブリナ達も、敵味方問わず全てを自らの力として取り込もうとするスライム。その正体はアンジェラだった。

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