魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第17話 【魔法少女の帰還】8

 天空樹に突入した私は、ラブリナさんを探して商業施設エリアを駆け抜ける。

 内部ではまだモンスターや怪人と戦っている人達が居て、戦闘力のないスタッフさん達をなんとか外に逃がそうと尽力していた。

 私は冒険者さん達が食い止めているモンスターを通り様に撃破し、奥へ奥へと急ぐ。

 

 ミコトちゃんの家から盗られた宝珠は、展望回廊のオブジェに取り付けられていたはず。だとすれば、この商業施設エリアを荒らしているモンスターの出所は、展望回廊直通エレベーターである可能性が高い。

 そう考えて通路を急ぐ私の前、壁にもたれかかった白髪のおじさんが、トロルのようなモンスターに襲われていた。

 

「そこの人、大丈夫!?」

 

 私はさっくりとトロルを倒すと、急ぐ足を止めておじさんが無事か確認する。

 急ぎたい気持ちはあるけれど、流石に動けない人は放置できない。

 

「ありがとう、少し休めば動けるよ。これでも若い頃は体を鍛えていてね。体力には自信があったんだが、寄る年波には勝てないようだ……」

 

 そう言って、おじさんがよろよろと立ち上がる。

 失礼ながら、その若い頃は私の年齢二回分ぐらい昔の話な気がするし、これはそう言うレベルの話じゃない。あまり無茶はなさらないで欲しい。

 

「ここは危ないから外へ逃げて。来た道のモンスターは全部倒してあるから」

「そうしたいのは山々なんだが、人を探しているんだ……」

 

 私がそう言うと、おじさんは未練がましい顔で中央エリアへ続く通路を見つめる。

 もしかして、連れの人とはぐれちゃったんだろうか。気持ちはわかるけれど、今の天空樹は一般人が一人で歩けるような場所じゃない。どれだけ頑張っても、要救助者が一人増えるだけだ。

 

「気持ちはわかるけど、他の人に助けられて脱出している可能性もあるから」

「そんな話ならよかったのだがね……。いや……失礼ながら、もしや君が噂に聞く魔法少女エリュシオンかね?」

 

 おじさんは何故か言葉を濁していたけれど、私がエリュシオンだと気付いたらしく、不意にそう尋ねてくる。

 

「え、ええと、そうですけど」

 

 ラブリナさん本体もエリュシオンだったらしいけど、世間一般で言うエリュシオンは私のことだからこの返答でいいだろう。

 

「やはりそうか。娘が大事にしているポスターに似ているから、そうではないかと思ったんだ。なら君に任せた方がいい結果になりそうだ。私は白鳥というしがない企業家でね、もしかしたら君の力になれるかもしれない。力が必要になったら是非連絡してくれたまえ」

 

 白鳥さんというらしいおじさんは、私に半ば無理やり名刺を手渡すと、お辞儀をして去っていく。

 えっえっ、なんなのこれ、どういう感じ? 話についていけない。

 今から戦いに行くんだけど、困る。ポケットもないし、貰った名刺どうしよう。私は悩んだあげく、名刺を胸の谷間に押し込んで奥へと急ぐことにする。

 内心でフクロウさんみたいに首をぐるんぐるん捻り続けながら、中央エリアへと急ぐ私の前、今度は見知った紅い髪の女の子がやってくる。

 

「エリュシオン!」

 

 いつもとは違う槍を手にしたリオちゃんが、私に気が付いて真剣な顔のまま駆け寄ってくる。

 よかった。リオちゃんは無事だ。

 

「リオ、中央の方はどうなってるの?」

「エレベーター付近でラブさんが戦ってる。相手はファンヌって魔王の体を乗っ取った別のラブさん」

 

 ええっと情けない声をあげそうになる私、またもやの急展開だ。

 魔王が居るなんて聞いてない。でも何度も黒晶石の魔王に会ってきたリオちゃんが言うんだから、見間違いとかじゃないだろう。

 

「なるほど、急いだ方がよさそうだね」

「悪いけどそうしたげて。もう一人のラブさん、見るからにヤバそうな相手だった」

「わかった、任せて。リオは今のうちに逃げて、クライネが変身してダン特と一緒に戦ってるから」

「毎回毎回悪いね。ウチもエリュシオンみたいに強けりゃ、最後まで残って踏ん張れたんだけどさ」

「逃げ遅れた人達が脱出できたのは、私じゃなくて君が尽力した結果だよ」

「はっ。相変わらずおだててくれるじゃん、褒めて育てる先生かよ。ウチ的にはもうちょいやりたかったけど、流石にこれ以上は足引っ張るだろうから先に離脱しとく」

 

 リオちゃんはボロボロになった槍の矛先を指でつつくと、私に片手をあげて撤退していく。

 と、思ったら急にピタリと足を止めて振り返った。

 

「どうしたの、リオ?」

「いや、大事なこと聞き忘れてた。……もしさ、自分が昔助けた誰かが悪いことしてたら、エリュシオンならどうする?」

 

 突然変なことを聞いてくるリオちゃん。

 唐突に何だろうって思うけれど、その顔は真剣だった。これ、適当に回答しちゃダメな奴だ。

 

「助けるか、説得するか、倒すか、どう対応するかはその状況次第だけれど、絶対に他人任せにはしない。それが魔法少女として人助けをした責任だから」

「はっ、責任ね……。ありがと、なんて言うか期待通りの答えだった」

 

 リオちゃんは私の回答に満足したらしく、少し晴れやかな顔でお礼を言って駆け去っていく。

 なにか思う所があったのかなって首を傾げていると、奥の方から激しい衝突音が聞こえてきた。

 

「ラブリナさん、苦戦してる。悠長に構えている暇はないね」

 

 私は気を引き締めなおすと、近くにあった案内板を頼りに中央エリアのエレベーターホールへと急ぐ。

 展望回廊直通エレベーターに近づくにつれ、周囲を侵食している黒晶石の結晶が数を増し、緩く弧を描くエレベーターホールは既に一面黒晶石の黒。

 ここが事件の元凶だと確信する私の前、壁一面にこびりつく黒晶石の結晶が、黒く煌めく度にその形を武器に変え、ラブリナさんへと襲い掛かっていた。

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