魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第19話 【魔法少女の再起】3

 眩く輝くペンダントがリオちゃんの衣装を輝かせ、走るリオちゃんの速度が一気に加速する。

 

『な、捨て身だというのですか……!』

「当然、ウチは魔法少女としてやり残したことをしに来ただけだからさっ!」

 

 驚くレギーナに向け、黒い大地を踏みしめたリオちゃんが槍を薙ぐ。

 リオちゃんの表情は苦しそうだけど、振るう槍の鋭さはさっきまでの比じゃない。

 

『ぐっ! ただの魔法少女風情がっ……!』

 

 それでも曲りなりにも相手は魔王、レギーナは辛うじて長剣で槍を受け止め、更に返しの刃でリオちゃんへと振り下ろそうとしてくる。

 

「それはさせません」

 

 でも、横で黒い手と戦っていたラブリナさんが、レギーナの長剣を黒晶石で侵食させて黒い地面へと縫い付けた。

 

『なっ! このっ……!』

 

 レギーナは力ずくで黒晶石を引きちぎり、再度リオちゃんへと振るおうとする。

 けど、それは判断ミスだ。動きの止まったその瞬間を見逃さず、私はレギーナの横を駆けて長剣を根元からへし折った。

 

『小癪なっ!』

「リオちゃん、今だよ!」

 

 得物を失い次の一手に迷うレギーナ。偉そうなことを言っていても、他人の体を奪って借り物で戦っているだけ、体を使いこなせず咄嗟の判断が鈍重極まりない。

 

「任せな! ファンヌの体、返してもらう。諦めてさっさとその体から出ていきな!」

 

 その隙にリオちゃんが体勢を立て直し、迷いなく槍を放つ。

 レギーナは胸を守ろうとしたけれど、リオちゃんの狙いはそこじゃない。

 リオちゃんの槍が真っすぐにファンヌの首筋に刺さったレギーナの黒晶石を貫いた。

 

『がっ、があああああああっ! ありえません! このようなこと、あってはいけないのです……!』

「そうでしょうか? 無理矢理歪ませて作り上げた即席魔王の体を奪い取った貴方と、皆の力を借りて自らの決意を果たすと決めたリオ。私にはその差は歴然に見えましたよ」

 

 ラブリナさんの辛辣な言葉に、レギーナが恨めしい顔つきでラブリナさんを睨みつける。

 

『ふっ、ふふ、くすくすくす、ですが貴方達は勝利できません。何故ならば、人の身では今の楽園の扉を越えることはできないのですから!』

 

 でも、それも僅かな間の出来事。首筋を押さえたレギーナが負け惜しみ残して消え去り、首筋から黒い煙を出しながら呆けた顔のファンヌがぺたんとその場に座り込む。

 クライネの時と違って本体を奪われた訳じゃないから、これで元に戻ったんだろうか。ただ、あの感じだとそんなに残り時間はなさそう……かも?

 

「……ファンヌちゃんの体、まだ消えないみたいだね」

「そだね。ラブさん、ちょっと黒い手の相手頼める? これはウチの魔法少女としてのケジメだからさ」

「はい。言われずとも引き受けますよ」

 

 ラブリナさんに黒い手の相手を任せ、衣装がボロボロになったリオちゃんがファンヌの前に立つ。

 

「わぁー。リオちゃん、今からトドメ? アタシ最期の晴れ舞台、派手にやってね☆」

「ふざけんな」

 

 おどけたファンヌの態度に、リオちゃんがファンヌの額をデコピンする。

 

「いったぁ!」

「改めて聞くけどさ、ファンヌは以前ウチに助けられたんだよね」

「う、うん、そうだよぉ。街で暴れる怪人に巻き込まれたとき、リオちゃんが助けに来てくれたんだぁ」

「でもさ、こんなんなってるんだから実質助けられてなかった訳じゃん。だから……もう一度ちゃんと助けに来た、帰るよ」

 

 そう言って、ファンヌの目をじっと見つめるリオちゃん。

 

「……んーん、帰らない。アタシが悪者の一味だったのは確かだし、アタシはこのために育てられたんだよ。今更帰ってもパパに迷惑かけちゃうもん」

「そんなことないよ! 白鳥さん、ファンヌちゃんを助けてって私達に頼んでるんだから!」

「それでも……戻れないよ。ホントはアタシ、応援するだけじゃなくって自分も魔法少女になりたかった。鍵守さん達はアタシにお願いしてきたの、願いを叶えてって。悪者だけど、アタシをパパのお家に行かせてくれたのはあの人達。その対価も渡さず願いも叶えず投げ出して、昔みたいな自分に戻れないよ」

 

 寂しそうに言うファンヌちゃん。

 変な所が生真面目! 私だったら平気で無視しちゃう。……かな? ふとした拍子に思い出して、心のトゲがちくりと痛んじゃう可能性は否定できない。

 なんて声をかけるべきのかなって悩んでいると、ミコトちゃんが私の肩をぽんぽんと叩いて首を横に振る。多分、リオちゃんに任せておけって意味だろう。

 

「はぁ、変な感じに拗らせてんじゃん。んじゃさ、ウチが助けた対価も要求してもいいわけ?」

 

 自壊変身の反動でペンダントの核が壊れ、衣装が完全に崩壊して変身解除されたリオちゃんが、倒れそうになった体を槍で無理やり支えながら不敵に笑う。

 途中、ラブリナさんが対処し遅れた黒い手が目の前を掠めたけれど、リオちゃんはファンヌから目を逸らさなかった。

 

「えぇ~っ! そんなリオちゃんは解釈違いだよっ! やめよ、やめよ?」

「いーや、やだね。ウチはそう言う態度取られると嫌でもやりたくなるタイプだし」

 

 解釈違いだと困るファンヌを見て、悪戯っぽく笑うリオちゃん。

 うん、リオちゃんはそういう子だよね、物凄く知ってる。毎回酷い目に遭ってるし。

 

「悪党どもの願いでなりたい自分になれないんなら、逆側にウチの願いを乗っけてバランスを取る。ファンヌ、ウチの要求する対価を受け取んな」

 

 言って、リオちゃんは核の壊れた変身用ペンダントをはずすと、目を丸くしたままのファンヌに無理やり手渡した。

 

「これ……魔法少女のペンダント?」

「そそ、ウチの奴。ファンヌ、ウチの代わりに魔法少女やんなよ」

「えっ……」

「これで連中とウチ、相反する願いが乗っかった訳じゃん。だからさ……後はファンヌが本当に選びたい方を選びなよ」

 

 ペンダントとリオちゃんを見比べるファンヌに、リオちゃんが悪い笑みを浮かべる。

 

「で、でも、でもでも! そうしたらリオちゃんは魔法少女じゃなくなっちゃう……そんなのアタシ困るよぉ」

「大丈夫だって、元々ウチは今回限りの活動再開のつもりだったし。そのペンダントは魔王の輝石に耐えれるように調整してあるからさ」

「えっ、じゃあ、リオちゃんは元々アタシにペンダントを渡すために……」

 

 ファンヌがペンダントとリオちゃんの顔を交互に見比べ、リオちゃんが頷く。

 にゃん吉さんが調整していたのを見ていたから、私は最初から知っていた。リオちゃんはファンヌにペンダントを直接手渡すため、危ない裏界の冒険に同行したのだ。

 

「……昔さ、ウチの先輩魔法少女が同じようにペンダント渡して、自分は魔法少女引退したことがあったんだよね。その先輩があまりにも未練なさそうにしてるんでウチは聞いたんよ、どうしてそんな風に未練なくさっぱりしてんのかって」

 

 その話には聞き覚えがある。ねねちゃんとハンナさんの話だ。

 

「パイセンは笑って言ったんよ。魔法少女は誰かの願いを背負って戦う、だから私の願いを背負ったあいつは私を背負った分だけいい魔法少女になる。だから未練なんて残るはずないってさ」

「でも、アタシは戦闘へたっぴだから……」

「はっ、そんなん今の戦闘見てりゃわかるって。戦わないご当地魔法少女とかになる選択肢とかもあるわけじゃん。ウチが聞きたいのはさ、ファンヌが何になりたいかなんよ?」

「アタシは……。できることなら魔法少女になりたい……」

 

 体を灰にしながら恐る恐る言うファンヌ。

 その言葉を聞いてリオちゃんが微笑む。

 

「よし、言えたね。んじゃ来な、帰るよ」

「うん……」

 

 リオちゃんがファンヌの手を引っ張って助け起こすと、魔王ファンヌはリオちゃんの手のひらに白い輝石を残して消え去った。

 

「……消えたのです! 時間切れなのです!」

「いいえ。ミコト、塔の上です」

 

 手をバタバタさせるミコトちゃんに、黒い手を斬り裂いていたラブリナさんが言う。

 黒い塔を見上げる私達の前、塔の一部が剥がれ落ち、黒い塊が落下してくる。それはファンヌの本体が入った黒晶石だった。

 私達の前に落ちた黒晶石は灰となり、その場にファンヌ本体だけが残される。うん、クライネの時と同じで中身は無事みたい。

 

「ふぃー。全く、手間かけてくれんじゃん」

 

 リオちゃんはペンダントに白い輝石をはめ込むと、気を失っているファンヌの手に改めて握らせる。

 そして、そのままファンヌを抱き上げ肩に担いだ。

 

「リオ、よくやったのです! エリュシオン様のようだったのです!」

「はっ、おだてても何も出ないっての。ラブさん、悪いんだけどウチは変身時間使い切ったし、また黒い手が襲ってくる前にさっさと鍵の塔を壊しとこ」

「そうですね。核となるファンヌの本体が分離したことで、鍵の塔の力も弱まったようです。これならば私達でも対応……」

 

 できると言葉をつけ足す前に、裏界の地面がゴゴゴと揺れる。

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