魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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最終話 楽園のエリュシオン2

 次元の裂け目の両端目掛け、容赦なく迫りくるモンスターと怪人の群れ。

 

「っ、セレナちゃんは左側をお願い! 私は右側の敵をやっつけてくる!」

「はい!」

 

 変身していない私は一体一体地道に相手取るしかない。この数、倒すのが間に合うかなって思いながら右の敵へと急行する私。

 

「大丈夫ですよ、右側は任せてください!」

 

 でも私が駆けつけるよりも早く、地上からやってきた金ビキニの女の子達三人が、ゴブリンとオークの群れを相手取ってやっつけていく。

 

「あ、この前のビキニトリオ」

「ふふふ、お久しぶりです乳頭巾さん。毎回毎回お世話になっている私達じゃありませんよ。この世間的注目を集めるこの場は私達に任せてください」

 

 私の方をむいてニタリと笑うビキニトリオ。

 

「えっ、あっ、うん。あり、がとう……?」

 

 "意訳:売名させろ"

 "乳頭巾ちゃん困惑してんじゃんwwww"

 

「うおおおお! うなれ売名精神ッ!! 名をあげるは今ぞ!」

「活躍したらチャンネル登録よろしくお願いします!」

 

 訳のわからない気合を入れてモンスターを倒していくビキニトリオ。

 苦戦はしていないけれど、いろんな意味で心配だ。

 

 "ダメだコイツ等、はやくなんとかしないと……"

 "任せろ! 到着したから俺がフォローする!"

 

 襲ってくる敵の首を撥ねつつ、本当に任せちゃっても大丈夫かなって疑問視していると、コメント欄の人らしい冒険者さん達が私にサムズアップしながら参戦してくる。

 画面の向こうの人がそのまま姿を現すのはなんだか不思議な感じだけど、コメント欄の人は結構手練れだった。うん、これなら任せても大丈夫そう。

 そう判断してセレナちゃんの援護に向かう私に、今度は中心付近から戻ってきたナナミちゃんとねねちゃんが声をかけてくる。

 

「こりす! 街の防衛は私達が引き受けるわ。アンタ達はそろそろ行きなさい!」

「結局の所、大本を退治しないと際限ないないさんでございますからねぇ」

「それは私もわかってる、けど……」

 

 私はセレナちゃんが相手取っているであろう境界左端の様子を確認する。

 

「久世、引き付けろよ! 始末は俺がやる!」

「ふっ、わかっている。クロウと俺が居ればこのモンスター達が地上へ到達する確率は0.2パーセントだ」

「おい、久世! そこは見栄を張ってでも0パーセントって言っておけよ!」

 

 既にセレナちゃんはリオちゃんの所に戻ってきている最中で、代わりにスーツ姿の眼鏡の人と、筋骨隆々の大男の人が防衛にあたってくれていた。海岸丘陵のレイドパーティだった人だ。

 そっちの方にも援軍の冒険者さん達が到着していて、更に見知らぬ魔法少女まで現れて敵を蹴散らしてくれていた。

 

 "やあ、おじさんも到着したよ。近くに久世氏やクロウ氏が居るから心強いね"

 "えーっ、企業魔法少女のセイバーアマリリスじゃん!"

 "おじさんッ!? おじさんじゃなくて魔法少女だったのかよ!?"

 "あ、よくよく考えたら応召義務あるのって魔法少女!"

 

 コメント欄がにわかにざわつている。どうやら割と知られた魔法少女だったらしい。

 企業魔法少女なる存在、初めて見た。とりあえず、あっちも大丈夫そう、かな?

 

「これならそろそろ私達は……」

 

 "うわああああ! 奥の方から深層モンスターが来てるぞーっ!" 

 "低レベル冒険者達は退避ーっ!"

 

 中心部に向かえそうって思った矢先、ねねちゃん達が後退したことにより、抑えが無くなった深層モンスターがこちらへと迫っていた。

 

「あれま、オリハルコンゴーレムにシルバーフェンリルが三匹でございますねぇ。流石に変身してないおねねさんだと厳しいでございますが、ナナミはいけそうでございます?」

「無茶言わないでよ! 魔王変身したルミカじゃないんだから!」

 

 とりあえず普通に倒せそうなフェンリルを迎え撃つ私の横、ナナミちゃんとねねちゃんが冷や汗混じりで迎撃の構えを取る。

 

「ねね、冒険者達へのカバー足りてない! 変身時間終わってるならペンダント貸して、オリハルコンゴーレムは私が対処する!」

 

 そこに凛としたハンナさんの声が聞こえ、設楽さんとハンナさんがやってくる。

 ハンナさん、あんな風に凛とした表情できるんだ。意外。

 

「ほい来たでございましょ! ハンナ先輩にお任せでございますよ!」

 

 ハンナさんの存在に気付いたねねちゃんが、迷うことなくハンナさんにペンダントを投げ渡す。

 確かハンナさんは元セブカラの魔法少女。ねねちゃんがお任せって言ってるってことは、もしや相当強い?

 

「ハンナ、以前と変身方法が変わっているらしいが行けるか!?」

「大丈夫です、先輩! この前、講習会受けました!」

 

 "ええっ、不安だ……"

 "講習会とか、この人大丈夫な人なの?"

 "お、ハンナさん知らんとかニュービー冒険者だな"

 

「マナチェンバー、イグニッション!」

 

 ハンナさんが変身すると同時、ナナミちゃんがゴーレムに氷の矢を連射。

 

「二刀八身十六法、落葉!」

 

 矢の雨の合間を縫って、ハンナさんが魔力の刃で刃渡りが伸びた二本の短剣でゴーレムの腕を瞬く間に斬り刻み、

 

「抜刀刹那、裏辻風!」

 

 そのまま流れるような動きで、ねねちゃんと設楽さんが足止めしていたシルバーフェンリルを斬り伏せた。

 

 "うはー! ペーパー魔法少女かと思ったら強いじゃん!"

 "ハンナさん、元国家戦略級魔法少女やぞ!?"

 

「ハンナ先輩は元国家戦略級魔法少女で、ねねの剣術も、魔法少女になった時にハンナ先輩から教わったものなのよ。後輩としては、その頃の感覚のまま無茶するのは、いい加減改めて欲しいのだけれど」

 

 目をしばたたかせる私に、腕を失ったゴーレムの動きを牽制しながら、ナナミちゃんが苦笑まじりに説明してくれる。

 

「と言うことで、ハンナ先輩達とナナミがある程度大物を引き受けてくれるでございます。おねねさんも楽しい楽しいしてるでございますから、乳頭巾ちゃんさんは今のうちにリオ達と中央に向かうでございますよ」

「……うん、そうだね!」

 

 私は街と繋がった次元の裂け目を一瞥する。

 

「うおおお! シールドチャージ! ダブルッ!」

「この前の海竜に比べればっ!」

 

 冒険者さん、ダン特の人達、緊急レイド参戦者は今も続々と増え続けている。

 私が思っていた以上に戦ってくれる人は多い。これなら街の境界は守り抜ける。なら、私達は迷わず中心部に突撃すればいい。

 

「こりっちゃん、意気込むのはもう少し待ちなー。ハンナパイセンがスルーしたモンスターで一波くるよ!」

 

 意気込みながらリオちゃん達と合流した私の前、凶悪モンスターの大行進が迫っていた。

 

「大丈夫なんだよー、話は聞かせて貰ったんだよー。あのモンスターはメイ達に任せるがいいんだよー」

 

 そこに癖のある口調の声が聞こえ、紫色の癖っ毛をした女の子が姿を現す。那由他会の巫女、メイちゃんだ。

 それに続いて、ぞろぞろと那由他会の信者さん達がやってくる。その中には目をキラキラさせたクロノス社の元社長さんの姿もあった。ひっ、怖い!?

 見るからに怪しい一団のご登場。相手とこっちどっちが悪党かって様相だ。

 

 "ヒエッ!?"

 "思いっきり悪の組織みたいなのが来たな……"

 

「おおおー、頼もしい味方がやってきたのです!」

「そ、そうかなぁ!?」

 

 目をキラキラさせて喜ぶミコトちゃんとは対照的に、私はその意見に懐疑的だった。

 

「あれ? メイちゃん、あの人はどうして一人だけスーツ姿なの?」

「あいつは……公安の犬だからなんだよ。あんなのは空気と同じなんだよ」

 

 洞のような目をして言うメイちゃん。

 あ、本当に公安さんに監視されてるんだ……。聞くんじゃなかった、一気にテンション下がっちゃった。

 

「こりすー! 私達は今のうちに行くのです! ここはメイ達に任せればいいのです!」

 

 興奮した様子のミコトちゃんが、私の両肩をゆさゆさ揺らして催促する。

 ドン引きの私とは逆で、ミコトちゃんは最高に頼りになる助っ人達の参戦でテンションマックスらしい。

 

「そうなんだよー。メイも癒しの権能は持っているんだよー。姫巫女様の手を煩わせるまでもないんだよー!」

 

 言って、メイちゃんが手にした神楽鈴をしゃらりと鳴らす。

 同時、那由他会の信者さん達の体がボコボコと着物からはみ出るぐらい筋骨隆々に膨れ上がり、更に背中から触手まで生えてきた。

 

「う、うああああ!?」

 

 瞬く間に筋骨隆々触手付きの異形へと変化していく信者さん達。

 あれのどこが癒しなの!? 酷い! 欺瞞! 全くない、人の尊厳が!

 

 "待って、何事!? 急にバイオレンスフィルターかかって画面がヒヨコちゃんになったんだけど!?"

 "えぐぃ、公安の人仕事してぇ!?"

 "公安の人も巻き添えで異形に変化してるぞ……"

 

「流石メイなのです!」

「任せるがいいんだよー。これで皆は痛みを感じず超再生力を持つ無敵の戦士になったんだよー」

 

 メイちゃんが神楽鈴をしゃらりと鳴らして敵に向け、異形と化した信者さん達がモンスターとぶつかり合う。

 

『ヴェオオ、ヴォオオオオ!』

『ゴァァヴァアアアアァ!』

 

 人ならざる雄たけびをあげる姿は、怪獣大決戦と言うよりゾンビ対ゾンビのデス大相撲。地獄のような絵面だ、夢に出そう。

 

「ふ、二人とも、この人達、後で元に戻るんだよね?」

「人は中身、外見なんて些細な問題なんだよ?」

「見た目と中身の話じゃなくて、人かどうかの瀬戸際だよぉ!?」

 

 お願いだから論点をずらさず、戻るか否かの返答をいただきたい!

 

「こりすが気になるなら後で私が戻すのです。とりあえず今は急ぐのです、私達が遅れるほど戦っている皆に負担がかかるのです!」

「はい。思う所はあるでしょうけれど、今はゆっくりしている暇はありません。行きましょう、こりすちゃん」

「う、うん……」

 

 全くの正論ではあるんだけど、あるんだけど……。

 なんとも釈然としない気持ちを抱えながらも、私はセレナちゃんとラブリナさんを楽園区域に送り出すべく、壊都深界域中心を目指して走り出した。

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