魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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 ここから先は本編と関係ない1話完結のおまけの話となります。
 本編と関係はありませんが、本編後の出来事になりますのでご注意ください。


閑話
閑話 こりすとご当地魔法少女1


 魔法少女エリュシオンは組織に所属しない、正体不明で神出鬼没のソロ魔法少女。

 だけど、これだけ長く魔法少女として活動していると、自然とエリュシオンとしての知り合いも増えてくる。

 最近ではセブカラやダン特の人達と顔見知りになったし、それ以前にもご当地魔法少女や現地の人と共闘することもあった。

 以前出会ったご当地魔法少女、叢雲風花(むらくもふうか)もそんな魔法少女の一人だ。

 

  ***

 

 街の地下深くに作られた秘密の大要塞。広大な広間の中心で、巨大な怪人が真っ二つにされて崩れ落ちていく。

 その最期の姿を二人の魔法少女が見届けていた。

 一人は燐光纏い、銀色のツインテールをなびかせる魔法少女エリュシオン。怪人を一撃の名のもとに両断した魔法少女だ。

 そして、もう一人は和服のような衣装に、羽子板のような大剣を持った魔法少女。この地下要塞の作られた街で活動しているご当地魔法少女"叢雲風花"であり、本名そのまま村雲フウカだ。

 

「フウカじゃ手も足も出なかった怪人王を一撃必殺……。にはは……怪人達が次々とダンジョンに逃げこんでるって噂も納得の強さなんだわ」

 

 フウカは満身創痍の自らと全くの無傷なエリュシオンを見比べ、自分の苦戦はなんだったのかと苦笑する。

 

「ううん、一般人の被害なく倒せたのは君のおかげだよ。ただ、危ない時はまた私も駆けつける。だから無理はしないで欲しいかな」

 

 エリュシオンは膝をつくフウカに手を差し出し、フウカを助け起こしながら言う。

 

「その気持ちは嬉しいんだけど遠慮しておくんだわ。今回のことでよくわかった。エリュシオンは世界の平和を守れる魔法少女、なら他の誰かじゃ解決できないことを解決しにいくべきなんだわ」

「私にとって、世界の平和と街の皆の平和は一緒のことだけど」

「にはは、カワイイ顔してしっかりした子だにゃー。つまり、この街の平和ぐらいはこの魔法少女叢雲風花に任せて、心置きなく強い奴らと戦いなさいってことなんだわ。……このボロボロな格好じゃ、少し説得力がないけどにゃー」

 

 言って、助け起こされたフウカは力こぶを作って任せろとアピールしてみせる。

 

「うん……そうだね、任せたよ。でも、私の力が必要な時はいつでも呼んでね」

「任されたのだわ、戦友」

 

 エリュシオンとフウカはもう一度握手を交わすと、お互いのすべきことをするためにその場を去っていく。

 

  ***

 

 私、魔法少女エリュシオンこと天狼こりすがフウカさんと共闘したのはその一度だけ。

 でも、私にとっての魔法少女叢雲風花は、今も印象深い魔法少女の一人だ。

 

 ……そして、彼女が平和を守るはずだったその街は、今はダンジョンと繋がったことで放棄区域になっている。

 

 

 閑話 こりすとご当地魔法少女

 

 

『グギャアア!!』

 

 寂れた街の一角、大剣で袈裟斬りにされた黒タイツの怪人が断末魔をあげる。

 

「こんこ、こんこ。うら寂れた街に最後まで残る者が怪人とは、なんとも皮肉な話よの。近くに彼奴等の棲み処でもあると踏むが……設楽、ハンナ、お主達はどう思う?」

 

 モンスター化していた怪人が黒い煙となって消えていく中、扇子で口元を隠したダンジョン庁長官"鳳仙カレン"が、怪人と交戦していたダンジョン特別戦闘部隊員二人に尋ねる。

 

「可能性は高いと思いますね。この辺りは放棄区域に近い、人目を避けて潜むには持ってこいだ」

「私も設楽先輩と同意見です。だからこそ、怪人の目撃情報を受けて長官自ら出向くのはどうかと思います。怪人と一緒に放棄区域のモンスターが出てきたら、二人だけじゃ長官を守れません」

 

 ダン特隊員である設楽とハンナの二人は、カレンの言葉に概ね同意しつつ、危険と知って出歩くのは不用心だと苦言を呈する。

 

「くふふ、そこは安心せよ。妾はお主達の足を引っ張るほど耄碌しておらぬぞ」

 

 豪奢な金髪を小さく揺らし、カレンが笑う。

 今でこそダンジョン庁長官をしているカレンだが、その正体は齢二千を超え九本の尾を持つ人外化生の大妖狐。ダンジョン探索で鍛えられた二人よりも遥かに強いのだ。

 

「と、言うことじゃ。そこのお主も陰から見守る必要はないぞ」

 

 そして、カレンはそう言葉を続け、人も疎らな通りの方へと視線を向ける。

 そこに居たのは、和風アイドルみたいな服を着た栗色の髪の少女だった。

 

「あははー、さっすがダンジョン庁の長官さん。お見通しだにゃー」

 

 少女は明るく笑って三人へと歩み寄る。

 手には羽子板のような形状をした大剣を持っているが、敵意がないのは明らかだった。

 

「ふむ、あの手の格好をしてるのは魔法少女と相場が決まってるが……。ハンナ、知ってるか?」

「ご当地魔法少女の叢雲風花です。セブカラ時代にイベントで共演したことがあります。ただ、活動エリアが放棄区域になってから、活動休止したって聞きましたけど……」

 

 ハンナは設楽にそう説明し、目の前にある放棄区域と街を隔てるフェンスへと視線を向けた。

 

「ほほう、ならば面白そうな厄介ごとを持ち込んでくれそうじゃの」

「はい。鳳仙長官、放棄区域について一つ頼みがあってきました」

 

 カレンが値踏みするような視線を向ける中、フウカは姿勢と言葉遣いを正して話をはじめた。

 

  ***

 

 その日、私はセレナちゃんと一緒に放棄区域奪還戦の見学に来ていた。

 放棄区域は文字通り、深い階層のダンジョンと繋がったことで、モンスターの脅威が増して放棄されてしまった場所のこと。

 次元融解現象によって地上と繋がるダンジョンは基本的に浅い階層で、放棄区域になるほど危険な階層と繋がることはそう多くない。けれど、多くないってことは稀にあるって意味でもある。

 この街は運悪くその稀を引いてしまい、街の一角が放棄区域になってしまったのだ。

 

「セレナちゃん、せっかくのお休みに付き合わせちゃってごめんね」

「うふふ、お気になさらず。こりすちゃんとのデート以上に優先することなんてありませんから。でも、わざわざ放棄区域奪還戦の見学をしたいだなんて、何か思うところがあるんですか?」

 

 放棄区域にほど近い和菓子屋さんのテラス席、私と一緒に和菓子を食べているセレナちゃんが、道路の突き当りに見えるバリケードへと視線を向けて尋ねてくる。

 放棄区域と街を隔てているバリケード前には、ダンジョン庁の仮設テントが幾つも建てられていて、沢山の冒険者さんがバリケードの中と外を往来している。

 今現在、あの放棄区域は奪還戦の真っ最中なのだ。

 

「あの放棄区域一帯はね、とあるご当地魔法少女の活動エリアだったんだよ」

「魔法少女叢雲風花ことフウカさんでしたっけ? 怪人組織を壊滅させるため、エリュシオンと共闘したこともありますよね」

「うん。その時、危ない時はまた私も駆けつけるよって約束したんだけど……私はその約束を果たせなかったから」

 

 私が一時的に魔法少女をやめていた間に、叢雲風花の活動エリアは放棄区域になってしまっていて、私はつい最近までそのことを知らなかった。

 つまり、私は約束通り駆けつけることができなかった。それが心残りで仕方ない。

 だから、必要ならエリュシオンとして手を貸せるよう、この奪還戦を見守ることにしたのだ。

 

「それが"参加"じゃなくて"見学"な理由なんですね。んもう、変に律儀と言うか、こりすちゃんらしいと言うか……」

「とは言え、何事もなければこのままお菓子を食べて帰るだけだよ。冒険者さん達にとっては稼ぎ時だし、しゃしゃり出てお仕事と食い扶持を奪っちゃうのは逆に迷惑な行為だから」

 

 言って、私はお土産用に買ったお団子の包みを鞄にしまいつつ、追加注文していた大福を大きな口で頬張った。

 

「でも、肝心のフウカさんは活動休止中みたいですよ。怪人組織壊滅で知名度をあげて華々しく活躍していたみたいですけれど、街が放棄区域になってから音沙汰なしみたいです」

 

 言いながら、セレナちゃんがスマホにフウカさんのプロフィールを表示する。

 ご当地ゆるキャラとツーショットを取っているフウカさんの画像の下、丁寧な文章で暫くの間活動休止する旨が書かれていた。

 

「別にフウカさんの動向は関係ないよ。フウカさんとの約束や信頼を取り戻せるかじゃなくて、大事なのは守れなかった街の人達の笑顔を取り戻せるか、だから」

「そうですね。名声も見返りも求めない、エリュシオンはそういう魔法少女ですもんね。魔法少女たるもの、そうじゃなきゃって思います」

 

 セレナちゃんは一瞬スマホに視線を向けた後、私を見て嬉しそうにうふふと笑う。

 テーブルに置かれたスマホには、ゆるキャラのハニワと踊っているフウカさんの動画が再生されていた。

 

『はにの助ー、ミュージックスタート! お団子はにはにダンス開始なのだわ』

 

 あっ、うん、フウカさん、なんか変な踊り踊ってる……。

 

「自分でも面倒くさいと思いますし、基準としているエリュシオンが最高峰であるとは理解しているんですよ。でも、どうしても魔法少女の解釈違いは許せないと言うか……」

 

 うふふと上品に笑うセレナちゃん。でも、動画を見るその目は笑っていない。

 セレナちゃんは魔法少女に対して面倒くさい一家言をお持ちの方、魔法少女の解釈違いは絶対許さないタイプなのだ。

 怖い、上品が笑顔が本当に怖い。向かいで大福を食べている私の身にもなって欲しい。

 

「むむっ、エリュシオン様の話をしている人がいると思えば、こりすとセレナなのです!」

「ホントだ。デカ乳の黒髪とピンク髪、こりっちゃんと学園長代理じゃん」

 

 と、そこに見慣れた紅白コンビがやってくる。赤い髪のリオちゃんと、白い髪に赤と青のオッドアイのミコトちゃんだ。

 

「エリュシオン様について語るのなら私も混ぜて欲しいのです! 三日三晩語り続けることだってできるのです!」

「うん……。ミコトちゃん、その苦行は遠慮したいかな……」

 

 私も混ぜろと寄って来るミコトちゃんに、私は止めてと小さく首を横に振る。

 三日三晩も自分語りなんてしたくない。想像しただけで心がお塩をかけられたナメクジみたいになっちゃう。

 

「んで、こりっちゃん達は早めのおやつタイム? 冒険者がヒイヒイ言ってモンスター倒してる横で優雅にやってんねー」

「はい。ここは私の管理エリアではありませんけれど、後学のために奪還戦を見学しています。お二人は参加ですか?」

「後方支援の手伝いを頼まれたのです! 私が参加すれば、メイが公安を異形化させた失点を相殺してくれるそうなのです!」

「んで、ウチは長官に指示されてそんなミコっちゃんの護衛してる。ウチがペンダントを壊した分はどれだけ働けば相殺されるんだろね」

 

 バンザイするように大きな胸を張って言うミコトちゃんの横、リオちゃんが疲れた顔で言う。

 

「うへぇ……。カレンに弱みを作ると恐ろしいねぇ、好き放題にしゃぶり尽くされてるよ……」

「こりっちゃんもそう思うっしょ。ウチも流石にいい加減チャラにしろって言って来た。ま、ミコっちゃん放置できないのも確かだけどさ。怪人の目撃報告もチラホラあるし、万が一ミコっちゃんが攫われたりしたら大惨事じゃん」

「え!? 怪人の目撃報告があるの!?」

 

 私はその言葉を聞き逃さなかった。

 あの放棄区域には、かつてエリュシオンがフウカさんと壊滅させた怪人組織の地下要塞跡地がある。人がいなくなったのをいいことに、別の怪人達が跡地で何かを目論んでいるのかもしれない。

 

「あー、信憑性は怪しいんだけどさ。再開発に入る予定になってる企業の社長が、護衛つけて下見に行った時に見たって言ってたんよ。でも社長なんて素人じゃん? ウチは人型モンスターを見間違えたと踏んでるね」

 

 私の表情が真剣になったのを見て、リオちゃんが少し困った顔でそう説明してくれる。

 勿論、その可能性は高いだろう。でも、そうじゃなかった場合が大問題だ。少し予定と変わっちゃうけど、天狼こりすとしても奪還戦に参加しておいた方がいいかもしれない。

 

「セレナちゃん、奪還戦の入場券みたいなのって、今からでも発行できるのかな?」

「はい、大丈夫です。カレンさんに言えば無理矢理ねじ込めるかと思います」

 

 その返答に若干不安になったものの、背に腹は代えられない。

 セレナちゃんなら、リオちゃんみたいに貸しを作って玩具扱いにはならないだろう。絶対。

 

「じゃあ、お願い……」

 

 私が覚悟を決めてそう言いかけた瞬間、私の大福を勝手に頬張っていたリオちゃんの魔石スマホが浮き上がる。

 

『リオ! アンタ、奪還戦に参加してるのよね!? 放棄区域に変なモンスターが出たみたいなの! 私はもうダンジョン内でレイド級モンスター相手取ってて動けないの、代わりに対処をお願い!』

 

 それは奪還戦に参加しているナナミちゃんからの連絡だった。

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