魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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閑話 こりすとご当地魔法少女5

「さあ、怪人ども、ここからはフウカが相手をしてやるんだわ」

 

 エレベータホール前、こりす押し込んだエレベータが動き出したのを見届け、フウカが勝利の笑みを浮かべて啖呵を切る。

 

「弟よ。この女、乗り遅れたのに余裕だぞ」

「違うぞ兄者。こいつはあの乳のデカい女を逃がしたつもりなのだ」

「逃がした? ガハハ! あんな奴などいつでも捕まえられる。お望み通り、先にお前の相手をしてやろうと思っただけだ!」

 

 弟鬼怪人の説明を聞いて、兄鬼怪人が高笑う。

 

「だが、お前が逃がしたつもりだと言うのなら、先にあの女を引き裂いてやるのも楽しそうだ。どれ、捕まえて来てやろう」

 

 そして、悠々とフウカの横を通り過ぎようとする。

 

「させるかぁ!!」

 

 が、フウカがそれを許さない。

 羽子板みたいな大剣を思い切り振りかぶり、兄鬼怪人へと斬りかかる。

 

「お前は人の言葉がわからん女だな。俺は先にあの女を引き裂くと言ったんだぞ。さてはお前、バカだな!」

 

 だが、丸太のように太い腕で大剣を受け止められ、そのまま振り払われてしまう。

 

「バカは後だ、大人しくしてろ!」

「うっさい、フウカはバカじゃないし! バカはお前の方なんだわ!」

 

 フウカは一度態勢を崩すが、兄鬼怪人の足を止めるために再び斬りかかる。

 だが、再び腕で受け止められ、フウカは軽くあしらわれてしまう。受け止めた兄鬼怪人の腕にはかすり傷一つなかった。

 

「弟よ。この女と俺、どっちがバカだと思う?」

「決まってるさ、兄者。勝ち目がないのに抵抗するこの女の方がバカ者だ」

「ガハハ! 弟がそう言っているのなら決まりだな!」

 

 エレベータをこじ開けようとしていたその手を止め、兄鬼怪人が豪快に高笑いする。

 

「だが兄者、小虫も飛び回り続けられると目障りになってくる。先に動けないよう手足をもいでおこう」

「おお、名案だ。流石は我が弟。その方があの乳のデカい女も絶望するかもしれんな!」

 

 弟鬼怪人の提案に同意し、兄鬼怪人がフウカへと向き直る。

 そして、その魔の手が今まさに伸びようとした瞬間

 

「人の助けを呼ぶ声あらば、燐光纏いて私は来よう。悪を断つ銀のシリウス、魔法少女エリュシオン」

 

 怪人とフウカの間に割って入るように、一筋の光が舞い降りる。

 白いレオタードのような戦装束(ドレス)に燐光纏い、銀のツインテールなびかせて、その少女は腕を組み、黄金の瞳で怪人を見据える。

 

「エリュシオン……」

「久しぶりだね、魔法少女叢雲風花。あの日の約束を果たしに来たよ」

 

 驚きに目を丸くするフウカの前、怪人を見据えたエリュシオンが言う。

 

「ま、魔法少女エリュシオン……!?」

「なんだ、なんだ、また似たようなのが出てきたぞ。ガハハ、まあいい! どうせコイツも雑魚だ。ついでに手足をもいでやろう」

 

 うろたえる弟鬼怪人の横、警戒もせずエリュシオンに向かって腕を振りかぶる兄鬼怪人。

 

「だ、ダメだ兄者! そいつは、そいつだけは本気のマジでヤバい!!」

 

 それに気づいた弟鬼怪人が慌てて止めようとするが、時すでに遅し。

 腕を振り上げた態勢のまま、兄鬼怪人は真っ二つに唐竹割りされていた。

 

「兄者……? あっ……あにじゃアアアアああああああッ!?」

 

 あまりに速い攻撃の前に断末魔すらあげられず、黒い煙を出して消えていく兄鬼怪人。その姿に弟鬼怪人が絶叫する。

 

「嘘だ! 兄者、約束したじゃないか……。どっちが冒険者達を苦しめて殺せるか競争しようって、手足を千切って胴だけにした冒険者達を部屋に沢山並べて飾ろうって……」

「ろくでもない妄想は聞きたくない。黙ってて」

 

 エリュシオンはそのまま腕を滑らせ、弟鬼怪人も真っ二つにしてしまう。

 

「ひえ……。久々に生で見たけど、相変わらず激ヤバなんだわ……」

「悪い怪人でも仲の良い兄弟だったから、その怒りぐらいは受け止める義務があると思ったけど、そんな慈悲も要らなそうだったからね」

 

 動いたことさえわからない速さにドン引きするフウカの横、エリュシオンは静かにそう言って、灰となって消え去った兄弟怪人がいた場所を見つめる。

 

「……あ! そうなんだわ、エリュシオン! さっきここからエレベータに乗って逃げ出した子がいるんだわ!」

「うん、わかってるよ。途中で保護しているから安心して」

「そっか、よかったにゃー」

 

 エリュシオンの言葉を聞いて、ほっと胸を撫で下ろすフウカ。

 

「でも、私は変わった経路でここまで来たから、外が今どうなっているのかわからない。だから役割分担と行こう」

 

 言って、エリュシオンは地下要塞の奥へと視線を向ける。

 黒晶石で黒く染まった通路は暗く黒く、その闇から孵化するように次々とモンスターと下級戦闘員が姿を現していた。

 

「そだね。フウカ、ちょっと足を引っ張りそうだからにゃー」

「そんな消極的な理由じゃないよ、君の方が私よりこの街には詳しいだろうから。街は君に任せてもいい、そういう約束だったよね」

「覚えてたんだ、あんな口約束……」

「勿論、私も君との約束を守れなかったことが心残りだった。……だから一緒に取り戻そうか、お互いの心残りを」

 

 そう言って、黒晶石巣くう通路へと向かおうとするエリュシオン。

 フウカは一瞬目をぱちくりさせていたが、

 

「そっか……なら、この街の平和は魔法少女叢雲風花にまっかせなさい!」

 

 表情を引き締め、胸を張って堂々と啖呵を切った。

 

「うん、頼んだよ。戦友」

 

 エリュシオンはその決意を聞き届けると、黒晶石で黒く染まった地下要塞の深部へと疾走する。

 黒い通路が銀の閃光に貫かれ、モンスターと怪人は黒晶石諸共に砕け散っていくのだった。

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