魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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閑話 こりすとご当地魔法少女7

「ぐっ!」

『クックックッ、確かに一般人としては少しはできる。余程涙ぐましい努力をしたようですな、だが所詮は偽魔法少女の無駄な努力だ。そんなことをしても、貴方は私に勝てず、失った信頼は取り戻すこともできないのですよ!』

「フウカは皆に笑顔が戻ればそれでいいんだわ! フウカを信頼してくれなくたって、皆が笑顔を取り戻せたんなら! フウカは胸を張っていられるんだわ!」

 

 デスメイヤーが嘲笑う中、フウカは即座に立ち上がり、そう言い返してデスメイヤーへと向かっていく。

 

「…………」

「そこの人々、まだ迷っているふりをしているのです?」

 

 無言でフウカ達の戦いを見守る議員達、ミコトはそんな議員達へと視線を向けてそう尋ねる。

 

「迷っている、ふり……?」

「自らが特別だと思っていた存在がただの人だと知り、本当は自らも踏み出すべきなのだと気付いているのではないですか?」

 

 市議会議員の面々に、ミコトは穏やかに諭すように言う。

 

「だ、だが、私達では怪人の相手なんて無理だ……」

 

 議員達はそう言い返すが、内心の迷いを肯定するかのように、その視線を白い輝石を積んだ軽トラックへと向けた。

 

「戦いとは最前線で刃を交え続けるだけにあらず、最良の未来を掴み取るため、己のできることをすることこそが戦いなのです。今足りていないのは踏み出す勇気だけなのです」

「勇気……」

 

 心の内を見透かし、天性のカリスマを持つミコトの言葉は、瞬く間に議員達の心の奥底へと浸透していく。

 その言葉は神託の如き力を持つ天然の洗脳であり、自分自身でも気づかぬ心の内を露わにする鏡。ミコトに諭され、自らの想いの根底を自覚した議員達の表情がみるみる変わっていく。

 

「……そうか、その通りだ。我々もできることをしなければ!」

「いい表情なのです。さあ、迷いが晴れたのならば行くのです!」

 

 ミコトの号令に頷き、迷いのない真っ直ぐな眼差しで市議会議員の面々が駆けていく。

 一人の議員が軽トラックの運転席に乗り込むと、残りの二人の議員が荷台に乗り込む。そして、議員達を乗せた軽トラックがデスメイヤーに向けて勢いよく発進した。

 

「うおおおおおおっ! 米谷市長、貴方をリコールだッ!!」

「ああっ!? ミコちゃんに扇動されて議員の人達が暴走してる!? 先輩、リオ、援護手伝って! あの子の言葉、無自覚で凄い力を持ってるから!」

「当然知ってるし! ああ、もう! ミコっちゃん、余計なことしてくれんじゃん!! ウチが運転席受け持つから、パイセン達は荷台の方よろしく!」

 

 その無謀な突撃に気付いたリオとハンナは、慌てて議員達の援護に入り、交戦前に助け出すべく軽トラックを追いかける。

 

『クゥーックックッ、なんと愚かな! そんなものが怪人に通用するとお思いか!!』

 

 軽トラックで突撃する議員達に気付いたデスメイヤーが、黒晶石の腕を振り上げて軽トラックを上から叩き潰す。

 直前、軽トラックに追いついたリオとハンナが、運転席と荷台から議員達を引っ張り出して飛び退く。それとほぼ同時に軽トラックは見るも無残に叩き潰されてしまった。

 

『グアアアアア!』

 

 そして、軽トラックを叩き潰したデスメイヤーの腕が灰となって崩れ落ち、デスメイヤーが苦悶の表情と共に絶叫した。

 

「おおお、やったのです! 人間の底力を見たのです!」

「え。いやいや、どうなってんのこれ!? 軽トラの突撃なんて怪人には効かんでしょ!?」

「白い輝石です。あの軽トラックの荷台には奪還後に使う白い輝石が積み込まれていました。白い輝石によって黒晶石の力が弱まり、体の崩壊を招いたんです!」

 

 驚くリオにセレナがそう説明し、

 

「なるほど! それはいいことを聞いたんだわ! なら、これが効くはず!」

 

 その説明を横で聞いていたフウカが壊れたトラックの荷台に乗り込み、大剣を使って白い輝石をデスメイヤーへ向けて弾き飛ばす。

 勢いよく飛んだ白い輝石がデスメイヤーに命中し、その体の一部が灰となって崩壊。黒晶石の鎧に守られていたデスメイヤー本体が露出する。

 

『おのれ、おのれえええ!』

「今が勝機なんだわ!」

 

 それ好機とフウカが大剣を振りかぶり、デスメイヤー本体へと斬りかかる。

 その刃がデスメイヤーの首を落とす寸前、地面から無数の黒晶石が突き出し、デスメイヤーを守るようにバリケードを作り上げてしまった。

 

『クゥークックッ、まさに危機一髪でしたな。ですが、この放棄区域……さらに外の地下にまで我々の街は侵食しているのです。そう易々とはいきませんな』

 

 逆にフウカが態勢を崩した隙に、デスメイヤーは別の黒晶石と接続。態勢を立て直してしまう。

 

「絶好のチャンスだったのに、あれでダメなん!? もう地下の黒晶石潰さないとどうしようもないじゃん!」

『左様、ですが地下にある黒晶石の量は膨大。つまり、貴方達に勝機などないのです。ですが、これで絶望させて終わりでは私の気が済みませんな。怪人総攻撃で貴方達の街諸共に蹂躙して差しあげましょう!』

「いかん! ハンナ、外で待機しているダン特に至急連絡を!」

『クゥークックックッ、遅いッ! 遅いッ! いざ、この地を埋め尽くせ我が万の軍勢よ!』

 

 声高らかに宣言するデスメイヤー。

 だが、その呼び声に応える者は誰も居なかった。

 

『おかしいですな……? いでよ、万の軍勢よ! 軍勢よ! 軍勢よ! 千でもいい、百でもいい! こい、こい、こい!! 何故来ない!』

「何故って、決まっているのだわ。今まで出てきたのは下級戦闘員だけ、そっちの虎の子の怪人達は今どうしていると思っているのだわ?」

 

 デスメイヤーが狼狽する姿を見て、フウカが不敵な笑みを浮かべて言う。

 

『なにっ……!? ま、まさか……』

「はい、当然ですね。これだけ派手にやっておいて、どうして来ないと思うんでしょう」

 

 セレナがそう言うと同時、デスメイヤーの周囲に隆起していた黒晶石の塊が次々と灰となり、地下から銀の閃光が一筋天へと昇り、一筋の光が舞い降りる。

 それは白いレオタードのような戦装束(ドレス)に燐光纏い、銀のツインテールなびかせる魔法少女。

 

「人の助けを呼ぶ声あらば、燐光纏いて私は来よう。悪を断つ銀のシリウス、魔法少女エリュシオン」

 

 セレナ達を守るように着地したエリュシオンが、腕を組んでいつもの決め口上を告げる。それは未だかつて逃れ得た者のない悪への死刑宣告。

 

『ぐぐぐぅ!! 魔法少女エリュシオン! 貴方、貴方なのですかッ!! 私が丹精込めて作り上げた地下世界を破壊したのは!!』

「そうだね、随分と広く黒晶石の地下要塞を作り上げていたみたいだね。でも……私が全部壊したよ、中に居た怪人共々ね」

 

 歯噛みするデスメイヤーの前、腕を組んだエリュシオンが淡々とそう告げる。

 

「あっおおおーー!! エリュシオン様なのです、エリュシオン様なのですっ!!」

「ミコっちゃん! 暴れず大人しくしときなー!! ああ、もう! こりっちゃん、よく毎回これを抑えこめてんね!」

 

 エリュシオンの姿を見たミコトが大興奮し、リオが今にも飛び出していきそうなミコトを慌てて制止する。

 

「この街は人々を脅かす怪人達の棲み処じゃない。君の悪巧みはここで終わりにしようか」

『クゥーッググゥ! ふ、ふふはっ、まだ勝ったと思わぬことです! エリュシオン、貴方が基地の黒晶石や怪人を倒したとしても、放棄区域だったこの地には山ほどの黒晶石が侵食しているのですよ!』

 

 デスメイヤーが負け惜しみのようにそう言うと同時、周囲のあちこちから地鳴りのような音がし始め、地面からの黒晶石がデスメイヤーの体全体を覆っていく。

 

「マジかこの量……エリュシオン!」

「大丈夫、だから少し待って」

 

 急ぎ迎撃しようと意気込むリオを、エリュシオンが手で制止する。

 その間にも、デスメイヤーの体を核とした黒晶石は巨大化し、ついにデスメイヤーは黒晶石の超巨大怪人へと変貌してしまった。

 

『クゥークックックッ! 周囲に満ちる黒晶石全てを取り込んだこれがッ! これこそがッ! 私の本当の姿であり怪人街! そう、このデスメイヤーこそが怪人街そのものであり、秘密結社怪人街だったのです!』

「ありがとう、全ての黒晶石を取り込んでくれたんだね。読み通りだよ」

 

 得意げに語るデスメイヤーに対し、エリュシオンが組んでいた腕を解いて臨戦態勢を取る。

 

『なに……?』

「つまり、ここで君を倒せば、この放棄区域周辺を侵食している黒晶石はなくなるってことだよね?」

『きっ、貴様ああああっ! 黒晶石を駆逐する手間を省くのに私を使ったと言うのですか!? どこまでも……どこまでも私をコケにしおってえぇ!』

 

 エリュシオンの言葉に激怒し、デスメイヤーが巨大な黒晶石の腕をエリュシオンへ目掛けて振り下ろす。

 

「穿つ銀の閃撃<エリュシオンダイブ>」

 

 だが、腕を振り下ろした先にエリュシオンの姿はない。

 瞬く間もない速さで動いたエリュシオンが必殺の一撃を放ち、巨大デスメイヤーの後ろに着地する。

 同時、本体を貫かれたデスメイヤーの巨体が崩壊し、白い輝石となって放棄区域全域に砕け散った。

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