魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第3話 魔法少女の再起1

 

  第三話 魔法少女の再起

 

 翌日早朝、官庁街を訪れていたリオは、ダンジョン庁とプレートの付けられたオフィスビルの前で深々とため息をつく。

 

「はぁ、流石に首かなこれ」

 

 手にしたスマホのグループチャットには、リオを呼び出す簡潔な文が入っていた。

 

「……エリュシオンみたいな正義の魔法少女に憧れて、結局なれたのは首に怯える職業魔法少女か。ウチは何やってんだろね、全く」

 

 リオは赤い髪をかきながら憂鬱な表情でスマホを見つめていたが、意を決してビルに入っていく。

 エントランスのソファには、武装した少女四人のパーティが座っていた。政府公認魔法少女セブンカラーズの面々だ。

 一同が挨拶もなしにやって来たリオへと視線を向け、注目の的となったリオはバツが悪そうに苦笑する。

 

「リオ、アンタ相当ヘマしたみたいじゃないの。大言壮語を吐いてたくせに、ホント情けないったらありゃしないわ」

 

 そんな中、ウェーブのかかった青い髪をした少女が立ち上がり、辛辣な言葉でリオを出迎えた。

 決して仲が悪い訳ではない二人なのだが、リオとこの葵七海(あおいななみ)はいつも口喧嘩をする間柄なのだ。

 

「は、お強いセブカラサファイアのナナミさんは早朝からダンジョン潜り?」

 

 いつもならそのまま軽い口喧嘩を始める所だが、今のリオにはそんな気力はない。

 軽い皮肉を込めてそう言い返すのが精一杯だった。

 

「そ、アンタのせいで休日返上。宝石魔法少女セブンカラーズって一括りにされて私達までとばっちり、いい迷惑よ」

「そりゃ失礼しました」

 

 沈んだままの顔でそう言うリオを見て、煽っていたナナミの方まで拍子抜けしてしまい、眉根を寄せて浮かない顔になってしまう。

 

「なによ、牙も抜けて完全終了じゃない。リオ、アンタそのままだとセブカラ首になるわよ」

「はっ、そんなの当然覚悟してるに決まってんじゃん。ウチ、長官直々に呼び出されてんだよ」

「心底呆れるわね。うだうだ言わずに、さっさと探索準備してきなさいよ。公式発表だとアンタは不参加だけど、探索許可証持ってるアンタが偶然私達と同じ所うろつくのは自由なんだから」

「……ありがと、でもごめん。それで昨日裏目に出たばっかだし今回はいいや。ナナミ、あそこマジで危険だから気をつけなよ」

 

 口は悪いが、彼女は彼女なりにリオを鼓舞してくれている。

 そのことには気づきつつも、リオは浮かない顔をしたまま、小さく首を横に振ってナナミの脇をすり抜ける。

 

「待ちなさいよ、バカリオ! そこで逃げたら本当に終わりでしょ!?」

 

 後ろから聞こえる罵倒の声。リオは逃げるように小走りでエントランスを後にする。

 

「失礼します」

「おお、叱られる前の小童みたいな顔をしておるの。伸びに伸びた天狗の鼻が折れるとそのような顔になるか」

 

 逃げ込むように長官室へと入っていくリオ。

 席に座って書類作業をしていた鳳仙は、その姿に気づくと書類を書く手を止め、愉快そうに笑った。

 

「は。いきなり嫌みっすか、鳳仙長官」

「くふふ、妾はそんな矮小な愉しみはとうの昔に卒業しておるぞ。ただ、あまりに愉快な顔をしていた故、ついついの」

 

 口元を隠して愉快そうに笑う鳳仙を見て、リオは大きくため息をつく。

 いつも通りの態度が、今日は堪らなく心に刺さる。

 

「して、リオよ。わざわざ呼び立てた理由は察しておろうな」

「……まあ、大体は。セブカラ首って話なんすよね」

 

 リオはしょうがないと言った顔で変身用ペンダントを外すと、鳳仙の机にペンダントを置いた。

 

「つまらん、なんと覇気のないことよ。妾としては交渉の一つでもしてくるかと期待しておったのじゃがのう。我が物顔でダンジョンを闊歩しておった魔法少女はいずこへ行ったのやら」

 

 鳳仙はそんなリオの顔とペンダントを交互に見比べると、心底つまらなそうな顔で椅子にもたれた。

 

「すみません」

「よいよい、過剰な期待をした妾が悪かった。所詮お主等はよちよち歩きの雛鳥よ。エリュシオンの如き覇気を期待するのは些か酷な話であった」

 

 興味を失ったような冷たい瞳でひらひらと手を振る鳳仙。

 その酷薄な態度に、リオは机の前に立ったまま思わず唇を噛んで手を握りしめた。

 

「おお? なんじゃ、まだその様な表情ができるではないか。その顔ができるのならば最初からしておれ。おかげで要らぬ茶番劇をするハメになったわ」

 

 その顔を見た鳳仙は冷めた顔から一変、愉快そうな顔に戻ると、机に置かれたペンダントをリオの目の前へと動した。

 

「ほれ、受け取るがよい。その表情ができるのならば、今しばらく預けたままの方が面白そうじゃ」

「……わかりました。すみません」

 

 リオはペンダントを手に持ったまま逡巡していたが、やがてペンダントを着けなおした。

 

「よいよい、お主が不覚を取ったのも事実であれど、攫われた少女を助けたのもまた事実じゃからの」

 

 リオがペンダントを着けなおすのを見届けると、鳳仙は用事は済んだと言わんばかりに立ち上がる。

 

「さて、妾は行くぞ。これからダンジョン学園で用事があるでの。……リオ、手遅れにならぬうちに再起すると信じておるぞ」

 

 鳳仙は去り際にぽんとリオの肩を叩くと、愉快そうな顔で長官室から出て行ってしまう。

 部屋に残されたリオは、自らの所に戻って来たペンダントをじっと見つめていたが、

 

「……あれ、どうして長官が首輪巫女ちゃん助かったこと知ってんだろ?」

 

 鳳仙がミコトが帰って来たと知っている事実に気が付き、首を傾げるのだった。

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