魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第4話 怪獣王7

「もしもし、見えてますか?」

 

 "リオちゃん……じゃなくてエリュシオンちゃん!?"

 "エリュシオンちゃんが配信ってどいうこと!?"

 "要救援アラート入ってたから見たけど、リオちゃんどうなったの!?"

 

 私が配信開始のボタンを押すと、リオちゃんが映るとばかり思っていたらしい視聴者さん達が困惑のコメントを入れていく。

 要救援アラートなんてあったんだ。あれかな、本来は配信時にピンチになったら近くの人に助けを求めるための機能なのかな。

 

「え、ええと……」

 

 とりあえず、リオちゃんは無事だって私がコメントに返答しようとすると、画面にコメントがドバドバ流れてきて、返答しようとしていたコメントがあっと言う間に押し流されていく。

 配信初心者には難易度が高過ぎる! 基本のきの字もわからない上、コミュ力クソ雑魚の私に対応できるわけがない!

 リオちゃんが戦闘中も配信してたのって、実はとっても凄かったんだね。

 

「ごめんなさい。とりあえず、時間がないから用件だけ伝えます。セブンカラーズのルビーさんは無事、でも今平原エリアでは深層モンスターと怪人が山ほど暴れています。だから力を貸してください」

 

 どう考えても、私じゃ配信に対応なんてできないから、もう言いたいことだけ言うことに決めた。

 今はとにかく時間がない。学園周辺のモンスターが散り散りになったら一人じゃ手の施しようがなくなるし、なにより今も学園で戦っているセレナちゃんを助けに行かないといけないのだ。

 緊急時だから多分皆も力を貸してくれるはず。貸して貰えないなら平原エリアを粉砕行進するしかない。

 

 "力を貸すってどうやって"

 "人類は深層モンスターも怪人も倒せないんよ……"

 

「敵は全部私が倒します。でも、目が足りないからその代わりをお願いします。強いモンスターや怪人が見えたライブカメラを言ってください。できれば地上付近のカメラを優先してお願いします」

 

 "マジか、エリュシオンちゃん平原エリア全滅させるつもりだ"

 "一匹でも高レベルパーティが半壊しかねない深層モンスターを一人で?"

 

 コメント欄には動揺の書き込みが見える。信じて貰えないのは仕方ない。

 でも、だからって言葉で根気強く説得している暇もない。

 私は走りながら目視で周囲を見回し、草原を闊歩する十メートルはありそうな棘の生えたクジラを両断し、八つ首の蛇みたいな奴を一瞬でさけるチーズみたいにして見せた。

 

 "うはwwwwwwww一撃wwwwww"

 "あれ推定レベル50で国連の大規模討伐部隊が全滅寸前になってた奴……"

 "そもそも、カイザーホエールって物理無効じゃなかったっけ……?"

 "急にジャンルが変わったんだが"

 "エリュシオンってこんな化け物だったの? そりゃ地下組織の怪人もダンジョンに逃げ込むわ"

 

「もう一度言います。モンスターは全部私が倒します、貴方達の力を貸してください」

 

 私が深層モンスターを倒せることを証明し、もう一度言う。

 正直、これでいいのか結構びくついてる。素で大ポカして明日からネットのオモチャにされないか心配で気が気じゃない。不安渦巻く。

 とりあえず、不安を紛らわすために、目についた気球みたいに空飛ぶ巨大クラゲを拳で爆散させておく。ついでに着地地点に居たワ二怪人も粉砕した。

 

 "北16番ライブカメラ、ヨトゥン ¥5000"

 

 と、そこでコメント欄の目立つ所に敵の居場所が入る。嬉しい、皆の善意に感謝したい。

 私は視線を北へと滑らせ、確かに居た巨人っぽいモンスターに向けて魔力の刃を放ち、正中線で真っ二つにする。

 

 "えっ、ええ……第一拠点付近から北16番カメラまで攻撃届くんだ……"

 "深層モンスター即死させる火力をキロ単位の射程で出せるのかぁ……"

 

「情報ありがとう。できる限り早く全滅させたいので、次々言ってくれて大丈夫です」

 

 私は近くに居た三連結ゴリラみたいな怪人をアッパーで爆散させると、スマホに向けてぎこちなく笑う。

 

 "北西の辺りに、オリハルコンゴーレム ¥5000"

 

 私は道路を駆け抜け、剣と盾を持つ巨大ゴーレムを砂山に変える。

 

 "西6番、空飛ぶクラゲとイカ ¥5000"

 

 私は砂山を蹴り飛ばして加速すると、イカの触手を持ってクラゲにぶつけ、そのまま両方まとめて踏み貫く。

 

 "南西14番カメラ、バハムート ¥5000"

 

 更に踏み抜い貫いた勢いを利用して跳ね返るように大きく跳躍、こっちに向かって黒い炎を吐いて来た巨竜を炎ごとキックで斬り裂いた。

 

 "風向き変わってきたわね"

 "ヤバくない? エリュシオンちゃんヤバくない?"

 "昔の怪人どもは、どうしてこんなバケモノに喧嘩売ろうと思ったんだ?"

 "南にドレッドノートタートルいるよー ¥5000"

 

 南を見れば、私に向けて背中の大砲を打とうとしている岩石の亀。

 私は纏っている燐光を網のように組み替え、打ち出された黒い弾を受け止めると、そのまま掴み投げて返却する。ズドンと遠くで音がして、亀がひっくり返って灰になった。

 

 "纏ってる光ってああやって使えるのか……"

 "攻防揃って隙がなさ過ぎる"

 "ドレッドノートタートルってレイド対応指定モンスターだったよな?"

 

 "緊急緊急! シルバーフェンリルの群れが街の方に向かってる! ¥10000"

 "北北北! 急いでーっ! ¥10000"

 

 休む暇もなく、次は三十匹ぐらいの狼の群れが街を目指して行進中。

 私は弾を受け止める時に集めていた燐光をそのまま発射、狼の群れを一網打尽にした。

 

 "フハハ! 見ろ、深層モンスターがゴミのようだ!"

 "うそぉ、あれ一匹あたりレベル40後半あるんやで……"

 "おかしい、今の平原は深層モンスターが街に繰り出そうとする危機的状況だったはず"

 "なんかもう滅茶苦茶過ぎて楽しくなってきた。あ、東によくわからない生き物多数。未知のモンスターかも"

 

 視聴者さんも慣れてきたらしく、次々とモンスターの居場所を教えてくれる。

 テンポよくて凄く助かる。そう思いつつ、なんか黒くてうねる変な生き物の群れを燐光で圧縮して無に帰す。

 

「次をお願いします!」

 

 次の敵を教えて貰うべく、スマホを確認する私。

 

 "エリュシオンちゃん、学園! 学園!"

 "うわ、なんか大変なことになってる!"

 "やっぱダンジョン学園の転移装置からモンスターが出て来てるのか!"

 

 でも、敵の位置を教えてくれるはずのコメント欄の様子がおかしい。学園? どうしたの?

 コメント欄に促されるように学園へと視線を向ける私。コメント欄が困惑している理由は一目瞭然だった。

 ダンジョン学園の周り、黒晶石が城壁のように取り囲んで侵食し始めていた。

 ダンジョン学園を取り囲む黒晶石は地面の花畑から上へ上へと侵食域を伸ばし、黒いドームを形成しようとしている。

 

「このままじゃ入れなくなる……! 周囲のモンスターは!?」

 

 "そこそこ強いのは残ってるけど、深層の大物は居ないっぽい!"

 "エリュシオンちゃんは絶対学園に突入した方がいいって!"

 

 その意見には私も同感。なによりも、あの中で戦っているだろうセレナちゃんが心配だ。一刻も早く駆けつけたい。

 

「私は今からあそこに突入します!」

 

 私はリオちゃんのスマホを胸に挟むと、助走をつけて一気に跳躍。

 

 "え、今挟んだ、胸?"

 "この画面の揺れは乳揺れなの? そうなの?"

 "むっ、いいねぇ"

 "超絶美少女の誇るド迫力デカパイに心から感謝"

 

 俄かにざわめくコメント欄にも気づかず、私は閉まりかけているドームの上層から学園の敷地内へと無事侵入。

 直後に黒晶石のドームが完全に閉じられ、学園は外界と完全に遮断された。

 

「こっちは無事に……」

 

 私は視聴者さんに突入成功を報告しようとしたけれど、スマホは既に圏外になっていた。

 魔力通信のスマホが途切れる場所は一つ、魔力異常地帯だけだ。つまり、黒晶石に閉ざされたこの場所は異常な魔力が吹き荒れている。

 

「視聴者さんにはお世話になったし、後でお礼を言っておかないと」

 

 私はスマホの電源を切って胸にしまいなおす。

 これからセレナちゃんを助けに行くのに、変なタイミングで通信が戻ったら一大事だ。キャラ崩壊だけならまだしも、最悪一発で正体がバレる。

 私は気を引き締めなおすと、周囲の様子を窺いながら転移室を目指して学園の廊下を駆ける。

 意外にも廊下にモンスターの気配はなかった。全部外に行ってしまったのか、もしくはテラーニアがセレナちゃんとの戦いに使ったのかもしれない。

 

「ようやく、戻ってこれた……」

 

 誰も居ない廊下を駆け抜け、私はセレナちゃんの無事を信じて転送室の扉を開く。

 

「よう、いいタイミングだなぁ、エリュシオン。丁度こっちも終わったところだぜ」

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