魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第6話 怪人、結束する3

「なんだと! それは本当なのか!? 一人がゴードンに力を与えている訳ではなく、魔王自体が二人いるのか!?」

「はい。ゴードン社長が手に入れた黒晶石、間違いなく私と同じラブリナの欠片です。そして、それと同等以上の力を持つ黒晶石の気配があります。そこは現状でも断言できます」

 

 それを聞いたクロノシアとミレイは顔を見合わせ、二人揃って絶望的な顔をする。

 

「ふぉああああ! ダメではないか! それではダメではないかっ!?」

 

 そして、クロノシアは駄々っ子のようにころころと地面を転がった。

 

「ダメじゃないよ。ラブリナさんの欠片はラブリナさんが足止めできるんだから、後は皆でもう一人の魔王をなんとかすればいいって話だよね?」

「そのもう一人がバケモノなのだ! 奴、喜劇王ラフィールは正真正銘バケモノぞ! 余達でも歯が立たぬのに、知恵と勇気だけでお前達が戦力になるか!」

「お、落ち着いて、クロノシア!」

「戦力もない、食料もない、武器もない! 最初から負け戦もいい所ではないか!?」

 

 私が必死になだめても、クロノシアは情けなく地面を転がり続けている。最後の希望が断たれてしまったような顔をしていて居た堪れない。

 どうやら、クロノシア達にとってもこの交渉は切羽詰まったものだったらしい。武器や食料どころか、人工物一つないこの空洞を見て私はそう察する。

 

「うーん、困っちゃいました。クロノシアさん達にとって、ラブリナさんが最後の希望だったみたいですね。どうしましょう、こりすちゃん」

「ど、どうしようって言われても、私だって困るよ……」

 

 エリュシオンが事態の遠因だし、私もエリュシオンとして手助けする覚悟はできている。でも、私がエリュシオンだなんて公言できようはずもない。

 少ないダンジョン経験を思い出しつつ、何か打開策はないものかと考えること暫し、

 

「そうだ! ダン特もクロノス社の社長を追ってるんだよ。だから、その動きに合わせて行動するのはどうかな!」

 

 私はそうクロノシアに提案した。

 湖畔で会った時、ナナミちゃんはダン特の応援待ちだと言っていた。魔法少女にダン特、どちらも国の主力だ。流石に戦力になってくれると思う、思いたい。

 

「おー、いいじゃん。ダン特と魔法少女が目の前で動いてれば、ウチ等にまで睨みを効かせてる余裕はないっしょ」

「むぅ……魔法少女か。確かに人類側の上位戦力であることは認めるが……」

 

 それにリオちゃんが賛同し、検討に値すると判断したらしいクロノシアが、むくりと状態を起こして考え込む。

 

「試す価値はあるよ。そこで寝転がってるよりも絶対にいいから!」

 

 私が力説し、クロノシアが頷く。

 

「うむ、その通りだな。乳頭巾、お前はいいことを言った。ミレイ、チャンスは一度だ。それまでにできる限りの準備をするぞ」

 

 そう言って立ち上がったクロノシアは、きゅるっとお腹を鳴らして再びその場に倒れた。

 

「く、クロノシア様!?」

「……空腹で動けん。そこのサラダバーを取ってくれ」

 

 慌てて駆け寄るミレイに、力を振り絞ったクロノシアが洞窟の端を指差す。そこにはコケと雑草が生えていた。

 クロノシア、あれで飢えを凌いでたの!? あれ、ちゃんと食べられる草なの!? 少なくとも生食は無理そう!

 

「く、クロノシア! 私のチョコバーあげるから! ダンジョンに生えてるものを食べるのは止めよう!」

 

 見るに見かねた私が、鞄に常備しているチョコバーを差し出すと、

 

「ああああああーー。糖分が、糖分が染み入る~~~~っ!」

 

 寝転んだままのクロノシアが、リスのようにもさささと一気にがっついた。

 

「おーおー、血糖値爆上がりで幸せそうな顔してんじゃん。でもウチ達も他人事じゃないね、これ。ウチ等の食事や装備どうするよ? 全員疲労困憊だし、こりっちゃんは得物の鉈壊れちゃってる。結構キツい状況じゃん」

 

 クロノシアの急場は凌いだものの、同じ問題は私達全員に付きまとっていた。

 紅葉林を探せば秋の味覚とかもあるんじゃないかなって思うけど、ダンジョン内で自生している果実や生物などは、地上でちゃんと鑑定してから食べることを強く推奨されている。

 寄生生物やら未知の毒やら、一歩間違えれば死亡一直線の危ない話も聞くし、楽しいはずのご飯タイムにロシアンルーレットみたいな真似はしたくない。

 

「こりすー」

 

 と、そこでミコトちゃんがぽんぽんと自分の胸を叩いてアピールしてくる。

 

「こりすー、こりすー」

 

 ドヤ顔のミコトちゃんが、もう一度自分の胸を叩いてアピールする。

 間違いない、あの顔は妙案があるから聞いて欲しい顔だ。 

 

「ミコトちゃん、何かいい手があるの?」

「あるのです! 実はここ、魔力の集結点なのです! 開門が使えるのです!」

 

 腰に手を当て、ででーんと胸を張るミコトちゃん。

 

「おお、マジか」

「なのです! 開門役になる私以外は帰れるのです! でも、できれば置いて行かないで欲しいのです! できることならば!」

 

 ドヤ顔からちょっぴり涙目の表情に変わって、そう付け足すミコトちゃん。

 あの表情急転直下っぷりから察するに、話してる途中で自分は置き去りになるって気づいちゃったんだろう。

 

「だ、大丈夫だから、ミコトちゃんを一人でダンジョン内に置いて行かないよ!」

「はい。こりすちゃんの言う通りです、パーティは一蓮托生ですからね。私もこの状況で帰ってしまうと二度とダンジョン探索が出来なくなりそうですし」

 

 セレナちゃんは苦笑しながらスマホでお家に連絡を入れている所だった。

 リオちゃんが生配信しちゃったもんね。セレナちゃんのお家、今頃パニックになってるかもしれない。

 

「そうだね。一度退くのは逆に危険だし……」

 

 退くのは危険、そう私が考える理由はちゃんとある。クロノス社はある程度セレナちゃんの動向を掴んでいた。

 それに湖畔での戦いや、さっきのラブリナさんの口ぶりからすると、黒晶石の魔王は大まかに仲間の場所を察知できるらしい。

 なら、紅葉林からセレナちゃんが居なくなったことを察知された場合、社長は更に何処かへと逃げてしまう可能性がある。

 ダン特に追われるリスクが、セレナちゃんを捕まえるメリットを上回る。そう判断するかもしれないのだ。

 

「ミコトちゃんの開門を使って、拠点をここに作れないかな?」

 

 だから、あえてセレナちゃんを目の前にちらつかせたままにして、社長が紅葉林に居るうちに決着をつけられるプランを選ぶ。

 ここで社長に逃げられてしまったら、セレナちゃんは常に不意の拉致や襲撃に怯え続けないといけない。

 正体露呈からの破滅ルートにいつも戦々恐々の私は、その辛さが容易に想像できる。そんな体験、親友には絶対させられない。自分も体験したくない。

 

「お、こりっちゃん、ナイスアイデア。ここに拠点作れれば今後も凄く楽になるし、ウチも賛成だよ」

「私もそれに賛成なのです! それなら私だけ寂しく居残りしなくてもいいのです!」

「セレナちゃん、拠点建材の手配ってできそう?」

「はい、大丈夫ですよ。平原エリアの復旧に使った建材に予備があったはずです。直ちに準備できるかと思います」

 

 かくして、私達はクロノス社とラフィールなる魔王に反撃すべく、ダンジョン拠点の設営をはじめるのだった。

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