魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第6話 怪人、結束する5

「あの……セレナちゃん」

「はい、大丈夫ですよ。そのつもりで量も多めに用意してあります」

 

 よかった。スポンサーからのお許しが出たので、私は大手を振ってクロノシア達を呼びに行く。

 

「クロノシア、私達はこれからご飯を食べるんだけど」

「おお、そうか。……なら悪いのだが、余達に魔石水筒を貸してはくれぬだろうか。お前達も冒険者だ、持っているのだろう?」

 

 魔石水筒は水魔法を応用して作られた道具で、キャップについている魔石に魔力を通せば無限に水が作れる便利な代物だ。

 魔力さえあれば水が飲み放題。わざわざ重い水を持ち歩く労力から解放され、ダンジョンで迷子になってカピカピに干乾びる心配もない。まさに冒険者の必携品だ。

 

「そうじゃなくて! 紅茶とか、サンドウィッチとか、あるから!」

 

 クロノシア達が水をがぶ飲みして空腹を紛らわそうとしていると察し、私は一生懸命テーブルを指差す。

 

「まさか……お前、チョコレートバーだけでなく、使い終わったティーパックを施してくれるのか!?」

「泥以外の味がついた飲み物を飲めるのかにゃ!?」

 

 思わぬ施しに驚愕する二人。って違う! それ施しどころか、かなり嫌味なムーブだよぉ!?

 低い! 私達に対する期待値があまりに低い! 期待値が地面にめり込んでる!

 

「セレナちゃんは紅茶にティーパック使わない人だから! って、そうじゃなくて、クロノシア達の分もあるから、一緒にご飯食べようって誘いに来たんだよ!」

「なんだ、なんだ、何が狙いなのだ。まさか同行の代わりに食料を差し出して、余達だけで行ってこいとは言うまいな?」

 

 私が力説すると、今度はクロノシアが疑いの眼差しを向けてくる。

 クロノシア、そんなに人間不信なの? ここまで信頼されていないと逆に潔さすら感じる。クロノス社、余程クロノシア達に酷い扱いをしていたんだろうか。

 

「対価なんて要求しないよ。私達は同盟でしょ。私がそっちの立場だったら、目の前の同盟相手を見捨てるような相手と同盟なんて組みたくないから」

 

 でも、そんなことで手を引っ込める私じゃない。ここで意地を張れなきゃ、魔法少女なんて狂気のボランティアは到底できやしないのだ。

 私は二人の手を引っ張って半ば無理やりテーブルに着かせ、それを見計らったようにじいやさんが二人の前に食べ物と飲み物を並べていく。

 

「か、感謝はするが、それと同盟は別の話なのだぞ、絶対だぞ」

「こちとら素寒貧にゃ。払えって言われても払えんからにゃ」

 

 予防線を張りに張った後、恐る恐る食べ物を手に取る二人。

 そこから二人が一心不乱に食べ始めるまでは早かった。やっぱりお腹空いてたんだ、よかった。

 私はそれを見届けると、ようやく自分も席に着く。ミコトちゃんもリオちゃんも呼ばずとも既に来ていて、説得に手間取った私が一番最後だった。

 

「お疲れさまでした、こりすちゃん」

「ううん。今は仲間なんだし、二人を放置してご飯食べても美味しくないから」

 

 二人に食べ尽くされる前に急げとタマゴサンドを頬張りながら、作業の進捗状況を確認すれば、さっきまでミコトちゃんが居た場所で転移装置が作動していた。

 転移装置を使って忙しなく往来する作業員さんは、ミコトちゃんが開門していた時より細切れの建材を運んで来ていた。

 転移装置から廊下パーツっぽいものを伸ばし、四角い土台パーツを廊下にくっつけて、土台の上に出来合いのパーツをプラモデルのようにパチパチとはめ込んでいる。

 

「はへぇ、こんなに簡単に拠点ってできちゃうんだ」

 

 レタスサンドをシャキシャキと食べながら、私はどんどん組みあがっていく拠点を観察する。

 何もなかった所に凄い速さで拠点ができていく様子は、見ているだけで結構楽しい。

 

「こりっちゃん、普通の拠点造りがこんな簡単だと勘違いしたらいかんよ、ここは奇跡の立地だからさ。本来はモンスターの攻撃を防ぎながら先に防壁作らないといけないわけ」

「あ、そうだよね。だから簡単に作れるようになってるんだ」

 

 一発で家を薙ぎ倒すようなモンスターが襲ってくる階層だってある。

 そんな所に拠点を建てるのなら、建築素人の冒険者でも簡単に組み立てられなきゃいけないよね。

 

「開門の巫女が居なければ、転移装置と魔石を運んでダンジョンを攻略する必要もあったのです」

 

 スコーンを齧りながら、むふーと自慢するミコトちゃん。

 実際、ミコトちゃんが一番の功労者なのは確かなので、今日は目一杯自慢して欲しい。

 そんな話をしながら食事を終えた頃には、空洞には無数の廊下が張り巡らされ、端っこには仮設住宅みたいなものまで建っていた。

 

「お、もう個室ユニットが完成してんじゃん。んじゃ、ウチ達はさっさか寝ようか」

「だ、ダメだよ!? 作業員さんの手伝いしないと!」

 

 当然の権利みたいに寝に行こうとするリオちゃんの前に回り込み、私は慌てて制止をかける。

 

「お、こりっちゃん真面目だねぇ。感心感心。でも疲れてるんだから休んどきなって」

「それは疲れてるけど! 作業員さん頑張ってる横で自分だけ休憩できないよ!」

 

 さしもの私もそこまではふてぶてしくはない、そんなことをしたら申し訳なさが勝る。

 大した戦力にはならないだろうけど、拠点作るって言うのも言い出しっぺだし、ここはちゃんと手伝っておきたい。

 

「んー。いやさ、これはちゃんとした役割分担なんだって。ダンジョン作業員って言っても戦闘力ない人がほとんどで、モンスターを退治できる人は少ないわけ」

 

 リオちゃんの言葉に言われて作業員さんの方を見て見ると、確かに作業員さん達は一切の武器を持っていない。完全に建築特化なのだ。

 

「だから拠点建設は作業員さんに任せて、モンスターが現れた時はウチ等の出番。そこで眠気まなこ擦ってる訳にはいかないじゃん、うっかり防壁の無い状態で施設を攻撃されたら壊れる時は秒だよ、いやホントに」

「うーん……」

 

 理屈はわかる。わかるんだけど、その場合私って防衛戦力にならないような気がする。

 私の現在レベルは3。癒しの能力を持つミコトちゃんとかと違って、前衛戦闘要員はきっちりレベルが貢献度に影響してしまう。

 ……私のクラスである【銀の天狼星】は、厳密に言うと前衛じゃないんだけど。

 

「こりすちゃんがどうしてもって言うなら、そこは無理強いできないと思います。その時は私もお手伝いしますよ」

 

 迷っている私を見て、セレナちゃんが微笑む。

 

「わかった。作業員さんには悪いけど休もう」

 

 それで私もリオちゃんの進言通り休むことを決意する。

 ダンジョン初挑戦の上、黒晶石のせいで体調不安が付きまとうセレナちゃんに無理はさせられない。既に体調が優れないようだし。

 

「ほーん、こりっちゃんって中々面倒な性格してんね」

「はい。でも、そこがいい所でもあるんですよ」

 

 呆れ顔をするリオちゃんに、楽しそうに口元を押さえたセレナちゃんが言う。

 あれ、もしかしてセレナちゃん、私がそう返答するってわかってて提案したの?

 やっぱりセレナちゃんには敵わないなぁって思いつつ、私は思ったのと違う形でダンジョン初お泊りを迎えるのだった。

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