魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第7話 怪人、反撃する5

 かくして、クロノシアの案内の下、私達はクロノス社の秘密研究所がある魔石採掘場へと急ぐ。

 ダン特の人達が周囲のモンスターを倒してくれていたおかげか、ここまではモンスターと出会うことはなかった。でも、ここからは黒晶花の侵食域、このままいい調子で進むことはできないだろう。

 

「採掘場はここからもうすぐだ。ただ……ライブカメラの情報ではこの辺りから黒晶花の侵食が始まっているそうだな」

「はい。容易くは進ませて貰えないかと思います」

 

 クロノシアの言葉にセレナちゃんが頷き、それを肯定するように黒晶花が揺らめいて、無数のカボチャお化けへと姿を変える。

 

「あれは紅葉林の通常のモンスターね。丁度いいわ、厄介なウサギ人形達が出てくる前に、戦闘面での自己紹介を済ませておきましょ。指揮の参考にしてちょうだい」

 

 言いながら、ナナミちゃんが武器である曲刀を構えて前列に立つ。

 

「私は【治癒剣士】って言う少し珍しいクラスのレベル22よ。回復と少しの攻撃魔法ができる中衛よりの前衛ね、【パラディン】クラスの防御面を攻撃に振ったイメージをしてちょうだい。変身後は攻撃寄りになって魔法剣士型の魔法少女になるわ」

 

 言いながら、ナナミちゃんはカボチャお化けの攻撃を掠らせながら肉薄して両断。

 受けたかすり傷を自分の回復魔法で癒していく。便利。

 

「ふむ、そう言う意図ならば余の自己紹介も必要であろう。とはいっても、レベル測定などしたことがない故クラスとやらはよくわからぬ。恐らく高レベルの盾職であろうな」

「私も測定したことないから詳細不明にゃけど、ちょっと杖で殴れる魔法職だにゃ」

 

 言いながら、クロノシアが堂々とカボチャお化けの攻撃を受け、ミレイが氷の槍を連打してカボチャお化けを小気味よく破壊していく。

 

「強いわね、怪人だからかしら。人間のレベルに換算すれば最低でもレベル30……いえ、もっとかしら?」

 

 カボチャお化けなど歯牙にもかけない二人を見て、ナナミちゃんが舌を巻く。

 

「こりすー、私の自己紹介も必要なのですか!? 私もモンスター倒しながらカッコよく自己紹介したいのです!」

 

 ハイハイッと手をあげて、鼻息荒くアピールするミコトちゃん。

 

「み、ミコトちゃんは後衛の回復役なんだからそんなことしちゃダメだからね!?」

 

 でも、ミコトちゃんは矢面に立ったらいけない純回復役だ。

 そもそも、毎回パーティ組んでるんだからレベルとかは元々よく知ってるし。

 

「むむー、残念なのです……」

「大丈夫。ミコトちゃんの凄さは、ダン特の人達を治療した時や、拠点作った時に皆わかってるから」

「そうだぞ、リーダーの言うことには従っておけ。指揮系統の統一は重要だからな、絶対総統である余が言うのだから間違いない。うむ」

 

 しょんぼりと項垂れるミコトちゃんに、悠々と帰って来たクロノシアが言う。

 ……あれ? リーダー?

 

「ねえ、セレナちゃん。このパーティのリーダーってセレナちゃんだよね?」

「いいえ、こりすちゃんですよ?」

 

 不思議そうな顔を顔をして小首を傾げるセレナちゃん。

 

「そうなの!?」

 

 聞いてない!? 一体いつ、どこで私がリーダーになっちゃったの!?

 

「リオが褒めてたわよ。ミレイ助ける時も、社長ロボを相手取る時も、的確に指揮してたって」

「……い、言われてみればそうだったかもしれない」

「無我夢中だったなんて、こりすちゃんらしいですね」

 

 うふふと笑いながら、歩き始めるセレナちゃん。

 道すがら思い返してみれば、確かにどちらも気づけば私が指示を出していた。

 迂闊だった。ただ、あの場で実戦経験が最も多いのが私だったのも事実。エリュシオンとして長年修羅場に飛び込み続けた私から見れば、手慣れた冒険者のリオちゃんですらひよっこ同然なのだ。

 

「うむむむむ……」

「どの道、このパーティはこりすちゃんが仕切らないと回りませんから。諦めてリーダーしちゃってくださいね」

 

 絶対セレナちゃんでも回せるよねって思うけど、反論しても勝ち目がないことぐらいわかっている。

 最悪、見るに見かねたセレナちゃんが口を出してくれるだろう。そう期待して、そのままなし崩し的にリーダーの役割を受けることにするのだった。

 

 それから、次々と現れるモンスターを退けながら進むこと一時間半ぐらい。

 

「ここだ。ここに採掘場への入り口がある」

 

 先頭を行くクロノシアが、岩肌の露出した急勾配の前で足を止める。

 そこにあったのは私達の拠点と同じような岩場、大きな岩の陰には重厚な金属製の扉があった。

 遠目では気づけないよう巧妙に隠された扉、クロノシアが案内してくれなかったら見つけられなかったと思う。

 

「こっちだ。ミレイ、扉を開けてくれ」

「了解ですにゃ」

 

 クロノシアの指示を受け、ミレイが両手で無理やり扉をこじ開けていく。

 

「ちょ、ちょっとクロノシア!? 隣にパスワード入力する所あるよ!?」

 

 めりめりと扉を曲げながら開く乱暴な姿に驚き、私が横に備え付けられた電子ロックを指差して主張する。

 

「そんなもの、余達が出て行った後に変えてあるに決まっておるだろう」

 

 クロノシアがさも当然のようにそう言って、こじ開けられた扉から中に入っていく。

 それは正論なんだろうけれど、ひん曲がった扉は閉じられない、モンスターも入りたい放題だ。どうせ壊すなら、ダメ元で一度チャレンジしてみても良かったんじゃない?

 

「外から入って来るモンスターなんて誤差よ。どうせ、中では厄介なモンスターが山ほど待ち受けているはずだもの」

 

 言いながら、ナナミちゃんはずっと背負っていた長い棒の包装を外し、先端にライブカメラの付いた杭を地面に差し込む。

 

「あ、ここにライブカメラ設置するんだね」

「ええ、起動しておけばダンジョンアプリでここの場所がわかるもの。リオや他の仲間が迷わず来れるでしょ」

 

 ナナミちゃんがライブカメラにスマホを当てて、初回起動の準備を完了させる。

 ダンジョン各地に設置されているライブカメラは魔石併用型のソーラー式で、一度起動してしまえば基本的にメンテナンスは要らないらしい。

 

「さ、行きましょ。レベルの低いこりすとミコトは前に出すぎちゃダメよ」

 

 ライブカメラがちゃんと映像を映しているのを確認すると、ナナミちゃんは通路の様子を確認して私達を手招きする。

 リオちゃんといい、ナナミちゃんといい、本当に熟練冒険者なんだなって感心しつつ、私達もナナミちゃんに続く。踏み入った通路の中は一面のコンクリート張りだった。

 

「思ったよりもしっかりとした作りですね。私達の拠点と遜色ありません」

「本当ね、違法も違法よ。私達に見つからず、よくぞこれだけの建材を持ち込めたものだわ」

 

 天井にしっかりと灯りまである通路を見回して、ナナミちゃんが不愉快そうに鼻を鳴らす。

 

「ちゃんとした灯りがあるってことは、魔力か電気が通ってることだもんね。ミコトちゃんみたいな開門巫女を使ったのかな」

「うむ、そう聞いている。ゴードンが懇意にしていた地下組織所属の開門巫女に依頼して、大枚はたいて運び込んだらしい。こちらが拠点を建てたあの場所も、元々は開門候補地だったようだ」

「ただ、あっちは採掘場から遠いだけでなく、攻略最前線への通り道近くだからにゃ。すぐ見つかるって放棄したみたいだにゃ」

「うーん。開門能力があれば、拠点も秘密のアジトもすぐに作れちゃうんだねぇ……」

 

 拠点作りをした時も思ったけれど、ダンジョン内でこうも簡単に建物を作れる開門は便利の一言。悪巧みをしている組織にとって喉から手が出るほど欲しい能力に違いない。

 この前、ミコトちゃんが攫われそうになってたけど、狙われる訳だなって今更ながらに納得してしまう。

 

「悪い巫女も居たものなのです!」

 

 そんな話を聞いて、ふんぬーと憤るミコトちゃん。

 完全に棚上げしてるけど、ミコトちゃんもかつては悪い巫女だったんだからね。

 例え私のパンチで跡形もなく消滅した軟弱暗黒神だとしても、地上への暗黒神召喚は前科として中々強烈な一犯だ。

 

「クロノシアさん、この施設、監視カメラの類は設置されているんですか? 黒晶石を用いたラブリナさん本来の戦闘スタイル、あまり人前で晒したくないんですけれど」

「あそこに一つと、採掘場から研究所に入る所に同型の物が一つある。だがクロノス本社ではなく、ここの研究所と社長のスマホで管理されている。外部に漏れる心配はないだろう」

「侵入者が少ない場所だからにゃ。どちらかと言えば私達が逃げないようにする抑止力だにゃ」

 

 ミレイが天井に据え付けられている監視カメラを杖で差し、ついでに氷弾を発射して破壊する。

 

「ダンジョン資源の大規模取得は国に申請が必要、どこかから漏れ伝えられたら没収確定だものね。無事に事件が片付けば、この採掘場も国が没収して国営になるのは間違いないわ」

「地下組織に頼んだだけあって、普通の社員さんには言えないぐらい後ろめたいんだねぇ」

 

 私は相槌を打ちつつ、セレナちゃんのアシストに感謝する。

 監視カメラの位置がわかれば、エリュシオンに変身するためのハードルはぐっと下がる。恐らくセレナちゃんはラブリナさんをだしにして、変身の障害になる物を探ってくれたのだ。

 

「注意するのだ、そろそろ採掘場に出る。開けていて、向こうとしても荒事をするにはうってつけの場所だ」

 

 先頭を歩くクロノシアが注意喚起して扉を開ける。

 途端、閉塞感のある廊下とは打って変わって一気に視界が開けた。

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