魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~ 作:文月なご
『ノオオオオオオッ!!?』
右手を失ったことで半狂乱になった社長は、残る左腕で閃光の正体を薙ぎ払おうとするが、逆に光に弾かれて左腕までも砕かれてしまう。
「いやー、めっちゃ危機一髪だったじゃん。マジでエリュシオンに感謝だね」
そして、蛍が飛び立つように光が掻き消え、その中から槍を構えたリオが姿を現した。
「リオ!?」
「ちょい待ち。ウチ、もう残り変身時間少ないから、敵を散らせるだけ散らしとく」
呆気に取られるナナミに制止をかけると、リオが滑るように円盤を跳ね駆ける。
そんなことはさせないと、円盤から変身を解除させる黒い波動が放たれるが、リオの変身はびくともしない。
トラ人形を串刺しにし、ゾウ人形を薙ぎ払って両断し、槍に炎を纏わせてライオン人形を一気に叩き潰す。
「ふーっ……。これで正真正銘時間切れだわ」
人形達が黒い煙を上げて消える中、変身解除したリオが額に汗を流しながら大きく息をはく。
「ふん、流石は魔法少女。エリュシオンでなくともこの程度はやってのけるであろうな」
「やってのけないわよ! リオ、アンタどうなってるのよ!? って言うか、変身解除してどうすんの! まだ戦闘は終わっていないのよ!?」
感心するクロノシアを押しのけ、リオに詰め寄るナナミ。
「いやさ、にゃん吉っさんに教わった正規変身って奴、強い代わりに魔力を凄いバカ食いすんの。街に紅葉林にと駆け抜けて来たウチはもう魔力切れ、だから後はナナミに任せた」
リオは疲れきった顔で苦笑いすると、ナナミにペンダントを手渡す。
「継戦能力を代償にした高出力形態ってことね」
「にゃん吉さん曰く、ウチ等が普段使ってるのが低出力の簡易モードなんだってさ。覚悟しときな、想像以上に魔力バカ食いするよ」
リオは悪戯っぽく笑うと、ナナミに手早く正規変身の手順を教えていく。
「リオー、ナナミー、急ぐのです! 次の人形が襲って来るのです!」
「さ、ナナミ、後は任せた。戦闘力は今までとは比べ物にならないぐらい跳ね上がるってウチが保証する」
リオがナナミの背中を軽く叩き、ナナミが押し寄せる人形の前でペンダントを構えて変身態勢を取る。
「わかったわ。……マナチェンバー、イグニッション!」
胸の前に掲げたペンダントが輝き、ナナミの姿が魔法少女の物へと変化する。
変身と同時、爆発するようにナナミが駆け飛び、魔力で強化された曲刀でライオン人形を両断。返す刃で水の弾丸を放ってゾウ人形に大穴を開ける。
「っうう!? 確かに戦闘力も魔力消費も桁違いだわ! 体に反応がついていかないぐらいよ!」
言いながら、ナナミは曲刀を振り回し、魔法を連射し、際限なく湧いてくるモンスターを次々捌いていく。
「おおおー! 流石は魔法少女なのです!」
「魔法少女……。敵に回せば厄介だが、味方にすればこれほど頼りになる者はないな」
「それと、クロちゃん。クロちゃんの部下二人、エリュシオンが連れて拠点に向かってる。こりっちゃんも無事だって」
身構えたまま感心するクロノシアの横に立ち、リオがそう告げる。
「うむ、そうか。こりすの奴、余との約束を守ってくれたか。ならば余も同盟相手として義務を果たすとしよう」
「んで、ラブさんにもエリュシオンから伝言。相手側のラブさん、ラフィールで不足を埋めてるんだってさ。ウチにはどう言う意味かよくわかんないけど」
「なるほど、そう言うカラクリでしたか。リオ、私にとってそれは非常に有益な情報です」
トラ人形の群れを黒晶石の大剣で薙ぎ払いながら、ラブリナが巨大社長の頭部から生えた大樹を見据える。
「それは打開策を見いだせそうな情報なのか?」
「はい。欠片でしかない私は本来単独では力を行使できません。如何なる方法で干渉手段を得ていたのか考えていましたが、ラフィールに力を借りていたのならば納得です。ナナミ、今から動きを変えられますか?」
「大丈夫よ。むしろ打開策が見つかったんなら早く実行したいわね! 今までと魔法の威力が違うから、過剰消費過剰火力になってるの。変身限界がどこで来るのか自分でも読めないわ!」
モンスターを派手な魔法で次々と薙ぎ倒しながらナナミが言う。
その威力はモンスターを倒すにはあまり過剰。加減のコツを掴んでいないのは明白だった。
「わかりました。今から私が大樹へと攻撃を仕掛けます、ナナミは襲い掛かって来るであろう枝を切り落としてください。クロノシア達はゴードン社長の足止めをお願いします」
巨大社長の頭から生えている黒晶石の大樹が妖しく輝き、切り落とされていた巨大社長の腕が再生していく。
それを見たラブリナは、手にしていた黒晶石の大剣を自ら砕き、身軽な杖剣の状態へと戻した。
「ラブリナ殿、作戦は承知したが、それだけでこの円盤を墜とせるのか?」
「はい、エリュシオンの情報でそれがわかりました。例えるならば、今敵対している私は頭脳と心臓だけの状態です。ラフィールから借り受けているであろう体……この円盤から切り離してやればどちらも機能不全をきたすでしょう」
「マシンアーマーの中から操縦者を引きずり出すって感じなのかにゃ」
横から薙いでくる社長の右腕をクロノシアが受け止め、ミレイが風の防壁で左腕の動きをずらす。
その隙にラブリナが腕の間を掻い潜って社長の体へと一気に迫る。
「ナナミ、枝が来ます。対処をお願いします!」
「わかったわ!」
ナナミの周囲に氷の剣が無数に展開され、ラブリナ目掛けてしなる枝を切り裂いていく。
その隙にラブリナは黒晶石でできた社長の上半身を駆け上る。
『させん、させんぞおおおおッ!! 黒晶石の寵愛を受けるのは、白鴎院セレナではなく、この私だあああッ!!』
「私は誰にも寵愛など与えていませんよ。私と彼女達は対等な仲間、こりすもそう言っていました」
自らの体を駆け上るラブリナを叩き落とそうと、巨大社長が体をかきむしろうとする。
それを阻止すべく、曲刀に氷を纏わせたナナミが社長の腕を斬りつける。ナナミはそのまま曲刀の氷を砕き、それを襲い掛かる枝へと発射して枝を細切れに切断していく。
「ナイスナナミ! それとこっちにモンスター来てる!」
「私が対処する余裕はないわ! リオ、そっちはアンタが対処してちょうだい!」
ゾウ人形に弾かれながらリオが言い、氷剣で黒晶石の枝を切り落とし続けるナナミが、リオへ視線を向けずにそう言い返す。
「リオ! ならバーサーカー戦法、するのです!」
「ちょっとミコっちゃん! バーサーカー戦法ってなにさ。めっちゃ不穏なんだけど!?」
「大丈夫なのです! 必ず治すから遠慮なくぺしゃんこになるのです!」
ささっとリオの後ろに隠れながら目を輝かせるミコトに、ろくでもない戦法だと理解したリオが冷や汗を流す。
「多少の痛みは我慢するのだ! あと少しでラブリナ殿が届くぞ!」
ラブリナの方へは向かわせないと、クロノシアがトラ人形の攻撃を受け止める。
『グオオオオッ!!』
「失礼します」
猛攻を受けて絶叫をあげる巨大社長の鼻っ柱を蹴りつけ、ラブリナは黒晶石の大樹が生えた社長の頭部へと一気に跳ね飛ぶ。
それを止めようと黒晶石の大樹が無数の枝を伸ばすが、ナナミが下から放った氷剣でそれを切り落とす。
ラブリナと黒晶石の大樹が睨みあい、ラブリナに話かけるように黒晶石の大樹が妖しく輝いた。
「そうですか、同じ欠片であっても私と貴方の答えは違うようです。私は人を己が糧として取り込むよりも、共に立つ仲間とする方が心地よい。故に私とセレナは貴方の在り方を否定します」
ラブリナは黒く妖しく身を輝かせる大樹にそう言い放つと、杖剣に黒晶石を再侵食させて大剣へと変化させる。
そして、そのまま水平に薙ぎ払って樹の幹を両断。円盤から切り離された大樹が灰色に染まって砕け散り、円盤がぐらりと揺らいで紅葉林へと墜落した。