魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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エピローグ[2章]2

 その後、私がセレナちゃんを探して洞窟の外に歩いて行くと、拠点は洞窟の外にまで拡張されていた。

 岩場は崩れないようしっかりと塗り固められ、洞窟のある周辺を取り囲むように防壁が張り巡らされている。そして、拠点の出入り口からは遠くまで道路が伸びていた。

 

「うわぁ、本当に洞窟外まで開発が進んでるんだ。ダンジョン整備って本当にあっという間なんだねぇ」

「当然よ。攻略最前線までの経路である上に、既に整備されている大規模魔石採掘場があるんだもの。国も企業も目の色変えて開発を進めるに決まってるわ」

「企業はダンジョン資源を探す為、普段から高いお金払って未踏域へお抱え冒険者を送り込んでるんよ。そんな企業にとって、目の前に整備済みの採掘場が待ってる紅葉林は完全なボーナスタイムってわけ」

 

 物珍しそうに周囲を見回す私に、道路からやって来たナナミちゃんとリオちゃんが教えてくれる。

 

「あ、二人も来てたんだね」

「ええ、事件解決に直接携わった当事者だもの、細かい後始末には当事者の情報が必要になるでしょ」

「んで、ウチはそう言ってナナミに無理やり連行された。セブカラ辞めたのに魔法少女としてこき使うなんて、こりっちゃんも酷いと思わない?」

「まだ正規変身に慣れていないんだから仕方ないじゃない。文句なら鳳仙長官に言ってちょうだい」

 

 私にわざとらしく耳打ちするリオちゃんを、ナナミちゃんが肘で小突きながら言う。二人とも仲いいよね。

 

「え、ええと、家のにゃん吉さんが余計なことしてごめんね」

「いやいや、にゃん吉っさんにはむしろ感謝しかないって。スペアペンダントの解析許可くれたおかげで、セブカラ全員正規変身できるようになってんだし。正直、正規変身覚えたら今までの変身は使えんよ」

「その通りね、なんだったら金銭を要求してもいいわよ。普通の企業だったら億単位の金銭を要求してくるはずだもの」

「そ、それはダメだよ! 家のは単なる余り物のお裾分けだし!」

 

 真顔で言うナナミちゃんに、私は慌てて手を横に振る。

 魔法少女として頑張ってる人のお手伝いに、金銭を要求しちゃダメに決まってる。にゃん吉さんだってそう考えたから無償提供したんだろうし。

 

「家のは余り物のお裾分けって……。いや、こりっちゃん的には変身用ペンダントってそういう扱いなん?」

 

 呆れたような顔で言うリオちゃん。

 あれ、もしかして失言した? エリュシオンのスペアペンダント、我が物顔で配ってるように聞こえた感じ? エリュシオンの正体疑われる要素出てきちゃう?

 

「だって、家の猫の持ち物だし……そ、そうだ二人とも、セレナちゃん見なかった?」

 

 こうなったら、これ以上怪しまれる前にスルーして押し流すしかない。

 しどろもどろになりつつも、私は強引に会話を本題へと切り替える。それでもダメだったらダッシュ逃亡も辞さない覚悟だ。

 

「あれ、学園長代理まだ居るん? 打ち合わせ、かなり前に終わってるよ」

 

 リオちゃんが不思議そうな顔で小首を傾げる。

 よかった、上手く話題を変えられた。逃げなくて済みそう。

 

「あれ、そうなの? セレナちゃんどこ行っちゃったんだろう」

「……多分、ラブリナさんの方よ。気丈に振舞っていても思うところがあるんじゃないかしら。ラフィール、ラブリナさんの友人だったんでしょ」

「あ! そう、だよね。私、少し探してくる!」

 

 私は二人にお礼を言ってセレナちゃんを探しに行く。怪しまれる前に自然に撤退出来てよかった。

 私は防壁にそってぐるりと拠点を探して回る。ラブリナさんはセレナちゃんを大事にしてるから、流石に拠点防壁の外には行っていないはずだ。

 案の定、防壁の物見台にセレナちゃん……ではなく、ラブリナさんが居た。

 

「ラブリナさん!」

「すみません、こりす。もう時間でしたね、余計な心配を掛けてしまったようです」

 

 私に呼びかけられ、ラブリナさんが振り返りながら苦笑する。

 

「ラフィールのこと考えてたの?」

「それもありますが、私自身のことも考えていました。私の欠片を取り戻したことで、私は自らの記憶の欠片を少しだけ取り戻しました」

「うん、知ってる」

「こりすも知っての通り、欠片である私は不足部分をセレナで補っています。そして取り戻した私の記憶は、そんな今の私にとって唾棄すべき意志で満ちていました」

 

 正直、それは無理なからぬ話だと思う。

 セレナちゃんと一緒に居るラブリナさんも、最初はテラーニアと一緒に大暴れしていたんだし、ラフィールと一緒に居た欠片も円盤になって大暴れしていたんだから。

 

「そうなんだ……」

「はい。そして、もしもこのまま私の欠片が集まったら、その時の私はどんな私に戻ってしまうのだろう。そう考えると、少し怖くなってしまいまして」

 

 少し遠い目をして言うラブリナさん。

 ラブリナさんは今の自分の心の良い部分が、補っているセレナちゃんによるものじゃないかって不安らしい。

 

「ねえ、ラブリナさん。私はそれ、ただの考えすぎだと思うよ」

「そうですか?」

 

 私の言葉に、ラブリナさんが少し驚いたような顔をする。

 

「ラフィールは言ってたよ。ラブリナさんを"戻して"あげたかったって。だから、きっと本当のラブリナさんは今のラブリナさんに近いんだよ」

「そうですね。そうだと思いたいです」

「もしそうじゃなかったら、その時は変えてあげればいいだけの話だよ。欠片を取り戻したってラブリナさんの考えは変わっていない。なら心配要らないよ、相手も同じラブリナさんなんだから」

 

 私はきっぱりと断言する。

 今のラブリナさんが変われるのなら、他のラブリナさんも当然変われるに決まっている。

 セレナちゃんと一緒にラブリナさんを見て来たから、そう言い切れる。

 

「……はい、そうですね。こりすらしい明快な答えです。かつて貴方の敵であったクロノシアが今は友であるように、私も意志さえあれば貴方達と共に在ることができるんですね」

「うん」

「ありがとうございます、迷いが晴れました。……では話も済みましたし、帰りましょうこりすちゃん」

 

 ラブリナさんが微笑み、セレナちゃんへと戻る。どうやらラブリナさんの憂いは断てたみたい。

 

「そうだね。こんなに後始末が長引くなんて、セレナちゃんの初冒険は大変なことになっちゃったね」

 

 私はセレナちゃんと物見台から降りながら、しみじみ言う。

 私の時も怪人組織に襲われて大変だったけど、今回はそれ以上だ。

 安全な階層での授業探索だったはずなのに、十六層で拠点を立ち上げての大冒険になってしまった。

 ……って、あれ?

 

「ね、ねえ、セレナちゃん……。私達、授業の目的地になってる拠点に行ってないよね?」

「はい。行ってませんね」

 

 気づいてしまった。あの後、紅葉林から学園に転移装置で帰ったから、全員揃って本来の目的地である拠点に到達していない。

 大変な出来事の後だったから、今の今まで完全に抜け落ちてた!

 

「こ、この場合、どうなるんだろ」

「当然……追試じゃないでしょうか」

「や、や、や、やっぱり!?」

 

 一発目から追試を頂いてしまった! 大ピンチだ! このピンチは流石にクロノシアに助けを求められない!

 涙目で慌てふためく私を見て、セレナちゃんがくすりと笑う。

 

「うふふ。涙目になっているこりすちゃん、可愛いですねぇ。私は別に気にしないですよ。冒険って言う位ですから、最短経路を走るだけじゃ逆に風情がありません」

 

 優雅な仕草でそう言うセレナちゃんの姿に、一人で狼狽しているのが恥ずかしくなって私も落ち着きを取り戻す。

 

「うう、流石は趣味人。私も見習わないと……って! セレナちゃん、学園長代理! 生徒じゃない!」

 

 危うく騙される所だった!

 セレナちゃんはリオちゃんと同じで、追試とか関係ないポジションだ!

 

「うーん、やっぱりこりすちゃんは誤魔化せませんか」

「誤魔化そうとしないでよぉ!?」

「誤魔化そうとなんてしていませんよ。こりすちゃんなら誤魔化されずに気づくって確信の上で言ってます」

「それ、余計に性質が悪くないかな!?」

 

 つまり慌てる私を見て楽しんでいるってことだよね!?

 完璧に弄ばれている! 意義を申し立てたい。

 

「でも、こりすちゃんとの冒険はどんな形でも楽しいのは本音ですよ。ですから、ラブリナさんだけじゃなく、ちゃんと私も一緒に連れて行ってくださいね」

 

 セレナちゃんはそんな私を見てくすりと笑うと、私の前に手を差し出す。

 あれかな、ラフィールに問われた時のことを言ってるのかな?

 

「ええとね、私がセレナちゃんと一緒に行くのは、改めて言うまでもないことだから」

 

 そう言って、私はセレナちゃんの手を取る。

 結局、いいように丸め込まれてしまった気もするけれど、ここは丸め込まれちゃってもいいかなって思った。

 

「はい、知ってます。こりすちゃんはいつも私を遠くまで連れて行ってくれますもんね、昔から」

 

 ひらひらと紅葉林の落ち葉が舞う中、私はセレナちゃんの手を引いてゆっくりと家路につくのだった。

 




 これで2章完結となります。
 ここまで読んでいただきありがとうございます。
 3章は1日間を空けて9/8より初回2話、以降毎日1話ペースで更新予定です
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