魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第9話 行進の巫女3

「げっ!」

 

 ルミカちゃん関連のトラブルは絶対嫌だと言っていた矢先の緊急連絡。

 露骨なフラグみたいな展開に、リオちゃんが思わずのけ反りながら顔を引きつらせる。

 

『バカリオ! どうなってんのよ!』

 

 そして、スマホの画面に映ったナナミちゃんが、開口一番そう叫んだ。

 

「ナナミ!? どしたん、パレードにモンスターが突っ込んできた!?」

『そんな状況なら私じゃなくて別の誰かに連絡入れさせてるわ! ルミカ、パーティメンバーの制止振り切って独断専行で大物狩りしてるみたいなのよ!』

「はあぁ!? あのクソガキ、マジでクソ過ぎるでしょ!?」

 

 口をあんぐりと開けてあたふたするリオちゃんに、ミレイが浮かんだタブレットをパスする。

 あ、ルミカちゃん、配信してるのかな? 私も確認しようとスマホの配信をパレード配信から切り替えると、ミコトちゃんとセレナちゃんが両脇からぎゅむっと肩を寄せ合わせてきた。

 

「ねえ、二人とも距離が近いんだけど……」

「仕方ないですね。スマホの画面は小さいですから」

 

 言って胸とほっぺを押し付けるように密着してくるセレナちゃん。

 それに負けじと逆方向から圧をかけてくるミコトちゃん。

 そうじゃなくて、二人とも自分のスマホがあるよね?

 

「あ、やっぱり配信してるのです」

 

 苦情を入れようとした私を、絶妙なタイミングでミコトちゃんが遮る。

 忘れてた。ミコトちゃんは天然でこれができる子だった。形勢不利と判断した私は抵抗を諦め、大人しくルミカちゃんの配信を見ることにした。

 

『さあ見てろ、お前等! この場違いモンスター三匹、僕様が瞬く間にぶち殺すぞ!』

 

 配信ではクリーム色の髪をした白い衣装の魔法少女が銀色のランスを構え、体から巨大な黒晶石を生やした黒いオーガ達と睨みあっていた。多分、この子がセブンカラーズダイヤことルミカちゃんなんだよね?

 画面の中を所狭しと駆け抜けるルミカちゃんは、髪と衣装をふわりと舞わせ、空襲を含めた立体的なランス突撃でオーガ三匹を瞬く間に穴だらけにしてしまう。

 体から黒晶石がはみ出た特殊個体である【黒晶石個体】は、普通の同種モンスターより遥かに強いはず。それを三匹まとめて瞬殺だ、強い。

 

「あれ、普通に倒しちゃったね」

 

 その一部始終を見て私は小首を傾げる。

 特に苦戦している風もないし、リオちゃん達は何を焦ってるんだろう。フォーメーションに穴が開くとかかな?

 

「そりゃセブカラのツートップだもん、変身中のルミカは強いよ。オニキスのおねねさんと並んで国家戦略級魔法少女だかんね」

 

 国家戦略級魔法少女! なんだか大仰な響きだけど、とにかく強いってことだよね? それならますます焦っている理由がわからない。

 

「じゃあナナミちゃんとリオちゃんは何を焦ってるの?」

『ルミカはねねと違って変身戦闘特化なの。変身前のレベルはまだ一桁なのよ』

「正規変身は今までの変身より魔力消費が激しいからさ、長丁場で扱うにはまだ不安が残るんだよね。だから、変身してない時のサポートとしてダン特メンバーをつけてたわけ」

『ねねは今回ソロで行動しているから、それが気に食わなかったのかしら』

 

 なるほど、理解した。つまりルミカちゃんは私みたいな感じなんだ。

 心配する気持ちもわかるけど、それは少し心配し過ぎじゃないかなって思う。

 魔法少女にとって変身時間は生命線。自分の限界なんて重々把握しているはず。同じタイプの魔法少女である私としては、そこはちょっと擁護してあげたい。

 

「わかった。じゃあ、私とセレナちゃんが後ろの方でサポートに回るよ。それでどうかな」

「え、こりっちゃんが?」

「うん。私は危機感知スキル持ってるからある程度安全に歩けるし、他の皆はパレードで役割持ってるから」

 

 パレードマスターのリオちゃんは当然、ミコトちゃんやクロノシア達も拠点から動かせない。ダン特の人達もそれぞれ持ち場でモンスター討伐があるだろう。

 なら特別な役目の無い私達がサポートに回るのが妥当だ。

 

『リオ、頼んでおきなさい。既に変身している以上、強敵に備えて温存しろも通じないわ』

「確かに。代わりにラブさんが監視してくれるなら、そっちの方がいいか。悪い、頼んだ。すり抜けてくモンスターは後ろで食い止めさせる。こりっちゃん達は変身解除されたルミカがピンチになった時に回収してくれるだけでいいから」

 

 二人とも魔法少女なだけあってよくわかっている。

 魔法少女は変身時に一番魔力を消費する。だから、一度変身して用が済んだらすぐ変身解除してって動きは凄く非効率的になってしまう。

 結局、変身したままの方が活動時間が長くなる場合がほとんどなのだ。

 

「うん、セレナちゃんも大丈夫?」

「はい、いいですよ。ラブリナさんも問題ないそうです」

 

 少し気になることもありましたし。と、セレナちゃんが不穏なことを呟きながら杖剣を手に取り、私も新調した鉈を透明なビニール袋から取り出す。

 この鉈はウサギ人形の出刃包丁を素材として作った戦闘用の逸品で、前回の冒険で壊れてしまったホームセンターの鉈よりも遥かに切れ味がいい。

 ……ちなみに、値段も今まで使っていた鉈よりゼロが一つ多い。これなら安い鉈を気軽に使い潰した方がよかったんじゃ、って早くも後悔してる。

 

「そうだ、こりす」

「どうしたの、クロノシア」

「採掘場に侵入者があったことは覚えているな? こんな大勢の前で事を荒立てるとは思えぬが、近くに暗躍者が居るのは確実だ。気をつけておけ」

「うん。わかった、ありがとう」

 

 私はクロノシアの忠告に頷くと、リオちゃんが転送してくれた座標を頼りに紅葉林を進んでいくのだった。

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