魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第9話 行進の巫女6

 それから、私はルミカちゃんを小脇に抱えて紅葉林の拠点へと戻ってきていた。

 

「ふん、最強魔法少女様は容赦なく敵を倒すんだな」

 

 洞窟を囲む防壁の中に入り、そろそろ放してあげようかなって思っていたところで、終始むすっとした顔をしていたルミカちゃんが口を開く。

 

「対話で解決できそうな相手には見えなかったし、モンスター化していたから」

「その結果、怪人共の手掛かりが得られなかっただろ! お前なら生け捕りにできたんじゃないか!?」

 

 ジタバタともがくルミカちゃんを放してあげると、ルミカちゃんは私へと向き直って眼前にビシッと指を差してきた。

 どうやら、ルミカちゃんは私が容赦なく怪人を倒したことにご不満らしい。

 

「あの戦闘力だと捕まえても収容できないし、逆に不要な被害を増やすだけだと思う。本物を模した単なるモンスターである可能性だってあるし」

「うぐっ……。なら、命は助けてやるとか言って手掛かりを吐かせた後、しっかり始末すればいいだけの話だろ!」

 

 情報を吐かせたらもう用済みだって始末する、それ完全に悪党のムーブだよぉ!? それを私に実行しろなんて無茶をおっしゃる!

 そもそも、無理矢理吐かせるまでもなく、怪人は私にとって捨て置けない言葉を喋ってくれちゃっているのだ。

 正直、今も聞き間違いだと思いたい。

 

「君の意見はもっともだと思う。でも、私は私のやり方でしか魔法少女ができないから」

「ふん、そうだろうな。知ってるさ! 僕様はお前が地上で活動してる頃から、その活躍を毎回手に汗握って見て来たんだからな! だからこそ僕様は認めてやらない。力を持つ者はその力に相応しい行動をすべきなんだよ!」

 

 強い語調で持論を語るルミカちゃん。毎回活躍を見てくれてたんだ。

 どうやら私に敵愾心を持っているってわけでもないらしい。なんなの、厄介ファン? 面倒くさい感じなのは確かだけど、それも微妙に違う気もする。

 

「あーあ、なにやってんの、ルミカ。助けられた後に難癖とかクソダサムーブしてんじゃん」

 

 ルミカちゃんは結局何が言いたいんだろう。って首を捻っていると、呆れた顔のリオちゃんがやってくる。

 

「チッ、ドロップアウト魔法少女が僕様にお説教なんていい度胸だな!」

「はいはい、ドロップアウト魔法少女のウチにお説教されてる自分を恥じときなー。今日のウチは超忙しいわけ。わんぱくキッズのいちゃもん大会は後にしてくれる?」

 

 敵愾心を露わにするルミカちゃんの嫌味を、リオちゃんはひらひらと手を振って受け流す。凄い手慣れてる!

 二人のやり取りを感心しながら見ていると、リオちゃんが私の方へと向き直った。

 

「あのさ、エリュシオン。変身時間にまだ余裕ある?」

「うん、大丈夫。変身してから大して魔力は使ってないから」

「なんだコイツ、あの火力出して大して魔力使ってないとか本気でヤバいだろ……。僕様改めてドン引きなんだが」

「……んじゃさ、ちょっと悪いんだけど一つ頼まれてくんない?」

 

 若干引いているルミカちゃんをスルーして、リオちゃんが私に向かってバツが悪そうな顔で言う。

 

「どこかがモンスターに襲われてるの?」

「いや、モンスターじゃないんだけど、配信見てたウチのパーティメンバーがちょっと荒ぶっててさ。その子エリュシオンの熱狂的ファンだから、会えば別方向に荒ぶってくれるかって思って」

 

 リオちゃんは苦笑した後、両手を合わせてもう一度頼んでくる。

 あ、これ絶対ミコトちゃんのことだ。危惧していた事態が起こってしまっていた。

 あの怪人、やっぱり真()()()()所属って言ってたんだ。是非とも聞き間違いであって欲しかった。

 

「わかった。期待通りになる保証はできないけど、会ってみる」

 

 私はリオちゃんの頼みを快諾する。

 今現在どんな状況になっているか容易に想像できてしまう以上、断ると言う選択肢はなかった。

 ここで引き受けなくても、どの道変身解除した私が対応することになるんだろうし。

 

「いや、変なこと頼んじゃってホント悪いね。んで、ルミカはこっち。鳳仙長官に報告して死ぬほど絞られときな」

 

 リオちゃんは申し訳なさそうに苦笑いすると、ルミカちゃんの首根っこを掴んで無理矢理引っ張っていく。

 

「おい、エリュシオン! 僕様はお前みたいなフリーダムな魔法少女は気に入らないし、認めてやらない! けど……助けられたことはちゃんと感謝してやる! 助けてくれてありがとな!」

 

 リオちゃんに引き摺られながら、ルミカちゃんが私に向かってそう叫ぶ。

 ぶつくさ文句を言ってたのに、ちゃんと感謝を言葉にしてくれるあたり、やっぱり同業者(まほうしょうじょ)だなって思う。魔法少女が貰って嬉しいものがちゃんとわかってる。

 私はそんなことを考えながら、ルミカちゃんが拠点の奥へと連行されていくのを見届けると、荒ぶっているらしいミコトちゃんを探しに行く。

 

「ぬがーっ! 放すのです、放すのですーっ!」

 

 ミコトちゃんは凄く簡単に見つかった。

 医務室でミレイに羽交い絞めにされたミコトちゃんは、手にした包帯をびらびらと新体操みたいに振り回して暴れていた。

 とりあえず無害そうな暴れ方で一安心。

 

「大変なことになってるね」

「エリュシオン!? どうしてこんな所に居るにゃ!?」

「リオに頼まれてきた」

 

 その言葉を聞いて、目を丸くしていたミレイがああと納得する。

 

「ほらミコト、お前の信仰対象が来たにゃ。さっさと大人しくしろにゃ」

「あおおー、エリュシオン様なのです! 申し訳ないのです、那由他会の名を騙る不届き者共がご迷惑をお掛けしたのです! 異端審問にかけて来るので少々お待ちくださいなのです!」

 

 私の存在に気付いたミコトちゃんは、襟元を正しながら深々と頭をさげる。

 うん、今現在迷惑を掛けてるのは、怪人じゃなくてミコトちゃん本人じゃないかな……

 

「あの怪人、君の知り合い?」

「違うのです! だからこそ名を騙っているのが許せないのです! アジトを探し出してとっちめて来るのです」

 

 振り回していた包帯を巻き巻きしながら憤慨するミコトちゃん。

 ミコトちゃんは暗黒教団【那由他会】の姫巫女。一方、あの怪人は【真那由他会】の所属らしい。

 つまり、ミコトちゃんからすれば、自らが真の那由他会だと主張する知らない連中が、自分の信仰する(エリュシオン)に嚙みついている状況となる。

 絶対に許せない状況なんだって私にも理解できるけど……その、だからって、困る。

 

「う、うん、気持ちはわかった。でも飛び出すような無茶はしないで」

「お気遣いなく! 気持ちだけで十分なのです!」

 

 違う! 気遣いじゃなくて、切なる願い! 止まって!

 エリュシオンに変身していてよかった。していなかったら、絶対情けない声でツッコミ入れてる所だった。

 

「そもそも、あてもないのに一人で怪人の隠れ家捜し歩いても無駄にゃろ。見つけられない所か、捕まって怪人に改造されるのが関の山だにゃ」

「ぐむむむ……。それでも那由他の姫巫女として、私には対応する義務があるのです」

 

 私とミレイ、両方向から窘められ、ミコトちゃんの勢いが弱まる。

 なんだろう、いつもはない手応えがある。苦言がちゃんと効いてる。エリュシオンに変身した状態で来てよかった。

 

「勇気と無謀は違うんだよ。本当に解決したいなら、一人勇み足で飛び出すんじゃなく、ちゃんと冷静になって皆の力を借りるべきだよ」

「ほら、百戦錬磨の魔法少女様もそう言ってるにゃ。どうせあてもないんだから大人しくしとけにゃ」

「わ、わかったのです……」

 

 制服の上に羽織っている白衣の袖を掴んでうなった後、ミコトちゃんは不承不承ながら納得してくれた。

 凄い。こんなに早く納得してくれるなんて、リオちゃんの読み通りエリュシオン効果は絶大だ。

 

「私もあの怪人達のことは気にしておくから、ここは我慢して。ミレイ、念のためもう少しミコトを見ていて」

「面倒だけどわかったにゃ。お前に見とけなんてとても言えにゃいし、放置しておくと余計面倒になりそうだしにゃあ」

 

 うんざりしつつも引き受けてくれたミレイに感謝しつつ、私は待たせているセレナちゃんを迎えに紅葉林へと急ぎ駆け戻る。

 でも、元那由他会のミコトちゃんに心当たりがないのは気になる。

 あの怪人達が元々の那由他会信者でないのなら、あえて那由他会を名乗る理由があるんだろうか。

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