魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第10話 暴走の巫女3

「こりす! 緊急会議、緊急会議なのです! 私達の信仰と尊厳が脅かされているのです!」

 

 その日の夜遅く、長い取り調べから解放されたミコトちゃんが、我が家のリビングで声高らかに宣言する。

 あの後、私とミコトちゃんは根掘り葉掘りどうでもいいことまで調べられた。しかもルミカちゃんは取り調べ初心者だったらしく、終始グダグダで酷い有様だった。

 セレナちゃんの横槍がなければ、レイド期間中はずっと取り調べ生活だったかもしれない。もう想像しただけで恐ろしい。

 

「そうやって信仰とか言って大演説始めちゃうのが、ルミカちゃんに疑われた原因なんじゃないかな……」

 

 私は意気込むミコトちゃんに苦言を呈しながらカーテンを閉める。

 こんな大演説、ご近所さんには絶対に聞かせられない。我が家が怪しい宗教施設扱いを受けてしまう。

 

「そもそもさ、ミコトちゃんは事あるごとに姫巫女自慢をしていたそうじゃない。それで疑われないなら、この国の治安が心配になっちゃうね、ボク」

 

 いつもの定位置で寝そべりながら言うにゃん吉さんに、セレナちゃんとリオちゃんが揃って同意する。

 当然、私も同意見。でも巻き添えは御勘弁いただきたかった。

 

「ミコっちゃんの行動、ぶっちゃけウチ等もドン引きだったし。大勢の前で突然あれはないでしょ」

「狼狽するこりすちゃんが可愛かったからいいですけれど、流石にあれは悪手でしたね」

「む、むむー……。少し気が逸ったのは否定できないのです。エリュシオン様の神託を恣意的解釈してしまったこと、ちゃんと反省はしているのです……」

 

 ちょっぴり俯いて、テーブルと睨めっこしながら反省するミコトちゃん。

 忠言じゃなくて神託なんだ、重い。エリュシオンとしてミコトちゃんと話す時は、迂闊なことを言わないよう重々注意しておきたい。

 この前だって、私の迂闊な一言でクロノス社の社長さんが洗脳されちゃったし。あれは私の中で結構なトラウマだ。

 

「それで宵月さん、メイさんは那由他会所属の開門能力者で間違いないんですね?」

「勿論、そこは断言できるのです! 私以外で開門能力を持っている唯一の巫女なのです!」

 

 再び前に向き直って、きっぱりと断言するミコトちゃん。

 

「昨日言っていた那由他会に残して来たお友達、あのメイちゃんのことなんだよね?」

「そうなのです。メイは私が那由他会を飛び出した時、那由他会は自分の大事な場所だからと言って残ったのです。だから、あんな所で冒険者の真似事をしているはずがないのです」

「だから洗脳されてるんじゃないかって疑ってたんだ」

「疑っていたんじゃなくて、確実に洗脳されていたのです! 喋り方も変だったし、もし冒険者になるのなら絶対私に一言あるはずなのです!」

 

 ミコトちゃんがテーブルに両手をついて力強く主張する。

 暗黒教団なんて特殊な環境の中で一緒に育った同年代、きっと色々と思う所があるんだろう。

 ミコトちゃんにとってのメイちゃんは、私にとってのセレナちゃんみたいな存在なのかもしれない。

 

「なるほど。ラブリナさん、黒晶石で洗脳されていたかってわかる?」

 

 確証が欲しいなって思った私がそう尋ねると、セレナちゃんの瞳が紫に輝いて、ラブリナさんへと切り替わる。

 

「残念ながらわかりかねます。強い力を持つ黒晶石や、地上に迷い出た場違いな黒晶石なら、私でも気配を察知することができます。ですが、ダンジョン内でモンスター未満の弱い黒晶石を判別することは難しいですね」

 

 ラブリナさんはそう言って、申し訳なさそうな顔で首を横に振った。

 

「ま、そりゃそうか。そんな芸当ができるんなら、ラブさんはモンスターの居場所を全部把握できることになるし」

 

 リオちゃんの言葉に私も納得する。

 モンスターは基本的に黒晶石を核として動いている。考えてみれば、ダンジョン内にいるモンスター全てを臓器レベルで把握してくれと言っているようなものだ。

 

「ただ、クロノス社に接触していた地下組織が旧那由他会であると仮定した場合、洗脳されていた可能性は十分にあるかと思います」

「クロノス社はミレイを黒晶石で洗脳してたもんね」

「でもさ、こりっちゃん。そんな地下組織の関係者がしれっと討伐パーティに入れると思う? レイドバトルってスポンサー企業とかも入ってかなりのお金が動くから、身辺調査とかも厳しいんよ」

 

 でろんと伸びているにゃん吉さんを撫でながら、リオちゃんがその推測を疑問視する。

 レイド討伐パーティに地下組織の怪人とかが紛れ込んでいたら大惨事になりかねない。事前に身元調査があるのは当たり前かもしれない。

 

「セレナちゃん、キミは何か知らないのかい。確か平原エリアのエリアマスターだったよね?」

「うーん、私にもわかりかねます。大規模レイドのメンバー選定はダンジョン庁が直接取り仕切るものなので、私の関知するところではないんです」

「うーん……なら、カレンに聞いてみたらどうかな? カレン、パレード押し付ける時に言ってたよね、"賑やかになる"って。今思うと、カレンは那由他会が乱入してくるって知ってたんだと思う」

 

 私は最初、迷惑系配信者が乱入してくることを言っているんだと思いこんでいた。

 でも、カレンは迷惑系配信者など賑やかしにもならないとも言っていた。なら、怪人の横槍が入ることを予見していたと考えるのが自然だ。

 

「あー、言ってた言ってた。あんの変態マゾ狐、ウチになんてもん押し付けてたん。今更ながらに腹立ってきたんだけど」

「それにカレンは那由他会と旧知の仲なんだよね? 義理でテラーニアの大怪獣連合にも居たし、今の那由他会について何か知ってるかもしれないよ」

「おおー、確かに! こりす、ナイスアイデアなのです! 善は急げなのです!」

 

 一理あると私を褒め、意気込みながら立ち上がるミコトちゃん。

 私はそんなミコトちゃんの袖を慌てて掴んで引き留める。そこはもう少し反省していただきたい。

 

「やれやれ、ミコトちゃんはもう少し頭を冷やした方がいいね。冷蔵庫にこりすちゃんのジュースが入ってるからさ、ぐぐっと飲んで気分を落ち着けなよ」

「にゃん吉さん! 勝手に人の物を勧めないでよ! あれ私の楽しみなんだから!」

「まあまあ、こりっちゃんも落ち着きな。ウチもあの変態マゾ狐に文句言いたい所だったしさ、皆で行けばいいじゃん」

 

 かくして、私達はカレンを問い詰めるべく夜の官庁街へと繰り出すのだった。

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