魔法少女エリュシオン~リア凸に怯える最強魔法少女はダンジョン配信に映りたくない~   作:文月なご

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第10話 暴走の巫女6

 夜遅くなったぶん昼まで寝溜めして翌々日、私達は間近に迫った集団戦の準備を手伝うべく、海岸丘陵の拠点に来ていた。

 エントランスにある巨大電光掲示板(クエストボード)には周辺情報などが表示されていて、パレードで来たダン学生徒や、一般冒険者さん達が揃ってスマホを向けている。

 この電光掲示板に表示されているQRコードをスマホの冒険者アプリ経由で読み取ると、ダンジョン庁やスポンサー企業からの依頼(クエスト)が受けられる仕組みになっているのだ。

 わざわざ一手間かけて掲示板から読み取らなくてもいいのにって思うけど、来れない人間が悪戯半分で受けないようにとか、冒険者が定期的に拠点へ戻るようにするための導線とか、実際は色々な理由があるらしい。

 

「那由他会の痕跡を探すついでに依頼も受けていいよね?」

「構わないのです。ダンジョンは助け合いなのです」

 

 私がミコトちゃんに話を振ると、ミコトちゃんが快く了承してくれる。

 どうやら痛い目に遭ったことでちゃんと反省できたらしく、今日のミコトちゃんはいつも通り冷静だ。

 

「そうそう、可能な限り受けときな。こりっちゃん達、紅葉林の一件で追試くらってるから依頼評価欲しいっしょ。レイド関連の依頼は特にボーナスつくよ」

「うん、わかってる」

 

 イシシと笑うリオちゃんに、私は神妙な面持ちで頷く。

 自慢ではないが私はトラブル遭遇率が高い、って言うか自らトラブルへと突き進んでく難儀な性質だ。

 今後もトラブルと遭遇する可能性を加味すれば、稼げるタイミングで可能な限り依頼評価を稼いでおきたい。ついでにお金ももらえるし。

 私はスマホでQRコードを読み取り、受領可能な依頼の一覧をチェックしていく。難易度も報酬もピンからキリで、レベルやスキルとかで受領条件が指定されている依頼もある。

 一通り目依頼に目を通し終えると、不自然な依頼が一つあることに気が付く。本来誰でも受領できる簡単な依頼である"アイテムコンテナ運び"依頼の中に、【魔法少女】クラスを要求しているものが一つだけあるのだ。

 

「セレナちゃん、依頼って自分が受けられる依頼しか表示されないんだよね?」

「はい、そうですよ。登録してあるパーティメンバーのレベルやスキルで表示される依頼が変わる仕組みになっています」

 

 だとすると、これが表示されているのは、パーティメンバーに魔法少女であるリオちゃんが居るからだろう。つまり、誰かがコンテナ運びにかこつけて魔法少女を呼んでいる? 怪しい、もう凄く怪しい。

 疑ってかかると指定場所も怪しく見えてくる。コンテナの中身はレイド前の露払いに使われるはずなのに、運ぶ場所がこの依頼だけ戦闘想定区域から離れた場所になっているのだ。

 

「ねえ、リオちゃん。この依頼受けていい? 魔法少女指定があるから、リオちゃんの了承を得ておこうと思って」

「魔法少女指定って、この状況だし難易度高い奴は止めとき……あれ、なんでコンテナ運びに魔法少女指定ついてんの? 表示ミス?」

 

 私が依頼内容を見せると、リオちゃんが顎に手を当てて訝しむ。やっぱり怪しい依頼なのは間違いないらしい。

 

「そこが気になったから受けようと思って」

「リオ、私からもお願いするのです! 邪な企みを感じるのです!」

「いやいや、本当にそうだったらヤバいでしょ。いや、でも本当に変な依頼だったら、変身アイテム持ってないそこらのペーパー魔法少女が受けちゃう方が怖いか」

「ペーパー魔法少女なんて子も居るんだ」

 

 魔法少女の数に対して変身用アイテムの数が足りてない。入学直後にリオちゃんがそう言っていた。

 案外、魔法少女のスキル持ちって沢山居るのかもしれない。

 

「ま、割と珍しい程度の人数でね。だから……ウチ等で受けといた方がいいだろうね、これ」

 

 リオちゃんは腕を組んでちょっと考え込んだ後、依頼を受けることを了承してくれた。

 

「ありがとう。セレナちゃん、万が一の場合はラブリナさんの力が必要になるかもしれないから」

「はい、わかっています」

「意気込むのはいいけど、まだ変な依頼だって確定したわけじゃないからさ。単なる表示ミスの可能性はちゃんと覚悟しときなー」

「わかってる、その時はその時だよ。どの道、探すあてはないんだし」

 

 私は受領ボタンを押して正式に依頼を受注すると、運ぶためのアイテムコンテナを受け取りに拠点の建物外へと向かう。

 

「遅かったじゃないか重要参考人ども、僕様を待たせるなんていい度胸だな!」

 

 建物の外で私達を待っていたのはクリーム色の髪をした女の子、腕組みをしたルミカちゃんだった。

 

「んげっ」

「あぁ? なんだ、その嫌そうな顔は」

 

 思わず潰れたヒキガエルのような声を出してしまった私に、ルミカちゃんが不満そうな顔をする。

 ルミカちゃんの事情は昨日理解したけど、そこから出力されている行動は私にとってシンプルに迷惑だ。嫌か嫌じゃないかで言えば、当然嫌の方へぶっちぎってる。

 

「ルミカー、いい加減にしときなって。ウチが配信しまくってたおかげで、ちゃんとアリバイ証明できてたじゃん」

「僕様だって他に手掛かりがあればそっちを調べてるに決まってるだろ。現状、手掛かりはコイツが那由他会の姫巫女だってことしかないんだ。ならそこを調べてくしかないだろ」

 

 ルミカちゃんはスキル測定用の機材を取り出すと、ミコトちゃんへと視線を向ける。

 

「スキルを調べてもいいですけれど、特筆すべき点はないのです。私が持つ異能は全部スキル欄にないのです」

 

 が、そこでミコトちゃんと目が合ってしまい、天然で人を洗脳しかねないその雰囲気に吞まれかけ、苦し紛れに私の方へと向き直った。

 

「うぐ……! わ、わかったよ! なら、おまけのお前を調べてやる!」

「うえぇっ!? なんで!?」

 

 思わぬ流れ弾で窮地に陥る私。思わずまた変な声出た!

 私の変身だってスキルに依存していないはずなのに、何故か専用クラスと一緒にしっかりスキル欄に記載されちゃっているのだ。

 つまり、こんなどうでもいい所で正体露呈の危機が訪れてしまっている。

 

「も、もう付き合ってられないよ! 依頼人さん待ってるから急ごう!」

 

 こんな情けない展開でエリュシオンだってバレたら笑うに笑えない。

 私はセレナちゃんと力を合わせてミコトちゃんをコンテナの上に乗っけると、呆れ顔のリオちゃんに声を掛けて車輪の付いたコンテナを大急ぎで引っ張る。

 

「なんだなんだ、怪しいな。露骨に挙動不審になったぞ」

「きょ、挙動不審なのは最初からだよ!」

「あの……こりすちゃん、その言い訳はちょっとどうかと思います」

「はぁ、ルミカも懲りんね。道中ずっとこんなことされちゃ、流石のウチも気が滅入るんだけど」

 

 諦めずに進路を塞いでくるルミカちゃんの姿を見て、リオちゃんは大きくため息をつくと、近くにあった金属製のロープでルミカちゃんをぐるぐる巻きにしてしまう。

 

「おい、待て、僕様に何してる! 止めろ、バカリオ!」

「ほらほら、ミコっちゃん降りてきなー。この邪魔なウザ絡みキッズを代わりに乗っけるよー」

「わかったのです」

 

 ミコトちゃんがぴょんと飛び降りて、代わりにリオちゃんがルミカちゃんを雑にコンテナの上へと放り投げる。

 私はミコトちゃんが好き勝手にうろつき始める前に、素早くスマホを貸して先導役をお願いしておく。

 危なっかしいのはルミカちゃんだけでなくミコトちゃんもなのだ、しっかりと目が届くポジションに置いておかないといけない。

 

「なにすんだよ、バカリオ! 今のはちょっと痛かったぞ!」

 

 一方、ミコトちゃんと入れ替わりでコンテナの上送りになったルミカちゃんは、自らの扱いが不当だと足をばたつかせていた。

 

「ウチ等ちょっと怪しい依頼受けてんの。邪魔しないならついでに乗っけてってやるからさ、どうせルミカも探すあてないっしょ?」

「怪しい依頼? なんだそりゃ」

 

 ぐるぐる巻きにされたまま首を傾げるルミカちゃん。

 ルミカちゃんに事情を説明しつつ、私達はアイテムコンテナを引っ張って海岸丘陵へと繰り出すのだった。

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