壊却のオフィウクス   作:唯尊

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第二話 滅びを拒絶した者たち

 

 神星歴------1901年、春。

 

ラーフェン連邦、ブラヂェーチ・セーヴェロム海から南に約7000km地点上空。

 

高度10.000メートル------午前11時05分。

 

 

 アイレン・H・ユクスキュル少尉は狭苦しいコックピットの後部座席に詰め込まれてから、既に5時間は飛んでいる。

 

戦闘機のコックピットはとにかく狭い、その上酸素マスクから吹き込まれるエアーは混合率が悪いのか肺が破れそうだったので、途中から魔術で肺の中で直接酸素を生成している。別に機材の整備不良とかではない。寧ろ戦後の経済難でどこもかしこも金がない状況の中、使い古した酸素供給システムをちゃんと使える様にした整備兵たちの努力を褒めたい所だ。------------まぁ、フライトから3時間保ったのだから。苦しくても彼らを責める気にはなれない。

 

『助かったよ少尉…』

 

『いや、既に予定より遅れてるんだ。今更修理しに戻れないだろ?…まぁ、戻っても直せないだろうけど…』

 

酸素マスクに備わってる無線越しに会話するアイレンは、前席で操縦を担当しているクリストファー・エンリケス少尉とやれ「金がない」など「輸送機がエンコして飛ばない」などと愚痴をこぼしながら笑い合っていた。

 

『正直ボロボロなんだよなぁ…ウチの空軍…』

 

『今のリュージョンはどこもそんなもんだろ?』

 

『そうだけどな……、新しい部品買う金も部品作る工場も工場回す金もないしなぁ、ハァ……ホントに何もないな…リュージョン』

 

『終戦からまだ10年だからな……、けど復興は確実に進んでる。いつかなんでも作れる日が来るさ、それまで頑張ろうぜ』

 

溜息を吐くクリストファーにポジティブ・シンキングで元気付ける。

 

『そうだなぁ……ま…頑張るさ、ガキの頃【トップガン】観て戦闘機乗りになる!って決めてからずっと頑張ってきたんだ。まだまだやれるさ俺は!』

 

アッサリと気持ちを切り替えるクリストファー。数年間に渡る過酷な訓練と選抜で生き残っただけあって、気力も体力も人並み外れていた。彼曰く、戦闘機のパイロットは一見座ってるだけで楽そうに見えるが、操縦の際に体にかかるGは半端なく、少し気を抜いただけで失神しそうになるらしい。

 

2年間、飛行機の操縦に必要な座学と体育訓練と語学、精神教育、政治や宗教や『なんでこんな物まで…』と思えるような科目まで米軍にみっちり教え込まれた後、ようやく操縦訓練に入り、そこからまたふるいにかけられる。

 

操縦訓練中、米軍の教官から英語で『前を見ろッ、機体を落とす気か!?』『何してやがる!エアスピードだ!!』『下手クソが…やる気ないなら降りやがれ…』と言われたのも毎日の事だ。そして宿舎に帰ったら疲れた体に鞭打って明日のフライトの勉強を夜遅くまでする。心身ともに極限状態で、成績が悪ければ容赦なくエルミネート(脱落)させられるので、皆必死だったとか…。

 

『ファントム(F-4)なんてもう古いからな…、お陰であちこちにガタがきてる…。いい加減新鋭機まわしてくれよ………なぁ、ユクスキュル少尉!アンタ米軍に居たんだろ?アメリカはどうだった!?やっぱトムキャット(F-14)とかイーグル(F-15)とか沢山あったか!?』

 

『え?うん……まぁな…』

 

子供の様に目を輝かせる彼に、前者は退役、後者は中古品になってるよとは言えなかった。

 

『俺としてはトムキャット乗りテェな〜、いつかマーヴェリックみたいなトップガンになるのが夢なんだ』

 

『その映画、ハマってるのか?』

 

『もちろんさ!俺はハリウッドの大ファンだぜ?【ダイハード】シリーズはDVD全巻揃えてるぜ、海賊版じゃねぇぞ?もちろん本物だ!』

 

年齢が同じだからか、短い時間で随分仲良くなった。

 

すると、編隊を組んで飛んでいた6機の飛行小隊の指揮官機から無線が入る。

 

『ホワイトバーン1から各機、我々と同じ【ヘスペリデス】行きの輸送機A-445が航路の近くを通る。注意せよ』

 

『了解』

 

指揮官のオットー・イェリネク大尉からの無線に小隊全員が応えると、2時の方向にある雲の層の下に影が浮かぶ。

 

海面を泳ぐ人喰いザメに似たシルエットが見えた途端、雲層を突き破り鋼鉄の巨鳥が天上に現れた。

 

------AN-225 ムリヤ。

 

旧ソ連が開発した地球最大の航空機であり、全長84m、全幅88.74mの巨大は空虚重量だけでも28万トンを超える------まさに怪物機だ。

 

白く滑らかなボディは巨大な白鳥を連想させ、青と黄色で描かれた【リュージョン連合】のエンブレムが塗装されたムリヤが3機、アイレン達ホワイトバーン飛行小隊の前に現れ、無線から小隊のパイロット達の感嘆の声が漏れる。クリストファーなんかは感動のあまり泣き出しそうな程であった。

 

『スゲェ……言葉もでねぇよ…、まさか生きてアレを見られるなんて…』

 

リュージョン大戦終結後、地球の国連の支援により誕生した国際調停機関、【リュージョン連合】は戦争で荒れ果てたリュージョン各地の復興の要となり、現在でも世界中で平和維持活動と復興支援の大部分を担っている。あの3機はそれらに運用されている輸送機だ。

 

『------なぁ少尉、ヘスペリデス行きって事は…アレは…』

 

『あぁ、多分乗ってるのはヘスペリデス学園に通う女の子達だろう…』

 

『俺達と行き先は同じなんだよな?で…アンタは確かそこに異動だったか?』

 

『そうだよ』

 

『俺達と同じ基地に配属か?』

 

『さぁ、そこまでは…、「とにかく行け」…だったからなぁ…』

 

今朝まで前線勤務だったにも拘らず、上層部から急に呼び出されてライヒェ・シュタット空軍基地に着くや否や輸送機に放り込まれたのだ。

 

『その後輸送機がエンジントラブルでラーフェン近くの空港に着陸、遅れに遅れ、こうして今アンタらに世話になってる訳だ』

 

『ハハハ、互いに運がいいな。その空港が同盟国の基地で、俺達がたまたま空中給油訓練を兼ねて南の島の基地に飛んで、酸素の不調をアンタが直して、こうして無事にフライト出来てるんだからな…』

 

『全くだ…』

 

気兼ねなく談笑していると、やがてクリストファーは笑顔でムリヤの編隊に向けて手を振る。向こうに見えてるかは分からないが、こういうのは気持ちが大事だ。

 

自分も彼に倣って手を小さく振っていると、不意にクリストファーが口を開く。

 

『にしても……なんか妙だな…』

 

『何がだ?』

 

少し怪訝そうな声アイレンは問う。

 

『妙に密集してるんだよ、あの編隊の取り方…』

 

アイレンは航空機には詳しくないが、見てみると3機デルタで飛行するムリヤは機体間距離がかなり詰まっており、各機100mも離れていない様に見える。

 

『あれじゃまるっきり戦闘隊形だ。ここでなら連合(リュージョン連合の略)の機体は襲われない筈なのに…』

 

既にラーフェン連邦の近海(地球のオホーツク海にあたる)から抜け、南の大洋に入っている。この調子ならあと1時間も飛べば目的地に着く距離だが、クリストファーの言葉に嫌な予感を覚える。

 

と、その時------。

 

『ん……』

 

何気なく首を上に向けると、高空から何かが降ってきた。

 

鳥?------いや、この高度にいる筈がないッ------。

 

その『何か』の正体に気づいた時には、ムリヤの1機に急接近し体当たり------機体胴部を上から下に貫いた。

 

瞬間、機体の内側から空気が漏れフレームが歪む。亀裂が走り機体後部が悲痛な断裂音と共に千切れ中の人間が高空に吸い出されていく。

 

------聞こえない悲鳴を上げながら10代の少女達が数百人、落ちていくのが見えた。

 

『クソッ、散開!全機散開ッ!!』

 

オットーの怒鳴り声に全機がフレア弾をばら撒きながら退避行動を取る。クリストファーも機体を急旋回させ急激なGが体にのしかかる。

 

『おい!今のは何だ!?』

 

『魔獣だ!上から振り下ろしてきやがった!!』

 

『レーダーに反応なかったぞッ』

 

『誰か捉えたか!?』

 

『知るかよ!いきなり現れたんだッ』

 

歯を食いしばりながら全身にかかるGに耐えていると、無線からホワイトバーン隊の怒号が聞こえて来る。

 

『-----ホワイトバーン1から各機!状況を確認する、現在我々は魔獣と接敵した。これより交戦に入る!緊急事態につき以降の訓練予定は全て繰り上げ、各機エレメント(分隊)ごとに迎撃行動に移れッ、輸送機の護衛が最優先だ!!』

 

『了解!!』

 

オットーの指揮に素早く従い、各自予め組んでいた僚機と並ぶ。

 

『少尉、悪いがお客さん気分はここまでだ。少しキツイのに付き合ってもらうぜ…』

 

クリストファーは低い声をこちらにかけてくる。

 

『俺は大丈夫だ。やってくれ』

 

『よぅし……ホワイトバーン3から4へ!俺達はさっきのトリ頭を追うぞ!ついて来い!』

 

『了解!』

 

2機は編隊を組み先程雲の中に消え去った魔獣の追跡に掛かる。

 

『少尉!アンタ魔術士なら『魔力検知』できるよな!?悪いんだが------』

 

『言われなくてもやってる!』

 

魔獣-----------リュージョンの自然環境の基盤である【霊脈】から放出される魔素により独自進化した生物の総称だ。地球との交流が始まる前から世界中に存在し、兵器として運用されてきた面もある。だが、今相手にしている魔獣は野生ではなく------。

 

『ッ-----左に旋回ッ!』

 

『ッ!』

 

アイレンの咄嗟の指示に反応し操縦桿を切る、直後に直上から先程と同様の急降下突撃を強行した魔獣が真横を擦過------紙一重で回避する。

 

『野郎ッ…逃すかァ!』

 

真下に抜けていった魔獣を追尾する。------早い、ファントムの最高速度である時速2370キロ近く出している。ようやく追いつきシルエットを確認出来る距離まで近づく、全体的に滑らかなフォルムを帯び、全長10m前後のハヤブサに酷似した飛行種で、眼は赤く、視認できるほどの魔力が全身を闇に包んでいた。間違いない----。

 

『ホワイトバーン3から各機へ!目標を目視で確認、対象はアクイラ(強襲型)!チェルノボーグ化を確認!』

 

クリストファーが無線で敵の種を報告する。

 

『こちらホワイトバーン1!了解した。こちらでも2体のアクイラ・チェルノボーグを確認した。各機、エレメントを維持しつつ各個撃破せよ!』

 

『了解!!』

 

クリストファーはアフターバーナーを噴かせ目標との距離を縮める。本来ファントムは複座型で火器管制とレーダーは後席の自分がやるのだが、この機体はAIM-7スパローミサイルの射程に入るやロックオン------発射。

 

『ホワイトバーン3!フォックス1ッ』

 

『ホワイトバーン4!フォックス1!』

 

マッハ4で飛翔する神速のスズメ達が突っ込んでいく。

 

その時、アクイラは背後から迫る脅威に気付いたのか、纏う魔力の質が変化しアメジストに輝く翼から羽が何枚かが跳ねるように抜ける。

 

抜け落ちた羽はスパローミサイルまで高速で近づくと、まるで導かれる様に弾頭付近で紫電を迸らせ、ミサイルを2つとも撃墜する。

 

『クソッ!』

 

クリストファーが毒付いた直後、再びアクイラは急上昇し雲の中に姿を消す。

 

『ホワイトバーン4!奴が見えるか!?』

 

『駄目だッ、レーダーにも映らない!体表にステルス加工を施してやがる!!』

 

『クソッタレッ!ラーフェンの黒い死神がッ……たった10年でどれだけ進化してやがる!?』

 

敵に対しテクノロジーが通じない------だが、ここには魔術士である自分がいる。

 

魔素を取り込み体内で魔力に変換し術式を編んで魔法や魔術を行使する。その上で魔力の存在を知覚し読み取る術は魔術士にとって基本の基だ。

 

--------目を閉じる。

 

集中しろ……どんな魔獣も体内から溢れる魔力までは誤魔化し用がない……。

 

-----その時、強大な魔力が正面から迫るのを感じた。

 

『----避けろッ、ホワイトバーン4!』

 

指示を飛ばすも遅く、目の前の雲から嘴を開いたアクイラが喉奥から紫の光を輝かせ、魔力を帯びたプラズマを放射状に吐き出した。

 

レーザーに匹敵する速度の攻撃が回避できる筈もなく、ホワイトバーン4の機体は機首が熱で溶かされ、直後に爆散した。

 

破片に巻き込まれないよう急いで離れるホワイトバーン3。

 

『テオがッ…、ちくしょう!』

 

怒りに任せて機首の機関砲を放つが躱される。

 

そしてまた死角に潜り込まれ、姿を消される。

 

『レーダーは使えない…ミサイルは落とされる…目隠ししてやり合ってるもんだ!』

 

絶望的な戦況の中、クリストファーが歯を食いしばる。この状況でも諦めないのは彼の強さなのだろう。

 

そんな中、アイレンが口を開く。

 

『俺が魔力探知で奴を見つける。そしたら有視界で奴にミサイルを撃て』

 

『さっきにみたいになるだろ!』

 

『俺がミサイルの先端にシールドを張る』

 

クリストファーがギョッとしてこちらを振り向く。

 

『冗談だろッ?魔法は専門外だが、迂闊に兵器に魔法をかけたら暴発する危険が…』

 

『うまくやる、信頼しろ……俺は【アドラー】から来たんだ』

 

その瞬間、今度こそクリストファーが息を呑んだ。

 

『待て…じゃあ……アンタがあの…』

 

『時間がない。言っとくがアレに勝てる兵装は現時点で俺だけだぞ』

 

数刻、クリストファーは沈黙を返してきたが--------。

 

『…分かった。俺らもやられっぱなしはゴメンだからな、キツイのかましてやろうぜ』

 

不敵な笑みを浮かべるクリストファーに頷き返す。

 

『よし……ちょうど奴は上にいる。少し上昇しろ…』

 

『了解…』

 

機首を上げ高度を少し取る。

 

雲の上は陽光を遮る物が何もなく、神が住むに値する程に美しい天上の世界が広がっていた。だが自分達は無限とも思えるこの空間に敷き詰められた雲の層をカーペットに寛ぎに来たのではない。敵に必殺の矢を打ち込む為に神の領域に踏み込んだ最強の不届き者であり、挑戦者なのだ。

 

その世界の片隅に、奴が-----敵がいた。

 

『見えたか?』

 

「……あぁ、見えたぜ。胡麻粒に見える、今更だがアレをこの距離ですぐに補足できるってお前…』

 

『いいからツバメを放て、距離は十分、今なら奴もアディショナルタイムのつもりでいる』

 

『…アンタ一応騎士だろ?不意打ちとかいいのか?』

 

『打てる時に打てない奴こそ、この世で最もカスな存在だ。敵を打ち、仲間を守ってこその騎士だ』

 

『…そうだな』

 

セミアクティブ・レーダーを照射し、目標までの道を作る。

 

同時に、アイレンがミサイルの弾頭に防壁魔術を施す。

 

『Der Speer ist hart…unzerbrechich』

 

少しでも詠唱にミスがあれば、機体もろともドカンだ。慎重に術式を編んでいく。

 

『…いいぞ』

 

発射の合図を出す。

 

『ホワイトバーン3、フォックス1ッ』

 

ミサイルを切り離し、電波が反射し信号を受信したミサイルが目標まで飛んでいく。

 

力を消耗していたアクイラは先程と同様に羽を放つが、紫電の壁をミサイルは突き破る。キルゾーンに入るとアクイラはそれから逃れる術を持たず-------。

 

『堕ちろ…』

 

被弾する直前で魔術を解き、目標に命中。巨大な翼が四散し魔力の軌跡を残して墜落していく。

 

『よっしゃあ!ザマァみろおッ!!』

 

クリストファーの歓喜の叫びが無線越しに伝わる。正直鼓膜が破れそうだった。

 

『お見事だ、エンリケス少尉』

 

『クリスでいい、やっぱすごいぜお前は!アイレン』

 

親指を立てるクリストファー改めクリスは、アイレンの魔術師としての資質に内心舌を巻いていると、

 

『ホワイトバーン1からオールホワイトバーンズへ、こちらは1匹を仕留めたがもう1匹が輸送機に向かっている。誰かそちらに回ってくれ』

 

『了解、ホワイトバーン3が向かいます。…ホワイトバーン4が墜落、テオ・ビゼルト少尉の脱出は確認出来ませんでした…』

 

『…確認している。ビゼルト少尉はKIA(戦死)と認む。…彼の仇の最後を仕留めに行け』

 

『了解…』

 

通信を終えると、エンジンノズルから轟音を鳴らして輸送機に向け桿を取った。

 

 

 

 

ムリヤの近くに来た時には、丁度同じ型のアクイラが視界に入った。

 

既にミサイルに魔術は施してある。

 

『…ロックしたぜ-----フォックス1!』

 

必殺の一撃を放つべくスイッチを押す。

 

-------------が、いっこうに発射されない。

 

『…ッ!?故障かよ…!こんな時に』

 

先程ホワイトバーン4の破片を浴びたのか、軍の金欠による整備不良なのか…、ミサイルが切り離せない。

 

『…バルカンに切り替える!』

 

機関砲の照準を合わせようとした時、アクイラに動きがあった。

 

下腹部が何やら蠢いている。それは突如として本体から分離し、輸送機に飛びついた。

 

それが魔力を帯びて動いてるのを知覚したアイレンは、その輸送機の末路を悟った。

 

『小型種だ!アクイラの腹の陰に潜んでいたんだ!』

 

「クソッ、撃ち落として…』

 

『やめろ!…手遅れだ』

 

どちらかと言えばカマキリに近い大振りな鎌を二振り、小振りな鎌を四振り備えた体長3m弱の小型の魔獣が輸送機に取り付き装甲を突き破る。カマキリは機内に入ると悲鳴をあげる少女達を斬殺し、腹を引き裂き、頸を食いちぎっていく。

 

屍山血河が築かれていく中、やがて狂騒に駆られた者が魔法を暴発させ機体に穴が空き、空気と共に少女達が吸い出されていく。

 

カマキリはそのまま機体の翼に取り付くと、今度はエンジンブロックを引き裂き始める。

 

やがてエンジンから火を吹き失速、漏れ出た推進剤に引火し爆発-----炎上。

 

アイレンとクリスは落ちていくムリヤと少女達を眺めるしかなかった。

 

『〜ッ!ブッ殺すッッ!!』

 

怒りを吐き出すかの様にアフターバーナーが火を噴く、アクイラは残った最後の1機に光線を放とうとし-----、

 

『死ねェェェェェェ!!』

 

ファントムの機関砲が唸りを上げてアクイラを貫く。しかしアクイラは息絶える前に光線を放ってしまった。

 

『まずい!』

 

放たれた光線は機体胴部に穴を開ける。幸い最大威力ではなかったのか、出火も煙も大した程ではなかった。

 

その時、戦闘を終えたホワイトバーン隊がこの空域に集合する。

 

『ホワイトバーン1より各機、敵は全て撃退したがまだ気を抜くな!島まではあと1時間もあれば着く。最後まで我々で送り届けるぞ!!』

 

 

『了解!!』

 

 

 

 

 地球では南太平洋にあたる温暖な海に、幾つかの小さな島が見えてきた。

 

学園が置かれている島には1番大きな飛行場があり、そこでは緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響き、整備員が急いで車や飛行機を移動させたり、消防隊をスタンバイさせていた。

 

ムリヤは煙を出しながらもなんとか飛んでおり、高度を落としてランディングギアの車輪を出す。

 

車輪が地面に触れた時、空から様子を見守っていたホワイトバーン隊は安堵の息を吐く。

 

(よかった…これなら何とか…)

 

アイレンが胸を撫で下ろした時、

 

 

------グシャァァァッ!!

 

 

破滅的な怪音を立てて車輪が圧壊、機首から滑走路の路面にダイブする。

 

アクイラの攻撃が降着装置にまでダメージを与えていたのか、滑走路の上を摩擦で火花を散らしながらもその勢いは止まらず、空いた穴から機体後部が引き裂かれ真っ二つになる。

 

その中から輸送物資と少女達が放り出されていく。

 

滑走路から滑り出ていく機体前部は摩擦で生じた炎を纏いながら燃料貯蔵庫に激突。何万ガロンという量の燃料に引火し大爆発。

 

空からでも爆発の衝撃が伝わる程で、消防隊の消火を無視するかの様に、燃え上がる大きな火柱は晴れ渡る空を黒く染めていた。

 

 

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