悪魔と獣。   作:こねこねこ

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あくまとけだもの.1

 

 

 

 

 

深い深い水底から浮き上がるように、意識が浮上する。

 

 

 

数度の瞬きを経て微睡んだままだった意識が急に覚醒し、ブロリーは目を開けると同時に叫んで体を起こした。

 

 

 

「―――――!!チライ!!」

 

慌てて周りを見回すも、目に入るのは瓦礫ばかりで誰の姿も見当たらない。

 

少しフラつく頭に手を当てて、ブロリーはゆっくりと記憶を掘り起こす。

 

 

 

―――地球での一件以来、バンパで暮らしていたブロリー達の元へあれからもカカロットと名乗ったサイヤ人は度々差し入れを持って訪ねてきた。

最初は戸惑うことも多かったブロリーに、いつでも明るく笑うカカロットは美味い食べ物をくれて、色々な話を聞かせてくれて、そして何よりブロリーが嫌がる素振りを見せるとすぐに引いて無理強いは決してしなかった。

度重なる訪問に徐々に慣れ、時折手合わせもするようになって、「結局友達みたいになっちまったね」とチライが呆れたように笑うのを聞いてブロリーは不思議な気持ちになったことを今でもよく覚えている。

そんな新しい日常がしばらく続いて、近頃はごく稀にだが手合わせする際にカカロットの代わりにゴジータが訪れることがあった。

力の制御を少しずつ覚え始めたもののまだ危うさも残るブロリーが暴走することを危惧し、大きく力を使う手合わせのときは日を決め万が一の保険として彼に監視役と指導を頼んでいたらしい。

かつて圧倒的な力の差でボコボコに叩きのめされた経験からゴジータに対する畏怖の感情はなかなか抜けなかったが、戦いではなく落ち着いて話してみるとカカロットに近しいものを感じたしゴジータもブロリーに対し色々なことを教えてくれた。

 

・・・そうだ、そしてあの日も。いつも通りとなりつつあったそんな日常の一幕の筈だった。

いつも短時間で帰ってしまうゴジータと訪れて早々打ち合いを始め、何の拍子だったか大きなエネルギー弾がぶつかり合った時に『それ』は唐突に現れた。

見たこともない怪しげな黒い球体。

ゴジータにとっても完全に想定外だったようで二人して驚いていると、黒い何かは突如大きく拡がったかと思うと空間にぽっかり開いた穴のようになり、周りのもの全てを吸い込み始めた。

暴風が吹き荒れて、自分とゴジータは耐えられたけれど、運悪く遠巻きに見に来ていたらしいチライとレモが巻き込まれてしまった。

特に身体の軽いチライが穴に吸い込まれそうになったのを見たとき、思わず身体が動き無我夢中で追いかけてチライを穴の外へ向かって力いっぱい投げ飛ばした。

それをゴジータが受け止めてくれたのを見て安堵した刹那。

 

視界が真っ黒に塗り潰されて、意識を手放した。

 

―――そして、気づけば今に至る。

 

 

 

ブロリーは再び辺りを見回した。

チライも、レモも、ゴジータもいない。

それどころか、生き物の気配自体がほとんど感じられない。

 

「・・・ここ、どこ」

 

大地も空も見慣れた黄色ではない、白と灰色ばかりの景色。

惑星バンパとは違う、どこか知らない場所に来てしまったようだった。

 

立ち上がり、身体に特に異常がないことを確認してふわりと浮かぶ。

 

周辺を広く視界に収めながら飛び回ってみるも、崩れた都市の廃墟が続くばかりで何も気になるものは見つからない。

 

「こわれたたてもの、ばっかりだ・・・」

 

小一時間ほど進み、やがて景色に緑が徐々に混じり始めた頃小高い崖の上に建てられた城のようなものを見つけた。

上空から目を凝らすと、塔の上のほうのバルコニーに人影がひとつ。

 

誰かいる!

 

そのまま近づいてみると、その人物も気づいたのかこちらに向かって顔を上げた。

 

「・・・・・・・!」

 

細身で背の高い男。

そこかしこに身に付けた金の装飾が目を引くが、上半身に衣服は纏っていない。

長い黒髪を風に靡かせ、その表情はどこか気怠げだが眼光は鋭く剣呑な雰囲気をもって睨め付けている。

 

何故だろうか。その姿を見た途端ブロリーの心のどこかが無性にざわついた。

 

「なんだ、お前は」

 

痺れを切らしたのか相手の方が先に口を開く。

警戒は解かないままブロリーがバルコニーへ静かに降り立つと、決して低くはない身長のブロリーよりも相手はさらに頭一つ分ほど高く見上げる形になった。

 

「・・・名乗りすらしないのか」

 

黙ったままだったのは他人とのコミュニケーションにいまだ不慣れだった故のことだが、流石によくないと思い直しブロリーはしどろもどろに口を開く。

何と言葉にすれば良いのか分からなかったが、ひとまず名前だけは告げることにした。

 

「・・・あ、えっと、おれのなまえ、ブロリー」

「何?」

 

それを聞いた途端訝しげに相手の眉根が寄る。

 

「ふざけているのか」

「ち、ちがう!」

 

何故だかわからないが名乗っただけで不興を買ったらしい。

慌てて首を振るブロリーに向かって苛立ちを隠さないままの男が掌を向けようとしたところで、突然その場に第三者の声が響いた。

 

「ブロリー、どこにいる。外か?」

「・・・ッッ!!!??」

 

男が視線と首だけで背後を振り返り、呼ばれた名前につられて目をやったブロリーは思わず目を見張る。

部屋へと続く入口からマントを靡かせつつ現れたのは、浅黒い肌に隻眼の壮年の男だった。

 

「おとうさん!!!!!」

 

考えるよりも先に身体が勝手に走り出す。

思わず叫び、必死の形相で掴み掛るブロリーに壮年の男はぎょっと身を引いた。

 

「な、なんだお前は!放せ!!」

「おとうさん生きてた!!よかった!!生き返ったのか!?」

「何の話だ!違う!俺はパラガスだ!ええい放せと言っているだろう!ブロリー助けてくれ!!」

 

もがきながらギャイギャイと騒いでいる二人に、半ば呆気に取られていた長身の男は馬鹿らしくなったようで軽く溜息をつく。

腕を伸ばしてブロリーの首根っこを掴み引き剥がすと、そのまま適当にポイっと放り捨てた。

床にへたり込んだブロリーに向かってぜいぜいと肩で息をするパラガスは二、三歩距離を置きながら言い含める。

 

「お、落ち着け。人違いだ。」

「でもパラガスって言った。おれのおとうさんもパラガスだ。片目がないのも一緒だ。髪の毛は・・・白く、ないけど・・・」

「・・・どういうことかは分からんがもう一度言う、人違いだ。俺の息子はブロリーひとりだからな」

 

その言葉を聞いてブロリーも何を言っているのかと困惑するが、ふと気づいた。

先ほどからパラガスが言うブロリーという呼び名は自分ではなく、もう一人の男のほうへ向けられている。

視線を上げて見上げると、あまり興味も無さそうな目つきで見下ろす男と目が合った。

 

「・・・おまえも、ブロリー?」

「おまえも、とは?まさかお前の名前もブロリーだとでもいうのか」

「うん」

 

呟くように口にした言葉を耳にしたパラガスも困惑したように聞き返し、ブロリーがコクリと頷く。

 

「ふぅむ・・・一体どういう事かよくわからんな。お前、尻尾は見当たらんがまさかお前もサイヤ人なのか?何か事情があるなら話してみろ」

 

ブロリーが再びぶんぶん首を縦に振って頷き、ぽつりぽつりとここに来た経緯を話した。

とはいっても自分でもまだ事態を把握しきれていないのと口下手なことが災いし、伝えられたのはせいぜい『バンパという星にいた』『妙な黒い穴を通ってここにきた』『自分の親のパラガスはもういない』といった程度の最小限の情報だけだ。

 

「なるほど、わかった。帰りたいのなら宇宙船を用立ててやることも出来なくはないが、生憎バンパという名前には聞き覚えがない。目的地がわからん以上は難しいだろうな」

 

ブロリーも、自身が数十年暮らしてきた故郷ではあるとはいえそれが宇宙全体から見たときにどこの座標にあるかなどは全く聞いたことがない。

目に見えてしょんぼりと肩と眉尻を落とすブロリーの姿に、パラガスはむぅと唸ったあと諦めたように軽く息を吐いた。

 

「・・・仕方ない、どうするにせよ少々の間ならこの宮殿に滞在することは許そう。寝床と食事くらいは出してやる。ただし俺達にはやることがある。何年も準備してきた大事な計画だ、邪魔だけはしてくれるなよ。」

「・・・??わかった。ありがとう、おとうさん」

「お前の父親ではないと言っているだろう。・・・名は同じだが他は似ても似つかんな」

 

息子と同じ名を持つものの、こてんと首を傾げているその姿は言動と同じく幼さが目立つ。

呆れ交じりに軽く笑い、打って変わって表情を一変させたパラガスは棒立ちになっているほうの息子へ視線と声をかけた。

 

「俺はこれから奴らを迎えに行ってくる。・・・ついにこの日がやってきたのだ」

「・・・ああ、わかった」

 

抑揚のない声で短く答えたその顔には何の感情も浮かんではいない。

戻ったらお前も出迎えに下へ降りてこいとだけ言い残し、パラガスはその場を去った。

 

ふたりぽつんとその場に残され、ブロリーは同じ名前を持つらしい男をちらりと見上げてみる。

 

じろりと見下すような視線と目が合った。こわい。

 

「・・・・・、」

「失せろ」

 

何か言おうとブロリーは口を開きかけたが、その前に一拍早く吐き捨てて男も部屋のほうへと戻っていってしまった。

伸ばしかけた手は空を切り、所在なさげにそのまま下ろす。

 

ひとりぼっちになってしまったブロリーはゆっくりと立ち上がり、外の景色を見回した。

宇宙船で帰ることが出来ないのなら、来るときに通ってきたであろう黒い穴を再び見つけるしかない。

 

 

 

一度だけ振り返って部屋のほうへ目をやったあと、ブロリーはバルコニーから飛び立った。

 

 

 

 

 

**********





邪魔するなと釘刺されたけどキャプション通り超ブロちゃんには存分に引っ掻き回してもらう予定です(´ω`)

パラ「邪魔はするなよ」
超ブ「わかった」(わかってない)
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