悪魔と獣。   作:こねこねこ

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あくまとけだもの.12

 

 

 

それは、ブロリー達が悟空のもとへ合流する少し前のこと。

 

「悟空ー!」

「クリリン!?おめぇ達なんでまだ逃げてねえんだ!?」

 

遠くから呼ぶ声に悟空が目をやると、既に退避したはずの旧友が焦った顔をして飛来したところだった。

その背にはへろへろになった老体が担がれている。

 

「ブロリー達の戦いの余波で宇宙船が全部ぶっ壊れちまってるんだよ・・・!」

「ぅげっ!ピッコロのもか!?」

「ああ、すごい地響きがあったときに目の前で谷底へ落っこちて、間に合わなかった・・・」

「めぇったな・・・先に行ってるクリリン達に瞬間移動で追い付くつもりだったんに・・・・・」

 

どうやら戦いに集中していた他所で、想定外の事態が複数同時並行で起きていたらしい。

腕を組んでうぅん、と唸る悟空は近づいてくる複数の気を感知し顔を上げた。

近い順から悟飯、トランクスとベジータ、ピッコロ、あとはブロリーも二人分の気が一緒になって動き出しこちらへ向かっている。

 

そうしているうちに悟飯が到着し、悟空のもとへ駆け寄ってきた。

姿はボロボロのままだが、飛べる程度には回復したらしい。

 

「おとうさん!」

「悟飯、無事だったか」

「はい!あの、決着は・・・」

「おう、なんとか勝てた。それより疲れてるとこ悪ぃけどよ、クリリンと一緒にどれだけの人数が避難しそびれてるか確かめてくれねえか。出来るだけ一ヶ所に集めて欲しいんだ」

「わかりました。クリリンさんも、大丈夫ですか」

「ああ、俺達は逃げ回ってて戦いには参加してなかったからな。しかし結構な数がいるぞ・・・?まだあちこちに奴隷として働かされてた連中も残ってるだろうし、全員ってなると無茶かもしれない」

「・・・わかってる。いっそ逃げるより他の方法とったほうが良いかもしれねえな・・・、とにかく状況がまだわかんねえ。だからよろしく頼むぞ」

「はい!」

 

二人へあとのことは任せ、悟空はというと目の前の満身創痍のパラガスへ手を翳し再度自分の気を注ぎ込んだ。

・・・ブロリーがあそこまでして助けたのだ。今さら死なせるわけにもいかないだろう。

仙豆やデンデの回復までとはいかなくとも、こうすることで小康を保つことくらいは出来るはずだ。

 

ちなみにこれより少し前には一度ピッコロのほうへも出向き、同じく気を分け与えてトランクスやベジータのほうを任せてある。

全員動き出しているところを見るに無事に対応は済んだらしい。

 

やがてブロリー達も到着し、何故か持っていたらしい仙豆によりパラガスも回復。

悟空は内心冷や冷やしながら見ていたが、二人のブロリーの間も何かしらの決着はついたようだ。

 

「・・・しっかし、なんでおめえオラのことばっかりしつこく狙ってきてたんだ?」

 

随分と大人しくなった様子の"ブロリー"へ、悟空はふと疑問に思ったことを口に出してみる。

じろりと咎めるような視線が突き刺さったが、それはすぐに逸らされて彼は不貞腐れたように何も言わなかった。

すると傍らに居たパラガスが見かねたように口を開く。

 

「お前たち二人は同じ日に相前後して生まれ、隣同士に寝かされていた赤ん坊だった。その時に何かあったのだろう」

「いっ!?そんな昔のことを、・・・あ、いや・・・・・そうだな」

 

新しく知る情報が複数含まれていて一瞬驚くが、悟空はすぐに閉口し考えを改めた。

実のところ、断片的ではあったがブロリーを介して一度見てしまっているのだ。

彼の過去。それは地球で色々なものに恵まれて育ってきた自分とは正反対とも言えるようなものだった。

その根本部分にトラウマとしてずっと根差していたものであるなら、それは他人が思うよりも本人にとってはずっと重苦しい問題であったことは想像に難くない。

 

「・・・悪かったな、ブロリー。すげえ今さらになっちまったけど」

「・・・・・それは、何に対しての謝罪だ」

 

悟空がしゃがんで目線を合わせ頭を下げると、"ブロリー"は訝し気に顔を向けた。

 

「んー。まあ正直なところ、赤ん坊が泣いてたことが悪ぃとは思ってねえしそこはほとんどおめえの逆恨みだと思ってっけどな。しいて言えばおめえのことを知ろうとしなかったこと。知らないままここまで生きてきちまったってところかな」

「・・・・・・」

「正直言うとこうやって生き残ってくれててどこかホッとしてんだよオラも。そっちのブロリーも言ってたけどこれからのことだったらいくらでも変えられる。恨みが晴れねえなら、殺されてはやらねえけど殴りに来い。死なねえ程度だったら何度でも相手になる。おめえの気が済むまで、何回でも何回でも付き合うさ」

 

そうしていつか気が済んだら、もしかしたら一緒に修行出来る日も来るかもしれねえし?と悟空はカラカラと笑う。

何だかんだと言いつつ、ここまで強い希少な存在を亡くしてしまうのは悟空としても惜しい。それに何より、僅かに生き残った数少ないサイヤ人・・・つまりは同胞でもあるのだ。

 

"ブロリー"は理解し難いものを見る目で凝視していたが、ややあってひとつ息を吐いた。

 

「・・・そんなことには一生ならん。だが・・・そうだな」

「えー・・・」

「俺の記憶の中にあるお前の声が全て悲鳴に置き換わるくらいに、打ちのめしてやる。望み通り何度でもだ。泣き叫んでも止めてやらんぞ」

「恐ぇこと言いやがる。でもいいよ、オラももっと強くなってやるから。おめえに負けなくなる日が来るまでな」

 

一生付き纏う宣言をされたようなものだが、悟空はそれでもどこか楽しそうに笑っている。

さっきはああ言ったものの、多少の罪悪感はあったのだ。・・・これで少しでも溜飲は下りてくれただろうか。

 

もう一方のブロリーのほうへ目をやると、彼もどこか安心したように微笑っていた。

 

「ブロリー、これ返しとくな」

「・・・・・ん」

 

悟空は身体に巻いたままだった毛皮を外し、ブロリーへ手渡す。

受け取った彼は両手に抱えたそれを一度ぎゅっと握り締め、元々あった自分の腰へと巻き直した。

 

「・・・さてと、あとは」

 

悟空は再び空を仰ぎ見る。

間近まで迫った彗星は視界いっぱいに広がるほどに大きく、もう猶予はほとんど残されていない。

 

そうしているうちに悟飯達も戻り、話を聞くとやはり予想以上に残っている人数が多いようだった。

宮殿で働いていた者も多数残っており、見捨てるにも後味が悪いし宇宙船も無い今全員を集めて逃がすのは現実的ではない。

 

「やっぱ、逃げるよりもアレのほうをどうにかするしかねえな」

「・・・おれが壊す」

 

ブロリーが立ち上がり、同じく空を見上げて言った。

 

「やれそうか?」

「うん、だいじょうぶ」

 

先程仙豆を半分食べて回復したこともあり、現状で一番攻撃力が高いのはブロリーだろう。

 

「あれだけ近づいてしまっている以上、壊したときにこちらにも余波が来るはずだ。星が壊れるほどではないかもしれんが、そのままだと少なからず被害が出るだろう」

「そっちはオラたちがどうにかするしかねえな。おーいベジーター!動けっかー!」

 

パラガスの言葉に頷き、悟空は少し離れたところにいた仲間のもとへ駆けていく。

 

ブロリーは、同じく視線を上げていた"ブロリー"のほうへとしゃがみ込んだ。

 

「・・・俺は手など貸さんぞ」

「うん。おまえはここにいてくれるだけでいい。・・・ただ、できればおとうさんのことは守って」

「・・・・・・・」

 

ふい、と視線を逸らしてしまった"ブロリー"へ苦笑を零して再び腰を上げる。

 

そして上を向き、深く息を吐いて気合を入れ直した。

視界の端で散らばった悟空たちが手を上げて合図したのを見て、拳を握り気を高める。

 

髪が逆立ち、緑の気に包まれたブロリーはそれを両手の中へ圧縮し空へ向かって撃ち上げた。

緑の閃光が蒼白い彗星へと吸い込まれ、一瞬僅かに押し上げた後に大爆発を起こす。

轟音と共に衝撃波と瓦礫が降り注ぐ中、全員が迎撃にまわったがその数は膨大で到底手が足りなかった。

 

ブロリーをはじめとしてZ戦士達が焦りを感じ始めたそのとき、金色の炎がひとつ噴き上がる。

 

「・・・・・!」

 

"ブロリー"が、超サイヤ人へと姿を変えていた。

抑圧されていたときのような青い髪ではなく、純然とした黄金にその色を染めて。

 

彼は、手は出さなかった。ただ、空を睨んだまま"そこ"にいただけだ。

しかし彼の周りに発生した気のバリアは本来のものよりも広範囲へ瞬く間に及び、降り注ぐ災禍の全てを防ぎ受け流した。

 

やがて空の輝きは徐々に消え去り、澄み渡る晴天が戻ってくる。

 

・・・これで、やっと全てが終わった。

 

 

 

それぞれが安堵の息を漏らす中、ブロリーもまた降り立ち変身を解いた"ブロリー"へと声を掛ける。

 

「・・・ありがとう」

「うるさい。余計な埃を払っただけだ」

「・・・うん。でも、ありがとう」

 

"ブロリー"は視線を合わせないままぶっきらぼうに言い放つ。

 

―――本当は、何もするつもりは無かった。

ただ、視界の端に映った狼狽える父親を見たとき、意図せずいつの間にかそうしてしまっていた。

それだけだ。

 

ブロリーもそれ以上言及はしない。

そんな中、集まってきた悟空たちが空を見て何かを見つけた。

 

「おい、あれなんだ?」

 

指差した先をブロリーも視線で追い、目を見張る。

 

蒼く澄み渡る空の中に、ぽつんと黒点がひとつ出現していた。

 

「あ・・・!!あれだ!!黒いやつ!!!」

 

思わず声を上げたブロリーに、悟空が口を開く。

 

「あれか、おめえが探してた黒いのって」

「うん」

 

あれをくぐった先に元の場所へ繋がっているという確証は無かったが、それでもブロリーはどこか確信めいたものを感じていた。

 

・・・やっと、やっと帰れる。

 

「彗星が爆発した影響で現れたんでしょうか?」

「そうだろうな。時間が経つと消えてしまうかもしれんぞ」

 

トランクスとピッコロの言葉に頷く。

悟空は少しだけ寂しそうに、笑ってブロリーへ片手を差し出した。

 

「んじゃあすぐにでも行ったほうがいいな・・・。随分急だけど、色々世話んなった。ありがとな」

「おれも。・・・いろいろ、ありがとう」

 

その手を握り返し、ブロリーは一度周囲に視線を巡らせる。

 

会釈を返すトランクスと悟飯、手を振るクリリン、腕を組んだままバツの悪そうな顔をしているベジータ、ただ頷いて見守るだけのピッコロ。

そして、じっとこちらを見ているパラガスと、最後に―――。

 

「・・・ぶろ。ひとつだけ、いいか」

 

悟空から離れて、自分と同じ名前を持つ彼のほうへと向き直る。

自分が呼ばれたのだと一瞬気づかなかった"ブロリー"は、黙って視線だけをちらりと向けた。

 

「落ち着いたらでいい。・・・おとうさんと、ちゃんと仲直り、してほしい」

「・・・・・・・」

「・・・おれは、できなかったから」

 

寂しそうに笑ってそう言うブロリーに、彼は何も答えない。

 

「・・・・・さっさと、失せろ」

 

ただ一言、そう呟くように言った。

それを聞いて最初に会ったときのことを思い出し、ブロリーは一瞬目を丸くしたあと苦笑を零す。

 

「それじゃあ、またな」

 

そして踵を返し、ブロリーは黒点を目指して飛び立った。

 

 

 

・・・・・"また"なんて、あってたまるか。

 

そう内心で零す"ブロリー"の見る先で、拡がった黒い穴の中へと吸い込まれるようにしてブロリーの姿がやがて掻き消える。

 

 

 

後に残ったのは、よく晴れた青空とそれを見上げる者たちだけだった。

 

 

 

 

 

「・・・行っちまったなあ」

「ああ。・・・俺達も、帰ろう」

 

ぽつりと零した悟空の言葉にクリリンが頷き、やがて再び散った各人によって地球へ移動するため人が集められ始める。

ひとまずシャモ星人は全て連れて行き、後日改めてシャモ星へ送り届けるという運びとなった。

他は自己責任の者も多く、適宜対応することにして後回しだ。

 

そんな中、悟空はブロリーとパラガス親子へと声を掛けた。

 

「おめえたちも来るだろ?地球」

「ご、悟空!?正気かよ!!??」

「おう。元々地球に移住するつもりだって言ってたし、ブロリーにも色々付き合うって約束しちまったしな。・・・それによ」

 

慌てたような声に悟空は頷き返し、空をちらりと見る。

 

「・・・アイツが残した一つだけの頼み、叶えてやりてえだろ」

 

それを見て、クリリンはそれ以上何も言えなくなった。

 

「・・・・・良いのか?」

「ああ。おっちゃんだって、ここまで来てまだ帝国作るなんて言わねえだろ?」

「それは・・・そうだな。今となっては到底無理な話だろう。その意義も理由ももう無い」

「だったら大丈夫さ。ブロリーだって、もしこれ以上暴れるなら宇宙のどこに居たって止めんのはどっちみち無理なんだし、だったら目の届く範囲にいてくれたほうがまだいいだろ」

 

憑き物の落ちたようなパラガスの答えと、悟空の言葉に「それはそうだ」と以降もう誰も何も異議は唱えなかった。

 

「地球は食い物も美味ぇし、おめえもきっと気に入るよ」

 

そうニカッと笑う悟空へ、ブロリーはもうどうにでもしろと言わんばかりに溜息を零す。

 

 

 

―――かくして、現存しているサイヤ人は全員地球で暮らすこととなり・・・ここから新たな歴史の流れがひとつ紡がれてゆくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――リー、・・・・・ロ・・・ブロリー、・・・・・・ブロリー!!』

 

 

 

真っ黒に染まった意識が浮上すると共に、誰かの声が聞こえてくる。

 

・・・・・聞きたかった声だ。ずっと、ずっと。

 

「ブロリー!!!」

 

ブロリーが目を開けると、途端に胸元へと何かが飛び込んできた。

うぐ、と呻いて視線を下げるとそこには薄緑色の肌をした少女が涙目でしがみついている。

 

「・・・チ、ライ?」

「もう!!どこ行ってたんだよ三日も!!心配しただろ!!??」

 

わんわん喚くその姿に呆気にとられ、しかし一瞬の後にはブロリーも目尻に涙を浮かべて「ごめん」と呟いた。

 

・・・無事に帰って来られたのだと、遅れて実感が湧いてくる。

 

視線を上げると、レモが少し呆れたような顔をしてこちらを見ていた。

 

「・・・レモ」

「ああ。ちゃんと帰ってきてくれて良かったよ。チライのやつ、お前が消えてからずっとこの調子でな」

「うっさい!!心配させたブロリーが悪い!!」

「ご、ごめん・・・なさい」

 

眉尻を下げて謝るブロリーに、チライも慌てて我に返ったように怒りたかったわけじゃないと涙を拭って言い繕う。

 

「あたしこそごめん・・・よく見たら傷だらけじゃないか。何があったかわかんないけど大変だったんだろ」

 

そう言って頭をぐしぐしと撫でてくるチライへ、ブロリーも表情を綻ばせて頷いた。

 

「うん。・・・たいへん、だった。おれ、たくさんがんばった」

「あとでゆっくり聞かせてくれ。二人とも、とりあえずハウスへ戻るぞ」

「そうだね。・・・ほら、ブロリー」

 

チライが立ち上がり、見慣れた黄色の空を背景にして笑みを浮かべながらブロリーへ手を差し伸べる。

 

「おかえり。」

 

たった数日しか離れていなかったのに随分と久しぶりのように思えて、その眩しさに目を細めたブロリーは。

 

ずっとずっと言いたかった一言を、やっと口にした。

 

 

 

 

 

「・・・ただいま。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(オシマイ)

 

 

 

 

 

**********




旧ブロの日おめでとう(*´∀`*)
ということで完結です。
ここまでお付き合いありがとうございました!





あとがきと次回作についてとかあれやこれやについて活動報告に書き散らしてあります。
ご興味あればどうぞ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=331651&uid=271404
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