結局ブロリーが目を覚ましたのは、すでに日も高く中天の半ばまで昇った頃だった。
「・・・うぅ・・・・・あたま、いたい」
どうもあれからずっと放置されていたらしく、テーブルに突っ伏したまま寝てしまっていたようだ。
変な体勢のまま長時間固まっていたせいで、頭だけじゃなく身体のあちこちが痛い。
身を起こして周りを見ると、食器の類はすっかり片付けられていて代わりに大きな水差しが置かれてあった。
昨日のことがあったために警戒しながら恐る恐る匂いを嗅いでみるが、無色無臭。
少しだけ舐めてみると今度はちゃんと水だった。
喉も痛かったので遠慮なく飲み干し、立ち上がって身体を伸ばす。
節々がバキゴキと盛大に音を立てて自分でもびっくりした。
どれくらい寝ていたんだろう、と席を離れて大きな窓から外の景色を見る。
すると丁度そのとき、宮殿から少し離れた発着場へ遥か上空から大きな宇宙船が降りてくるのが目に入った。
確か昨日、おとうさんが乗って行った宇宙船だ。
地球まで行くと言っていたが、今しがた戻ってきたところらしい。
広間を出てみると、宮殿にはそこかしこに人がいて昨日とは打って変わり雑然とした雰囲気に満ちている。
人の多い場所に行くのは苦手だったためにどうしようかなと考えていると、やがて入口近くにさらに人が集まってきて一気に騒がしくなってしまった。
完全に気が引けて、奥まった通路入口の陰に隠れたままこっそり頭だけ出して覗いてみる。
・・・あ、アイツもいる。
自分と同じ名を持つ、だんだん見慣れてきた長身の姿がこちらに背を向けて立っていた。
その視線の先、外のほうへ目をやると丁度到着したらしい乗り物から数人の人物が降り立ったところだ。
おとうさんに連れられて先頭を歩く男には見覚えがあった。
特徴的な逆立った髪型と戦闘服姿。
確か、そう、ベジータだ。
かつておとうさんが復讐しようとしていた王の子供。
悟空と同じく地球で拳を交えた相手だけど、あれ以来面識がなかったせいか正直あまりよく覚えていない。
怒りに任せて叩きのめしたような気はするものの、いつの間にかいなくなっていたからだ。
朧気な記憶を辿りつつ見ていると、おとうさんがベジータに自分と同じ名のアイツを指し示して恭しく頭を下げている。
「息子です、何なりとお使い下さい」
「・・・ブロリー、です」
丁寧な言葉遣いで会釈するアイツの態度にびっくりした。
・・・昨日までの様子と随分印象が違う。
「お前もサイヤ人のようだな」
「はい・・・」
いつものアイツなら、目の前であんな偉そうな態度をとられたら「なんだこの屑は」とでも言って張っ倒しそうなものなのに。
これがいわゆる、『猫を被る』というやつなのだろうか。いつだったかチライから聞いたことがあった気がする。
そんな器用なことが出来る奴だったんだなと意外に思って見ているとベジータがこっちの方をじっと睨んでいることに気がついた。
「・・・もう一人何か居やがるな?誰だ」
あ。バレてる。
やはり『気』のせいだろうか。
少しだけ頭を引っ込ませて片目だけで見る。
そのまま動かないでいると、だんだんとアワアワし出したおとうさんがこっちに向かって『お前も出てこい』と合図してきた。
「・・・・・・・」
仕方なく姿を見せ入口のほうへ歩いていく。
近寄るとベジータはあからさまに眉間の皺を増やしてこっちを睨んできた。
なんだかすごくイヤなやつだ。
「途轍もなく大きな気を発してやがる・・・何者だ」
「こ、この者は・・・現在食客として宮殿に滞在している流れ者でして・・・」
おとうさんがすごくアワアワしている。
・・・どうしてこんなに及び腰なんだろうか。
「貴様、名前は」
「・・・ブロリー」
「は?」
嫌々ながら名乗ると何を言ってるのかという顔をされた。
「奇しくも我が息子と同じ名を持っておりますが、関係者ではございません。ただ、この者もサイヤ人の血を引いているようである程度の実力は有しております」
きっぱり他人だと言い切られて、理屈では分かっているけどやはり気落ちしてしまう。
それが顔に出ていたんだろう、ベジータはまだ何かを言おうとしていたがそれよりも一瞬早く慌てたような誰かの声がその場に響き渡った。
「申し上げます!トトカマ星に超サイヤ人が現れました!」
「何ィ!?」
駆け込んできた伝令役らしき異星人にベジータが素早く振り返り、声を張り上げながらそのまま踵を返す。
「早速超サイヤ人を征伐しに出掛ける!貴様ら、後に続け」
・・・もしかしておれも数に入れられている?なんで?
「おれはいやだ。いかない」
「何だと?」
手下になった覚えはないし、まだここでの探し物も済んでないのに他の星に付いていく理由なんてない。
振り返って睨んでくるけど構わず顔をぷい、と背けていると舌打ちが聞こえてきた。
「・・・ちっ、とぼけた野郎だ。構わん、貴様だけでいい」
そっちの、とベジータはおれと同じ名前のアイツを指してそのまま連れ立って歩いていく。
「父さん!!闇雲に出掛けるのは危険です!もっと情報を集めてからでも・・・!」
「臆病者はついて来なくてもよい!ブロリー、早くしろ」
「父さん!」
紫色の髪の毛をした知らない誰かが駆け寄ってきてベジータを止めようとしたけど、構わずそのまま二人は出て行ってしまった。
ベジータのことを父親と呼んでいるということは奴の子供なんだろうか?でもじゅうぶん大人に見える。
サイヤ人は基本的に若造りだって聞いたけど案外おとうさんとベジータは歳が近いのかもしれない。
・・・まあ、どうでもいいか。
ベジータ達の姿が完全に見えなくなって、おとうさんはやっと安心したように息をついた。
「全く、冷や冷やさせおって・・・」
疲れたような声で苦言を呈されるもイマイチぴんと来なくて首を傾げる。
「いいか、今はこのまま奴を調子に乗らせておかねばならんのだ。あまり事を荒立てるんじゃないぞ」
「・・・・・わかった」
昨日言っていた計画というやつのためなんだろうか、周りに聞こえないよう声量を抑えて再度言い含めるような言葉にとりあえず頷いておいた。
詳しいことは教えてくれないからよくわからないけれど。あっちが突っかかってこない限りは喧嘩を売ったりもしない。
おとうさんは頭が痛いとぼやきながらそのまま宮殿の中に入って行ってしまった。
再び忙しなく飛んで行った宇宙船をぼんやり見上げながら、今日はどうしようかなと考える。
ふと視線を下ろすとさっきの紫色のやつがこっちを見ていることに気がついた。
「貴方は・・・貴方も、サイヤ人なのですか」
「そうだ」
「僕はトランクスといいます。・・・とても強い、でも不思議な感じの気を放っていますね」
若干の疑念を含み探るような目で見てくるが、ベジータのような刺々しさも敵意もない。
聞かれて別に困らない部分に関してはとりあえず頷くだけ頷いておく。
「先ほど父と一緒に出て行った彼と、同じ名前のようですが」
「・・・・・・・たまたま、だ」
そこは正直どう説明したらいいのか全くわからなくて、苦し紛れに偶然だと言っておいた。一応嘘じゃない。
「・・・そうなんですか。件の超サイヤ人については貴方は何かご存じではないんですか?」
質問が多いなと思いながら首を横に振ると、そうですかと言ってそこで会話が止まる。
どう反応していいか困っていると遠くから『おーいトランクスー』と呼ぶ声がして、トランクスは一度振り返ってからこっちに軽く頭を下げ踵を返して行った。
「あ、・・・すみません、失礼します。良ければまた後程お話させてください」
「・・・・・・・」
良いとも嫌とも言わない間に走り去ってしまったその先には、数人の人間と半獣みたいなやつがワイワイと騒いでいるのが見える。
皆ベジータと一緒に地球から来た連中なんだろうか。
あまり興味もなかったからそのまま視線を外し、このままここに居てもしょうがないと思って自分も外へ行くことにした。
昨日とは別の方向に飛び続けていると、今度は廃墟ではなく砂漠のような開けた土地に出る。
視界も広くとれるしまだこっちのほうが探しやすそうだなと思ったけど、ただひたすらに真っ平らな地平線が続くばかりだった。
結局気になるものは何も見つけられないまま数時間が経ち、今日もダメかと思い始めた頃。
地面を這う細長いものがそこかしこに現れ始めて、それを辿っていってみると岩場に大きな穴がいくつも開いているエリアに出た。
・・・どことなく、バアがねぐらにしていた竪穴を思い出す。
穴に近寄ってみるとそこには緑のふわふわではなく、見たことのない小さな異星人がたくさんいた。
列をなして何かを運んでいたり、何かを掘っていたりで忙しなく働いている。
・・・みんな、表情は辛そうだ。
穴をいくつか見回してみると、列から離れた異星人を監視役が鞭で叩いているところが目に入った。
思わず自分の眉根が寄るのがわかる。
無性にイライラして、割って入ろうとそっちの方に向かって急降下した。
降りる途中、小さな人影がおれより先に突進したようで鞭で叩いていた奴が急にひっくり返る。
その周りに似たような鎧の奴がわらわらと集まりだしたところで、その中心辺りに思いっきり勢いをつけて着地した。
ドゴンと大きな音が鳴って地面が揺れ大きく凹む。
これで驚いて散ってくれればいいなと思いながら全体重を乗せてみたら思ったより地面が割れてしまった。
けれど効果はあったようであちこちから怯えたような悲鳴が上がり、ついでにじろっと睨んでみると周りにいた鎧の奴は虫の子が散るように逃げて行く。
うずくまったままの小さな異星人も震えながら見上げてきたけど、しゃがんで「だいじょうぶ?」と聞くとポカンとした顔をした。
「あ、あなたは・・・・・」
掛けられた声に振り返るとすぐそばに逃げていない人物がひとり立っている。
最初に突進をかけて割り込んだ小さいやつだ。よく見るとまだ子供だった。
ゆっくり立ち上がると、どことなく見覚えのあるその顔は身構えながらも困惑したように見上げてくる。
記憶を探り、すぐに思い至った。
「・・・あ、悟空」
そうだ、悟空に似てるんだ。顔も声も。
思わず口に出すと、子供のほうも「えっ」と声を上げて表情がキョトンとしたものへ変わる。
「おとうさんを知ってるんですか?」
「うん」
頷くと、それなら悪い人じゃなさそうと呟いて表情が和らぎ構えも解かれた。
「悟空の、子供?」
「はい、孫悟飯といいます」
おとうさんってことは、と首を傾げて訊くと子供は名前を告げて掌で拳を包み軽く頭を下げる。
・・・やっぱり声も匂いもとても似ていた。
その丁寧な言動も相まって、いいやつなんだろうなとなんとなく思って口角が上がる。
「お、お~い・・・・・大丈夫か・・・?」
また違う声が聞こえてきて、振り向くとそこには丸い頭のやつと昼間一度話した紫色のトランクスがいた。
「クリリンさん!大丈夫です、敵じゃありません」
悟飯の言葉に少しビクビクしていた丸頭は安心したように息を吐き、近寄ってきて様子を伺うように見てくる。
「お前、さっき宮殿にいたやつだよな?ブロリーだっけ?」
「おとうさんの知り合いだそうですよ」
「おまえたちも、みんな悟空の仲間?」
「まあ、そんなとこだな」
じゃあみんないいやつなのかもしれない。
トランクスのほうに目をやると、「先ほどはどうも」と軽く頭を下げてきた。
嫌な感じは今のところしない。
「・・・みんな、強いのか?」
「う~ん・・・悟空と比べられちゃ流石に立つ瀬がないけど、これでも一緒に修行した仲だしそこら辺の奴よりかはずっと腕は立つはずだぜ?」
丸いクリリンはそう言うと拳を突き出しシュシュシュシュ、と何かの型なのか空中に向かって連撃を繰り出している。
そのときだった。
例の瞬間移動なのか唐突にその場に悟空が現れ、運悪く突き出された拳が綺麗に顔面に入る。
「あ」
「あっ」
「悟空さん!?」
ガスッと変な音がして仰け反った悟空が尻もちをついた。
「いでででで・・・!」
「ごごご悟空!?どうしてここに・・・!」
わたわたするクリリンに悟空は頬を抑えながら首を傾げる。
「オラにもわかんねえ・・・サイヤ人の気を追って・・・。おめえ達こそなんでここに?」
「ベジータが伝説の超サイヤ人を倒してくれって頼まれて・・・」
「界王様ベジータにも頼んだんか・・・?」
辺りを見回すようにキョロキョロ視線をさ迷わせる悟空と目が合った。
「よ、ブロリー。結局こっちに戻ってきちまったな」
片手を上げて笑う悟空に「昨日ぶり」と頷く。
尻を払って悟空が立ち上がったところに、聞き覚えのある声がその場に響いた。
「よく来たなカカロット。いや、孫悟空」
声に反応して全員が視線を上げるといつの間に居たのか、崖の上のほうからおとうさんがこちらを見下ろしている。
一瞬おれのほうを見て何とも言えない表情をしたけど、すぐに不敵な笑みを浮かべて悟空のほうへと向き直った。
「どうしてオラのことを?・・・おめえもサイヤ人だな」
悟空は警戒の色を滲ませた声でおとうさんを指す。
「バーダックの倅だろう?・・・ふふ、夕食でも如何かな」
おとうさんは怪しく笑んだままそう告げた。
・・・悟空の父親と知り合いだったのか?
おれのおとうさんはベジータ王のことはいつも散々恨み節を込めて聞かせてきたけど、それに反して他のサイヤ人の話はほとんど口に出したことすら無かった気がする。
夕食という単語が出た途端、鋭かった悟空の表情があっというまに崩れた。
「そういやオラ腹減っちまった、ははは」
夕日が沈みかけている時刻というの相まって、ひとまず全員宮殿へ移動しようかという流れになる。
サイヤ人は飯に弱いんだもんなあ、というクリリンのため息交じりの声が聞こえたが誰も否定はしなかった。
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やっとそれっぽくなってきました(・∀・)イェイ
このシリーズってクロスオーバータグつけたほうがいいと思いますか??
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つけるべき
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どっちでもいいよ
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いらぬ