悪魔と獣。   作:こねこねこ

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あくまとけだもの.4

 

 

 

通されたのは昨日と同じ部屋で、テーブルには昨日よりもたくさんの料理が並んでいた。

 

「ではごゆっくり」

 

おとうさんがそう言い残して退室していった直後、みんなが群がるように料理に手をつける。

何やらぶつぶつと呟いている悟空の隣でひたすらに貪っていると、しばらく経った頃ふと視界の隅で悟飯やトランクスたちがごそごそ動いているのが目に入った。

 

見れば机の上の料理をせっせと移して包みに詰めている。

 

「・・・あ、すみません。取りすぎないようにしますので」

 

トランクスの言葉に首を傾げると、悟飯が少しだけ気まずそうな、でも優しい顔をして教えてくれた。

 

「シャモたちに食べ物を持っていってあげようかって、トランクスさん達と話してたんです」

「シャモ?」

「さっき採掘場でブロリーさんが助けてくれた子たちですよ。あまり食べさせて貰えてないみたいで・・・あの、よかったら一緒に行きますか?」

 

あの働かされていた小さな異星人のことだろう。

おずおずと覗き込むようにして訊いてきた悟飯へ、少しだけ考えてから頷いた。

 

「・・・、うん。おれもはこぶ」

 

満足に食べられないのは、かなしいことだ。

 

腹もそこそこ満ちていたし食べるのはここまでにして、そこらにあった料理を悟空たちの周囲だけ残して片っ端から詰め込んでいく。

かなり大きな荷物になってしまったそれを担いで悟飯たちについていくと、ボロボロになった小屋にシャモと呼ばれた異星人たちがたくさんいた。

 

持ってきた荷物を開くと、表情を明るくしたシャモ達がワッと群がり瞬く間に食べ物は減っていく。

 

「また持ってきてあげるからね」

「ありがとう!!」

 

そう言う悟飯も、口々にお礼を言うシャモ達も、みんな笑顔だ。

つられて自分の口角も上がるのがわかった。

 

・・・自然と、少しだけ重ねてしまっていたのかもしれない。

幼い頃から長きに渡り弱肉強食の環境に置かれていた自分には、飢えは死に直結するものだという実感がある。

ここ最近でその状況は劇的に変化したが、中でも悟空の来訪・・・ついては差し入れてくれる食べ物の数々は、いつしか日々の中での決して小さくない楽しみと化していた。

それまで味気もなく、必要に駆られての行動でしかなかった食事というものが根本のところから変わったのだ。

 

目の前のシャモを見ていると、それを思い出した。

ほんの、少しだけ。

 

 

 

「君たちの星を荒らしたのは、パラガスじゃないのか?」

「ちがうよ、べつのヤツだった」

 

食べ物がなくなりかけた頃、話を聞こうとトランクスが切り出したがシャモ達は首を振った。

 

「・・・あのブロリーの力ではとてもそうは思えなかったし・・・やっぱり他に別の超サイヤ人が居るのかな」

 

出された名前につい視線を向ける。

 

「あぁいえ、宮殿にもう一人いた彼のことです。・・・貴方ほどの実力であれば超サイヤ人だと言われてもまだ納得出来るんですが・・・疑うようですみません、貴方は何の心当たりもないんですよね?」

「悟空にも同じことを言われた。おれは知らない。」

「ブロリーさんは、超サイヤ人にはなれるんですか?」

 

悟飯にそう訊かれて、手のひらを翳してみた。

たぶん、あれのことだろう。

 

「・・・あの、金色になるやつか」

「はい。サイヤ人全員が変身できるというわけではないので、かなり稀な現象の筈なんですが」

「たぶん、できる。・・・けど、おれはなっちゃいけない」

「どうして?」

「あれになると、おれは・・・なにもわからなくなる」

 

翳した手のひらを握って、噛み締めるように言葉を絞り出す。

過去に変身した経験は二度。

どちらも、ロクな結果になっていない。

 

「暴走する可能性があるということですか・・・」

「ブロリーさんほどの人がさらに超サイヤ人になるなんて、どれくらい戦闘力が上がるか想像もつきませんね」

「それこそ伝説の超サイヤ人だと呼ばれてもおかしくはなさそうです」

 

トランクスと悟飯が神妙な顔をして考え込む。

疑いが掛かるかと思われたが、トランクスはすぐに首を振った。

 

「・・・しかし、シャモ達が貴方に反応していませんし、なにより貴方は自分で暴走の危険があると自覚している。・・・正しく在ろうとしているように、ぼくには思えます」

 

知り合ってからまだ間もない筈なのに、真っ直ぐ見てくるその顔には若干の信頼感が滲み出ている。

それを裏切ってしまうのは嫌だなと思いながら目を伏せた。

 

「前に変身したときは・・・たくさん暴れて、地球もバンパも壊しかけてしまった。だから、おれはあれにはなっちゃいけない」

 

勿論いずれはちゃんと抑えられるようになれればいいなと思ってはいるし、それを目標にしてゴジータに手ほどきを受けたりしていたけれど。

現状はまだまだ先が遠そうだ。

 

「ん?おい待て待て待て、地球を壊しかけただって?」

 

隅っこで話を聞いていたクリリンが急に口を挟んできた。

前のめりで訊かれ、当時のことを思い出しながら頷く。

 

「うん。悟空もベジータも、おれを止められなかった」

「なんだそりゃ!?お前ほどのヤツが超サイヤ人になって悟空と戦ったっていうんなら流石に俺達が気付かないわけないだろ?悟飯、悟空からそんな話聞いてるか?」

「いえ、全く・・・初耳です」

 

悟飯は首を振るが、それもそうだろう。

ここに来る前、"あっちの世界の話"なのだからこっち側の悟空たちが知るはずがない。

 

「一体いつ頃の話なんだ、それ?」

「・・・わからない。こっちとあっちで、時間がずれてるから」

 

説明がむずかしくて、変な言い方になってしまう。

クリリンや悟飯はどういうことかと疑問符を浮かべていたが、ひとりだけトランクスが顔色を変えて食いついてきた。

 

「ちょっと待ってください、それ・・・詳しく話して頂けませんか」

 

もう何度目になるのかわからないが、自分がここまで来た経緯を話す。

なるべく詳しく、と言われて思い出せることは全て伝えてみた。

 

「そうでしたか。・・・ブロリーさん、単刀直入に言いますが、僕は現在貴方と似たような立場にあります」

「・・・・・??」

 

意味がよくわからない。

どういうことかと首を傾げると、トランクスは思ってもみなかったことを言い出した。

 

「時間と世界線を超えて、ここにいるということです。僕は今から約20年後の未来から来ました」

「!!!おまえも・・・同じ・・・・・!?」

「はい。実際、今この時代にはまだ赤子の僕が母さんと一緒に地球で暮らしています」

 

思わず目を見張る。

視線を移すと、悟飯もクリリンも本当のことだと頷いていた。

 

「ただ、ひとつ違うのは・・・僕は事故ではなく自分の意思で、タイムマシンを使ってここにいるということです。なので帰る方法もハッキリしていますが・・・すみません、そこの点に関しては何も助けになれず申し訳ないです」

 

気まずそうに頭を下げるトランクスに首を振る。

謝る必要なんてないのに。

 

「・・・おまえがわるいわけじゃない。わかってる」

「今の状態で言えることがあるとすれば・・・仮にタイムマシンなどでここから未来に移動してしまうと、"この世界の未来"に行ってしまう可能性があります。貴方が元々いた別の世界線の未来に戻るには、やはり来た時と同じ方法で帰るというのが一番確実なのではないかと」

「・・・あの、黒いやつ」

「それが次元の裂け目のようなものなのだとすると、またいずれどこかで発生することもあるかもしれません。僕達もそれらしきものを見つけたときは貴方にお知らせします」

「たすかる」

 

今度は自分のほうが頭を下げる。

正直、このまま自分だけで探していてもずっと見つからないような気がしていた。

 

「それと、もうひとつお伝えしておきます。ここは貴方が元居たところより過去の時代になると思いますが・・・貴方が何らかの行動を起こしたことで仮に歴史が変わったとしても、恐らく貴方の世界へ直接影響を及ぼすことはありません」

「・・・・・・・?」

「僕は元々、世界のとある危機を回避するためにこの時代へ来ました。結果として自分の知る歴史とは違う方向へと現状は変わりつつありますが、僕が元居た場所では何も影響はなく・・・失ったものも、決して戻りはしなかった」

 

何か前例があったんだろう。

僅かに目を伏せたあと、トランクスは真剣な顔をして話を続ける。

 

「だから、その・・・余計なお世話かもしれませんが。もしこの先、貴方が何か大きな選択をしなければならなくなったとき。何に影響を及ぼすかを考えるよりも、自分が正しいと思えるほうを選ぶべきだと僕は思います。後悔だけはしないように」

 

・・・難しい話だと思った。

仮にそんな時が来たとして、頭よりも先に身体が動きがちな自分には色んなことにきちんと考えが及ぶかはわからない。

でも、たぶん、とても大事なことなんだろうとも思った。

 

「・・・おぼえておく」

 

しっかりと頷くと、トランクスは長々とすみませんと真剣な面持ちを軽く崩す。

話が途切れたところで、黙ってずっと聞いていた悟飯が口を開いた。

 

「ええと、ということは・・・宮殿にいたあのブロリーとここにいるブロリーさんは、ほんとうは同一人物・・・ってことになるんですか?」

「本来は、そうだったんでしょう。・・・どれくらい前に分岐した世界からいらっしゃったのか正確にはわかりませんし、かなりその差は大きいもののようですが」

 

同じ人間だったと言われてもあまり実感は沸かない。

・・・が、アイツを見ていると不思議な感覚をおぼえるのは確かだ。

うまく言い表すことは出来ないけれど。

 

「しかし、そうなると話が若干変わってきますね。仮に彼もブロリーさんと同じかそれ以上の力を隠し持っているのだとしたら・・・僕達は彼が戦う所を見ていませんし、極限まで気を抑えて今の状態を装っているだけという可能性もまだ無くはない」

「ブロリーが伝説の超サイヤ人本人だってことか?もしそうならベジータがずっと一緒に行動してるしどこかで気づくんじゃ」

「どうでしょう。父さんは目の前に敵がいたら自分でさっさと片づけてしまうタイプですし・・・」

 

クリリンとトランクスは二人してうんうんと唸っている。

結局答えは出ないまま、持ってきた食べ物も無くなりおれたちは宮殿へ戻ることにした。

 

悟空たちも食事を終えていたようで広間には誰もおらず、夜も更けてきていたため皆は寝泊りするために宛がわれた部屋へと引き揚げていく。

その途中、皆から離れて別の方向へひとり歩き出した。

 

「・・・・・・・」

 

ベジータ達は既に帰ってきているらしい。・・・きっとアイツも。

 

 

 

記憶にある部屋を目指して階段を昇っていく。

何か妙な、胸騒ぎのようなものを感じながら。

 

 

 

 

 

**********




だんだん埋まっていくピースと、だんだん少しずつズレていく歯車。
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