悪魔と獣。   作:こねこねこ

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あくまとけだもの.5

 

 

 

辿り着いた部屋の前で、少しだけ躊躇ってしまった。

 

 

 

・・・何故ここに来たのかと聞かれたら、アイツと話をしてみたいと思ったから。

何を考えているのかわからないし、出会ってからここまでマトモに相手をしてくれる様子も無かったけれど。

 

「・・・・・?」

 

扉のほうへ手をかけようとして、ふと違和感に気が付いた。

かなり近づいて初めてわかったことだが、中から感じる気配がひどく乱れている。

 

扉を開けると、アイツはすぐそこに居た。

大きな椅子に座ったまま、肘掛けを両手で握り何かを堪えるように項垂れている。

 

息が荒い。汗が滴っている。時折喘ぐように低く唸り声を漏らすその様は明らかに苦しそうだ。

僅かに震えているのは寒さや恐怖といった類のものではなく、おそらくは全身に多大な力を込めているせいだろう。

 

「・・・・・おまえ、どうした?」

 

そのあまりに異様な様子に呟くようにして声を掛けるも、こちらに反応はない。

そんな余裕すらないのだろうか。

 

恐る恐る手を伸ばし、腕に触れた。

その瞬間、一瞬目の前が真っ白になって何かに弾かれる。

 

「ッッ!!!??」

 

驚いて二、三歩後退った。

 

・・・なんだ、いま、何かが。

何かが流れ込んできたような。

 

アイツのほうを見ると僅かに顔を上げて視線がこっちに向いている。けど、その目は自分を見ていない気がした。

額の飾りに嵌め込まれた宝石が鈍く輝いている。

 

気が、急に膨れ上がった。

煽られてアイツの髪が逆立つが、その色は金にはならず深い紫に染まっている。

 

「・・・・・カ、・・・ット」

「・・・?なんだ、」

「カカロットォォォ!!!!!」

「え!?」

 

突然この場にいない悟空の名前が飛び出したことに驚いて、咄嗟に周囲に視線をやるもやっぱり他には誰もいない。

 

次の瞬間、さらに爆発的に気が上昇したと思った途端アイツは弾かれたように椅子と扉を吹き飛ばし、そのまま部屋を飛び出していった。

 

自分のほうは見向きもせずに素通りだ。

わけがわからなくて一瞬反応が遅れてしまったが、急いで後を追いかける。

さっきの様子からして、恐らくは悟空のもとへ向かったんだろう。

 

宮殿は結構広い。

どの部屋に悟空がいるのかは知らなかったから、アイツの残していった気の残滓を辿っていった。

・・・早く追い付かないと、あまり遠くに行かれると判らなくなってしまう。

速度を上げ、壁を蹴って曲がり、階段をそのまま飛び降りるようにして階下へ向かった。

聞こえた破砕音に目をやると、部屋のひとつの扉が壊れてなくなっている。

あそこだ、と飛び込むと向かいの窓枠を粉砕しながらアイツが外へ飛び出していくのが見えた。

 

「こらー!無茶すんなー!!」

 

悟空の声がする。

外に移動しているらしい。

部屋をざっと見回すと、トランクスとベジータの姿が無かった。

何故か壊れたベッドの下敷きになっている悟飯とクリリンの上から通り過ぎざまにそれをどけて、おれも窓があった穴から飛び降りて追いかける。

 

緑色の気弾が飛んで爆発するのが見えた。

距離がどんどん離れているらしい。

落下中に飛行に切り替えて一直線に翔び、湖の上でようやく動きの止まった二人に追いついた。

 

「!?ブロリー!」

 

割り込むようにして滑り込むと、悟空が驚いたような声を上げる。

 

「・・・悟空、アイツになにか、した?」

 

目の前に悠々と浮かぶアイツは、相も変わらずちっとも自分のほうへは目もくれない。

憤怒と憎悪に満ちたその視線は悟空のほうへばかり向けられている。

 

「知らねえ知らねえ!ついさっき会ったばっかだし何もしてねぇのに睨んでくんだ!」

 

悟空は首と手をぶんぶん振るが、何もないのにあんなに怒ったりするだろうか。

・・・でも、勘違いをしている可能性だってあるかもしれない。

 

「とにかく、止めないと」

「ああ」

 

悟空と並んで構える。

アイツが雄叫びを上げて突っ込んできたけど、やっぱり標的は悟空のほう。

 

・・・もしかして、おれのこと見えてないのかな。

 

がら空きになっていた横腹目掛けて気弾を撃ってみる。

すると、向きは変えなかったがアイツは片手でそれを難なく弾き飛ばした。

 

あ!これわざと無視してるだけだ!

 

少しだけイライラして、悟空へ掴み掛かっているアイツの両腕を後ろからとって羽交い締める。

力はおれのほうが強い。

背の高さでは負けてるけど、腕だっておれのほうが太いんだぞ!

 

首だけ振り返ったアイツがギッと睨んできた。

 

「・・・やっとみたな、おれのこと」

「邪魔を・・・!!するな!!!」

 

叫ぶと同時にまた気が一気に膨れ上がり、勢いで振り解かれる。

拘束が解けたアイツが向かったのはやはり悟空のほうだった。

突っ込んでいくアイツの顔面に悟空が回し蹴りを入れ、頬を強打して止まる。

 

振り返ったアイツは滴っている血をべろりと舐めて笑った。

 

・・・うわ。ちょっとだけゾワっとした。

 

「きもちわり・・・!やだおめぇ!」

 

悟空はハッキリ口に出してた。

 

・・・でも、どうしよう。

これまで戦ってきた経験上、自分は"相手の動きを止める"という目的で誰かと相対したことがほとんど無い。

大ダニは狩って殺すだけだったし、悟空やベジータやゴジータと戦ったときも全力で相手を打ち倒すことしか考えていなかった。

バンパに戻ってから悟空やゴジータが付き合ってくれた手合わせのように、相手がちゃんと加減してくれるわけでもない。

そう考えると暴走しかけた自分を毎回ちゃんと止めてくれるゴジータは本当にすごいなと思った。

 

・・・そこまで考えたところでふと、ある記憶が頭を掠める。

 

「・・・動きを、止める・・・・・?」

「何か良い方法あるか!?」

「ためしてみる!」

 

叫ぶ悟空に一言だけ返し、二人の間へ割り込んで殴り掛かってきていたアイツの正面に位置取った。

 

手を前に突き出し、"あのとき"の感覚を思い出す。

視線は真っ直ぐ外さないまま、自身の底から溢れ出す気をたくさんたくさん凝縮してから目の前へと放った。

 

「はっ!!」

 

拳を振りかぶっていたアイツの動きがビタリと止まる。

動きの途中そのままのポーズで、全身微動だに出来なくなったはずだ。

目に見えるほど濃い緑色の気が身体全体を覆っている。

 

・・・自信があったわけではなかったけど、ちゃんと出来た。

 

「!?・・・ぐ・・・ッ、」

 

アイツの表情が驚愕と憤怒に歪む。

ギリギリと音を立てそうな勢いで、拳をそのまま振り抜こうと物凄い力を加えているのがありありと伝わってきた。

 

「ッすげぇ・・・!」

「これ、悟空がおれに使ったやつ」

「えぇ!?オラ知らねえぞそんなの!」

 

正確にはおれと地球で戦ったほうの悟空だが、ちゃんと説明なんてしてる場合じゃない。

抵抗が物凄い!

かつて自分もこの技を掛けられたときは力業で破ったから、アイツも出来なくはないはずだ。

 

・・・そしてそれに加えて、以前悟空へやり返したときとは違う何か変な感覚があるのに気がついた。

アイツの全身を覆っている自分の気が、まるで内側からガリガリと削り取られているような。

やがてそれはどんどん加速していって、アイツの気がまた膨れ上がり一気に溢れ出す。

 

・・・まずい。思ったよりも持たない!

 

「ごめん、むりだった!」

「うおおおぉぉァァァ!!!!!」

 

雄叫びを上げたアイツの全身から気が弾かれて、飛んでくる拳を両手を重ねて受ける。

勢いを殺し切れずに吹っ飛ばされた。

重い。さっきよりずっと力が増している。

 

水を切って滑り、空中で体勢を変えて急停止。上に視線を戻すとアイツが大きく身体を捻って腕を引いたところだった。

そのまま大仰な動作で腕を振り切り、小粒の気弾が広範囲へ大量に飛んでくる。

 

慌てて避けると、後ろのあちこちで爆発が起こった。

このまま放っておいたらめちゃくちゃになりそうだ。

 

まとめて狙われたのか悲鳴を上げている悟空と合流して場所を移す。

ちゃんと足場がある岸壁の上まで来ると急旋回し、追ってきたアイツへ飛び出しざまに悟空が殴りつけた。

しかし拳が顔面に当たっても首が僅かに仰け反っただけで体勢を崩しもしない。

さっきからずっと、気が上がるたびにパワーも耐久もどんどん増しているようだった。

もう一度抑えられるかどうかすら、もう怪しい。

 

下がってきた悟空に横並ぶ。

大してダメージも無さそうなアイツは空に向かって吼え、さらに気が上昇していくのがわかった。

これ以上は本当に無理そうだ。どうしよう。

 

するとそのとき、マントを翻しながら人影が急におれたちの前へ割り込んできた。

 

「・・・おとうさん!?」

「やめろ!ブロリー!」

 

降り立ったおとうさんは右手を翳してアイツへ呼び掛ける。

気の上昇は止まらない。

 

「オラがずっと感じてたんはこの気だ・・・南の銀河を破壊したのはおめえだな、ブロリー」

 

悟空が険しい表情でそう言うと、アイツはそれを嘲笑うように高笑いを上げ始めた。

 

「やめろブロリー!やめるんだ!やめろおぉぉぉ!!」

 

おとうさんの必死な声が響く。

右手に嵌められた飾りが強い光を放ち、それにつられるようにアイツの額の宝石も輝き始めた。

 

それを見て、思わず頭の芯が冷えていくような感覚に陥る。

 

・・・あれは、もしかして。

 

しばらくそうしているうちに、アイツの笑い声がだんだんおさまってきて髪の毛が黒色に戻った。

膨らんでいた気も急速に萎んでいく。

やがて完全に鎮静化したアイツにおとうさんが寄り添って促した。

 

「ブロリー、宮殿へ戻るんだ」

 

黙って従うアイツが振り返る刹那、見えた横顔はさっきまでとは打って変わってまるで魂でも抜けてしまったかのようで。

驚いている悟空とおれが見る先で、二人はそのまま飛び去っていってしまった。

 

「間違いねえ・・・やっぱり奴が南の銀河で暴れた超サイヤ人だ」

 

やがて姿が見えなくなった頃、悟空が確かめるように呟く。

おれは何も言えないまま呆然としていた。

あたまの中が、すごくごちゃごちゃしている。

 

「・・・大丈夫か?顔、真っ青になってんぞ」

 

言われて悟空のほうへ目をやると、とても心配そうな顔をしていた。

頷いて、いつの間にか首元へ触れていたことに気づく。

ずっとずっと長い間そこにあった、けれど今はもう無くなってしまった冷たい感触が懐かしい。

 

 

 

それから宮殿へ戻る途中も、ずっと考えていた。

 

アイツの頭に付けられているアレは、きっと自分の首に掛けられていたあの装置と似たような用途のものなんだろう。

・・・あの輪っか自体が怖いわけじゃない。

それよりも気になるのは、それで抑えつけられているアイツ自身のほうだ。

見るたびに様子がおかしくなっていたのも、たぶんあれのせい。

 

最初の頃に見たどこか何かを諦めているような顔と、数刻前までの苦しげな様子を思い返す。

アイツの本当の心は今、いったいどこにあるんだろうか。

 

そして自分は、どうしたらいいんだろう。・・・なにをしたいんだろう。

 

"後悔しないように"というトランクスの言葉を思い出した。

考えが何もまとまらない。ずっとあたまの中がぐるぐるしている。

 

 

 

その夜は、バアの耳をつよくつよく握りしめて眠った。

 

 

 

 

 

**********




第一ラウンド終了。
超ブロが使ったのは、超版の映画に出てきたアレです。

旧映画の夜中の襲撃シーンを見返してたら悟空さの攻撃がぜんぶZブロの顔面だけしつこく狙っててちょっと笑っちゃった。なんで??





(追記)
なんだか急にたくさんの人に見て頂いていたようでびっくりしました!!ありがとうございま~す!
アクセス解析ページ5度見した。お気に入り数が10倍界王拳しておる・・・((´⊙ω⊙`))

小説書くの自体数年ぶりなリハビリ作で恐縮なんですがこれからもちまちまがんばります。
あの、もしよろしければ、感想など頂けると、元気になります。。。( ˶˙ᵕ˙˶ )なにとぞ。。。
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