━━豊川家 別荘
初華「…」
定治「祥子が気になるか、初音」
初音「…挨拶くらいはしたかったです」
定治「祥子がこの島に来てるそうだ」
初音「えっ…!?」
定治「お前に会うためだと」
初音「さきちゃん…」
定治「しかし会うことは許さない、お前はここで役目を果たせ」
初音「…はい」
祥子「初華!!!」
定治「何…!?」
初音「さきちゃん!」
祥子「初華!いますのよね?ドアを開けてください!」
定治「源太郎を突破したというのか…」
定治「祥子の足止めをしてこい」
???「分かりました、お義父さん」
初音「え…?貴方は…」━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
祥子「初華!初華!!」
祥子「いない…?そんなはずは…」
???「祥子」
祥子「ッ!誰ですの!」
???「…」
祥子「…そんな…まさか…クソ親父…!?」
清告「クソ親父…そう言われても仕方ないか」
祥子「なぜ…!貴方動けたんですか!?」
清告「お義父さん…定治さんの命令でね。ちょっと演技をしてたんだ」
祥子「どうして…そんなことを…」
清告「…僕はね負けたんだ祥子」
祥子「負けた…?」
清告「初音ちゃん…彼女は定治さんの娘だ」
祥子「え…?初華がお爺様の…娘…?」
清告「僕は定治さんに初音ちゃんを豊川家に迎え入れるように申し出たんだ。父としての責任を果たすべきだと」
祥子「…」
清告「だが僕は負けた、豊川家現当主の力は絶大だった…。豊川家では強者が絶対、僕はもう逆らうことは出来ない…」
清告「だから祥子。ここを通す訳には行かないんだ」
祥子「…分かりませんわ」
清告「何がだい?僕が祥子を止める理由は話したけど…」
祥子「お爺様が何をしたいのかがわからないですわ、あの人は何をしようとしているんですの?」
清告「…僕に勝ったら教えてあげるよ」
祥子「戦うしかないですのね…分かりましたわ」
清告「…こい」
祥子「…ハァッ!!!」━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
睦「はぁ…はぁ…くっ…!」
源太郎「ここまでついてくるとは大したものです、ですがそろそろ限界でしょう、フゥッ!!」
睦「ガァッ…!」
モーティス(睦ちゃん!交代!)
睦「うん…!」
モーティス「やあぁぁぁぁっっ!!」
源太郎「変わりましたか。しかし」
モーティス「えっ!?止めた!?」
源太郎「一度見たものは私には通用しませんよ。ふっ!」
モーティス(正拳突き!ガード!)
源太郎「…そして」
モーティス「フェイント!?まさか…!」
源太郎「ふぅぅぅぅ!!」
モーティス「ああああああっ!!!」
源太郎「見たものを模倣することも可能です」
睦(モーティス!八極拳を…)
モーティス「うぅ…ぐっ…」
睦(モーティス!交代を…)
モーティス「睦…ちゃん…回復してないでしょ…?私はまだ大丈夫…だから…!」
睦(モーティス…!)
源太郎「立ち上がりますか」
モーティス「当たり前…でしょ…私は…負けないの…!」
源太郎「何故そこまで?」
モーティス「…ムジカは睦ちゃんの大切な場所だから…」
睦(モーティス…)
モーティス「私は一度ムジカを壊した、そして睦ちゃんを傷つけた。だから!もう二度とそんなことはさせない!」
源太郎「…?別に壊そうとしている訳では無いですよ。初音お嬢様と祥子お嬢様が居なくなるだけです、三人でやっていくか新たにメンバーを入れれば良いのでは?」
モーティス「わかってないねおじいちゃん。ムジカはね初華ちゃんのギターボーカル、海鈴ちゃんのベース、にゃむちゃんのドラム、睦ちゃんのギター、祥子ちゃんのピアノでできてるの。一個でも欠けたらそれはムジカじゃない。睦ちゃんの大切な居場所じゃなくなっちゃう」
睦(…)
モーティス「取り戻すために私は立ち上がるの!!」
源太郎「…そうですか、軽率な言動を謝罪します。しかしここを通す訳には行かない」
モーティス「はぁ…はぁ…」
睦(モーティス…!早く交代…!)
モーティス「すぅっ…はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
睦(モーティス!ダメ!)
源太郎「…終わりです」
???「いいえ、終わらせません」
???「にゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
源太郎「何!?ぐぅっ…!」
モーティス「あ…海鈴ちゃん…にゃむちゃん…!」
にゃむ「だいじょぶ?ムーコ モーコ」
海鈴「約束通り追いつきました」
睦(ありがとう)
源太郎「なぜ…?島に来るためのフェリーは全て欠航にした…どうやって…?」
???「私が彼女たちを連れてきました」
源太郎「米花…なぜそんなことを?」
米花「勝手な行動を取ってしまったこと申し訳ありません。ですが私は彼女たちに可能性を感じています」
源太郎「可能性…?」
米花「源太郎さんも気づいていられるでしょう、定治様はおかしい、あんな暴挙に出られるなど狂ってしまわれています。何も知らない使用人たちも疑いの目を向け始めています」
源太郎「…」
米花「私は…定治様にもうついて行くことはできません。そして彼女たちなら祥子お嬢様と共に定治様を倒すことができると信じています。」
源太郎「…分かっているさ、あの方はもう私の知っているあの方ではないことくらい」
米花「源太郎さん…」
にゃむ「え、全然話についていけないんだけど。サキコのおじいちゃんは何しようとしてる訳?」
源太郎「…豊川家では力が重要視される、要は強ければ偉いのです。定治様は前当主様を打ち倒し現当主になられました。純血であった前当主様を純血ではない定治様が倒した、これは前代未聞のことでした。しかしそんな定治様を脅かす存在が産まれました」
にゃむ「サキコ…ってこと?」
源太郎「ええ。祥子お嬢様の潜在能力は前当主様を遥かに超えていました。自分に反旗を翻すことを恐れた定治様は祥子お嬢様を極力外に出さずに育てさせました。祥子お嬢様は定治様の思惑通り箱入り娘に育ちもう大丈夫と判断した定治様は祥子お嬢様を豊川の息がかかっていない月ノ森へ進学させました」
睦「…」
源太郎「しかしそれは大きなミスだった、友人との交流などを通して定治様にとって良くない方向へ成長されました。極めつけはバンド活動です、家を出ていったと思いきやなんの報告もなしに始められた。CRYCHICであったなら問題はなかった、だがAve Mujicaは規模が違った。もちろん豊川家の後ろ盾はありました、しかしあの短期間でアリーナを埋められたのは祥子お嬢様の采配の賜物です。予想外の成長に恐怖した定治様は力を求めました、そこで初音お嬢様を使うことにしたのです」
海鈴「なぜ三角さんを?」
源太郎「友人の皆様はご存知ないでしょう、初音お嬢様は定治様の実の娘です。…豊川家には生贄を捧げることによって自身の力を168倍にする儀式が伝わっています、それを実行する気です。そして最も力が発揮できるのは近い血縁、すなわち親か子です」
にゃむ「サキコのおじいちゃんがウイコの父親ってのも驚いたけど、それ以上に…」
海鈴「自分の子を生贄に…」
睦「許せない・…」
源太郎「…これが定治様の計画です」
にゃむ「あんたはさ…なんで止めようとか考えないの?」
源太郎「先程も言った通り定治様の力は絶大…私ごときでは敵いません。それに…前当主様に拾われてからずっと豊川家に仕えてきました、恩人の家の主人に逆らうなど…できません」
にゃむ「じゃあサキコに仕えればいいじゃん」
源太郎「な…」
にゃむ「サキコは純血なんでしょ?それに前の当主に拾われたってことは別に定治には恩ないんでしょ?」
源太郎「…」
にゃむ「サキコにもまだ恩とかないと思うけど、色んな人から慕われてるサキコと自分の子供を道具としか考えてない定治。…今の主人だからって自分の気持ち押し殺して無理に仕える必要も無いと思うけどな」
源太郎「…」
にゃむ「ま、ゆっくり考えて結論を出しなよ。アタシ達はサキコとウイコのところに行く」
海鈴「ええ、行きましょう。お二人は大丈夫ですか?」
睦「大丈夫…!」
モーティス「行ける!」
にゃむ「よし!じゃあ米花さん、ありがとう!」
米花「頼んだわよ!にゃむ!」━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
清告「ぐはっ…はぁ…はぁ…」
祥子「お父様…わかっているでしょう?私には勝てません」
清告「うう…はぁ…はぁ…おおっ…!」
祥子「ふっ…!」
清告「ぐっ…」
祥子「はっ…!」
清告「ぎっ…!」
祥子「やあっ…!」
清告「がはっ…はぁ…はぁ…ま…まだ…だ…」
祥子「なぜそこまで…なぜそんなに…」
清告「お前を…守るためだ…!うぉぉぉっ…!!」
祥子「しぃぃぃぃっ!!」
清告「かっ…」
祥子「私を…守る…?」
清告「お義父さんは…もう少しで絶大な力を手に入れてしまう…そうなったら誰も…お前でも倒せない…だから…通すわけには…瑞穂の…俺の…がはっ…」
祥子「お父様…」
気を失ってしまった。何も聞くことは出来なかったがお爺様を止めなければいけないことは分かった。
祥子「…初華今行きますわよ」
私は扉を開けた。そこには
祥子「ッ!初華!」
初音「あ…さき…ちゃん…」
今にも消え入りそうな意識の初華がいた。
祥子「初華!初華!大丈夫ですの!?」
初音「ごめんね…さきちゃん…私…初華じゃ…ないの…」
祥子「…初音でしたわね」
初音「嘘…ついてて…ごめんね…ごめんなさい…」
祥子「…」
初音「島で…虫取り…したのは…初華…アイドルに…なりたがってたのも…初華…全部初華…私じゃ…ないの…偽物なんだ…私…ごめんね…」
祥子「…ひとつ抜けてますわよ」
初音「え…?」
祥子「星も見ましたわ、一緒に星を見たのは初音。貴女でしょう?」
初音「あ…覚えて…たの…」
祥子「もちろんですわ。…初音貴女は取り返しのつかない嘘をつき続けてきました」
初音「…」
祥子「貴女のその咎私も背負いますわ」
初音「え…?さきちゃん…?」
祥子「言ったでしょう?どんな時も運命を共にしていただくと。初音の罪は私の罪ですわ」
初音「あ…はは…ははは…あり…がとう…さき…ちゃん…最期に…話せて…よかった」
祥子「最期なんて言わないで!!貴女私におっしゃいましたよね!?人生をあげると、勝手に死ぬなんて許しませんわ!!…許さない!」
初音「ごめ…ん…ね…さき…ちゃ…」
その時初音の体が軽くなった気がした。
祥子「はつ…ね…?」
初音「…」
祥子「あぁ…あああ…初音!!初音!!初音…」
初音から熱が消えていく。どんどん冷たくなっていく。
祥子「ああ…ああああああああああああああああ!!!」
私は泣き叫ぶことしか出来なかった。
続く