鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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遅れてすみません・・・


蹂躙する影

 

バシャ!バシャ! 

 

「ソレ」は走っていた

背後から迫る「アレ」から逃げ出す為に

「ソレ」が、自らの形跡を何も知らない「対象」に見せることはない

だが、「ソレ」がそれを考慮する余裕すらなかった

今は何とか「アレ」から逃げる方法を考えるしかない

母星との連絡手段が何らかの障害で不通となっている事も異常ではあるが・・・

 

 

「なにアレ・・・・?」

 

「どうしたんハルカ」

 

「ほら、あそこ」

 

黄色の髪の少女が物陰を指差す

そこには白い、猫ともウサギともつかない生物が四足で走っていた

 

「猫ともウサギとも違うな・・・」

 

ハルカと呼ばれた少女と同行していた栗色の髪の少女が話す

その瞬間だった

 

「キャッ!!!」

 

「どうした蒔絵!」

 

ハルカと呼ばれた少女が駆け寄る

 

「アノ子を捕まえようとしたら、物陰から黒いナニカが走ってきて・・・・」

 

少女は怯えていた

 

「それが・・・喋ったのよ?さっさと、どけって・・・」

 

「蒔絵・・・・・今時、人面犬ネタって古いよ」

 

 

彼には個を現す名称は持ち合わせてはいない

一応は種族を現す名称と、それに付随する「愛称」は幾つか存在するが、それがこの星の支配種族達が個々に呼称する「名前」というものではない

強いて言うなら「契約」する上で使用している「キュウベェ」という名称がそれにあたるのだろう

 

 

あすなろ市郊外

かつての再開発ブームが過ぎ去り、シャッターの閉まった安っぽい商店が軒を並べる一角、「紫の少女」宇佐美真琴と「使い切った少女」水華ジュ二の前には洋館風の建物が建っていた

恐らくバブル期に雨後の竹の子の如く、無意味に乱立した個人経営の博物館の一つだったのだろう、その洋館の前には「世界のテディベアの家!アンゼリカ・ベアーズ」と辛うじて読める錆びついたホーローびきの看板が立っていた

 

「・・・・・・・・」

 

真琴が無言でジュ二に見つめる

ここは「かつての世界」で、彼女「水華ジュニ」が「11人」の姉妹たちと暮らした家

真琴としても、彼女にとってつらい思い出のある此処を、本当は「楽園」のための根城にしたくはなかったが、しかし、このあすなろ市で条件に合う場所は此処より他にはなかった

 

「早く入ろう・・・・・心配はないと思うけど、アイツに感ずかれるのはまずいよ」

 

ジュニは真琴を見つめる

そこに浮かぶのは悲しみでも怒りでもなかった

ただ、強い信念のみが浮かんでいた

 

「そうね」

 

二人は此処を不動産業者から「買い取った」時に渡された鍵をぼろぼろになった扉に差し込み鍵を開く

 

ガチャッ・・・・

 

見た目はボロボロではあったが、幸いなことに扉は壊れずに開いた

 

ギィィィィィ

 

扉が開いたときの音を残しながら、二人は暗い闇に包まれた館内に入り込んだ

殆ど夜逃げ同然だったのだろう

館内の至る所には等身大のテディベアや、サンバや着物を着たテディベアがケースに入れられることなく廊下に放置されている

恐らくは光のある場所で見ればさほど怖くはないだろうが、カビの臭いや、埃にまみれたそれらはかわいいという印象よりも、不気味なオブジェと化し、恐怖のみしか感じない

此処を言い表すのなら「夢の墓場」

そこを根城にしていることに真琴は皮肉を感じざるを得なかった

 

「準備は上々かしら?」

 

アンジェリカ・ベアーズの地下

地上と比べるとそこは光に溢れ、巨大な空間が広がっていた

 

「上々?この天才である愛華様にそれはないわよ!!!!」

 

白衣を羽織った少女が抗議の声をあげる

 

「フリズスキャルヴの調整も完了。先に楽園へ行った彼女達に異常も見られないよ」

 

「ソウルジェムの浄化具合は?」

 

「それも問題なし!吸い取った穢れは合成グリーフシードに吸い込ませてあるし」

 

「念には念を、ね。」

 

― 彼女は優秀だ。私が「あの世界」から持ち出した「プレイアデス聖団」の技術を理解、構築、改修を完璧に行ったのだから ―

 

「わかっているよ!私はプレイアデス聖団のようなミスはしないって!」

 

― しかし、彼女は「失敗」を経験できない。それが彼女の願いだからだ ―

 

「失敗は無くても破綻はする。それを心に留めておいてね?」

 

「へーい」

 

 

「ジュ二、ジュウベぇ達の様子は?」

 

「あすなろ市に入り込んだインキュベーターを補足しているよ。もうすぐ捕食するんじゃないかな~」

 

ジュ二の目の前には巨大なモニター

そこには彼女が魔力で監視カメラをハッキングした映像が流されていた

 

 

ソレは対話を試みようともした

しかし、それは応じることはなく攻撃を開始した

スペアが無限にある以上、彼らは自衛のための攻撃は必要としなかった

故に、目の前の「よく似た個体」からの攻撃を防ぐことはできない

できることと言えば、離脱のみ

とはいえ、それにも限界が近づいていた

 

「!」

 

既に「囲まれていた」

それは空を飛ぶ手段がない、キュウベェにとって「死」を意味する

モニターにはジュウベェ達に嚙みつかれたキュウベェが、もがき尚も逃げ出そうしていた

だが、もう遅かった

キュウベェの白い体表は白と黒へと変わり、その額にはジュウベェと同じ文様が浮かび上がった

 

「蹂躙するインキュベーター。略してジュウベェってね」

 

ジュ二がひどく歪んだ笑みを浮かべる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジュウべぇのデザインって結構、秀逸だと思う
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