鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下



破車

 

白魔の願ったこと

それは山盛りのお菓子でも使い切れない金でもなく、ましてや優しい家族でもなかった

彼女 ― 千歳ゆま ― はそれらが金もお菓子も一時的なものでしかないことを知っている

優しい家族とて、今のパパとママを「捨てる」ということ

あんな親でもゆまにとっては「親」だ

見捨てるなんてできない

だが・・・・・・

子供の考えることは単純だ

 

― 自分の苦しみを味わったら両親も改心してくれる ―

 

自分のやってきたことを知れば、きっと優しい両親になってくれる

「幼い日」のゆまはそう考えた

でも、彼女は人間の精神や本質、そして魔法少女のシステムの根幹を甘く見ている

彼女は生まれた時から、そして今まで両親から虐待を受けていた

殴られ

蹴られ

焼かれて

生爪を剥がされる

これらの苦しみ、それを一度に全て味わったら?

ただの人間にその苦しみが耐えきれるわけがない

ゆまにとって「虐待」が日常だった

だから、彼女は人間が弱い生き物であることを知らなかった

魔法少女のシステムは「願い」をそのまま叶えてしまう

たとえば「優しい家族」を願えば、今の家族が願った少女を一人残して全滅、そして別の裕福な家族の養女となる、といった結果になることも十分あり得る

魔法少女の願いは常に表裏一体

奇跡を願った分だけ絶望が撒き散らされる

白魔 ― キュウベェ ― は狡猾だ

老獪な魔術師が、自分で選んだ、そう相手に思わせながら自分の意思でカードを引いたように誘導するように、キュウベェに狙われた時点で既に詰んでいる

たとえ、今ゆまが契約をしなかったとしても必ず現れる

キュウベェが契約すべき哀れな犠牲者を見逃すことなんて一度たりともない

そして願いが何を引き起こすか、それを伝えることも一度だってない

キュウベェのその姿は人間から恐怖を取り去る

可愛らしい声とその姿で多くの人間は契約してしまう

また、目を付けた人間と契約する為に、わざとその近くにいる人間に契約を持ちかけることもある

人間の情を弄ぶ、吐き気のするような所業

でもキュウベェにそのような感情はない

ただただノルマをこなすだけの「歯車」に過ぎないからだ

 

「そ・・・んな・・・・」

 

あの日に起こったこと全てを思い出した

自分が実の両親に虐待を受けていたこと

そのことを「白いウサギのような生き物」に付けこまれたこと

そして・・・・

そのまま私は家に帰って・・・・

 

― さっさと返して来い! ―

 

だから

だから私は言っちゃった

願っちゃった

結果がどうなるか、それすら考えずに・・・・

 

「この痛みをおとうさんもおかあさんも知って欲しい」って・・・

 

この「願い」が両親を「自殺」に追い込んでしまったことを

ゆまがいる公園に、一人の背の高い雪のような髪の少女がやってくる

そして目の前で「少女」は魔法少女に変身した

お姫様のような姿

それが「美国織莉子」が魔法少女にへんしんした姿だった

彼女はゆまを抱き寄せて・・・・・

糸が切れるように倒れるゆま

恐らく、この時に記憶が改竄されたのだろう

 

「な~んだ・・・・私なんて生きている価値なんて・・・・」

 

自分を暖かく迎えてくれる「家族」なんてない

織莉子は彼女を引き取ってくれた

でも、所詮は「赤の他人」

血なんて繋がっていない

形だけの優しさなんて

その時だった

 

グォォォォォ・・・・・・

 

黒い何かがゆまを飲み込むように動く

もはや恐怖を感じなかった

 

― 闇に包み込まれて消え去る ―

 

今のゆまにとってはそれが唯一の安らぎのよう感じた

彼女が身も心もその闇に委ねようとしていた時だった

 

『それは違うぞ!!!!!!!!!!!!!』

 

力強い言葉がゆまの心を撃ちぬいた

その瞬間、闇に飲まれようとしたゆまの心に一筋の光が射した

その光はだんだん大きくなり闇を打ち消すほどになって、ゆまを包み込んだ

凍えた闇を照らす暖かな光

それは真の見た織莉子の本心、「心の記憶」だった

ゆまを絶望の運命から救おうとした彼女

でも、運命を乗り越えることができずゆまが魔法少女になるのを阻止できなかった

彼女に出来たことは、ゆまの記憶を改竄して美国家が引き取るだけ

 

~ 結局は自己満足じゃない ~

 

自分じゃない誰かの声が聞こえる

 

『しっかり見て!織莉子さんはキミのことを大切にしているんだ!誰よりも!!』

 

映像が変わる

灰色の髪の少年と織莉子が二人で話している姿が映し出された

 

「?!」

 

映像の中で織莉子は泣いていた

自分の非力さを

そして心の弱さを

彼女は安易に記憶の改竄を行ったわけではなかった

 

「魔法少女の宿命」

 

いずれはそれに向かい合わなければいけない

でも、ゆまに今それを強いるのは酷だ

だからこそ、彼女はゆまに封印を施した

自分自身でそれに向かい合う、その時まで

 

~ お前は見捨てられたんだよ!理解しろよ!! ~

 

イラついた声が彼女を責める

でも、もう迷わない

私は一人じゃない

誰よりも私の事を考えてくれた「泣き虫のお姉ちゃん」がいる

ずっと見守ってくれた「優しいお兄ちゃん」もいる

なら

ならば!

 

「私が絶望する必要なんてない!!!!!!!!」

 

暗闇に罅が入っていく

それは意思を持ったかのように広がっていき、そして・・・・・・・・

世界が崩壊した

 

 

 

 

 




キルラキル
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