TCGクソザコナメクジ先輩と僕。   作:餅屋

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新キャラが4人出ますが本編最終話です。
これは今後後日談って形で枷が外れるという意味です。


15.僕らの新学年。

 

 春は出会いの季節だという。

 今週から、新入生が体験入部をしに来ている。

 篠ノ芽の校風もあってか、体験入部に来た子の数は多い。40人くらいかな。

 

 今日は木曜日なんだけど、大抵一度は見た顔だから多分殆どがそのまま入部するだろう。

 

「──ぼくは部長の門倉桜子。好きに呼んでくれると良いけど、桜子さんって呼ぶのはちょっとやめてほしいかな。そう呼ぶのは一人にしか許してないからね」

 

 桜子さんがマイクを手に取り、話を始める。今年度の部長に任命されたからだ。

 

 というのも、僕と桜子さんで開設した卓上遊戯同好会は、PJ部に統合された。

 まあ去年卓戯同好会に誰も入ってきてないしね。存在を知ってる生徒自体が少ないんだと思う。

 一応募集の紙貼ってたんだけどな……。

 

 しかし、この統合には大きな意味がある。僕と桜子さんがPJ部に居るという事は、そのまま僕らが調べていた精霊剥離状態でのデッキの振る舞いや、パックを買った際のカードの出方などのデータがよりしっかりした管理の下保存されるということになる。

 

 あとはまあ……去年の合宿で判明したデータ面での対応力の低さを補うっていうのもある。

 今でもあの辺のテーマによるポジション傾向とか公開情報からデッキを見極められるのはレギュラー陣だと中戸さんと金目さんくらいだからね。

 大崎は特訓中、小岬さんは……どうしようね……桜子さんが教えてはいるけど成果は芳しくない。対戦はちゃんと強いんだけどね彼女。

 

「さて、篠ノ芽は元々PJが強い学校なのもあって、この部に入ろうって思って入学を目指した新入生の子も多いと思う。でも、どうしても団体戦のレギュラーとして残れるのは5人だけ。特に今年はぼくら三年生組で訳わかんないくらい強いメンバーになっちゃったから、入って早々レギュラーに入るのはきっと難しい」

 

 ちょっとした理由があり、今の僕たち三年生のPJ部員はめちゃくちゃ鍛えられている。なのでレギュラーに入るのは桜子さんが言う通り、難しい。

 これについては後述。

 

「それでも、ぼくらが居る間に君たちに大会で、あるいは卒業後でアマチュアプロ問わずにPJをする時に考えるべき事や、対戦でのちょっとした経験は与えられる。ぼくらが居なくなってからめっきり弱くなるっていうのは、ちょっと片手落ちだからね。なので今年の新入生には悪いけど、ぼくらが引退する秋頃までは多分スパルタな部活になっちゃうんだ。ごめんね。さて、ここまでは連日聞いてるだろうから、早速始めよう」

 

 そう〆ると、桜子さんはプリントを新入生の子達に配り始める。これは僕と桜子さんが中心で作り、前々から準備してた物だ。

 

「それじゃあ今日の体験は座学になるよ! ちょっとしたプリントを2種類配るから、片方に書かれている現状のスタンダードレギュレーション一覧から、もう片方に書かれている求められる役割的に、どのポジションにどのテーマが傾向として来るのかを書いてみてね! 相談は自由だから交流も兼ねてどんどん他の人と相談するように! レギュラーの5人とぼくと葉山先生は答えられないけど、二年生や三年生に聞くのもOKだ! 時間は45分! スタート!」

 

 ざわざわと声が広がり、マッチルームが賑やかになり始めた。

 

 僕らの日常は、そう変わってはいない。

 大崎は相変わらず憑いているネコチャンににんげんはおろか……という表情をされているし、小岬さんは大抵桜子さんに泣きついている。

 金目さんや中戸さんもいずれ目指すプロシーンへ向けて、じわじわと力を付けてきているが、まだこなれていない部分は多い。

 風見や逸見君とは休日の公式大会でばったり会ったりする事もそう変わらない。この間は春のグランプリで暴れ散らかしていたサキちゃんの試合中継を一緒に見ながら、ご飯食べたりもしたね。

 

 卓戯会の統合で僕らが加入した事による大きな出来事としては……。

 

 適性デッキの問題で選手としてはお飾り状態だが、今年だけは監督をやっている葉山先生の負担軽減として、大会での戦術面はその方面に強い桜子さんと僕が中心で考えていく事になった。

 それにもう一つ。

 

「聖岳ー。言ってた道明と練習試合のアポ取れたぞ」

「本当ですか? いやあ楽しみだな……強くなってるかな日野君とか銀舎君とか……」

 

 僕も大会に出る。

 

 勿論ポジションは大将だ。

 これで当時の僕が助っ人大将と知って、去年の冬頃に再び心をやられていたと聞く氷川君の無念も晴れるに違いない。

 

 とりあえず部の皆で今のレベルを把握しようかという事で、ダメ元で道明学園に練習試合を申し込んだのだが、受けてくれたようだ。

 向こうは名門なのもあってか、県外の強豪校としてる事多いんだよね。今回申し出が通ったのは葉山先生が道明出身というのが大きそう。

 提案する時に去年とかもやらなかったのかな? と思ったんだけど、その時は全体のレベルに合わせて、葉山先生が通したり止めたりしてたらしい。

 

「お前の名前出した途端にあっちの大将が是非って言い出したんだけど……」

「僕にリベンジでもしたいんじゃ?」

「いや……アレは強いプレイヤーに飢えてる顔だったぞ……」

「へえ……ちょっと風見経由で道明通ってる同級生に連絡取ってみますね」

 

 そう答えながら風見にメッセージを送る。しばらくしたら返事も返ってくると思う。

 

「聖岳お前もしかしてさ……友達少ないの?」

「僕としては結構居ると思ってますけど、連絡先交換してる人はあんまり居ないですね……。特に道明行ってる同級生は、学校とか学校帰りに遊んだりはしたけど、休日に遊ぶ訳じゃないって感じだったので。校区内でも家が正反対の方向でしたし」

 

 地元のショップ大会では割と当たったけど、僕が出禁食らってからは偶々会ってフリプと学生での大会で偶にくらいだ。

 

「あくまでもクラスメイトって感覚か」

「そんな感じですかね。練習試合の日程と形式は?」

「来月の第三土曜でチーム形式で通常と勝ち抜き形式をそれぞれ一回、時間が余ればフリー対戦って感じだな」

「了解です。となるとこっちもレギュラー以外も鍛えてあげた方が良さそう……」

 

 こういう時は相手の規模が大きいのがありがたい。是非糧にさせていただきます。

 

「向こうは学園全体がPJ部みたいなもんだからな。なるべく底上げした方が良いのは確かなんだが……1ヶ月ちょっとか」

「詰め込みすぎで潰れちゃうと困りますし……新入部員は連れて行きますか?」

「一応連れて行こう。お前らが居なくなってからが本番みたいな物だしな。今年はボーナスタイムだから伸ばせるだけ伸ばしてやりたい」

 

 その時、マッチルームに来客があった。

 袖口の飾り紐の色からすると新入生かな? 二人組だ。

 少し遅れてきた辺り、何か用事でもあったのかもしれない。

 

「お、あの二人は新入生だな。応対してくる。門倉ー、新入生が来たから応対するぞ」

「はい!」

「いってらっしゃい」

 

 しかし道明との練習試合が組まれたとなると色々持って行った方が良いな。何持って行こうかな……。

 

 ○

 

 それから10分ほどして、今度は僕が先生に呼ばれた。さっきの新入生の子が何かあったらしい。

 

「あっ海君、この子達が君と対戦したいらしくてね……」

 

 トリコロールカラーの髪で元気そうな顔立ちの男子生徒と、金髪で細目が印象的な女子生徒の二人組だった。

 

「ねーワタル……やめときなよ……絶対ヤバい人だよ……私の肌にすっごいビリビリ来るし……」

「でもティコ、あの人は氷川先輩を楽々倒すくらいなんだろ? やってみたいんだよ」

 

 二人とも氷川君の後輩なのかな? ティコって呼ばれた女の子は適性を感じ取るのに長けてるのかもしれない。

 ワタルって呼ばれた子の方は凄い適性の伸び代だね。しっかり鍛えたら僕より強くなりそうだ。でも今は大崎くらいかな。

 

「君たちは入部志望? それとも道場破り? 僕としては後者の方が嬉しいんだけど」

 

 後者だと遠慮しなくていいしね! 

 

「いえ、前者です……それであの……その……。あっ私は七草ティコです……!」

「羆さん! オレは龍宮ワタルと言います! 是非オレと一戦お願いします!!!」

 

 また羆かあ……。僕としてはもうちょっと違う通称が欲しいところだ。

 

「羆さんって呼ぶのはやめてね。それはそれとして対戦は喜んで。僕は聖岳海、どこにでも居るPJプレイヤーさ。色々あってここの大将を務めさせて貰っているよ。部長ではないけどね」

「ありがとうございます海先輩!」

「お前みたいなのがどこにでも居たらPJ終わってるぞ」

 

 横でやり取りを見ていた先生が、そうぼやいた。

 そんな筈ないじゃないですか。僕は他のPJプレイヤー達の未来を信じてるんですから。

 

「ところで僕は君とやった覚えがないんだけど、合ってるかな?」

「多分初対面だと思います!」

 

 トリコロールカラーの髪色なんて絶対忘れないと思うんだよな……。

 

「やっぱり? 凄い才能みたいだからやってたら覚えてると思ったんだ。デッキはスタンダードレギュにするかい? それともノーリミットにするかい?」

「スタンダードで!」

「OK、それじゃ準備するからちょっと待ってね」

「ごめーん新入生の子達! ちょっと皆体験中断! 今から大将の海君が対戦するからね! 今ウチの大将務めてる人がどんな感じなのか観戦すると良いよ!」

 

 デッキは……【クライン五道】にしようかな。これなら上手く回ったとしても龍宮君のデッキもそこそこ見れるだろうし……。研究したいのは進級試験で使ったこれの改良版の方なんだけど、そっちは適性の一時上げが必要だから今回は見送りだ。

 

「すみません門倉先輩……ワタルはその……PJジャンキーなので……」

「海君も似たような物だから気にはしないよ。でも、対戦が終わってからは龍宮君のケアをしっかりしてあげてね」

「ケア」

「海君はとても良い人なんだけどちょっと悪癖があってね……」

 

 桜子さんには度々直してみないかい? と言われるが、僕の悪癖とされるアドバイス癖はもう治りそうにない。

 だからごめんね桜子さん、でも龍宮君の素質は相当凄そうだから多分大丈夫だ。

 きっと氷川君のような事にはならないはずだよ。

 

「龍宮君、見るからに聞く必要もなさそうだけど一応訊いておくよ」

「?」

「君、PJは好きかい?」

「勿論です!」

 

 龍宮君は元気よく答える。素晴らしい! 

 

「うん、良い答えだ。それじゃ対戦よろしくお願いします。先攻後攻はサイコロで決めよう。僕は5。楽しもうね龍宮君」

「はい! 対戦よろしくお願いします! オレは6です、先攻貰います!」

「海君頑張ってね」

「ワタル、無理しないようにねー!」

 

 桜子さんの声援に、僕は頷きながら手札を見る……あっ、耀鳴と牢主が初手に来てる。幸先が良い。

 

「スタンバイからドロー、1リソースと手札の赤3緑1で【グリマルキンの庇護者】をプレイ! 出た時の効果で庇護者を除外し、リソース上限を2ブーストしてエンド!」

 

 グリマルキンは先日追加された【龍の秘宝】テーマのお高いカード。

 

 このテーマに限らず、実装早々にスタンダードもノーリミも問わずに龍と付くテーマを組み込んだランプデッキのお供と言われている。どうも適性に引っかかる人が多いらしく、しかしその強力なブースト効果もあって初動から日単位で値上がりを続けている。

 今のままなら、最新の恵みの滴と呼ばれる日も近そうだ。店長さん曰く、いつもに比べてもめちゃくちゃ新弾がハケるのが早いって聞いたからな……。

 

 ただ僕はこのカード、ちょっと相性が悪めなので他で補ってやらないと扱えない。

 

 龍宮君の素質の高さを考えるに、多分彼は名称に龍って付くテーマ全般への強い適性持ちかな。分類的には、動物系テーマ全般にも強いサキちゃんの適性タイプに近い。偶に居るタイプだ。

 

 ダストに置かれて見えてる色は赤青緑の3色。しかしそれよりも大事なのは、竜宮君の手札消費が初手から激しいという部分。この感じなら残ってる手札は青かな。

 感覚的にはマッドネス持ちもまだ無さそうだ。相性が極端に出るけど、格上喰いが得意な構築と見た。

 となるとこれは……勝ちました(事前申告)。

 

 龍宮君、ハンデスは好きかい? 僕は好き。

 

「ターンを貰ってスタンバイからドロー、手札を2枚伏せ、1リソースと手札の黒1で【夢喰い蟻】をプレイ。龍宮君は手札を選んで捨ててね」

「ウゥゥーッ!」

 

 龍宮君の手札が早くも空になった。

 

 ◆

 

「強かった〜! 何もできなかった……」

「初手で手札を使い過ぎてたね。今回は僕も引きが良かったから、次も同じデッキでやるとまた分かんないよ。でもプレイングやデッキの構成は見直した方が良いかな。ちょっと急ぎ過ぎだからもうちょっと我慢できるようにしよう」

 

 やってた感じ、多分まだ構築が変なんだと思う。強くなりたいなら要矯正だね。

 

「聖岳お前もうちょっとさ……デッキ選択をさあ……」

「今回は先生に使ったあっちじゃないしまあそこまで綺麗に決まらないだろうって思ってたんですよ。龍宮君の初手の手札消費が激し過ぎたから早々に決まったんですけどね」

 

 軽い感想を交えていると、マッチルームの窓からふよふよと見覚えのある姿がこちらに近付いてきていた。

 クランプスだ。

 アパートからこちらまで、それも1人でやって来るのは非常に珍しい。

 

『やっほ。面白い気配がしたからクランプスが頑張って来た。ほめて』

「よくやったねクランプス」

「今日は帰りにケーキを買って行こうね」

 

 そしてクランプスの姿を見た七草さんが、プルプルしながら呟いた。

 

「えっ? おひい様!? なんで……!? エッ???」

『クランプスはクランプス。何者でもないバカンス中の勝利者だ。わかったかそこの精霊娘』

「アッハイ」

 

 タミロウ爺みたいなほとんど人と変わらないタイプの精霊だったのか七草さん。制服着てるから気付かなかった。どうやって調達したんだ……。

 そしてクランプスは一気に不機嫌に。偉い立場な気はしてたけどやっぱり相当偉い立場だったらしい。

 

 まあ僕としてはこれまでと変わりない。僕はクランプスと約束をしてるからね。求められれば応えるくらいだ。

 

「おひい様って……ティコが前言ってた精霊の偉い人じゃなかったっけ……? いきなり引退したって言う……」

『クランプスはクランプス。お前が面白い気配の奴だな。その眠ってる封龍をさっさと起こしたらようやくご主人とやり合えるから早く起こすといい』

「オレだって起こせるなら起こしてるよ! でもちょっと色々あって、今はゆっくり休んでるんだ」

 

 そんな龍宮君の言葉を聞き、クランプスは何かを探るように数秒目を閉じ、口を開いた。

 

『……この度は、こちらの不手際に人の子を巻き込み申し訳なく思う。今後はこのような事が起きぬよう対策を講じよう。ひとまず、功労者であるその封龍の回復が早まるよう幾許か手配させて貰いたいが如何か? 受けて貰えれば大変嬉しい』

「クランプスそんな話し方出来たんだ」

 

 厳かな口調だ。本来の立場としての話し方なのかな? 

 

『うるさいぞご主人』

「良いんですか!? オレ……ランマルがこうなってからPJが弱くなっちゃって……!」

 

 横で聞いてるに多分ランマルっていうのが元々龍宮君に憑いてる精霊で、眠ってるから従来の適性とズレてる……そうなると七草さんはどういう事なんだ? 

 精霊憑きにはわからない事がまだまだありそうだ。

 

『……人の子、其方とその封龍が巻き込まれたのは偶然に過ぎないし、本来なら巻き込まれないように此方が手を打つべきだった。だから私はせめてもの謝罪として、その子の回復を早める手段を提供しようという話をしている。返事は?』

「も……勿論です!」

 

 うむ、とクランプスは珍しく座標上下ではなく頷き、続ける。

 

『確かに聞いた。私は一線を引いた身ではあるが、其方らの働きに見合った厚遇を与える事を約束する……ご主人、クランプスは今からちょっと数日空けるから、心配しないでくれ』

「分かったよ。何か食べたい物はある? 帰ってくる頃に用意しておくから」

『……クランプスは羊羹が食べたい』

「注文しておくね」

『それじゃ、ちょっと行ってくる……。それとそこの小娘、向こうへの連絡はちゃんとしろ』

 

 クランプスは深いため息を吐いてからそう言って、何処かへ消えた。多分久々? に精霊界に戻ったのだろう。

 

 うーんしかし龍宮君の凄い適性、クランプスがちゃんと働くくらいの事を以前にしてる……それと結構奇抜な髪色……これは……もしかして昔からの僕の疑念が当たったのか? 

 

 ま、今は置いとこう。桜子さんに会う前ならともかく、今は篠ノ芽PJ部の強化が僕と桜子さんのやる事だしね。

 

「いやあとっても偉い子だったんだねえクランプスちゃん」

「部長さん心が強くないですか!? 普通もっと驚きません!? あぁそれにおひい様に目をつけられちゃった……後で面倒事になるじゃん……それに連絡するにも私じゃあんな気軽に帰れないし……」

 

 七草さんが頭を抱えながらうねうねと悶え始めた。ストッパーなのかなって思ってたけど結構面白い子だな……。

 

「いやー薄々感じてたからね、クランプスちゃんが偉い立場っていうのは。お世話される事に慣れ過ぎてたし」

「桜子さんの心はめちゃくちゃ強いよ。僕が好きな所のひとつなんだ。ところで君達、氷川君と知り合いみたいだけど彼は元気かい?」

 

 僕としては本題なんだ。ぜひ聞いておきたい。

 

「大将さんもなんか怖いよ! ひかわんの現状よりもっと何か気にする所あると思う!」

 

 七草さんの言葉に、僕は少し傷付いた……。

 しかしそんな僕の心を知ってか知らずか、龍宮君は元気よく答えてくれる。

 

「氷川先輩も今は元気ですよ! ちょっとテンションがおかしい気もしますけど!」

「ひかわん変だよね……メンタル復帰したと思ったらなんかカードの声が聴こえるって言い始めたし……」

「でも強くなってるし、もっと頼れるようになったろ? 些細だって! あっ部長! オレも皆のやってるプリントもらって良いですか!」

「はいどうぞ。残り時間は短いけど、同級生と二年生三年生に相談してみながらやってみてね!」

「ウッス! ティコ、手伝ってくれ!」

「私その辺の勉強全然だっていつも言ってるじゃん!」

 

 プリントを貰った二人が、新入生の方に声をかけて混ざっていく。

 うーんあの様子見るに相当慕われてるな氷川君は……僕とは大違いだ……。

 しかしカードの声が聴こえる、か……。

 

「氷川君もパパみたいに超感覚に目覚めたのかな?」

 

 桜子さんの言う可能性が高そうだ。これは……ちょっと確認した方が良いかな? 

 

「道明との練習試合が終わったら、神代高校に練習試合申し込んでみますか。先生、できます?」

 

 先生の方を向くと、先生は少し考えて答えてくれる。

 

「……神代に申し込むなら、夏合宿に合わせて大会で当たるの狙った方が良いんじゃないか? エリアも別だから練習試合申し込むにはちょっと変だろ」

「ならそのプランで行きましょうか……お、風見から返、信、だ……先生」

「ん? 何かあったか?」

「道明の現状、思ったよりヤバそうです」

 

 先生がこめかみを抑えながら、僕へ訊ねる。

 

「お前からするとどれくらいだ?」

「うーん……今年絶対動かないと、マズそう?」

「……俺は今から唐川に連絡入れて会ってくる。長くなりそうだから今日はそうだな……17時で閉めて良い。鍵は職員室の俺の机に置いといてくれ」

「OKです」

 

 葉山先生はそう言って、電話を掛けながら職員室の方へ走って行った。

 その姿を見ながら、桜子さんがぽつりと呟く。

 

「色々忙しそうだねえ今年も……」

「ですね……」

 

 僕らの目下の目標は達成できた。

 しかし、桜子さんのデッキにおける残り8枚はまだ絞れていない。卒業試験までには、最低2〜4枚にはしておきたい。大学受験はあんまり心配していない。僕は桜子さんに勉強教えてもらえるし。

 

 ただまあ今年はそれに加え、篠ノ芽PJ部の強化、全国大会、そしておそらくは道明学園の革命に関わる事にもなるだろう。それに他にもポンと何かが起こる可能性はありそうだ。

 

 僕の疑念が合っていたのなら、多分龍宮君達はそういう事に巻き込まれやすいだろうしね。

 今年は大会で稼ぐのを控えめにしておこう。

 

「でもまあ、忙しいくらいが僕達らしいのかもしれないですね」

「かもね……おっと、そろそろ時間かな? 皆ー! そろそろ答え合わせの時間だよー! 海君、行こっか」

「はい」

 

 桜子さんに連れられるようにして、僕は回答と解説を書く為のホワイトボードへ向かった。

 

 僕はただPJが好きで、前世の記憶とかいう物が邪魔で仕方なくて、それと、PJプレイヤーが僕と同じくらい、あるいはそれ以上に強くなってくれる事を、昔から願ってる。

 今の所、その願いへの努力の結果はそう悪くない。僕が勝ち負けのやり取りをする日もきっと遠くないと思う。

 

「それじゃ、大まかな答え合わせとその解説をしようか。まずは先鋒のテーマから──」

「PJの授業で習う部分もあるから、しっかり聞いてね!」

 

 桜子さんの声が、マッチルーム中へよく通った。

 

 




という訳で、元々短めのプロットで組んでいたのもあり、クソザコ先輩もとい現年上ちび巨乳一人称ぼく先輩の本編部分は完結となります。

後日談としては道明レボリューションとか先輩と出会わなかったif時空の話とか先輩が謎のカルト集団に攫われる話とか『もいらい』にならず者プレイヤーが襲撃しにきて贄にされる話とか色々あるので、またのんびりお待ちください。
次回はいつものカード紹介回とキャラ紹介回ですかね……。
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