田中6号さんから先輩がちょっと一部以外某キャラまんまだった!とのことで、2枚目のFAをいただきました。悲鳴を上げる先輩のボタンと田中6号さんに改めて感謝申し上げます。
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朝目覚めると、僕の目の前にはふわふわ髪の美少女が穏やかな寝息をたてていた。
先輩だった。
ひとまず起こさないように僕はベッドから抜け出す。
洗面所で顔を洗い、トースターに厚切りの食パンを2枚入れてつまみを捻る。焼けるまでの間で冷蔵庫に入れてあるアイスコーヒーをマグカップへ幾らか注ぎ、先輩の分にはシロップと牛乳を、自分の分には牛乳だけを入れる。
ゴキゲンな朝食だ……。
パンの焼けた音にベッドの先輩がもぞもぞと動き、布団の中でぐーっと伸びをしてから起き上がった。
「おはよう聖岳君。良い朝だね」
「おはようございます先輩。とりあえず軽く朝ごはん作ったんで顔洗ってきてください」
「うん」
とてとてと洗面所に向かう姿を見送りつつ、ベッドに置いたままだったスマホを確認すると、友人の1人である大崎から幾つかのメッセージと通知が来ていた。
『突然だけど……一生のお願いを切らせて貰ってもよろしいでしょうか……』他それに続く3件ほど。あと不在着信。
大崎から一生のお願いを切られるのは数度目だ。
メッセージが長かったので要約すると大会の助っ人選手をして欲しいという内容だった。高校のPJ部の。
洗面所から戻ってきた先輩に電話する仕草を伝えつつ番号に掛け直す。
『もしもし悪い、起こした?』
「さっき起きて気付いたけど小岬さんが出れないんだって?」
『そうなんだよあいつ昨日牡蠣食べてたらしくてさ……』
思ってたよりしょうもない理由だな!
「なんで真夏に牡蠣食べてるんだよあの子は」
『晩飯は葉山先生が目標賞金の余剰分で処理するって言ったからなのか、どっかで牡蠣買ってきてウチの合宿所として借りられてるアパートあるじゃん? あそこの女子部屋で焼いて食べてたらしい。俺は食べてるとこ見てないから又聞きなんだけど』
余剰分の流用はセーフかどうかよくわからんラインだ。これは置いておこう。しかし付き添いの葉山先生は僕のクラスの担任でもある。それなら余計話が早そうだ。
「葉山先生に2人分の交通費出してくれたら行きますよって言っといてくれる? 返事はメッセージでも良いけど」
『ちょっと待て今聞……ごめん誰と来るの?』
大崎の困惑したような声がスマホから聴こえる。
「先輩だけど」
『門倉さんか』
「僕が先輩って呼ぶのが先輩以外に居ると思う?」
『まあ聞いてみる、2人だと長引きそうだしそれじゃメッセージで返事送るわ』
「OK、それじゃ」
通話を切って待ちぼうけを食っていたトーストを齧ると、先輩がマグから口を離して僕に訊ねた。
「急にどこか行くのかい?」
「PJ部に助っ人で呼ばれたんで先輩の交通費出すなら良いですよって」
「この時期のPJ部……ああ夏合宿」
「実態は首都圏回って団体戦アリの大会荒らしですけどね。今日は関西の方だったかな? だから助っ人頼んできたんだと思います」
「それならぼくは聖岳君の太鼓持ちでもすれば良いのかな? 任せなさい」
ふふん、と揶揄うように先輩が言った。
「いえ偶には先輩に良いとこ見せたいなって思いまして。それと説得に成功すれば旅費が浮きます」
「PJ部は金回りが良いねえ……」
「一応PJに力入れてますからね僕らの高校。金回り良いのは所属してる部員たちの努力でもありますが……おっとメッセージ、上手くいったかな?」
「ぼくらは一応別の部だし……どうだろうね」
話しつつメッセージを確認すると、先生からOKが出たようだ。
「許可出ました。それじゃちょっとした旅行の準備しますか」
「いいとも!」
そう答えて先輩は僕の部屋の先輩用スペースで物を見繕い始めた。
僕も使うデッキ見繕っとかないとな……時間的にお昼には着くけどご飯は電車で食べた方が良さそうだし財布の現金もちょっと多めにしておこう。
「クランプス、僕ら出かけて夜まで居ないけど一緒に来る?」
『クランプスは眠いから行かない。つがいと一緒に遊ぶといい』
「それならおやすみ」
『クランプスは寝る……』
そういえば小岬さんが何使うのか訊くの忘れてたな……大崎に電話掛け直そ。
◆
「結構美味しいねこのお弁当」
「焼売弁当の方が良かったですか? 蒸気出るってやつ」
「怒られそうだしよくないね!」
先輩と他愛ないやり取りをしつつ電車の座席で雑談。
「ぼくはPJ部の子達にはちょっと悪い事をしたような気持ちになるから会うのは少し苦手なんだよねえ……」
まあどう考えてもPJ部に入るだろうと思われてた僕が卓上遊戯同好会に入ったからね。なんとなく先輩の言いたいことはわかる。
「2学期からはちょっと先輩の適性をもう少し詳しく調べたくて、偶にPJ部の方に協力してもらおうかと思ってまして……PJ部の面々と会うのが若干苦手なのは知ってたので相談してからの方が良かったとは思ってますが」
「まあぼくの好き苦手は全然構わないけれど、向こうが納得してくれるのであればぼくもモルモットとして色々な検証に携わるのは歓迎だよ」
先輩は元々自身の好悪感情への割り切りが超早い。
以前訊いた時は、
「ぼくみたいに適性が見つからない人は世の中には少ないが、それでもぼくらがやっている地道な検証が今後見つかる手立てやその理論の礎になるのかもしれないのなら、対人におけるぼく個人の感情は切り捨てた方が早いだろう?」
と言っていた。
僕が先輩を好きな所の一つである。
他にもおよそ255個くらいある。桁が1個ズレてるかもしれないが大目に見てほしい。
僕らが通う篠ノ芽高校は高校生PJ活動に力を入れており、全国区はともかく県大会くらいなら大抵優勝できる程度には強い。
その分県内でもPJが強い子達が整備された環境目当てに結構入学してくるし、学校側もその事を推している。なので篠ノ芽高校の生徒は平均して一般校よりもかなりPJが強い。
僕も一応その枠だ。僕は篠ノ芽高校の環境じゃなくて一人暮らしする為の立地で学校を決めてたのでちょっとズレてるが。
しかし先輩は特別で、PJの腕と反比例するように高い学力で当学校に今までない進学実績を作れるだろうという算段とPJの方は多分成長するだろう……という希望的観測により入学を許された。
まあPJの腕の成長は全然で留年しちゃったので、僕は先輩と関わりを持つ事が出来た。
この辺はまた別の機会に詳しく話そう。
ともあれそんな感じの校風もあり、我が校のPJ部は全国区でも良い勝負できるくらいには強い。今のメンバーだと全国優勝は無理だが、来年ワンチャンあるかもしれないので希望は捨てないで欲しい。
これ多分PJ部に関わってる生徒で気付いてるの僕だけなんだけど顧問の葉山先生に伝えた方が良いのかしら? でも言ったら助っ人部員で全国出場させられそうだからやめとこ。
「僕としては先輩とやった時の適性アリで回せる人のデータが欲しいんですよね。先輩にはしばらく辛い思いをさせる事になりますが、ご理解ください」
「いいんだよ聖岳君。ぼくは君にいつも助けられているんだから……ところで今思ったんだけど、想定よりも帰りが遅くなって電車を逃してしまった場合はどうするんだい?」
流石に無いとは思うが晩御飯の御相伴に与ったらあるかもなあ……。
「……まあ多分無いとは思いますけど、どこかで一泊か葉山先生に頼んで合宿所で一晩宿借りるかですかね……」
「そうなってしまったらクランプスちゃんがちょっと心配だねえ……次で乗り換えだっけ?」
「いやその次ですね。クランプスは……まあなんとかなるでしょう……1日不貞寝するくらいだと思います」
その辺の時間管理は頼むぞ先生。
◆
「流石に都会は人が多いねえ」
「とりあえずさっき送られてきた集合場所に……いやちょっと待って場所変えてもらいます」
メッセージで送られてきた集合場所が梅田駅だった。どうしてここにした! 言え!
仕方ないのでこっちから連絡してもうちょっとハッキリした場所を指定する。
すぐに返信が返ってきたので向かおう。
「聖岳君は都会での動き方上手いねえ」
「中学の頃から遠征は結構してたので慣れちゃいましたね……」
しばらく歩くと、見覚えのある集団が屯していた。PJ部の面々だ。
「おーい」
「おータケちゃんありがとう……!」
「大崎はそろそろ一生のお願いの濫用をやめた方が良いと思うよ僕は。葉山先生は?」
「
「ああいつものね……」
あの人隙あらば煙草吸いに行くな……。
僕を見て、部長で大将の近山さんが話しかけてくる。
「うぉっマジで来た……聖岳君大崎になんか弱み握られてる?」
「いや全く。今日はちょうど空いてたのでデートついでに手伝いに来ました」
「デートって……門倉? 来てたのか。PJ部としては久しぶりって言った方が良いか?」
「生憎だけど今日のぼくは聖岳君の彼女として同道してるから言わなくて良いよ。彼女として!」
先輩が胸を張った。その丘陵は豊満であった。
「めっちゃ自慢してくるじゃん……」
「近山先輩その2人バカップルなんでほっといた方が良いっすよ」
「えぇ……」
大崎の言葉に、副将担当の中戸さんが困惑する。
「今日は助っ人って事で一応小岬さんが元々入ってた次鋒に合ったデッキも持ってきましたけど、他のポジションに入った方が良いならそっちもできますよ」
デッキは計8個持ってきている。これだけあればどんな大会でも対応できるだろう。
「うわめっちゃ頼りになる……やっぱPJ部に入らない? 掛け持ちでいいからさ」
「PJ部には先輩が居ないので……」
「愛されてるぼく!!!」
「門倉お前そんな性格だったっけ?」
近山さんに答えたが先輩のテンションが高い。多分知らない土地に来たからちょっとハイになってるなこれ。
「はーい先輩はちょっと鎮まりましょうね……」
「ぐぬぬ……」
クソッ可愛い! 僕が心を鬼にして先輩の鎮静化に成功した頃、葉山先生がノコノコやってきた。
「聖岳そろそろ来た? 来てるな。じゃあ今日はよろしく頼む」
「先生僕の扱い雑じゃないですか?」
「お前の本気デッキとやった奴は大抵こうなると思うが?」
そんなー。
「実際聖岳君ってどれくらい強いの? 大崎とかから強いって聞くけどイメージできなくて……」
先鋒担当の金目さんが訊ねてくる。
「うーん……」
僕が返答に困っていると、大崎が僕の代わりに答えた。
「タケちゃんがウチに居たら全国三連覇できてる」
「あーそれはそう、絶対出来る。出来なかったら稀代の迷監督として炎上する。俺試験官やり始めてから泣いて投了したの初めてだったもん」
「あれ、もしかして想像してたよりヤバい?」
先生が同意した。余計な部分も付け足して。
「先生僕の事過大評価してますよ」
「普通のコントロール得意な奴は【フード】ガン回りしねえんだよ……!」
「構築段階で弄っていったらコントロール適性でもまあまあ扱えますって」
「扱えないんだよなぁ……」
先生去年の試験結構根に持ってるな?
ともあれ。
「それで僕はどこのポジションに入れば良いんですかね……」
「大将」
「大将」
「先生がここまで言うなら大将かな……」
「秋の活動から警戒されるのもよくないし大将……」
「先鋒変わっても良いよ!」
金目さん良い人だな……。
中戸さんも広い視点で見れてるな……。
「聖岳君が正しく評価されてるみたいでぼくはうれしいよ」
「僕は先輩の進級と卒業が目下の敵なので評価にはそこまで……」
「うぬぬ……」
今日の先輩はよく唸る。可愛いが僕はこの可愛さを自ら摘み取る必要があるのはちょっとだけ哀しいところだ……でも先輩って適性デッキ見つかっても唸ってそう。元々頭回るから変なとこまで読み込んで宇宙先輩になりそうなんだよな……。
「門倉はともかく大会前のプレッシャーとか無いのかよ聖岳君……」
「僕が受けるプレッシャーはPJの勝ち負けには本来関係無い物なので……全国大会なら少しくらいは影響受けそうですが」
いつでも十全にパフォーマンスを発揮できるのが一番良いというのが僕の持論である。異論も認める。
「聞いたかお前らこれが強者の姿勢って奴だ。こうなれるように頑張るといい」
「無茶振り過ぎるよ先生!」
しかし葉山先生の言葉には反論したい。
「僕だって偶には負けますよ」
「直近で負けたのは?」
「春頃に『もいらい』の店員さんとフリー対戦したら負けましたね」
モヒカンさんはかなりメンタル強いから負ける瞬間まで全く油断しなくて強いんだよな……。こないだやり合った逸見君の上位互換って感じだ。
「公式戦は?」
「ちょっと思い出せないですね。学校帰ってから僕のPJデータ調べたらわかると思いますけど」
僕の返答に、先生は着いてくる部員達の方を向いて言う。
「聞いたかお前ら全国だとこんなのとやり合う可能性があるんだぞ」
「俺は発破かけるのに例外持ってくるのどうかと思う……」
隣で聞いていた大崎がそうぼやいた。
僕もそう思う。
そんなこんなで皆で電車を乗り継ぎ、会場まで辿り着いた。途中先輩が切符を買うのに手間取って乗る電車を一本遅らせたりといったアクシデントはあったが。
『ただ今よりPJ公式チームバトルwithU-18予選を開始しまーす。対戦形式は準々決勝までは通常のチーム戦、準決勝からは勝ち抜き戦となりまーす。参加チームの方は速やかに所定の卓スペースに着いてくださーい』
流石に関西圏で行われる大会ともなれば、個人ショップであっても敷地が広いし設備も整っている。
地元にこの規模のショップがあったら1日ショーケース眺めて買うか検討したりスペースでフリプしたり出来そうなのでちょっと羨ましい。
とはいえ『もいらい』も悪い店ではない。店員2人なのを考えるとむしろ優良店だろう。従業員数の問題で労働環境はほんのりブラックだが。
「がんばれー聖岳君ー!」
観客席から先輩のエールが聞こえる。
これだけでも来た甲斐があったな……。
「チームシノノメの聖岳です。対戦よろしくお願いします」
「チームガンドの
さてサクサク済ませよう。次の試合開始までに余った時間は、先輩とイチャイチャしなければならないからね。
◆
決勝まで行けました。皆頑張った。
準決以降は楽できると思ったんだけど……まあそんなトントン拍子には行ってくれなくて僕と同年代らしき男子が卓を挟んで立っている。
「まさか勝ち抜き戦で大将戦にもつれ込むとはね……チームシノノメの大将を務めさせてもらいます聖岳です。対戦よろしくお願いします」
「チームカミシロの氷川です。こちらこそ対戦よろしくお願いします。先攻後攻はダイスで良いですか?」
「ええ」
「ではこちらから……5です」
「こっちは……2ですね。先攻どうぞ」
関西訛りが全然見られない話し方的に、僕ら同様遠征しての大会荒らしでもしてるのだろうか?
氷川君は結構強い感じだ。逸見君よりちょっと上くらいかな? モヒカンさんよりは弱いと思う。ただ表情を見るに、大将戦の経験は浅そう。
それはそれとして良い初手である。
デッキが僕にさっさと勝てと囁いている。
「ではスタンバイでリソース追加後ドロー、1リソースで【夢見の調律師】をプレイ、効果で山札からコスト0以下のエリアイベントを公開し、そのまま場にセットできます。セットするのは【奏の楽園】。シャッフルお願いします……カードを2枚伏せ、先攻なのでそのままターンエンドまで」
彼のデッキは【夢想楽土】か。本来のプランも別プランもやり易くて助かった。
【夢想楽土】は悪くないテーマだけど、致命的な弱点があるから大将向けじゃない。行けても中堅向けだ。
大将ならもうちょっと小器用なテーマの方が良い。【夢想楽土】に適性があるのなら、今のレギュでは【コーラル】か【血のロザリオ】の方が大将向けだ。
もしかすると相手チームは本番の大会前に立場を経験させる為に今回氷川君に大将を任せたのかな? 年功序列って線もあるけれど。
「ターン貰います、スタンバイ時にリソース追加して1ドロー。手札から2枚を伏せて1リソースと青1枚で【虹のフラミンゴ】をプレイ。プレイ時に支払ったコストに手札のカードがあるのなら、それと同じ色を持つイベントを山札から1枚選んで手札に加える事が出来る。今回捨てたのは【虹のフラミンゴ】。全色が対象となります。山札から加えるのは【クエーサーの羽ばたき】、シャッフルお願いしますね。続けて【バリアントヴォイス】をプレイ。それではバトルフェイズ、【バリアントヴォイス】で【夢見の調律師】に攻撃、チャンスステップですが反応は?」
「無いですね」
「OK、ステップ処理でトップ公開、【聖者の楔】を手札に。【バリアントヴォイス】はプレイされたターン中のみ攻撃宣言時に山札の上から2枚をダストに置き、相手プレイヤーにこのカードのブレイクと同じダメージを与える事ができます。なのでプレイヤーへ1ダメージ。バトル処理に入りお互いパワーが同等なのでお互いダストに送られます」
「【奏の楽園】の効果によりこのカードの上に楽団トークンを1個載せますね」
「OKです。続けて【虹のフラミンゴ】でプレイヤーへ攻撃、こちらに反応は?」
「無しです」
「ではチャンスステップ時にトップ公開、【鷹の目】を手札に。そのままエンドまで」
今日僕が使うのは【バード】デッキの変則型。【バード】デッキはかなり古くからあるテーマの一つで、特徴は早い事。つまりは本来なら高速ビートダウン軸のテーマだが、今年は【虹のフラミンゴ】のようにコントロール軸に改造できるパーツが増えたのでこれ幸いと僕用にがっつりチューニングしてある。流石に純正ビートダウンは扱い辛いからね。
まあこのデッキがコントロールなのかと言われると怪しい。でも本筋のプランはちゃんとチマチマ殴ったりして盤面とかコントロールしながらバーンダメージで対ありする型だから……。
「ターン貰います……リソース追加、ドロー」
「ドローに反応あります、そちらは?」
「無しです」
「なら処理しますね。ドロー反応で伏せていた【巣立ち】をプレイ。自分の場に存在する【バード】のキャラクターを1枚除外し、それよりコストが1高い【バード】を山札からプレイ出来ます。【虹のフラミンゴ】を除外し、3コストの【千里見通すロック鳥】をプレイ、出た時の効果で2枚引く。シャッフルをお願いして……さあどうぞ」
「メイン開始時の【奏の楽園】の効果は使用しません。手札を1枚伏せ、2リソースと手札の青1で【彼方のアンコール ヘンドリッグ】をプレイ。バトル入ります。対象はプレイヤー、対象変更は?」
「しません」
「ではチャンスフェイズ時にトップ公開、公開されたのは【大楽曲・静謐】。手札に加えてから更に伏せの【アズーロの前奏】をプレイ。山札の上から3枚を公開し、その中から青のカードを全て手札に加える事が出来ます。公開されたのは【彼方のアンコール ヘンドリッグ】、【荘厳のダイナスティ】、【孤独の燈音】。全て手札へ。青のチャンスカードをプレイしたのでヘンドリッグの効果が反応、ヘンドリッグが回復します」
うん、だいたいデッキの中身も見えたかな。
悪く言うとカモだ。
「OK。2度目の対象は?」
「プレイヤーで」
「とりあえず2ダメージ通すよ。チャンスどうぞ」
「公開されたのは【孤独の燈音】。再び2ダメージです。エンドまで」
「ターン貰いますね。スタンバイからドロー。反応あります?」
おっとこっちが引けたのか。
しかし割とデッキ掘ったなあの人。
さっきこっちが仕込んだブラフに引っ張られたかな? じゃあ今さっきできるようになったすぐに終わるもう一つのプランで行こう。
ごめんね氷川君、僕は先輩との自由時間が欲しいんだ。
「無しです」
「手札から【クエーサーの羽ばたき】をプレイ、反応あります? 無ければそちらの伏せが飛びますが……」
「伏せの【閉演】をプレイ。クエーサーを無効にします」
「OKです。では続けて手札から【鷹の目】をプレイします。返しはありますか?」
「……? 無いです」
クエーサーは【バード】テーマ専用の軽くて有能な伏せ札除去、鷹の目はデッキ確認と変則的な手札妨害も兼ねた【バード】の汎用札だ。
でもPJのカード枚数が多いとはいえ、今のレギュレーションで使えるカードと各カードの相互相性くらいは覚えておかないとね。大将やるなら特に。
「【鷹の目】の処理に入ります。相手の山札の上から3枚を確認し、好きな順番で入れ替えてから山札の下に送れます。入れ替えは無しで全て山札の下に」
「はい」
「2リソースと手札の赤青白黒で4コスト代替しますね。手札から【答え待つもの】をプレイします。チャンス反応は何かありますか?」
「! ──……反応、無いです……」
ちょっと逸り過ぎたね。【夢想楽土】は性質上、【バード】のような細々としたバーン型に有利だけど、このデッキの別プランはそうじゃないんだ。
「それじゃ効果処理に行きますね。まずプレイ時に支払ったコストに手札が含まれていた場合、その色に応じて特定の効果を得ます。今回は赤青白黒なので赤の攻撃時プレイヤーに4ダメージ、青の攻撃時にダストボックスのチャンスをセットする、白の効果に選ばれない、黒の攻撃時に自身の山札の上から2枚をダストボックスに置き、相手の場のカードを1枚選択してダストボックスへ置くの4種類です。そして手札からのプレイ時、出たターン中のみ特殊な攻撃時効果を得ます」
「条件付きの回復……」
氷川君はプレイされてからやっとこのカードの存在を思い出してくれたようだ。
【答え待つもの】は所属テーマ無しのフィニッシャーなんだけど、本領発揮に手札コストを要求するのが祟ってなのかそこまで採用はされない。PJは手札上限厳しいけどその分手札増やし易いから僕はそんなに悪くない性能だと思うんだけどね。
地味だが強いカード枠だ。カード効果は派手だけど。
まあ中々採用されない一番の理由はテーマを持たないカードなので通常のデッキ適性任せでは中々手札に引き込めないのが大きいと思われる。
僕は引けるので入れた。それと使って楽しいのも理由だ。
「ですね。条件は
「さっきの鷹の目って……」
「普段はドロー阻害に使うけど【答え待つもの】とも相性良いよね、忘れてたのかな? ともあれこいつが無事立ったのでバトルに入ります。反応は……あるけど多分撃つ意味ないよね。選べないから」
「……はい」
【夢想楽土】の持つ致命的な弱点とは、対象を取らないタイプの除去札がない事だ。
なので効果に選ばれないキャラクター……いわゆるアンタッチャブルが天敵となるテーマなのだ。
僕の考えで行くと、最悪5タテする必要のある大将戦はその分見なければならないデッキの範囲が他のポジションに比べて非常に多くなる。
なので致命的な弱点を抱えたテーマを持つ事は推奨できない。
それなら大将を任されるだけの強さがあるのだし、多少の回しにくさなどを許容してでもより弱点の薄いデッキを握ってプレイングで勝っていく方が総合的なチーム勝率は伸びる。圧倒的な格上相手に当たる事もあるが、まあそこは学びを得るくらいの気持ちで気にしないで欲しい。
早々無いからねそんなの。
「それじゃプレイヤーに攻撃時【答え待つもの】の効果が複数発動します。順に処理していきますね。まず宣言時の条件付き回復、僕が答えるのは山札の一番下に【奏の楽園】。山札の1番下をダストボックスに置いてください」
「正解です……」
「回復しますね。その後赤の効果、プレイヤーに4ダメージ、青の効果、ダストから【聖者の楔】を場に伏せます、黒の効果、山札の上から2枚をダストに置いて、場のカードを1枚ダストに置く。これは伏せ札の方で」
「攻撃対象をヘンドリッグに変更します……」
「OKです、バトル結果は【答え待つもの】の勝利、ヘンドリッグがダストへ。【奏の楽園】に楽団トークンをどうぞ」
「はい……」
氷川君は結構精神的に来てるかな、まあ運が悪かったと思って切り替えていって欲しい。どデカいプレイミスごときでメンタル痛めてたら大将なんてやれない。
「再度攻撃、先程と同様に処理します。宣言は一番下の【アズーロの前奏】、青の効果は【巣立ち】を伏せます。黒の対象は伏せ札で」
「再度正解、反応はないです……」
「再回復、4ダメージからのプレイヤー攻撃で更に4ダメージ、それじゃあもう一度プレイヤーに攻撃、今度の宣言は【閉演】。正解したので再回復、青の効果でダストの【欣喜雀躍】を伏せます。黒の効果は使用せず、計8ダメージ。そして再度攻撃して4ダメージ。対戦ありがとうございました」
「対戦ありがとうございました……」
「僕の経験からの助言になりますが、大将やるなら【夢想楽土】はやめた方がいいと思いますよ。今回みたいに処理できないパターンがあるので……大将のポジションは難しいですが頑張ってください、応援してますね」
「ありがとうございます……」
氷川君と握手で〆だ。
「良い感じに回ったから早めに終わらせれてラッキーだったよ」
皆の元にそう話しかけながら戻ったら、ドン引きした表情で皆が僕を見ていた。先輩ですら筆舌に尽くし難い表情をしている。
「流石のぼくも相手が可哀想だと思ったよ……」
「タケちゃんもうちょっとこうさ……手心とかさ……」
先輩と大崎が僕に苦言を呈してくるが……すまない! 僕は対戦に手を抜く事はできないんだ!
「氷川君は大将初めてっぽかったから終わってからアドバイスもしたのに……」
「あれアドバイスじゃなくて追い討ちって言うんだよお前知らないの?」
葉山先生がそう僕に告げた。
お陰で表彰台はなんだかどんよりした空気だった。
これ僕が悪いの? 異議を申し立てたいんだけど。
聖岳君の手綱は先輩が握っています。