独りにしませんいつまでも   作:残念G級

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チーム戦

視界を閉ざす。感情が死んでいく。これから行うのは命の奪い合いだ。弱ければ全て奪われる。大切なものも命も何もかも。だからこそただ命を奪うためだけに己を組み換える。堕ちていく。ただ暗く冷たい闇の底へ。意識が堕ちる。

 

『全部隊転送開始』

 

戦闘開始のアナウンスが流れ、眼を開ける。その眼に映るのはごく普通の市街地。だが、真昼にとっては命の奪い合いをする戦場である。

ボーダ隊員はベイルアウトの特性上、訓練でも何でも相手を傷つけることに慣れているが、その戦闘が直接相手の命を奪うかもしれないということには気づいていない。

いくら戦闘訓練を重ねていても、実戦経験がなければ真昼と同等の緊張感を持つことは難しい。だからこそ、戦闘が始まった時の初動に大きく違いが出る。

 

「歌歩、敵の位置が割れたからマークを頼む。北から時計まわりに出水、二宮、太刀川、加古、嵐山、柿崎、佐鳥、三輪、時枝、烏丸、東。俺は先に東を墜とす。歌歩は俺の感知情報を使って敵の状況が変わり次第報告を」

 

「三上、了解。…真昼さん、ご武運を」

 

真昼は自身のサイドエフェクトである感知範囲を最大限に広げ、全員の敵の位置を把握と同時に三上と共有した。

そしてこの敵しかいない戦場において最も厄介な駒である東を最優先で落とすべく最短距離で向う。

まだどこも戦闘が開始していないことから、チームの合流を優先しているのだろうと踏んだ真昼。

更に移動速度を上げると、突然前方からの狙撃に顔を傾けて避ける。

狙撃された方向を見るとそこにはバックワームを着てスコープを覗く東の姿があった。

 

「…まずは一人」

 

 

スコープ越しに真昼を捉える東はツゥーっと頬を伝う汗を感じる。まるで首元にナイフを突きつけられているかのような緊張感を抱く。

距離的にはこちらの姿を視認できていないはずなのに、はっきりとスコープ越しに真昼と目が合っている。

光がないどこまでも冷たく暗い、感情が抜け落ちた瞳が東を見ている。

もう何度見たかわからないこの光景。

他の誰かと対峙した時には感じない命の危機。

まるで本物の戦場に立っているかのような、いつ命を失うかもわからない重い空気が周囲を支配している。

 

「…ふぅ」

 

浅く息を吐き、鳴り響く鼓動を抑える。

何度も自分に言い聞かせる。これは訓練であり、命を失う心配はないと。例え戦場に出ても自分達にはベイルアウト機能によって戦闘体が破壊されても本体である生身は無事に本部へと帰還される。

大丈夫だ。責務を果たせ。隊長が戦場で冷静さを失えば、部隊は壊滅し負ける。

今はただ、目の前の相手を…

 

もう一度スコープを覗くと先ほどまでいた人物の姿が消えていた。

警戒は解いていなかった。自分を落ち着かせる時だって少しも油断はしなかった。

そのはずなのに…

 

「…まいったな、全く」

 

自身の身体を見下ろしている。身体の感覚がなく、ただ敗北という名の死を告げるアナウンスだけが響いている。

光となり消える瞬間、自身に死の宣告を下した人物を見る。

まるで血のように赤く黒くそしてなにものよりも冷たいその眼で、自ら摘みとった命を一切の感情もなく、ただ消えるその瞬間まで見ている。

まるで死んだことを確認するように。その瞳はどこまでも無機質なものだった。

東はらしくもなくその姿をこう思った。

 

人の皮を被った(・・・・・・・)死神(・・)だと。

 

 

 

 

 

「ちょいちょいちょいちょい!これはちょっと規格外すぎるでしょ!?」

 

佐鳥は全速力で走る。先ほど誰かがやられた証であるベイルアウトの光が空に昇ったのを確認したその瞬間だった。

現在の戦場マップでは時刻は昼。それなのにも関わらず、空に広がる数多の星屑が輝いていた。

それは天蓋のように覆い、まるで罪人を裁くかのように、重力に従って無慈悲に降り注いだ。

佐鳥は気づいた瞬間にその場から退避する。

自身のOPから送られた逃走ルートに従って。

 

だが、それを許すほど裁きはぬるくなかった。

 

星屑は複雑な軌道を描きながら、確実に罪人の息の根を止めようとしていた。

視えているかのように、どんなに曲がり角を利用としても追ってくる。

後方を見ては自身の知る弾トリガーの動きとはかけ離れた動きをする規格外の数のその弾に絶望しながら不格好に走り続ける佐鳥。

 

「マジでこれ無理じゃない!?」

 

『佐鳥君!前!』

 

綾辻の言葉にしたがって前方を見ると視界を埋め尽くすほどの星屑。その瞬間、挟み撃ちにするためにこの場所に誘導されていたことに気づいた佐鳥はやられる前にレーダーで周りの位置を確認する。

すると、先ほどまである程度周囲に集まっていた味方と敵の反応が綺麗に一対一になるよう散らされていた。

考えたくなかった事実に佐鳥は苦虫を潰したよな表情を浮かべる。

 

(まさか、全員を誘導(・・・・・)したの!?それぞれを戦わせて減らすように…うそでしょ!?)

 

佐鳥はこの事態を引き起こした人物に畏怖の感情を抱く。

今まで接点を持つことはあまりなかったけど、ボーダー本部にいれば自然と話が出てくるその人物。

一目見たときに、あまりの綺麗さに声が漏れた事を覚えている。やたらと女の子にモテるその人は、周りが言うには凄く優しくて頭が良くて落ち着いてて、なにより強い。最近、いくつかの弾トリガーを開発したらしく、そのトリガーは射手ポジションに革命を巻き起こしたと言っても過言ではない。

そして自身が尊敬するボーダー最初のスナイパーである東さんが、唯一戦いたくない(・・・・・・)と言った人物。

 

先ほど、同じ人物に落とされた東は彼の事を死神(・・)と例えたが、佐鳥もまた彼に対して思いついた言葉があった。

数多の星屑に打ち抜かれて身体が崩れるその瞬間、佐鳥はこう呟いた。

 

怪物(・・) と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…佐鳥君落ちました。そして誘導後、柿崎さんを加古さんが、三輪君を嵐山さんが、烏丸君を二宮さんが、時枝君を出水君がそれぞれ撃破。現在の生存者と得点ですが、太刀川隊が2ー1点、東隊2ー2点、嵐山隊1ー1点です。スコアは太刀川隊と東隊と並んでます」

 

「了解。…歌歩、感覚共有を切っておけ。頭が焼き切れる」

 

『…真昼さん、これは訓練です!そこまでサイドエフェクトを酷使しないでください!感知もマーキング後は私がやります!できます!それに真昼さんなら、力を使わなくても皆さんを圧倒できるでしょ!?お願いします!どうか、落ち着いて「歌歩」…っ!…すみません、ご武運を』

 

「…待っていたのか」

 

「そりゃもちろん。不意打ちとかつまんねえだろ?てかそもそもお前不意打ち聞かねえじゃん」

 

「そうか」

 

「…今、何割(・・)だ?」

 

「3」

 

「まじか、なら今日こそ9はいってもらうぜ」

 

「そうか。どうでもいいが、お前は今日も正義の弱者だぞ」

 

「はは!上等!!」

 

 

 

太刀川は腰に差している二本の孤月を抜き、まるで新しい玩具を手に入れた子どものように高ぶった感情を隠すことなく全身から溢れさせては真昼に斬りかかった。

大して真昼も自身の腰にある二本ある孤月のうちの一本を抜いて迎え撃つ。

 

「お、今日は孤月か!これは負けてられねえな!」

 

真昼のメインが自身と同じ孤月の二刀流であることに気づいた太刀川は、真昼と刃を交えるごとにどんどん速度を上げていく。

急所である首はもちろん、腕や足、さらに人間が避けにくい身体の中心など、そこらの隊員ではすでに数回は落とされているほどの太刀川の連撃を、真昼は涼しい顔で捌いていく。

片手で持つ孤月での受け太刀はもちろん、最低限の足運びと体捌きで避けていく。

 

「はは!やっぱ当たらねえな!」

 

太刀川の袈裟切りを半身になって交わすとそのまま踵を軸にして回転し、そのままの勢いで蹴りを放つも太刀川はそれを避けるのではなく孤月でガードする。

 

「あっぶね!やっぱ持ってたかスコーピオン」

 

太刀川が受け止めた真昼の足には小さなブレードが生えていた。身体から変幻自在にブレードを出し入れしたりできるかなり応用の利くアタッカートリガーである。

真昼はそのトリガーをほぼ高確率で入れている。真昼の戦闘方法はトリガー構成によって変わるが、基盤になっているのは類まれないセンスを持つ近接格闘のそれである。

いかに敵を殺すまでの流れを作れるか、敵を崩し、隙を作って最速で終わらせるための技術。

その戦闘スタイルにはスコーピオンの特性と非常に相性がいい。

 

その証拠に、太刀川は真昼の持つ孤月だけでなく、その全身を常に警戒している。

すると太刀川は突然斬り合っていた真昼からバックステップで距離を取った。

なぜ真昼から距離を取ったのか。その答えは先ほど彼がいた場所にあった。

太刀川がいた場所から生える一本のブレード。地面を抉って生えているそのブレードは、殺傷力こそないが刺されば確実に動きを固定することが出来るこの技の名はもぐら爪(モールクロー)といい、地面や厚い壁にブレードを潜行させて死角を突くことが可能である。

 

真昼は太刀川の連撃を捌きながらカウンターを狙ったのだが、それを読んで距離を取ったのだ。

そして本来近距離専用の孤月使いが距離を取るということは攻撃が一時中断されてしまう。だがそんなことはこのボーダーのトリガーにおいては関係ない。

ボーダーには様々なトリガーがあり、その効果も多種多様である。そんな中で一番人気を誇る孤月にはその使いやすさをさらに上げる専用のオプショントリガーがある。

それはトリオンを消費することで孤月のブレード部分を瞬間的に拡張するトリガー。

 

「…旋空孤月」

 

大体太刀川と真昼に距離は15m。その間合いを太刀川は瞬時に埋める。

モールクローの使用で隙が出来ている真昼にこの攻撃は確実に決まる。

本来ならそう思うこの攻撃を、太刀川は油断はしない。なぜなら、この程度の攻撃など、彼には通用しないことを知っているから。

迫りくる十字の斬撃。それは本来なら刹那の一撃。到底防御や回避が間に合うはずもない。

太刀川慶という男は、ボーダー最強のノーマルトリガー使いである忍田真史の弟子である。その彼が繰り出す斬撃はほぼ防御不可能の神速の斬撃へと昇華しつつある。

そんな斬撃を前に真昼が取った行動はいたってシンプルである。

 

「…旋空孤月」

 

同じ技で相殺する。

だが、先に技を出した太刀川の斬撃の方が本来なら早く真昼に当たる。

そう、本来なら(・・・・)

 

だが真昼の眼に映るその斬撃は止まっているかのように見えていた。

まるでスローモーションのように真昼の視る世界が遅くなる。

一切の音もないその世界はおそらく真昼だけしかいることが許されない。

これは真昼の視覚情報と脳の処理速度などが一気に加速し能力が向上した時に入れる世界。

その世界で真昼は普通に旋空を起動し孤月を振るう。

一ミリのずれもなく、ピンポイントで太刀川が振るった旋空に当てた。

 

「やっぱいつ見てもすげえな。超身体機能強化(・・・・・・・)だっけか」

 

太刀川の視点では自分が放った旋空が真昼に当たる瞬間、僅かに真昼の手がぶれたかと思ったら一瞬で旋空が打ち消された。

太刀川と真昼が戦ったら毎回起こるこの現象に、太刀川は毎度面白がっては色々な工夫をして打ち破ろうとしていた。

 

「確かお前本来の(・・・)サイドエフェクトだったよな。そして感知のサイドエフェクトがお前の妹のもの(・・・・)。 ブラックトリガーになった時にそのサイドエフェクトも引き継がれたらしいが、お前ら兄妹は一体どれだけ規格外だったんだよ!叶うことならどっちとも戦り合ってみたかったが、言っても仕方ない。それよりようやく本番って感じだな」

 

『太刀川さ~ん、楽しそうにしてるところわるいんだけど、お客さんだ~』

 

「…は?」

 

太刀川が自隊のOPである国近からの通信が入り、レーダーを確認する。

すると二人の位置に近づいてくる反応が多数。というよりこの数は…

 

太刀川がうざったらしい顔をある方向へ向けると、突然その視線先の建物が爆発した。

そしてその爆発地点から飛び出してきたのは、なにやら戦いながら言い合いをするやかましい人物たちだった。

 

「ちょっと二宮君邪魔しないでくれるかしら?凄い邪魔なのだけれど」

 

「お前の方こそ、わざわざ当てて下さいってこっちに来ているようにしか見えないが?」

 

「ははは!二宮さんも加古さんもやることが派手で凄いな!だが、綾辻のためにも負けるわけにはいかない!勝負だ出水!」

 

「太刀川さんすいません!俺一人でこの人たちは止められませんでした!てかうっさい!この人たちずっとうるっさい!!言い合いはもういいとしてずっと笑ってる嵐山さんが一周回って一番うるさくて怖い!だからごめんなさいほんと無理!助けて下さいお願いしまぁぁす!!」

 

出てきた人物は、お互いいがみ合いながら弾トリガーをばらまき放つ二宮と加古、突撃銃片手に爽やか笑顔で飛び出した嵐山、そしてそんなやかましい年上連中に囲まれて恐怖を覚えたのか若干泣いている出水だった。

くしくもこの場に生存者が全員集まった形になった。

 

このままいけば乱戦にもつれ込むこの状況に、太刀川はこれもまた面白いかと笑みを溢した。

それに対して真昼は特に反応することなく、そっともう一本の孤月へと触れた。

 

 

それから試合が終わるまで五分とかからなかった。

 




【一ノ瀬真昼】今回のトリガーセット
[MAIN]
孤月・旋空・スコーピオン・バイパー

[SUB]
孤月・グラスホッパー・スコーピオン・バイパー



私の中で、まだ幼い時の出水君は結構わちゃわちゃしているタイプなのかなってイメージを持ってたので、キャラ崩壊かもしれませんがお許しください!

また、真昼君のトリガーセットに関して、シールドないことについて質問したところ「射手が多いから」とのことでした!その答えの真相は次の話で!

それでは次回もよろしくお願いします!
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