独りにしませんいつまでも 作:残念G級
「…これが俺の過去だ。妹はこの通り俺を生かすために黒トリガーになり、その力を使って俺は向こうの住人を大量に殺した。向こうで受けた人体実験の影響で俺は全身の痛覚と感情の大半を失いこの世界の記憶も帰ってきてからのしかない。戦闘でのあれは、多分ほぼ毎日を戦場で過ごしていたのが原因だと思う。そういう意味で言えば、俺は今もなお戦場での習慣が抜けていないんだろう。歌歩には迷惑をかけてすまない」
真昼は三上へ深々と頭を下げる。これまで何回も三上に対して迷惑をかけることはあった。それこそ、サイドエフェクトの酷使で身体に限界を迎えた真昼はこの自室兼隊室で倒れることがある。
というのも、真昼は近界での人体実験で感情と共に痛覚も失っている。
痛覚というのは、いわば身体の危険や限界を知らせる大事な機能である。
それが機能しないということは、どんなに身体が限界を訴えてもそれを感知することが出来ないので、突然スイッチが切れるかのように身体が動かなくなるのだ。
そしてこれは旧玉狛と本部上層部、そして真昼と隊を組むようになった三上しか知らないことだが、真昼のトリオン体は人体実験で体内に入れられたチップが影響しているのか痛覚の数値をいじることが出来ない。
つまり、真昼のトリオン体は痛覚が100%伝達してくる。そのことを今の話で知った三上は過去での戦闘を思い出す。
真昼は今まで一回も傷を負わなかったというわけではない。
集団戦での戦闘時は普通に身体にダメージを負うし、何なら四肢を飛ばされたり、戦術で自ら斬り捨てることもあった。
それに滅多にないことだが、身体を半分に斬り飛ばされたこともある。
それら全て、痛みが100%感じ取れていたとしたら…
気づいた瞬間、三上の顔から血の気が一気に抜け落ちた。
確かに、戦闘の臨場感を味わいたいとかで少し痛覚を入れている人はいるが、それを100%なんていうほぼ自殺行為に等しいようなことをしている人はいない。
当たり前だ。
腕や足を失くす痛みを進んで感じたいと思う人はいないし、もし入れてもそれは普通の人では耐え難い苦しみを味わうのだ。
そう、普通ならだ。
だが三上が今まで見てきた真昼はどんなダメージを負っても顔色一つ変えることなく、その圧倒的な戦闘能力で最後には必ず勝利してきた。
まさかあの全てが痛みを感じていたとは想像もできなかった三上は改めて自分はなにも知らなかったのだと痛感し、なんとか止まった涙がまた溢れ出ていた。
三上がまた泣き始めてしまったことに戸惑う真昼。
どうしたらいいのか分からない真昼は、とりあえず昔陽菜にやっていたことを実行した。
三上の脇に手を通すと軽々持ち上げる。
身長が190近くある真昼と150にまだ達していない三上という圧倒的身長差があるからこそ可能にした光景である。
そのまま自身の上へと抱きかかえると、そのまま背中と頭を優しく撫でる。
妹でこのようなことは慣れている真昼は、リズムよく撫でる。
優しく、丁寧に、大切なモノを扱うようにそっと。
ずっと黙っていたからこそ三上をここまで追い込んでしまったのだろうと、この状況になって気づき始めた真昼は小さく言葉を紡いだ。
「…ごめんな。歌歩の優しさに甘えてずっと言わなくて」
泣いてしまっているために話すことが難しい三上はその代わりとして真昼の胸に押し付ける頭を動かして返事をする。真昼の背中に手をまわして。
「俺はあまり相手の感情を読み取ったりとかは得意じゃない。だからってわけじゃないが、これからもまた迷惑をかけるかもしれない」
三上はギュッと背中に回した手に力を籠める。まるで許さないと言わんばかりに、そしてもう絶対に離さないという意思を込めて。
「それでも良ければ、
少し困ったような感情が真昼の言葉に込められていた。それはちゃんと三上も感じ取れていた。
何となく、真昼が普通の人ではないのではないかと疑問を持つことはあった。
玉狛支部の事はあまり詳しくはなくとも、最古参の人たちの集まりというのは聞いたことがあるし、何なら玉狛支部の小南とは同い年ということもあって本部で会った時には話したりもする。その時、真昼という名前が直接出てくることは無く濁されていたが、忍田本部長と話ていたり、普段隊員と進んで接することがない城戸指令まで、真昼の事を気にかけていた。
この部屋だってそうだ。普通よりも広く整ったこの部屋は隊室の役割もあるにしても破格のものである。
ここまで決まった人物たちが真昼の周りで動いていれば、三上ほどの分析力があればある程度の仮説は立てられる。
だが三上は自分から真昼に聞こうとはせず、真昼から話してくれるまで待っていようとしていた。頼ってもらえるその時まで、自分は真昼を支えられるよう自分なりに成長しようと努力していた。
それでもこうなってしまった理由はわかっている。
ただ悔しかったのだ。初めてのちゃんとしたルールを設けられてのチーム戦で自分がOPとしてやった仕事は、せいぜいマップ上のマーキングだけである。後はひたすら真昼の戦闘を眺めて勝利を願うだけだった。どれだけ努力をしても真昼を支えるどころか余計に通信回数を増やしているだけ。
自分の能力不足だけが目立っていた。
恐らく真昼と組んだOPの誰もが三上と同じ状況になるだろう。
もともと真昼は旧ボーダーからOPを戦闘と同時に行っていたため、普通のOPよりも戦術理解はもちろん、その状況で戦闘員が何を一番求めているのかを瞬時に察知しそれを的確にまとめる力がある。
そんなOPとしての理想を突き詰めたような人と組むのは酷というものだろう。
それに同じ隊として真昼から個人的な教えを受けている三上のOPとしての実力は、同世代のものたちと比べても頭一つ抜けているぐらいには成長している。
つまり、三上はそこまで落ち込まなくていいのだが、三上が目標としているのは
なぜなら三上のこれは、ただ
恋はその者の視野を良くも悪くも狭める。
あの日、同期であり友人である3人でいる時に助けてもらい、その姿に恋い焦がれてしまったから、三上は真昼の傍にいたいと思い、家に帰ってからも慣れないPCスキルを磨き、本部でのOP業務も積極的に行い励んでいた。
今まで必要最低限でいいかとやってこなかった料理にも手を出し始め、お洒落にも気を遣うようになった。
これら全ては真昼に恋をしたから、真昼しか見えていないからこそだ。
それほどまでに、三上の中で真昼という存在は大きいのである。
それほど大きな存在である真昼が
”
そもそも、真昼は一度も三上が支えになっていないと思ったことは無い。
それどころか、ここ最近では三上に頼ってばかりだとも思っていた。
防衛任務では今までソロでのシフトだったため、いつどこでゲートが開いても良いように感知範囲を最大範囲で常時発動させていたために、以外と疲労が溜まっていたが、隊を組んでからはその役目は三上が的確に行っていたため、真昼は感知のサイドエフェクトを最低限しか使っていない。そのため負担はだいぶ減っているし、終ったあとの食事も三上が隊室で作ってくれたりと明らかに真昼は三上に色々と支えられていた。
だからこそのこの言葉を三上の送ったのだ。
その言葉を受けた三上は、やっと今までの自分のやってきたことが無駄じゃなかったことに気づく。
実力がまだなくて悔しいとは思っているけれど、それでも今のままで少しでも支えに慣れていたのなら、それは今の三上にとってとても救われるものだった。
もはや無限に流れるのではと思う程の涙が、三上の頬を伝う。
真昼の今の恰好は隊服でトリオン体だから汚れることは無いため、少しの罪悪感はあるがそれでも今は甘えさせてほしいと真昼の胸に顔を押し付ける三上。抱きしめる力もさらに籠め、まるで自分という存在を刻むかのように全身を真昼に擦り付ける。
きっと今の三上の顔は涙やらなんやらでひどいコトになっているだろう。
恥ずかしさや嬉しさで顔もハバネロのように真っ赤だ。
だから顔は見せられないため俯いた状態で三上は口を開けた。
ちゃんと深呼吸をして話せるように。
「…支えますよ。同じ隊でずっと。離れてって言われても絶対離れません。真昼さんは迅さんの予知を基に行動するのも分かりました。恐らく、迅さんがこの隊を解散してほしいと言ったら真昼さんはそうするのも分かってます。わたしもそうなったら渋々ですが従います。本当は嫌ですけど、真昼さんを困らせたくはないので…。その時はわたしも他の隊のOPをするかもしれません。でも、心はずっと一ノ瀬隊です!
ずっとずっとわたしは一ノ瀬真昼が率いる一ノ瀬隊のOP三上歌歩です!離れてあげません!!
これからももっともっと実力を磨いて、真昼さんをずっと支えます!他の人と組めなくなるぐらい完璧なOPになります!!
だから…だからこれからも…わたしに貴方を支えさせてください」
最後は弱々しく零れたその言葉を真昼はしっかりと受け止めた。
今吐き出されたこの言葉たちは、全てが三上の本音だ。普段家族や友人にも滅多に出さない、わがままとも言える三上の想い。
好きな人が相手だからこそ出した甘えたいというその思い全てを三上は吐き出した。
そしてその全てを真昼は呑みこんだ。
「…ああ、よろしく頼むよ。これからも支えてくれ」
三上の背に回した腕に力が入る。
真昼と三上は互いが互いの存在をその身に刻み、忘れないよう強く強く抱きしめた。
うーん書けば書くほどうちのみかみかのヒロイン力が増していく。
恐ろしかミカミカ…
これからはちょくちょくヒロインタイトルで各キャラとの絡みなども書いていけたらと思います!
それではこれからも楽しんでもらえたら嬉しいです!
よろしくお願いしまぁぁぁす!!