独りにしませんいつまでも   作:残念G級

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今回は少し短めの小南回です!


小南桐絵①

模擬のチーム戦を無事に終え、着々とそのルールを作ったり、システムを組んだりと一部の人間は大忙しである。

その中心人物である真昼は高校入学までの残り数か月間で、開発室のスタッフたちと協力して基盤を作っていた。

そのため、ここ最近の真昼の行動範囲は本部の中で限定されており、開発室か自室かの二択である。

 

「…おい、桐絵」

 

「なに」

 

「ご飯食べたい」

 

「食べればいいじゃない」

 

「上乗られてたら食えない」

 

「じゃあ食べさせてあげるわ!はい、あ~ん」

 

「はあ…んあ」

 

まるで親鳥に餌付けされる雛鳥のように、なぜか膝の上に座る小南に今晩の夕食である彼女の手作りカレーを食べさせられている真昼。

なぜ、玉狛支部の小南が本部の、それも真昼の自室にいるのか。

それはここ最近、真昼は本部に詰めて生活をしなければいけないぐらいには忙しくしてた。

そのため、玉狛支部に帰ることは愚か、ほぼ開発室のスタッフとしか会話をしていない。

ずっと会いに来てくれない真昼に、まだ中学生の小南はしびれを切らしたのだ。

今まで小南は好きな人と会いたくても会えない環境にいたのが、真昼が帰ってきてくれたことによってそれが解消されたのだ。そのはずなのに、真昼は本部に自室を与えられそれどころか自隊まで作ってしまい、なかなか会える時がなくなってしまっていた。

いざ会いに本部に行っても基本は誰かとずっと戦っているか、本部のシステムのことについて鬼怒田と会議したりと全く構ってくれない。

そんなこんなで本日、小南は自身が通うお嬢様学校が創立記念日の関係で本来あるはずの学校が明日休校なため、それを利用して真昼の部屋に泊まりに来ていたのだ。

 

「美味しいでしょ?」

 

「ん、相変わらず美味しい」

 

「そうでしょ!お代わりあるからたくさん食べなさいよね!」

 

「桐絵は食わないのか?」

 

「私も食べるわよ?真昼に食べさせながらこうやって」

 

真昼に褒められてムフ~っとにやつく小南は、そのままテンポよく真昼の口に自信作のカレーを運んでいく。

そして真昼が租借している間に自分のカレーを食べる。

なぜか自分が食べている顔から眼を逸らさない小南のその謎な行動に若干戸惑いの色を見せる真昼。

 

それからそのまま完食するまで小南に食べさせられた真昼と、完食するまで真昼の顔を眺めていた小南という側から見たらおかしな光景が続いた。

 

「ごちそうさま。それで桐絵はなんでここにいる。最近忙しくて玉狛に帰れてないのは悪かったが」

 

「なによ、わかってるならいいじゃない。真昼が忙しいっていうのは聞いてたから、だったらあたしが行けばいっかってことで泊まりに来たの。だから泊めて」

 

お泊りセットがあるのだろう、いつもより大きなカバンを真昼に見せつける。

ジトッとした視線を向けながら。

 

「そ・れ・に!なんか歌歩ちゃんと隊を組んでから、その…べったりらしいじゃない。あんなに可愛い子と一緒だったら鼻の下が伸びるのも仕方ないかもしれないけど、ちょっとムカつくわ!」

 

そう、小南は怒っていた。最近自分がいる玉狛に顔を出さないどころか、本部で基本暮らしており、自隊のOPである三上とほぼ四六時中一緒にいると聞いたからだ。

しかも、模擬チーム戦をやってからというもの、二人の距離が一気に近いのだ。特に三上からの距離だが。

本部の間で真昼に想いを抱くものは多い。あの真昼の整いすぎている容姿はもちろん、基本的に優しく包容力と年上特有の余裕さとがその魅力を引き立てている。

それが女性特攻をさらに加速させていた。

そんな中で、三上の真昼に対しての感情は誰がどう見てもあからさまなそれである。

例えば、本部で二人が食堂を利用するとき。

真昼がメニューに悩んでいると横から、「あ、これ前に食べたことあるんですけど真昼さんが好きな味付けですよ。わたしは真昼さんが好きなこっちにしますので、後でよければ半分こしましょ!」と、相手の好きな味を理解しているだけでなく、半分こする仲ですよと誰もが分かるようなアピールをしている。

そのほかにも、本部内で二人が一緒にいると基本的に三上は真昼の右腕に抱き着いている。まるで"この人の右腕はわたしです”と主張するかのように。

別に三上はこれらの行動を周知に見せつけようだとかそういう意図はない。

だが、無意識にそう言った行動をしてしまっているのは、彼女のなかにある想いの重い独占欲によるものだ。

なんとも将来が恐ろしい中学二年生である。

その三上の話が小南の耳にも届き、なにかを察知した小南が急遽身支度を整えて真昼の部屋に押しかけてきたのである。

 

「鼻の下は伸びてないが」

 

「伸びてるの!絶対伸びてるの!あたしがそう言ったらそうなの!」

 

「傍若無人かお前は。…はぁ、もういい。ご家庭には俺からも連絡するぞ。それでいいな?」

 

「っ!うん!ありがと!」

 

お泊りの許可が下りた小南の顔が眩しいくらいに笑顔で輝く。

ここまで来てもしかしたら断られてしまうかもしれないと思っていたのかもしれない。

強気なのか弱気なのかわからないなと思う真昼だったが、なんやかんやで小南のこういう所は好ましく思っている。

丁寧の小南の家族に連絡を入れた真昼、無事に許可をもらったことで小南は大はしゃぎする。

何をしようかと見えない尻尾をぶんぶん振っている。

 

「落ち着け。まだ時間はある。したいことを一つずつしていけばいい」

 

「ほんと!?だったらまずは…」

 

 

 

 

 

 

「なぁんで勝てないのよ!?ねえもう一回!もう一回だけ戦うわよ!今度こそ勝つんだから!」

 

「いや、そういってもう50戦してるだろ(・・・・・・・・)。流石に疲れた」

 

小南が一番最初に言ったやりたいこと、それは模擬戦だった。旧ボーダー時代から真昼に惨敗している小南は、隙さえあれば真昼に勝負を挑んでは負けている。そのため、今回もそのリベンジということで挑んだのだが、結果は50戦4勝46敗という燦々たる結果となっている。

一応、真昼相手に一対一で勝つことが出来るだけ凄いのだが、その勝ち方も試作トリガーの試しが主だったために、小南は荒れていたのだ。

 

「一旦風呂入りたい。そのあとで模擬戦以外ならまた付き合う」

 

「あ、ならあたしも入る!いつもみたいに一緒に入るわよ!」

 

「なら好きな入浴剤を入れて良いぞ。貰うことが多いんだがなかなか消費する機会がなかったからな」

 

「ほんと!?どれにしよっかなぁ~!」

 

わくわくが全面に出ている小南。ここで説明すると、小南は真昼がいる時は基本的に一緒にお風呂に入っている。

というのも小南は世間で言う箱入り娘というやつで、彼女自身純粋が服を着て歩いているような性格をしている。

そのため簡単に人の事を信じては騙されてしまったりするのだが、その純粋さゆえに今だ好きな人に対しての羞恥心のラインが定まっていなかった。

ボーダーに真昼たちの次に入ったため、同年代の真昼と陽菜に一番懐いていたのが小南である。何をするにもいつも真昼と陽菜と一緒にしていた。

お風呂もそうだ。ずっと三人で入っていたために、小南はその名残が強くある。

真昼が向こうの世界に行ってしまった分、小南は真昼成分というのが足りていない。

それを補おうと、小南はなんと真昼がこっちの世界に帰ってきた後も、時々玉狛に真昼が帰ってきた時はお風呂を共にしていたのだ。

当然、玉狛の皆は小南の年齢も考えてもうそろそろお風呂を一緒に入るのは卒業した方が良いのではと、小南に提案したのだが、その時の小南は大激怒からのガチ大泣きで真昼以外手につけられない状態になっていた。

それから小南と真昼が風呂に入っている間に玉狛の全員で会議した結果、小南が気付くまではもう放っておいていいのではという結果になった。

迅の視た未来では小南は高校入学と同時にお風呂卒業することが視えたので、もういっかと言った感じである。

 

「アイスそこに置いておくぞ」

 

「ありがと!それじゃお願いね」

 

「はいはい」

 

お風呂から上がった真昼と小南。

それから真昼はドライヤーと櫛を持ってソファに座り、その下で真昼の足の間に座る小南。

小南の前にはカップアイスが置いてあり、テレビをつけてお風呂上りのアイスを堪能する小南と、その小南の髪をドライヤーと櫛で慣れた手つきで乾かしていく。

これが二人の入浴後のいつもの流れである。

最初は髪を乾かさずにいた小南を捕まえて陽菜と一緒に乾かしてあげたのが始まりだった。

その時の気持ちよさが癖になった小南がそれからも真昼にお願いして、真昼も別に苦ではなかったためにそれを受け入れていた。

 

なんともまあ、他の人が見れば誤解されそうな絵面である。

ずっと笑顔でご機嫌な小南に、見ている真昼も思わず頬が緩んだ。

髪を乾かし終えた真昼と小南はその後二人でゲームをしたり雑談をしたりとそれはそれは楽しそうに過ごした。

まるでいままでできなかった時間を取り戻すかのように、二人の間に流れる空気は暖かかった。

 

「…ねえ」

 

「ん?どうした」

 

「その…もう少しくっつきたい」

 

「いつもの甘えん坊か」

 

「うっさい。良いでしょ、もうずっと会えないと思ってたんだから。こうしてまた一緒にいられるのがまだ夢みたいなの。朝起きた時に真昼がいなくなってるんじゃないかって、不安なの」

 

「なるほど。なら夢じゃないって安心できるようにするか」

 

「そうよ、ちゃんと安心させてよね。もうどこにも行かないって、あたしから離れないってわかるようにもっとしっかり抱きしめて」

 

「ああ、わかったよ」

 

真昼は小南を抱きしめ、安心感を与えるために頭を撫でる。

鮮明には思い出せなくても彼女の不安は少しでもなくしたいと思うから。

もうこれ以上不安にさせないように、もうどこにもいかないと伝わるように、真昼は小南を包み込んだ。

 

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