独りにしませんいつまでも 作:残念G級
「緊張してるか?」
「いえ、いつも通りやればいいので!それに…真昼さんと一緒なら誰が相手でも怖くないですよ」
「そうか。俺も、歌歩がいれば誰にも負けない」
「えへへ、そう言ってもらえるだけで、わたしはなんでもできますよ」
今、真昼たちは自分たちの隊室でこれから行うチームランク戦の作戦会議を行っていた。
真昼が高校入学をして数か月が経ち、チームランク戦のシステムも無事に完成した。
それからというもの、ボーダー本部では時期を決めてチームランク戦を開催するようになった。
徐々に入隊する隊員も増え、少しずつだが部隊も増えてきた。まだまだ総数は少ないものの、個人の能力などからA級とB級に分かれるようになり、それはチームでも付けられるようになった。
そして今回、真昼たちが戦う相手は本部でもトップ部隊と言われる2チームである。
その名も東隊と太刀川隊。どちらもチームランク戦前から一ノ瀬隊と戦ってきた部隊である。
今回の戦いは初代A級1位部隊が決まるという世紀の一戦であった。
「…やることはいつもと変わらない」
「真昼さんの感知感覚を共有してわたしが全員をマーク。そのあとはマップの立体図を送る、ですね!」
「完璧だ。いつも言ってるが感覚共有は1分だけだぞ。マークするのに焦らなくいい。ミスったりすれば俺が残りを教えればいいからな」
「はい!でもここまで来たらノーミスで1位になりたいので頑張ります!」
「ああ、そうだな。無敗は前提として、せっかくだからベイルアウトも0で納めたいな」
「はい!最初のA級1位で全試合無敗のベイルアウト回数0ってなんかカッコ良いですもんね!」
お互いに顔を合わせては微笑み合う真昼と三上。
二人の話していた通り、これまで行われたすべての試合で一ノ瀬隊は一度の敗北どころかベイルアウトもしていない。
これは決して真昼一人では成し遂げられなかった偉業であった。
というのも、真昼が全く負けないのは、彼の身体能力や戦闘センスはもちろんだが、それ以上に彼の持つ強力なサイドエフェクトにある。
超身体能力強化と超トリオン操作・感知というどちらか一つ持っているだけでもずるいようなその力を真昼は一緒に持っている。それは最愛の妹からの贈り物であった。
余りにも規格外の能力なため、もし他の人に同じサイドエフェクトが発覚しても良いようにと、簡易に"超"と名付けられた二つのそれは、ただ恩恵を齎すだけではなく、しっかりと身体への負荷は発生する。
その中でもトリオンの感知は脳への負担が大きい。それも真昼の戦闘スタイルやその負担に対して気づくことが難しいというのもあって、常時発動してしまっている。
その結果、知らぬうちに脳の限界を迎えてダメージを受けることが多かった。
だが、それも今の真昼には関係がない。
一ノ瀬隊を一身に支える三上の真昼に対する強い想いによって、彼女のOP能力はメキメキと成長した。その甲斐あって三上の献身的なサポートは、真昼の負担を大きく軽減する結果になった。
そのサポートとは、真昼の持つサイドエフェクト効果を三上と共有することで、真昼が誰かと接敵しても目の前の戦闘に集中し、その他の敵の位置などは三上が過去の戦闘や戦術などから逆算し予測すること。
そうすることによって、真昼は少なくとも常時発動することは無くなり、脳を休ませる時間が確保できるようになった。
感知能力の常時発動は近界で戦闘奴隷にされ他者を信用も信頼もできなくなった名残なのだが、この呪縛とも言えるそれを三上は見事に解放させた。
部隊が結成してしばらくは真昼の高すぎる実力と自分の不甲斐なさに涙を流していた三上だったが、好きな人を支えたいという純粋な気持ちが彼女をここまで成長させた。
恐らく、現ボーダーに所属するOPの中で、完璧に真昼をサポートできるのは三上歌歩以外いないだろう。
それほどまでに、一ノ瀬隊とはお互いを信頼し合っていた。
『転送開始まで残り180秒』
ランク戦がまもなく始まるアナウンスが鳴る。
「真昼さん、
三上はそう言うと両手を広げて身長差から自然となる上目遣いで真昼を見上げた。
その瞳は揺れており、頬も心なしか赤く染まっていた。
初めてチームランク戦をした時から三上はこうして真昼にあることを強請る。
それは決まって緊張をしていて、それを落ち着かせようとしている時だった。
その証拠に広げた手も発した声も震えていた。
先ほどのはやはり強がりだったか、とクスリと笑った真昼はその場に屈むと三上はそっと目を閉じた。真昼は彼女の髪を一撫でして自身の額を三上の額にくっつけた。
静寂が二人を包む。
しばらくそうして、額を離すと三上は真昼を抱きしめた。
「…ありがとうございます。落ち着きました」
「それならよかった」
「さっき…さりげなく笑いましたよね」
「さあ、どうだったかな」
「…いじわる」
「あはは、悪かった」
「…いいですよ。こうして甘えさせてくれれば」
「安いな」
「そんなことないです」
「こんなのでよければいつでもいい」
「やった!言質取りましたからね」
「ああ、いいよ」
「…勝ちましょうね」
「ああ、勝とう」
「真昼さんと
「…あぁ、ありがとう。そうだな。3人で勝とう」
『転送開始まで60秒』
三上はギュッと真昼を抱きしめている手に力を籠める。まるで自分の想いも真昼の中に注ぐかのように。
「…いってらっしゃい」
「…ん、行ってきます」
二人はゆっくりと離れるとお互いの顔を見て再度微笑んだ。
『転送開始』
A級1位を賭けた戦いが今始まった。
マップは市街地Aで天候は晴れというシンプルな場所。
真昼の転送位置は運よく高層ビルの屋上になったので、素早くサイドエフェクトを発動し三上との共有を行う。
現在のチームランクは1位 一ノ瀬隊 2位 東隊 3位 太刀川隊となっている。点差は一ノ瀬隊と東隊の間で3差、東隊と太刀川隊で1点差となっている。
『真昼さん、マーク終わりました。現在うち以外は全員バッグワームを起動。東隊は東さんが単独行動を開始、近くに烏丸君と出水君がいます。恐らく合流せずに東さんを探すと思います。その近くでは加古さんと三輪君が近いのでこちらは合流するかと。また、西の方で二宮さんと太刀川さんの転送位置が近いので、国近先輩なら同じチームの転送位置からおおよその位置を割り出して二宮さんにぶつける可能性が高いです』
「了解。ありがとう。太刀川と二宮なら流れてこっちに来るだろうから、このまま東達の人の多いところに向かう。点数に余裕があるしな。話しながら行くか」
『ふふ、了解です。珍しいですね、戦闘中に話してくれるの』
「そうか。迷惑ならやめるが」
『もうっ!なんでそうなるんですか。嬉しいんです喜んでるんです!』
「ならよかった」
『はい!』
真昼と三上は場所をゆっくり移動しながら、戦闘中なのにも関わらず楽しそうに話している。
決して警戒していないわけではないが、それだけ真昼自身に余裕が出来ている証拠だった。
「それでこの後なに食べに行くか」
ふと思い出して三上に聞く真昼。二人はこのランク戦を終えた後に自分たちが勝つことを願って祝勝会を予定していた。
『わたしはこのままいつもみたいに隊室で食べるのでいいですよ?』
「いつもそれだろ。たまには豪勢に行きたいとかないのか」
『わたしにとってはそのいつものが、お外で食べるどんなご飯よりも豪勢なのでいいんですよ!それに、今日は帰りが遅くなるって家族にも許可をもらっているので!』
「…なら今日は三上の要望通りうちで食べるか。終わったら一旦買い出しだな」
『わかりました!食べたいもの考えておきます!』
「ああ、それでまた別日に焼肉とかしゃぶしゃぶとか外で何か食べに行こう」
『えっ!いいんですか!?』
「祝い事だからな。普段やらない分いいだろ、行きたいところの候補一緒に考えるか」
『やった!たくさん考えましょうね!凄い嬉しいです!!』
「それならよかった。これで余計負けられなくなったな」
『はい!絶対に勝ちます!』
元気に返事をする三上。その眼はやる気に満ち溢れており、メラメラと燃えていた。食べ物もそうだが、何より真昼とのお祝いがかかっているのだ。今の彼女はもしかしたら戦闘員として戦場に出ても気迫でモールモッドを複数体捌けるだろう。
三上が喜んでくれてよかったと内心で喜ぶ真昼。
すると戦場に変化が生まれた。
「太刀川と二宮が接敵したか。んで、誰か落とされたな」
『おそらく烏丸君が三輪君を、東さんがその烏丸君を倒したみたいですね。東さん、加古さん、三輪君の相手に烏丸君と出水君なら、東さんは三輪君の援護に偏ると思います』
「だろうな。ならこのまま東を撃つか。俺の位置はバレてるだろうが関係ない。移動している東さんの周囲情報もらえるか?」
『一応東さんの逃走ルートの予測も送っておきます!』
「助かる」
真昼はすぐさま両手でバイパーを展開し、すぐさまそれを細かく分割する。
その数は両手合わせておよそ2000発。
それを天地で1000発ずつ分けてそれぞれ放つ。天に放ったそれは星空のように広く展開され、ピンポイントで東の下へ降り注いだ。
東は流石に自分が一発撃てば真昼にやられることが分かっていたのか、移動しつつ広げていたダミービーコンを起動。自分ではなく加古のトリオン反応を増やす。加古はそれに合わせて周囲の建物を破壊し崩落で隙をついてバッグワームを起動し、身を隠した。
頭上に降り注ぐバイパーをシールドで防御しながら住宅街を走りぬく。曲がり角を通って広い家を横切ろうとしたその時、突如東の足元の地面に亀裂が入り、下から這い上がるように東の胸と額をいくつものバイパーが貫いた。
(地面からバイパー!?…俺の逃走ルートが読まれてたか。まさか弾数を増やして死角になってる外堀の下を掘ってくるとはな)
東は瞬時に自分が倒された仕組みを理解しベイルアウトした。
『命中。完璧です!』
「歌歩がくれた逃走ルートが助かった。ありがとう」
『えへへ、良かったです!』
真昼と三上のコンビネーション技。それはまず真昼が空に放ったバイパーで東の意識を上にさせるのとシールドを広げさせる。そして三上がくれた逃走ルートに見事ハマった東は遮蔽物が多い住宅街へ逃げる。なぜ住宅街なのかというと、バイパー持ちで細かく弾道を引ける真昼と出水にはあまり遮蔽物の存在はあまり関係がない。
だが、まだ残っている加古と二宮に関してはある程度遮蔽物を壊しておけば装備しているハウンドが上手く効いてくるため、死ぬなら味方の射線を通してからという狙いがあった。
だがその健闘も虚しく、真昼は地面を這わしたバイパーで、東の死角になっている曲り角にある家の外堀を利用した。
外堀の角近くの地面を小さなバイパーで削って掘り進んでいき、地面を貫通させて残った小さな弾が中を通り東の急所を撃ち抜いたのだった。
「これでどこも残り2人か」
『太刀川さんと二宮さんがこっちに向かってきているのでこのまま乱戦が狙いですかね』
「出水も一定の距離を保ってこっちに来てるか。出水と加古をぶつけたかったがこうも離れては難しいか」
『加古さんはバッグワーム起動しているので乱戦中の奇襲狙いが高いかと』
「だろうな。なら俺は出水を相手するか」
真昼は次の相手を決めるとすぐさまバイパーを展開し威力重視のため弾を500に分割。空に打ち上げては脚力強化にトリオンを割いていく。
「今度は俺っすか!?」
出水は真昼に狙われていることに気づくとメテオラとハウンドを使用。それぞれ216発ずつに分割し空から迫るバイパーにメテオラを線状にぶつけて誘発し真昼の攻撃を減らす。
そしてハウンドの半分を使って抜けた残りのバイパーを処理し、余ったハウンドを建物を避けるように大きく山なりの起動を描いて真昼へと放った。
「どんなに脚速くしても挟まれたら厳しいでしょ!」
出水は使いきったメテオラを再展開し、一直線に向かってきている真昼に向かって、弾幕を広げるように射出した。弾を緩急つけて前後で射出したことで遮蔽物を破壊しながら弾を残す。
上からはハウンド、前からはメテオラが真昼を襲う。
「…エスクード」
真昼は走っている最中に片足を強く踏み込み10m前方にエスクードを3枚一列に生やす。
エスクードでメテオラを防ぎ、上空から来るハウンドには瞬時にバイパーで一掃した。
「やっぱなんなんすかその攻撃速度は!?」
出水は真昼の弾トリガーの攻撃速度に驚く。
弾トリガーとは攻撃するまでにいくつかの段取りを行う。①弾を出して、②割って、③狙って、④撃つ、という4つの工程を必ず行う以上、他のトリガーよりも扱いが難しく隙ができやすいのだが、出水から視た真昼の攻撃は①弾を出して②撃つ、という風に見えていた。
そのため、一射目から二射目への流れがとても速いため、一度防御をしてしまったら抜けることは出来ないだろう。それぐらい真昼の攻撃速度は異質なのだった。
バイパーの多重速射を受ける出水。だが、同じ弾トリガー使いとして簡単に負けるわけにはいかない出水は、移動しながらシールドとバイパーを使って急所を避けるように防御する。
「ぐっ!腕は飛ばされたけどこれで俺の役目は終わりっすよ!選手交代だ!」
出水はバイパーの一発で家の外壁に穴をあけるとそのまま中に避難する。
それと同時に別の場所から家がド派手に爆発した音が聞こえると、その中から二宮と太刀川が飛び出してきた。
その光景に既視感をお覚える真昼はすぐさま標的を切り替えた。
「…2点追加」
「ここで全員斬ればうちが1位だろ!」
「黙れ、俺が墜とす」
A級1位を賭けた最後の戦いは、乱戦へと縺れこんだ。
今回のトリガー構成
メイン:孤月 旋空 ? バイパー
サ ブ:? エスクード ? バイパー
みかみか、君のヒロイン度は高すぎる!
そして可愛い!