独りにしませんいつまでも 作:残念G級
すまない隠岐、私の推しである君と真昼君の接点を作りたかったんだ!と言い訳しております。
チームランク戦が終わった翌日の土曜日、真昼は朝早くから大きな荷物を持って本部を出ていた。
朝がかなり弱いため眠り眼を摩りながらもなんとか歩く真昼。
しばらく歩くと目的地である立派な古民家のような建物に着いた。
インターホンを押し、反応があるまでジッと待つ真昼。するとドタバタと中から忙しい足音が近づいてきた。
「す、すいません真昼先輩!お待たせしました!」
「いや、息を整えたかったからちょうどよかった。おはよう梨香」
「お、おはようございます真昼先輩!あ、あのどうぞ入って下さい」
「悪いな、お邪魔します」
真昼を出迎えたのは、おっとりした雰囲気を纏うロングヘアーで下がり眉が特徴的な少女─六田梨香。
真昼が訪れたのはボーダー園という養護施設のような場所である。
ネイバーの侵攻で家族を失った子どもをボーダー側が引き取って育てている場所だ。
ボーダーでは、時折ボーダー園に慰問へ行く仕事があり、主に防衛任務の重要性を考えさせるための研修のようなものがある。
ただ、真昼がこのボーダー園に訪れたのはそういった研修などではなく、ある日複数の男性に話しかけられ困り果てていた六田を見かけ助けたことで、お礼にと彼女が住むこのボーダー園に来たのが始まりである。
最初は園の子たちから壁を作られていた真昼も、休みの日になるべく通うようになり今では園のみんなと遊んだりできるようになった。
特に真昼はその学力の高さから園の子たちの勉強を見てあげることが多くなり、こうして園に来ては持参した参考書を使い、みんなで真昼塾を受けるのだった。
六田もその一人であり、彼女は現在中学3年生で、高校入学と同時にボーダー入隊を考えている。
このボーダー園で暮らす子は希望すれば優先的にボーダーで仕事がもらえるため、彼女はそれを利用して少しでもこの園にお金を入れようとしていた。
それを六田本人から相談された真昼は、普通の勉強の他にOPとしての仕事内容を教え彼女用の特別課題を出したりもしている。
現に六田が今持っているノートパソコンは真昼が課題用にと渡した物だ。
真昼は六田に案内され中に入ると、施設の子たちが真昼の姿を見るやぱあぁっと顔を輝かせては飛びついてきた。
男の子たちの勢いあるパワフルなタックルをやすやすと受け止めつつ、男の子たちと対照的に、恥ずかしさからか少し控えめにジッと真昼を見つめる女の子たち。それを見るや真昼は声に出さずに「あとでな」っと口パクで伝え微笑むと、女の子たちも笑顔で首を縦に振っていた。
しばらく男の子たちと戯れた後、順番が回ってきた女の子たちと遊ぶ真昼。おままごとやお互いの髪を可愛く結んであげたりと、幅広く遊ぶ。
これが園に来た真昼の最初のルーティンだ。園の子たちも真昼がこうして全員としっかり遊んでくれることを理解しているため、喧嘩せず順番を守ることが出来ている。
女の子たちと遊んだことで来た時よりも髪の毛がリボンやらなんやらで可愛く鮮やかになった真昼は、六田が淹れてくれたお茶を飲みながら、六田がやった問題集を採点しながら一休みしていた。
「いつもありがとうございます。みんな真昼先輩が来てくれると大喜びなんですよ」
「それならよかった。ただ別に礼を言われるほどじゃない。俺も皆とこうして勉強したり遊んだりするのは楽しいからな」
「よ、良かったです!やっぱり慰問ってなるとどこか皆も身構えちゃうというか、気を遣う子が多いので」
「多感な年ごろだからこそだろうな。ボーダーの意図も分かるが、こればっかりは仕方ない…ほら、採点終ったぞ。前できなかったところが安定して解けてる。これならよほどのことがない限りどこの高校でも受かるだろう、頑張ったな」
採点したプリントを六田に渡す。問題の難易度的にそこそこ難しい問も含まれたそれは9割近く赤丸が付いていた。
労いの言葉を送りながらポンポンと優しく六田の頭を撫でる真昼に嬉しさと恥ずかしさとが混ざり顔を染めながら頬を綻ばせる六田。
「あ、ありがとう…ございますぅ」
徐々に声が小さくなる彼女の様子に笑う真昼。彼女がどれほど努力しているかを知っている真昼は、これからも出来る限り彼女をサポートしようと改めて誓った。
六田はこのボーダー園の子たちの仲で最年長である。そのため日頃から彼女は自分のことだけでなく子ども達の面倒を見たり園の手伝いを積極的に行っている。
それだけでも忙しいはずなのに、将来の事も考えボーダーで仕事をしようと今こうして真昼にお願いして技術を上げようと励んでいる彼女を真昼は純粋に尊敬していた。
「そういえばあまり聞かなかったが、梨香はボーダーに入って何かしたいことはあるのか?一応ボーダーは戦闘員とOP、エンジニアと大まかに区別されてるが…」
「えっと、そうですね…戦闘員はちょっと怖いですし、わたし運動は全然ダメなので難しいかと…。エンジニアもシステムとか考えたりするのが複雑そうなので、そうなるとOPとか事務関係のがあったらそれがいいなって…。わたし、同時に何かやるとかが出来ないので、一つの事に黙々出来たらそれが一番いいです…」
難しですかね…と話ている途中から不安そうな表情になる六田に、真昼はしばらく何か考えていると、なにか思いついたのかまっすぐ六田の眼を見つめた。
「梨香、正直に言うとお前の自己分析はかなり正確だ。俺も梨香はOPや事務などの個人で完結するものが適任だと思っている。だが、ボーダーは組織で動く以上、絶対に誰かと連携をする必要がある。これに関してはどうしようもない」
「そ…うですよね。そうだろうとは思っていました」
「そこでだ、もし梨香が嫌でなければ今の段階から少しずつ、ボーダー本部に足を運んでみないか」
「…え?それってどういう」
「ボーダーがどのように他人と連携をするのか、実際の仕事はどういうものなのか、それを今の段階から視て触れて身体と精神に慣れさせてみないかということだ。知らない状態からやるのと事前知識がある状態でやるのとでは心身への負担は少ないだろう。実際に自分で視て、今の自分に足りない要素を考え自発的に取り組む方が将来的にも梨香の力になると判断した」
「自分の眼で視て、慣れさせる…」
「そうだ。人は事前知識があるだけで掛かる負担や不安はある程度解消される。完全に並列処理ができるようになるとまではいかないが、気にする要素は減って、普段の課題にも明確な目標設定ができるようになるだろう」
「確かにそれが出来るならぜひそうしたいですけど、良いんですか?入りたいとは思っていますけど、まだ入隊してもいない人に、その、ボーダーの裏側みたいなのを見せてしまって…」
「一応確認を取らなければいけないところには取る、それに最初は俺の隊で面倒を見ようと思っているからな」
「真昼先輩の隊…ですか」
「ああ。俺とOPの二人だけの隊。そこで職場体験みたいにOPについて知っていけば視えてくるものもあるはず。ただ、一度やり始めたらボーダーに入隊してもらわないといけなくなるだろうが、それでも良ければな」
そう言って真昼は六田に出来る最大のサポートを提案する。入隊しないといけないというのは、ボーダーの内部情報を知りながらも入隊しなければ、情報漏洩を防ぐため記憶封印処置をされる可能性があるからだ。真昼から見ても六田の覚悟はわかっていたが、それでも選択肢を与えないわけにはいかない。
人に言われてやるのと、自分で決断してやるのとではその先の行動力が全く違うからだ。
静かに俯き考える六田。その顔は真剣そのもので真昼はその時が来るのを静かに見守っていた。
それからすぐに、六田は顔を上げるとまっすぐ真昼の眼を見つめる。
その眼はどこか熱が宿っていた。
「…もしできるなら、やりたいです。今から成長できるチャンスがあるなら、わたしは頑張りたいです!」
ギュッと六田の膝の上で握る手に力が入るのを見た真昼。しっかり考えたうえで出した答えに、真昼は眼を一度目を瞑り受けとめた。
「…わかった。上に掛け合おう。連絡は追ってするからそれまではいつも通りだ。特別身構えなくては良いが、いつでもいけるようにしておけ」
「は、はい!本当にありがとうございます!」
「いつも頑張ってるのを見ていたから提案しただけだ。チャンスを持ってきたのは普段の梨香だからお礼はいいよ。無事決まったら打ち合わせと激励ももかねてどこか出かけようか。行きたいところ考えておけ」
「っ…うん!嬉しいです!ありがとうございます真昼先輩!」
はいよ、と小さく溢し優しく六田の頭を撫でる真昼。それから真昼は園の子たちを集めて勉強会をした後、晩御飯を六田と作って園で食べて帰ったのであった。
後日、上層部に話を通した真昼。無事に許可が下り、三上にも話を通した真昼は別日に真昼、三上、六田の三人で顔合わせを行った。どうやら六田は三上と同じ中学校で顔見知りだったようで、心底安心した様子だった。
その日一日、二人が楽しそうに話すのを終止温かく見守っていた真昼なのであった。
どこかで遠征について話たいなと思っているんですが、どこかで今まで遠征を経験していた人や時期が出た話しってあったかなとひたすら単行本を読み探す作者です。
もしここにあるよって言うのを知ってる方いましたらぜひ教えていただきたいです!