独りにしませんいつまでも   作:残念G級

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小南桐絵② 玉狛支部と三上

これはボーダー園で夕食を食べた後の話である。

真昼はすぐさまメールで今回六田と話した内容を忍田に伝えた。

後日会議の場を設けてほしいと。

 

そうして本部へ帰ろうと夜道を歩いていると、真昼のスマホが鳴り響いた。

相手の名前を確認すると【小南桐絵】と表示されており、なにかあったのかと思いながらも通話を開始した。

 

「…もしm「ちょっと今どこにいんのよ!?」…耳が痛い」

 

応答するや鼓膜が破れるのではないかという程の大声を浴びせる小南。

真昼はキーンと鳴り響く耳を労りスマホを少し離して会話を続ける。

 

「…今はボーダー園を出て本部へ帰っている途中だ。どうした?」

 

「あ、そうだったのね。って、どうしたじゃないでしょ!なんでうちに来ないどころか連絡すらよこさないのよ!?A級1位のお祝いするの待ってるんですけど!?」

 

「連絡って、ランク戦終ったの昨日だぞ。昨日の夜は隊で祝って今日は園に行く予定があったからな」

 

「だから、あったからなじゃないでしょ!?昨日勝ったならこっちにまず一報入れるの常識でしょうが!」

 

「玉狛で観てくれたんじゃないのか?」

 

「観てたわよ!?珍しく皆集合して!その後ちょっとでも連絡来るかなって待ってたのに、誰にも言わないで日跨いじゃって!迅なんか連絡来ないことに落ち込んでガチ泣きしてたのよ!一番確率の低い未来が来たって!」

 

「…ごめん」

 

「いい!?今後は必ずこっちにも連絡を入れなさい!迅じゃなくてもいいから!なんなら一目散にあたしに連絡しなさい!良い!?」

 

「…わかった。ごめん」

 

「ふん!分かればいいのよ分かれば。それで、いつ帰ってくるの?」

 

「明日かえr「い・つ!帰ってくるの?」…一旦本部で風呂はいt「あ"?」…今からそっちに帰るよ」

 

「そ、なら待ってるわ。お風呂はこっちに来たら一緒に入りましょ。今日はレイジさんと迅が夜防衛任務に行っててあたし以外はみんな本部にいるから。今日はずっと付き合いなさいよ」

 

「ああ、わかった。急いでいく」

 

「気を付けて帰って来なさいよ」

 

怒られたりしながらも何とか通話を終えた真昼。最後はどこか嬉しそうな声音になっていた小南に、機嫌が直ったならよかったと安心した真昼は、帰路の道中でコンビニに寄り、風呂上りに食べるアイスを買っていく。小南にはフルーツのアイスを、他の皆には、選べるようにいろんな種類のアイスを。

会計を終え、袋いっぱいのアイスを持って真昼は小南の待つ玉狛支部へ向かったのであった。

 

常に持ち歩いている玉狛支部の鍵を出して中に入ると、来るのが分かっていたのか、はたまたずっと待っていたのか分からないが玄関に仁王立ちで待ち伏せていた小南がいた。

 

「お・そ・い!」

 

「悪い、コンビニに寄っていた。…と言っても話終ってまだ10分も経ってない(・・・・・・・・・)ぞ」

 

10分も!(・・・・・)急ぐって言ったならすぐに帰ってきて!」

 

「気を付けてって言ってくれたのは桐絵だろ」

 

急いで気を付けて(・・・・・・・・)、帰ってきてってことなの!ほら、早く中に入りなさいよ!」

 

「…わかった」

 

なんでこんなカリカリしているんだと疑問に思いながらも靴を脱いで中に入ろうとする真昼。先ほどの機嫌が直ったと思ったのは勘違いだったのだろうか、と少し落ち込んでいると、小南が手を広げて玄関から中に入れないよう道を塞いでいた。

今度はなんだ、とジッと小南を観察する真昼。その表情は珍しくもどこか警戒しているようだった。

 

「ど、どうした」

 

「なにか言うことがあるでしょ」

 

小南の発言にここに来てからの事を思い出す真昼。すると家の玄関を開けては一番最初に言わなくてはいけない言葉を言ってないことに気づき、小南の眼を見てゆっくり口を開いた。

 

「…ただいま、小南」

 

「はい、おかえり!真昼!」

 

満開の華が咲くように笑顔で応えた小南はそのまま真昼に抱き着いた。

それをしっかり受け止めると、小南は真昼の手を引っ張って支部の中へと入っていった。

 

真昼は溶けないようにと買ってきたアイスを冷凍庫にしまい、何をするかと小南に聞くと、風呂の前にまずは戦うことを選んだ。

時計を確認すると時刻は20時半を回っており、お互いに明日は休みだし良いかと夜更かしコースを覚悟した真昼は小南の挑戦を承諾。

二人は早速シミュレーションルームへと向かった。

 

「もう前みたいに弱くないから。今回は勝つ!」

 

「別に桐絵が弱かったことないだろ」

 

「…ただ泣き叫ぶことしかできないやつが弱い以外に何があるのよ」

 

「…そうか」

 

真剣な表情をお互いが互いに向け対峙する。

小南が持つは彼女専用のトリガー双月、対する真昼の手には死の象徴たる大鎌のオルサイズが握られている。

一瞬の静寂を挟み、グッと足を踏みこんで小南は真昼へと突っ込んだ。

今、ボーダーの古株2人が刃を交えた。

 

 

 

「うぅ…ぐすっ…ぐやじいぃ」

 

「もう泣くな、俺も久しぶりに片腕を斬られた。強くなってるよ桐絵は」

 

「ずっ、捨て身で行って腕一本じゃ割に合わないの!結局一勝もできず15敗よ!?強くなってない!」

 

「ほらもうこれ以上目を擦ると腫れるぞ。せっかくの可愛い顔に傷がつく」

 

「ならもっと慰めてよ。もっとちゃんと抱きしめて」

 

「もう桐絵が抱き着いてると思うが」

 

現在二人は仲良くお風呂に入っている。先ほどの模擬戦で完敗した小南はあまりの悔しさに涙を流し、浴槽で肩を並べていたのが今や真昼の上に跨ってはまるでコアラのように抱き着きくっついている。

それについてツッコむ真昼の言葉に、小南はそれじゃあと体勢を変え今度はピトッっと真昼の胸にその小さい背中が合わさる。

 

「なら後ろから包んでよ…」

 

「ふふ、はいはい」

 

くすりと軽く笑った真昼は小南の要望通り、後ろから優しく彼女を包み込んだ。

冷えた心を根元からゆっくり温めるように。

それを小南は瞳を閉じて大切に感じていた。いつでもその温もりを思い出せるように、くじけそうな時でもこれを糧に前を向けるように。

それはしばらく続き、ややのぼせ気味の二人は髪を乾かしお風呂上がりのアイスを堪能していた。

 

「やっぱりフルーツアイスは外れがないわね!流石真昼!あたしの好みがわかってるわ」

 

「基本桐絵はなんでも美味しそうに食べるが、フルーツやお菓子を食べる時は特に幸せそうな顔をするからな。わかりやすいことこの上ないし、見ていてこっちも嬉しいから自然と選んじゃうのかもな」

 

「そ、そんなにわかりやすいかしら…」

 

真昼の発言に恥ずかしくなり思わず顔を赤らめる小南。二人はそれからも真昼のストレートな物言いに毎度恥ずかしがる小南という図が続いた。

それからも二人でゲームをしたり軽く勉強をしたりしながらあっという間に時間が過ぎていき時刻は日を跨いで0:20。小南は限界が来たのか船を漕いでいるのに気づいた真昼は、もうそろそろ寝ることを勧めた。

 

「なあ…」

 

「な、なに?」

 

「俺のベッド、甘い匂いというか、うっすら小南の匂いがするんだが、ここで寝てたのか?」

 

「そ、そんなわけないでしょ!?あたしはちゃんと自分の部屋で寝てたわよ!というか自分の家で基本寝てたわよ

!」

 

「そうか。迅に、最近桐絵が玉狛に泊まることが多いって言ってたからてっきりそうなのかと」

 

「なっ!?迅の奴、次会ったら一発ぶん殴るわ!」

 

もはやデフォルトなのではないかという程見たことある赤面をしながら、怒りの拳を握る小南。その姿を見た真昼は心の中で迅に合掌を送る。

それよりも寝るように促したらごく自然に真昼の部屋に来た小南にツッコむべきなのだが、特段気にしない真昼ではその役目は負えなかった。

 

「別に俺は怒ってないぞ」

 

「これは真昼が怒るとかは関係ないの!あたしの尊厳の話なの!」

 

「難しいんだな」

 

「そうよ。これは凄い難しい話なの」

 

ふんすっと気合を入れている小南に笑いつつ彼女の綺麗な髪を撫でる真昼。

それを気持ちよさそうに受けながら、小南は真昼を抱き枕のように抱きしめる。

そのまま二人は眠りについたあとでも、ずっと身を寄せ合っていたのであった。

 

そして翌日、防衛任務や本部に行っていた玉狛支部の全員が帰ってきては改めて真昼のA級1位を祝してパーティーの準備をしていた。

料理はレイジと真昼と、他はみんなで飾りつけという役割分担をして準備を始める。迅はせっかくならと三上に連絡を入れて夕方にこっちに来てもらうようにした。

途中、昨晩の防衛任務組に仮眠を入れさせながら進んだ準備は無事に進み、華やかな装飾に豪華な食事が完成していた。

時間ちょうどに、三上を迎えに行ってくれた林藤たちも帰宅し、全員が揃った。

 

「それじゃ、一ノ瀬隊初代A級1位おめでと~う!」

 

「「「おめでとう!」」」

 

「ありがとう、みんな」

 

「あ、ありがとうございます!わざわざわたしまでお招きしていただいて!」

 

迅の挨拶とともにみんなから祝杯の言葉を貰う真昼と三上。真昼は笑顔で皆に感謝の言葉を送り、三上も照れくさそうにしつつも話していた。

 

「真昼や忍田さんから聞いてるぞ三上。OPの上達がめちゃくちゃ早いらしいじゃねえか!」

 

「い、いえ!わたしなんて全然です!いつも真昼さんに助けてもらってばかりで大したことは何も」

 

「そんな謙遜すんな!こいつのOPなんて誰でもできるわけじゃない。真昼がサポートしたらそうでもないが、三上のように完全に真昼をサポートするってんならそれが出来るのはむしろごく少数だろうよ。こいつがあそこまで戦闘に集中できるのは確実に三上の実力だから、自身持って大丈夫だぞ」

 

「あ、ありがとうございます、林藤支部長!」

 

普段玉狛支部に来ない三上は最初こそ緊張していたが、林藤や同級生の小南やそいうえお姉さんのゆり、そして性格の良い筋肉のレイジ、実力派エリートの迅など、優しい性格の集まりである玉狛全員がコミュニケーションを取ってくれるおかげですぐにみんなと打ち解けた三上は、この会を楽しんでいた。

 

「それにしても、なんで真昼は今回オルサイズを使わなかったのよ?別にうちの奴とは違うんだからランク戦で使っても別にいいはずでしょ?」

 

すると小南がモニターで真昼たちのランク戦を映してはその時の疑問を投げかけた。

その小南の疑問に、他の玉狛勢はもちろん、OPの三上ですらそういえば詳しい理由聞いてなかったなと思いだし、耳を傾ける。

 

「別に大した理由はない。ただ、ランク戦の数日前に柚宇とアニメを観てな。その中で面白いものがあったから実践で試したかっただけだ。どちらにしろ負けるつもりはなかったし、トリガー構成を読めなくする狙いもあったからな」

 

真昼の答えになるほどっと納得する一同。三上も柚宇とアニメを観たことは知っていたので、まあ特別な理由はなかったかと納得したが、その中で一人、真昼の答えにわなわなと震える者がいた。

 

「柚宇って、太刀川のとこの…国近ちゃん?」

 

「そうだ、太刀川隊OPの国近柚宇だ。…なぜみんなそこでひっかかる?」

 

小南の反応に既視感を覚える真昼は疑問を浮かべながらも答える。

想像していた人物だったのか、小南は震える手を自身の胸の前まで持ってくるとなにやらぶつぶつと何かつぶやいていた。

 

う、うそでしょ…?だって国近ちゃんってあのゆるふわの雰囲気に可愛い顔で…ちょっと抜けてるけどそういうの男の子って好きっていうし…ていうか何よりあの胸が…一個上だとは思えないあのダイナマイトはいくら真昼でも流石に…

 

自分の世界に入りかける小南を見て三上は苦笑を浮かべる。小南の気持ちがわかるからこそだろう。すると、まだかろうじて意識を保っていた小南が真昼に聞いてはいけないことを聞いた。

 

「ま、まさかあんた、国近ちゃんと泊まったわけじゃないわよね?」

 

小南は国近とあまり接点はないがそれでも話たことは何回かあるし、彼女自身の事も周りから聞いたことがある。

スカウト組でゲーム好き。太刀川隊結成後は隊室で徹夜ゲームしてそのまま泊まる日もあるという。

そして真昼も本部に隊室兼私室があるため、本部で寝泊まりすることも多い。何ならここ最近はずっと本部にいた。

もしその時に本部で泊まることに抵抗のない国近が真昼とアニメ鑑賞をしていたなら、もしかしたらの可能性があると小南は気づいたのだ。こう見えて小南は頭が良い。少なくとも真昼を除いた玉狛メンバーの中では1番である。

 

「ん?泊まりたいって言うから泊まったぞ(・・・・・)。にしても歌歩もそうだがみんなそこが気になるんだな。泊まりたいなら家族から許可があれば俺はいつでも泊まって良いぞ」

 

「なっ…?!」

 

真昼の衝撃発言にまるで石造かのように固まる小南。その二人のやり取りに他の玉狛メンバーは頭を抑えたり笑いを我慢したりと様々な反応だ。

林藤は、もう少しそういった部分を教えた方が良かったか、と後悔していた。

だがそれは小南も同様か、と振り返る。

林藤は気づいていたのだ。小南たちがまたお風呂を一緒に入っているのを。

小南は現在中学3年、真昼は高校1年だ。誘っているのが小南なので、なかなか言いづらいが、それでももうそろそろ小南は一旦真昼離れをしなくてはいけないだろう。だが、言い方を間違えれば、確実に小南は暴れるのでどうやって伝えようかというのをいつも林藤は考えていた。

そして今回の真昼と国近の件も、小南と比べればまだマシなのではとすら思ってしまった。

まあ口に出したらめんどくさいのは眼に見えているため、黙る選択を取った林藤。

すると玉狛支部にて全く読めないお転婆小僧はなんの悪意もなく爆弾を投下する。

 

「なあなあまひる。ゆうちゃんともおふろはいったのか(・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

陽太郎は至極当然かのように質問した。

真昼もその質問に「別に入ってないぞ?」と平然と答える。だが今度はその陽太郎言葉に反応する者が一人。

 

「…ねえ、陽太郎君」

 

「ん?どうしたかほちゃん」

 

「今の話、詳しく聞いても良い?」

 

「うん?いつもこなみはまひるとおふろはいってるから、ゆうちゃんともはいってるのかなって…」

 

「…そうなんだ!教えてくれてありがと!…」

 

笑顔で陽太郎にお礼を言った三上は、視線を陽太郎から外すとスッと纏う雰囲気が変わった。

その代わりように林藤を初め全員が冷や汗を流す。

あのゆりですら、苦笑気味に「あらあら…」とこの後の展開を察したのか困っっていた。

 

「ねえ、真昼さん」

 

「ん?どうした歌歩」

 

「……いえ、なんでもないです」

 

まるで吹雪でも吹いているのではないかという程冷たい声が真昼を呼んだ。

確実に怒っていると誰もが分かる三上の声を聞いても真昼はいつも通りな返事に、周囲の緊張感は一気に増した。

真昼の反応を見て、すぐに三上はこのお風呂案件が真昼からではなく小南からの提案だと察した。

そのため、このまま真昼に問いただしても特に何も変わらないとわかりターゲットを小南に変更した。

 

「…ねえ、桐絵ちゃん」

 

ターゲットが変わったことに気づいたのだろう。三上に呼ばれて正気を取り戻した小南は、その彼女の雰囲気を肌に感じてはブワッっと全身の細胞が逆立つ感覚に襲われる。

 

「な、何かしら、歌歩ちゃん?」

 

「後でお風呂の件、詳しく聞いてもいい?」

 

三上の背後に般若像の幻影が視えるほどの覇気に当てられた小南は、「あ、あぁ…」と涙目になりながら声にならない声を出していた。

 

後に小南は、この後のご飯の味がしなかった、今後真昼とのお風呂は控えようと思います。と語った。

対して三上は、流石に一緒にお風呂はハードルが高いが、一緒にプールや海など行って水着で頑張りたい、そして親の許可を得てまあまあの頻度で泊まりに行こうと誓った。

 

なんとか無事?に一ノ瀬隊のお祝いが終わり、夜遅いということで三上も玉狛に泊まりみんなでゲームしたりして楽しく騒いだ一日となった。

 

 

 

 

「真昼、…お前本当にいつか女の子達に刺されるぞ」

 

「そうか、だが(人体実験でさんざん刺されたから)大丈夫だ。慣れている」

 

「いや、そういうことじゃなくてな…」

 

皆が寝静まった後で真昼と迅の密会が行われたのだった。

 

 

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