独りにしませんいつまでも 作:残念G級
「ねえねえ真昼君、ここの問題わかる?」
「真昼く~ん、ヘルプミ~」
「真昼せんせ~救援を頼みます!」
「…柚宇」
「ん~?どしたの真昼君?」
「教えるのは別にいいが、毎度休み時間に来るのは手間だろ。昼休みにまとめてやるか、放課後に本部で教えるよ」
「え、ほんと?ん~でも真昼君が迷惑じゃないならわたしはこうしてお話しに来たいんだけど、ダメかな?」
真昼の席の横で小さく座り上目遣いで首を傾げる国近。見る人全員が確実にあざとい認定するだろうそれを平然とする彼女を、真昼は特に気にすることなく、国近のお願いを了承した。
「お、やった~。それじゃまた昼休みになったら来るね。いつもみたいに一緒に食べよ~」
「ああ、わかった。またあとで」
今にもスキップしそうなほどご機嫌に真昼の教室から出ていった国近。
この光景は真昼が高校入学してすぐに見かけるようになった。
「やっぱり一ノ瀬君ってC組の国近さんと付き合ってるのかな?」
「そうじゃない?入学してからずっとあんな感じだし。美男美女でお似合いだよね」
「一ノ瀬君って入学式から噂になってたよね。先輩たちもすっごい見に来て」
「まあ、あれだけ綺麗でカッコよくて主席入学だったら騒がれもするでしょ。あ~あ、私狙ってたんだけどな」
「にしても本当に綺麗だよね。なんかもう圧倒的美って感じ」
「前に話したことあるけど、もうめちゃくちゃ優しくて落ち着いてて声良すぎてもうやばかった。話すの恐れ多すぎてそれ以来鑑賞しちゃってるけど」
「「「え、何それズルい」」」
「「「「「あぁ~俺たちの国近さんがぁぁぁ~!!」」」」
真昼と国近のやり取りを見てはひそひそと男女が話ている。
男子たちに関しては血の涙を流していた。
二人が話した後に必ずと言っていいほど見られるこれは、真昼のクラスである1-Aではお馴染みのそれだった。
こうして国近が毎度真昼のクラスを訪れては時間ギリギリまで話して出ていく。
来ないときは、基本真昼は読書をして時間を潰すか、国近に教えてもらったスマホゲームをして時間を潰していた。
そう、真昼は高校に入学してからというもの、友達が出来ていなかった。
というのも、別に真昼の性格が難ありとかコミュニケーション能力が低いとかそういうのではななかった。
むしろ真昼は自分から特別話しかけることは無いが、話かけられれば会話に入り話題も振ったりしている。
ただ単に周りが真昼を勝手に神仏化して、話すのが恐れ多いとかそういった状態になっているのだ。
真昼に友達が出来ない理由は他にもあり、その最たる例が国近だ。
彼女は決して勉強ができる方ではない。何ならボーダーのOP隊員で言えば下から数えた方が早い位置にいるぐらいには勉強が苦手である。
だが、彼女にも女性としての勘の良さは持っていた。
国近は真昼のボーダー内で絶大な人気があることは把握していた。
少なくとも基本女性隊員しかいないOP内で真昼に好意を寄せている者は多い。というかほぼ大半と言っても良いと国近は思っていた。
あの整いすぎている容姿に頭の良さ、それだけでなく性格もよく戦闘員とOPとエンジニアどれを取っても優秀とくれば、好きにならない方がおかしいと結論付けている。
恐らくこれからもボーダーには女の子が増える。それは戦闘員だろうがOPだろうが関係ないだろうし、このままいけばその子たちも真昼の魅力に気付いては好意を寄せるのだろう。
最早それは真昼がボーダーという組織にいる以上避けられないことを国近は理解していた。
同時に、これ以上真昼に想いを寄せるライバルを増やすことを避けたい国近は、ボーダーで増えることは諦めて、せめて学校だけでもそのライバルを増やさせないようにと、同級生や上級生に牽制することを決めたのだ。
入学してすぐ、近い将来に真昼のファンクラブが出来ることを、迅のサイドエフェクトばりに予知したからこそのこれまでの行動。
国近柚宇という少女は、勉強ができないだけで計算高いのである。
こうして彼女は持ち前のゆるふわ感を巧みに使い、同性内でのヘイトが向かないようにしつつ、見事な立ち回りを見せているのである。
その顔は、普段太刀川隊内で行われるゲーム大会で、全員を蹂躙するため本気を出す時と同じである。
笑っているが、笑っていない。歴戦の戦士のように、感情をコントロールできているのが彼女であった。
キーンコーンカーンコーン。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
各々、昼休み時間で昼食の準備を始めるなか、真昼もまた教科書などをしまって持参したお弁当をカバンから取り出し机に置く。
その数はなんと
「真昼く~ん、来たよ~」
教室の後ろ戸から顔をひょっこり出し真昼に声をかける国近。
その直線状にある窓側の一番後ろの席が真昼のである。
国近の存在に気づいた真昼は、机の上に置いてある弁当を二つ持つとそのまま席を立ち、国近の方へと向かって行く。
「ほら、これ今日のお弁当」
「おぉ!今日もありがと~!これを食べるために授業頑張ったんだよ~」
「そうか、なら後でその努力の結晶たるノートを見せてほしいな」
「ふっふっふ!果たして君に解読できるかな?」
「柚宇に聞きながら読むから大丈夫だ。自分で書いたなら説明できるだろ?」
「うっ…なんだか今日の真昼君すごく意地悪だぁ~」
「ふふ、OPの子たちには甘やかしすぎてもダメだと蓮さんから言われたからな。彼女の言葉を実践してみた」
「蓮さんめ、許すまじ」
ぐぬぬっと険しい顔を浮かべる国近を見て笑う真昼。二人はそのまま教室を出ていつも食べている中庭のベンチへと向かって行った。
その二人のやるとりを見ていた真昼の同じクラスの子たちはというと…
「ねえ、やっぱりあれは付き合ってるよね」
「でも前に真昼君に聞いたら誰とも付き合ってないって言ってたよ。国近ちゃんのクラスの子も本人に聞いてみたら付き合って無いって」
「私の友達ボーダーに入ってるんだけど、一ノ瀬君基本ボーダーにいる子たちと一緒にいるみたいよ。いろんな女の子と一緒にいるところ見かけられてるから、特定の子とかはいないんじゃない?ただ一緒にいる子が全員可愛いって言ってたけど」
「あ~それうちも聞いたことある!時々一ノ瀬君が買い物してるところ見かけるんだけど、なんか皆可愛いの!しかも一ノ瀬君がっていうより、その子たちの目がもう恋する乙女みたいな!流石我が校で一番モテるだけはあるね」
「嵐山先輩もかっこよくて大人で素敵だけど、まさかそれを超えてくるかって感じだよね」
「ボーダー特集みたいなのでないかな。表紙一ノ瀬君で!絶対売れると思うんだけど」
「ネットでつぶやいてみようかな、ボーダーグッズ希望って」
「「「それアリ!」」」
後に彼女たちのつぶやきを偶然見た根付さんが、この発想を得て様々なボーダーグッズを販売することになるのだが、この時の彼女たちは知る由もないだろう。
一方、真昼と国近は学校の中庭にあるベンチに座っては仲良く真昼手作り弁当を食べていた。
淡々と箸を進める真昼と、一口食べるごとに目も口もとろけては幸せそうな表情を浮かべる国近という、本当に同じ弁当を食べているのかという程リアクションが違う二人がそこにいた。
それはお互いに食べ終わるまで変わることは無く、国近は終始幸せそうにお弁当を食べていた。
「真昼君ごちそうさま!今日も美味しかったよ~」
「それならよかった。柚宇が美味しそうに食べてくれるから俺も作り甲斐があるよ」
「いや~本当に美味しいからね。もう毎日食べたいぐらいだよ~」
「流石に毎日本部にいるわけじゃないからそれは難しいが、食べたければ連絡さえもらえればいつでも作るぞ」
「…え!?本当に!?」
「柚宇はスカウトだから寮暮らしだろ?ご飯を作るのが大変な時もあるだろうし、何より一人分も二人分もそんなに変わらないからな。ご家族がご飯を用意してくれているならまだしもそうじゃないなら別に俺は気にしない」
食べ終わったお弁当を片付けながら柚宇にそう告げる真昼。その話を聞いていた柚宇はみるみるそのおっとりした大きな眼を輝かせては真昼の手を両手で掴み前のめりのなる。
「食べたい!もし真昼君が良いなら、食べれる日は一緒にご飯食べたい!」
いつものゆるふわな雰囲気とは違い、勢いのある彼女の言葉に思わず笑みを溢す真昼。
口元を手で隠してクスクス笑うその真昼の姿に、国近はジッと見つめては惚けていた。
いつも優しく微笑むことはあれど、これほどわかりやすいリアクションは滅多に見られない。
そんな彼の姿を目の当たりにした国近は、その想い人の可愛い笑い方に釘付けになり、みるみる顔を紅くするとそのままボンッと頭から煙が立ち上った。
「わかった。そうしたら食べれるときは一緒に食べるか。玉狛に帰るときは難しいけど、本部だったら大丈夫だから」
「…う、うん。ありがと」
急に小さな声になり俯く国近に不思議がる真昼は、ベンチから降りるとそのまま彼女の足元にしゃがみこんだ。
「どうした柚宇、どこか具合でも悪いか?」
まるで小動物かのように覗き込む真昼。いつも国近が教室で真昼にしているような構図になっており、それを覗き見る真昼を見て思い出した国近は勢いよく頭を上げると顔を真っ赤にしてなにやら口をパクつかせていた。
「(もしかしてわたしいつもこんなあざといことやってたの!?というか真昼君可愛い!なんか今日はいつもより幼いというか、あざと可愛いが凄い!なんかもう…凄い!」)」
語彙力を失い狼狽える国近。最早真昼のことを直視できないほどになっていたその時、二人に声をかける人物がいた。
「なんだ、お前らまたここで飯食ってたのか。相変わらず仲いいな」
「よお、一ノ瀬に国近」
「太刀川さんに堤さんか。どうも」
「た、太刀川さん…?」
二人に話しかけた人は国近と同じ隊であり隊長の太刀川慶と、まだ隊は組んでいない正隊員の堤大地。真昼たちとは二個上の現在高3だ。
どうやら廊下でだべっていたら中庭にいる真昼たちを見かけて話しかけに来たらしい。
「んん?なんか国近お前様子おかしくねえか?また真昼にドギマギさせられてんのか?」
国近の様子の違和感に気づいた太刀川はすぐさまデリカシーもなく踏み込んでいく。隊員の変化にすぐ気づけるのは隊長として素晴らしいが、その後のケアの仕方が相変わらず残念な男だった。
その太刀川の発言に、国近の想いを知っている堤はまずいっと焦りを見せるも発言してしまっては遅い。
国近の目が鋭く光る。怒りが爆発すると身構えた堤だったが、次の瞬間それが杞憂へと変わった。
「ドギマギがなんなのかわからないが、俺がなにか怒らせるようなことを言ってしまったなら教えてほしい。どうだろうか、柚宇」
少しシュンとした感情が込められた瞳を国近に向ける真昼。するとその真昼の様子を見た国近は、だんだんと内から込み上げてくる謎の感情にグルグルしていくと、やがて抑えきれなくなりガバッと手を広げるとそのまま真昼の頭をぎゅ~っと抱きしめる。
国近の突然の行動に思わず驚く男三人。太刀川は顎を撫で、堤は関心したようにしながら二人ともニヤついていた。
「…柚宇?どうした?」
当の本人である真昼は驚きつつもなにかあったのかと今もなお彼女を心配する。
「と、突然ごめんね。なんか真昼君をみてたら、なんかこう、ぐわ~というかめちゃくちゃにしたいというか抱きしめたい感情に襲われてつい」
「なるほど!国近のそれはキュートアグレッションという心理現象だな!俺も妹弟になるから共感できるぞ!」
国近の話に自然と入ってきた人物に全員が視線を移すと、そこには太陽のような笑顔で真昼たちの様子を眺める嵐山の姿があった。
「お、おい嵐山!お前急に話に入って何言ってんだ!?」
「いやいやザッキー、嵐山は大体いつもこんな感じでしょ」
「お、柿崎に迅まで来たか。なんだか一気にバトりたくなってきた」
「お前はそればっかだな…」
嵐山の乱入を機にぞろぞろと人が集まってきた。
嵐山隊隊長の嵐山准とその隊員の柿崎国治、そしてこの二人と同級生の迅悠一。この学校に通うボーダーの実力者が集まったことで太刀川の戦闘狂が顔を出していた。
「にしても皆さんお揃いで…って、お前は随分羨ましい状況にいるね、真昼」
真昼と国近の状態を見て苦笑いしつつもジト目で本音を告げる迅。柿崎もまた苦笑しながらも内心で(ここに綾辻がいなくてよかった…いやほんとマジで)っとここにいない同じ部隊のOPであり真昼に恋心を抱く綾辻遥の存在を浮かべた。
最近お互いに忙しいのか、なかなか会えていないことに嘆いては普段の彼女らしからぬ弱った発言が多くなっていた。
そしてそれは同じ隊でありなおかつ隊長である嵐山も当然把握しているわけで。
「そういえば真昼、良ければ近いうちにうちの綾辻と会ってやってくれないか?最近元気がなくてな」
「なっ?!」
「ちょっ!?」
この状況では絶対に言うべきではない発言をした嵐山に、ものすごい早さで反応した柿崎と迅。ここにハリセンが在ったらつかさずあの天然男の頭をスパーキンッ!したのにと悔しがる迅。流石にここまで細かい未来は視えなかった(視ようとすらしていなかった)ようだ。
その嵐山の発言にピクピクと耳を傾け反応した国近。流石に真昼の交友関係までは口出しできるわけでもないため、ここは静観するが、真昼の答えは大体読めていた。
「?わかった。後で遥に連絡してみる」
「おお!ありがとう真昼!綾辻もきっと喜ぶ!」
真昼からの了承を貰えたことで感謝の意を伝える嵐山。それに対して頭を抑え天を仰ぐ太刀川と堤と迅と柿崎。
4人が同じリアクションをしていることに気づいた嵐山は、「どうしたんだ皆!」と反応してはなぜか同じようなポーズで天を仰いだ。嵐山は空気が読める男なのだ。ただ少し天然が混じっているだけなのである。
一方で予想通りな返事をした真昼に、思わず彼の頭を抱きしめる力を強める国近。
「…柚宇?」
「…ばか」
ぼそっと吐き出された彼女の不満が込められた言葉は、抱えるように抱きしめられているため、真昼の耳元に直接届いた。吐息が耳に触れ、思わずビクッと身体が跳ねた真昼。なぜ身体が跳ねたのか理解できない様で?マークが大量に浮かぶ真昼は今まで見たことがないほど耳と顔を真っ赤にしている。幸い、国近に抱きしめられているため、迅たちにはその様子が見えていないが、彼を抱きしめている国近本人はばっちりとその変わりようを見ていた。
先ほどの真昼の返事でややご立腹だった国近だが、想定外にも真昼の弱点らしきものを見つけて一気に機嫌がよくなる。
すると国近は先ほどのお返しと言わんばかりに、今度は真昼の真っ赤に染まっている耳をかぷっと咥える。
その瞬間、先ほどよりも大きく真昼の身体が跳ねた。我慢したのだろうがわずかにいつもの真昼では聞けないような、熱く甘い声が漏れたことを聞いた国近は目を細め新しいゲームを買った時のような顔をして真昼を見つめた。
「真昼君の弱点、みーつけた」
妖艶な笑みを浮かべる彼女は、まるで攻略不可能だと思われたラスボスの唯一の弱点を見つけたかのように、これからの真昼の戦略を組み立てていく。
これだけ自分の心を揺れ動かしているのだ。いい加減反撃してもバチは当たらないだろう。
ご飯の件も了承してもらったため、今度はもっと積極的にいこう。
そう心に誓った国近は、最後にもう一度と真昼の耳を甘噛みして強く抱きしめた。
書いててだんだんちょっとえちぃなと思いましたがこれは私がまだガキだからでしょうか。
自分で書いててマジでこんな女の子になりたかったなっていうか、私だったら絶対好きになるなって思っちゃった作者です。
もうそろそろストーリー的なの進めていきたい…