独りにしませんいつまでも 作:残念G級
真昼は感知のサイドエフェクト効果を一瞬だけ自身の半径80m内に設定し、周囲の敵全員の配置を把握、その後すぐに効果範囲を30mに縮小し、真昼はこの範囲を固定し、無駄な脳の負担を減らした。
そしてその余力分を身体強化と脳機能の一部強化に回す。
脳機能の強化が行われたことにより、真昼の視る世界が徐々に速度を落としていく。
感知に反応が複数。小さな無数のトリオンとトリガー反応に包まれたトリオンが引っ掛かり、真昼は瞬時にそのトリガー反応の正体が最近できたステルス機能のトリガーであることを看破し、さらにはそのトリガーを主軸にした戦法を取る部隊を思い出した。
恐らく他のトリオン反応はこのステルス機能であるカメレオンを隠すため、弾トリガーでチャフ代わりにしているのだろうと踏んだ真昼はメインのバイパーを展開し弾を全て相殺、そしてカメレオンの二人の内、片方の進行方向の間にミニサイズのグラスホッパーを設置することで軽く後方へ飛ばす。
そしてもう片方の方へ左手を向けては、まるで視えているかのように相手の顔を鷲掴みにすると、強化した腕力を活かして思い切り地面に叩きつけた。
あまりの強さに地面に罅が入る。
叩きつけられた隊員はトリオン体なので痛みは発生していないが、衝撃は発生するので動きが鈍くなる。
そしてその衝撃を持って叩きつけられた隊員のカメレオンが解除されその正体が現れる。
「ぐあっ!」
「動きが単調すぎる。まだまだ未熟だな」
地面に叩きつけられたのは風間隊の歌川。そしてグラスホッパーで飛ばされたのは同じ風間隊の菊地原だった。
菊地原はグラスホッパーで飛ばされるも、体勢を素早く整え、なんとか突撃を図る。
菊地原の手に持つスコーピオンが真昼の首元を捉えようとしたその瞬間、真昼は彼の耳元目掛けて必要最低限の動きで最大の音が鳴るように一度手を叩いた。
「あ"あ"っ!?」
「聴覚強化なら大きい音はさぞ騒音だろうな」
突如脳内に強烈な電気が流れたかのように身体が痺れ、体勢を大きく崩した菊地原。
彼は強化聴覚のサイドエフェクトを持っており、常人よりも5~6倍ほど聴覚が強化されているため、声や音なんかにはかなり敏感になっている。真昼はその菊地原のサイドエフェクトを逆手に取ったのだ。
空中で体勢を崩した敵を見逃すほど、死神は優しくない。
真昼はスコーピオンを体中に生やし、歌川と菊地原の四肢を的確に斬り飛ばし、達磨状態にした。
ここまでわずか5秒。たったそれだけの時間で戦闘員2名を実質戦闘不能へと追いやった。
「ベイルアウトがあるからと考えなしの突撃か。どんなことがあっても最悪逃げれるという安心が、お前らを弱くしているのか。命の重さを知らない刃に守れるものなどない」
真昼は迅たちに向けて歌川たちの四肢を投げては蹴り飛ばしていく。
『トリオン反応複数!』
OPの通信が流れ迅たちはすぐさまシールドを展開、すると、歌川たちの腕や足がシールドに当たると小さく爆発する。その正体は、四肢に取り付けられた小さく分割されたメテオラ。
そして時間差で東達が待機している建物の屋上が爆発した。
真昼の得意とする弾トリガーの瞬間分割で迅たちに一切気づかれず行う。
そのまま流れで距離を詰めた真昼は自身の相棒と言えるオルサイズを思い切り振り抜くと、小南の大斧が受け止めた。
「…
「っ!…らしくない攻撃してんじゃ…ないわよ!」
「ここは戦場だ。敵を殺すためなら何でも使うのは当たり前だ。甘いんだよ、全てが」
小南はぐっと歯を食いしばり、なんとか押されないように耐えた。
「小南、そのまま抑えてろ。…迅!風間さん!」
「視えてるよ!」
「わかっている」
真昼を囲むように太刀川と迅と風間がそれぞれの得物を構えて突っ込む。攻撃する位置を頭と腰と脚にそれぞれ分けての攻撃。真昼を除いた現ボーダーのトップ5アタッカーたちが息の合った連携が真昼に迫る。
「容易に距離を詰めた攻撃…愚かだな」
真昼の身体から無数に生えるブレードが迅たちを襲う。
体内で細かく枝分かれたブレード。真昼の得意とする
「ちっ!」
連携を行った迅たちに細かな傷が複数つけられた。
攻撃を防がれただけでなく反撃を受けたことに風間は思わず舌打ちを溢す。
すかさず真昼はオルサイズを振るうもそれを何とか小南が双月で防ぐことで被害を抑える。
「一旦距離を空けろ!」
東の指示と共に四方八方から無数のトリオン反応が真昼を囲む。射手と狙撃手、そしてオールラウンダー組による波状攻撃。
この弾数はいくら真昼でも簡単には捌けない。それを瞬時に見抜いたからこそ、真昼の動きは早かった。
オルサイズの刀身が鈍く光り、自身を囲むようにオルサイズを振り回していく。抉られる地面が真昼を中心に広がっていく。
やがて放たれた弾丸が真昼を捕える鳥籠のように包む。
獲った、そう誰かが確信した次の瞬間、一定の距離に近づいた弾が次々と斬り落とされていく。
今の真昼は決してオルサイズを振るっていない。
それなのにも関わらず斬り伏せられる弾がその異質さを物語っていた。
迅はその様子をただジッと観察し、一旦真昼から距離を取った。
「お~マジか、全部塞がれた。国近、解析頼むわ」
『もうやってるよ~。と言っても、もう答えは出てそうだけど』
「今の現象、時間差で斬撃が発生したように見えた。あれが真昼が開発した新トリガーか」
太刀川が自身のOPである国近に今起きたことを解析してもらおうとしたところ、隣にいた風間が要所を抑えた分析を始める。
「斬撃を空間に待機させるトリガーといったところか。オルサイズ専用とみるのが妥当だろうな」
「風間の推察が正しいのなら通常トリガーの域を超えている。トリオンの消費が激しいはず。
どうする、迅。トリオン切れを狙うか?」
「いや、正直真昼相手にトリオン切れを狙うのは厳しい。当初の予定通り、持久戦で真昼を削る。それで…『総員警戒!!』…なに!?」
突如ベイルアウトを知らせる光の柱が9本空に昇った。
「戦場で狙うべきは司令塔の他に、それに足り得る実力を持つ者、そして全体のバランスを担う部隊だ。貴様らの狙いは持久戦なのだろうが考えが甘い。格上相手に貴様らが講じた策はこれだけか」
『…嵐山隊、東、烏丸、三輪、歌川、菊地原が一斉にベイルアウト。レーダーで追いきれないほどの速度で移動した可能性あり…。すみません、わたしの想定以上の身体強化です』
真昼が行った攻撃は至って単純。ただ身体機能を限界まで底上げして建物を飛び移りスコーピオンで奇襲を行っただけ。
ただ、その身体機能の強化幅が果てしなく、レーダーで視認するとトリオン反応が、方向を切り返す際に発生する点での確認しかできないぐらいには速い。レーダーで視ればその動きはもはや瞬間移動だ。
本来ならトリオン体でも出せない速度と機動力を引き起こせるのが真昼の持つサイドエフェクトの恐ろしいところである。
「レーダー頼りになるからあっけなく殺される。まるで警戒が足りていない。敵がわざわざ攻撃するときを知らせてくれるか?何もかも足りていないんだよ、貴様らは。少し戦い方を齧っただけの弱者。小さな箱庭でしか世界を知らない」
改めて迅たちへとオルサイズを向けて何も宿さない冷酷な眼を向ける真昼。
「貴様らが立っているのは本物の戦場だ。この場に立つなら構えを崩すな。意識を張り巡らせろ。一瞬も気を緩めるな。強者を前にした弱者の命の散り際は、いつも一瞬だ」
突如、迅たちの足元に亀裂が走ると地面から無数のブレードが出現する。地面を潜って攻撃する
それをグラスホッパーで後方に飛ぶことで避けるも、今度は中距離攻撃を持つレイジ、二宮、加古、出水が追撃を行う。トリオン反応を追跡するハウンドの嵐が真昼を襲う。
それを確認するやグラスホッパーを多数展開し、まるでピンボール玉かのように乱反射してハウンドの弾道を束ねていく。
その中で数弾他のハウンドよりも追尾性能が上がっているものに気づき、感知SFでその正体を探る。
(ハウンドの特性が通常よりも強化されている…上手く混ざっているが元のトリガー構築よりもどこか歪。なるほど、メインとサブのハウンドを練り混ぜ合成させたのか)
真昼はその特異性を見破ると、グラスホッパーでさらに通常弾と合成弾に分け、攻撃してくる箇所を二か所に分断。すると、オルサイズのブレード効果を解除して出水目掛けて投擲。
すぐさま、アイビスとアステロイド拳銃を装備し、迫りくる二束のハウンドにそれぞれ極太レーザーのような弾を撃ち放ち、完全に撃ち消した。
オルサイズを投げられた出水はなんとかそれを交わし、地面深くにそれは突き刺さった。
再度グラスホッパーを展開し、空から地面へとミサイルのように突っ込みながら、右手にアイビス、左手にアステロイド拳銃を構える。アンバランスな見た目だが、その姿を見た迅たちからしたら十分すぎる脅威が完成していた。本来なら照準を定めて点を撃つはずのアイビスと拳銃は、真昼が使えば面を捕える範囲攻撃へと変わる。
突っ込んで来るだけならいくらでも迎撃できる場面なのだが、今回は違う。
凄まじい速度で空から降る真昼は、そのまま狙いを定めず左右の引き金を引いていく。
そうすることで集中シールドだろうがエスクードだろうが破壊する爆撃雨の完成である。
全員が逃げの一手を選択せざるを得ない。
周囲が一気に爆撃により発生した粉塵が辺りを包む。
レイジが素早く全員を守るために各隊員の前にエスクードを生成したため、今の攻撃で犠牲になった者は幸運にもいなかった。
それに安心して隙が生じてしまったその瞬間、地面を這うバイパーが全員を襲う。
すぐさま異変に気付いた迅と各OPが回避するよう指示を出し、全員が足元にシールドを展開しながらなんとか真昼のバイパーを躱す
するとレーダー上で真昼の姿が一瞬消えると、出水の方へと現れた。
「ぐぁっ!」
「現状、最も中距離でめんどくさい奴を叩くのは当然。そして生存者の中で一番弱い奴を叩くのも当然。部隊で動くなら自身の役割、実力は把握していないとただの足手まといだ」
出水の顔面を掴んでは建物の壁に叩きつける真昼。先ほどの菊地原達同様四肢を斬り落とすことで身動きを取れなくする。
「射手は手足を失くしてもある程度戦えるからな、早急に潰すに限るか」
真昼は掴んでいた出水を太刀川たちの方へ投げ飛ばし、脇差サイズの孤月を出現。必殺の突き旋空で出水と太刀川を串刺しにしようとする。が、投げ飛ばされるなか出水は最後の抵抗として残りのトリオン全てを注いだメテオラを真昼とその足元に撃つ。それをシールドに切り替え防御すると、真昼の視界をメテオラの爆煙が包み視界を潰す。
『今のうちに中距離持ちは散って下さい!このままじゃ削り殺されます!太刀川さん、俺の分も頑張ってくださいよ!』
出水は自隊の隊長に後を託しトリオン漏出でベイルアウトした。
残すは迅、小南、太刀川、風間のアタッカー組にレイジ、加古、二宮の中距離組。
出水の働きを無駄にしまいと中距離組は真昼を囲むようにしながら射程範囲ギリギリの距離まで散る。
そして迅もまた一定の距離を保って待機し、アタッカー組も真昼を囲んだ。
完全な包囲網が真昼を捕える。
その動きを感知で分かっていた真昼は、オルサイズを大きく一振りし、煙を掃う。
「中距離を散らせて俺の注意を引こうと?持久戦狙いを知って付き合うバカが相手にいると思っているのか」
バイパーを中距離組へと放つ。複雑な弾道を引き確実に削るよう操る。
するとそれを狙っていたかのように近距離組が一斉に駆け出し真昼との距離を詰める。
それを見るや真昼はオルサイズを腰に添えて構えを取る。
迅は真昼の動きを見て旋空が放たれることを予知し、握る風刃の能力である遠隔斬撃を放とうと刃を振るう。
小南たちが確実に距離を詰めるために、真昼の生じる隙をついていく。
が、死神は簡単に未来を覆す。
「なに!?」
迅が風刃を振るおうとした瞬間、何かに腕が遮られて風刃を振り下ろせなかった。
その正体を確認すると、それはいくつにも分割された小さなシールド。
迅の遠隔斬撃による援護を妨害するための分割遠隔シールド。
それを迅の振るう軌道上に設置し詰まらせた。
「敵兵の大将を警戒しないわけないだろう」
アステロイド拳銃を顕現させ迅に放つ。極太レーザーが迅を襲うも、未来を視えている迅は回避を行い、次の攻撃ポイントへと移動する。
「よそ見してるんじゃ…ないわよ!」
飛び上がった小南が放つ全力の振り下ろしはその巨大さもあってかなり重く、オフ状態のオルサイズで受けとめた真昼の脚が地面にめり込む。
続いて小南の反対側にいる太刀川が二刀流の旋空を構える。それをアステロイド拳銃を放って回避を強制させる。
太刀川の追撃が封じられたとわかるや小南はメテオラを真昼の後ろに展開、分割する暇がないため丸ごと放つ。
「見る意味がないからな」
真昼はトリオン操作で面積を削り、生成速度と頑丈さ重視のエスクードを真後ろに生やしメテオラを防御。小南も巻き添えを喰らわないように双月をオフにしてシールドで防いだ。
そしてがら空きになった真昼の正面。そこに風間はスコーピオンをクナイのように小さくし、二本投げる。
距離を詰めても良かったが、真昼のカウンターを警戒しての投擲。風間のその攻撃も読んでいたのか、真昼は自身を包むようにスコーピオンを身体に巻き付け、鎧のようにして防御した。
上位アタッカー組による怒涛の連携を、またもや瞬時に適したトリガーへと切り替えて凌いで見せた真昼。
結局放ったバイパーも誰一人落とすことはできず、戦況は振り出しに戻っていた。
「もういい。あの地獄をその身に刻むのは…もう…」
死神は前を見据える。今なお強者に立ち向かおうと正義であり続けようとする者たちの姿がその瞳に映った。
〈トリガーセット〉
【メイン】
オルサイズ改 旋空 幻踊 クロノス
孤月 スコーピオン バイパー アイビス
【サブ】
シールド エスクード スパイダー メテオラ
アステロイド(拳銃) スコーピオン バイパー グラスホッパー