独りにしませんいつまでも 作:残念G級
久しぶりすぎて描き方を忘れていて駄文が続きますが、暖かい目で見て頂けると嬉しいです!
「それでは今回の近界遠征、君は認めるという認識でいいかね」
真っ直ぐただ前にいる真昼を見つめ、確認する城戸。
今ここには、先ほどの真昼対ボーダーの戦いを終えてそのままの流れで、先日の会議にいた全員が集まっていた。
「認めてはいない、ただ従うだけだ。俺はお前たちに負けたからな」
「そうだ、君は負けた。君が出した我々の力を示すという条件の上で、彼らが見事それを成し遂げてくれた」
城戸は戦った全隊員に一度視線を送った。
「さて、ここからは未来の話だ。
我々は当初の予定通り近界へ遠征に行く。メンバーは希望者を募り、その中から我々が選ばせてもらう。なお、今回の遠征には林藤支部長が同行することになった。よって、その期間の玉狛支部命令権は忍田本部長が一任する。
そして隊員からは
「ちょっ!?なんで真昼が!!「小南。一旦落ち着け」…ボス」
城戸が真昼の名を上げた瞬間、小南が驚きと怒りで席から立ち上がる。するといつもの位置で座る林藤がそれを制した。この小南の反応には他の隊員たちも同じようだった。
それもそのはず、先ほどまで行った戦いは真昼に自分たちの力を認めてもらい少しでも安心して信じてほしいというものだったのだから。それがどういうわけかその真昼を遠征メンバーに強制的に参加せるのだから、彼等の反応画は当然である。
そんななか、スッと静かに手を挙げた人物がいた。
真昼だった。
「予定している人員数は」
「今回は林藤支部長、一ノ瀬隊員を含めた戦闘員7名とOP3名の10名で検討中だ。遠征艇に関しては我々ボーダーが現在改良している一隻と一ノ瀬隊員が所有している一隻の計2隻を予定している」
「公開できる範囲での人選基準は」
「基本は各自の意思を尊重し募集者を募る。その後はこちらで隊員の実力を考慮していく。ただ、この中でも年齢に関してはより大きな判断材料とさせてもらう」
「……わかった」
「他に聞きたい者は?……それではこれより一時間後にこの場にいる全隊員へ遠征の参加有無を含む連絡を送る。期限は二日後の正午。メンバーが決定次第詳しい話を折ってさせてもらおう」
城戸は再度全員へと目を配り、最後に真昼と東を残るように伝え、全員を解散させた。
小南や三上や国近などは真昼を心配そうに見ながらも、残ることはできないため渋々退出した。
そうして残ったのは上層部である6名と真昼と東のみ。
全員が次の話を行なえると判断した城戸は、その場に立つと真昼に向けて頭を下げた。
そんな彼の当然の行動に一瞬驚く真昼。
「……」
「まずは謝罪をさせてほしい。今回私は一個人の考えで君の感情を利用し彼等と対立させた。
望まぬ戦いをさせてしまったこと、大変申し訳なかった」
「…謝罪はいらない。俺は気にしていないし、城戸がここまでの流れを必要とした理由も全て理解しているつもりだ。
遅かれ早かれいつかはこうして戦う時が来たんだ、今回はそれが早まっただけに過ぎない。お前はやるべきことをやっただけだ。もし謝罪しなければ気が済まないというのなら感謝されたほうが幾分かマシだ」
「……わかった、感謝する」
下げた頭を上げ、今度はまっすぐ真昼の目を見て感謝を述べる城戸。
真昼自身もこれまでの自分とボーダーの対立には全て意味があるのだと理解していた。
「それで、俺たちを残したのには追加で話すことがあるんだろ」
「ああ、その前に…東隊長、他の隊員とは違う対応をしてしまい心苦しいが、単刀直入に聞く。君は今回の遠征に対してどう考えている」
真昼の隣に座る東はやはりその話か、と特段驚く様子もなくいつもの冷静なまま答えた。
「もちろん参加を希望しますよ。真昼がいる手前言いにくいですが、近界に興味があるっていうのもあります。まあなにより
「……そうか。感謝する」
「よしてくださいよ。これはあくまで俺の勝手な考えですから。自分よりも年下の奴が色々背負っているのに俺はそうじゃない状況が許せなくて、それっぽい理由を付けてるだけですよ」
あははっと困ったように頭に手を置いて笑う東。言葉と態度ではなんともないように装っているが、彼の言葉をわかりやすくするならば、『いざとなったら自分の手で近界民の命を奪うことも厭わない』と言っているのと同義である。
これは真昼や迅たちのような旧ボーダーに所蔵していて実際に戦場を経験している者ならいざ知らず、東はつい最近までただの学生だったのだ。そこから突然未知の怪物と戦う組織に入ってまだ一年ほど。
確かに第一次大規模侵攻を目の当りにしたとしても実際に自分たちが奪おう側になるのは感覚的に全く違う。
それなのにも関わらず覚悟が決まっている彼の精神力は計り知れないだろう。
「ならば残り選抜する戦闘員は4名とする。そこで、今の段階で遠征における大まかな規則を決めていきたい。と言っても、私が提案するものは二つだ」
「今回の遠征における
城戸から出された提案に似た願い。その話は城戸以外知らなかったのだろう、根付たちはもちろん、旧ボーダーからの付き合いである忍田と林藤もわずかに驚いていた。
そしてこの場にいる全員が真昼の方へと視線を移した。誰よりも戦場を理解しているからこそ、この城戸から放たれた願いがまたも彼の逆鱗に触れるのではないかと心配してのことだった。
真昼は城戸の言葉を静かにただジッと目を瞑って聞いていた。そしてその沈黙が数秒にも数十分にも感じるほど重い空気がその場を支配する。
そして真昼はゆっくりとその眼を開けると城戸の目を見据えた。
「犠牲者が出ないという願いは戦場に立つ誰もが思うことだ。そして当然そんな甘い願いが叶う程現実は優しくない。手を下す者を限定するのも、最終的にはその死傷者を生む可能性を高めるものだと、それを理解してもなお望んでいるということで合ってるか?」
「…ああ。そのうえで私はこの願いを守ることが出来る隊員を選抜するつもりだ。君たちには負担を強いることも理解している」
城戸は真昼の言葉を肯定する。どれだけそれが甘く無謀であるかを理解してもなお、城戸の中では彼がいる限り絶対にこの願いが達成されるという確信があるからだ。
「…わかっているならいい。なら後は俺に命令すればいい。俺はお前たちボーダーとの闘いに敗れたのだからな」
その城戸の力強い眼を見て真昼は静かに頷く。城戸の覚悟も見極めることが出来たし、何より彼は負けた側だ。
前にいた世界では負けた側に何かを通すことはできない。全てに従うことだけが敗者に許されたことだと教えられたから、真昼は過去の教えに従い、今回の遠征の件に関しては全て従うと決めたのだ。
「…わかった。それでは一ノ瀬隊員、この遠征において全隊員を無事に帰還させること、そして先での戦闘においての処理権限を君に任命する。…頼んだ」
「了解。この命に代えても任務を遂行する」
城戸の願いを聞き入れた真昼。その表情は変わらない。だがそんな彼を見る忍田と林藤の表情はどこか寂しさが込められていた。
それから、今後の真昼は遠征艇2隻の改良兼メンテナンスに駆り出されることになった。
真昼個人が所有している遠征艇は現在少人数用になっているため、諸々の設備を整え増築するようだ。
備わっていた設備がレーダー探知や防衛用武装だったりと支援に向いているのと、遠征艇はトリオンで動くため真昼のいる方にトリオン量が少ない主にOP隊員が乗った方がバランスが良いという点から、真昼の遠征艇は基本OP隊員が搭乗することになった。
そういった今後の話をある程度決め今回は解散することになり、真昼は会議室を後にしようとする。
「おっと、ちょいちょい真昼」
「ん、林藤…さん」
会議室を出ようとした真昼を呼び留めたのは玉狛支部のボスである林藤だった。
「なんだ、別に呼び捨てでもいいんだぞ?」
「もう戦いは終わったんだ。組織の上に立つ者には敬称を付けた方がいい」
「そうか、まあお前さんが呼びやすい様にしてくれればいいんだよ俺らは!」
「…わかった。それでどうした?何か伝え忘れたか?」
「あーいや、もしこの後予定がねえならうちで晩飯を食わねえかと思ってな。戦いが終わってから今までみんなと話すタイミングなかっただろ?
小南が今日絶対連れて来いってさっきからメッセージがうるせえんだよ」
林藤は苦笑を浮かべながらスマホを取り出した。するとまるで呪いでも纏っているかのように常時スマホが連絡を告げるバイブを鳴らしていた。画面を見るとそこには小南の名前が。
その様子に思わず真昼も顔を引き攣らせた。
「…フッ、わかった。これを無視すると後日何されるかわからないからな。今日は玉狛に帰るよ」
「お!良い返事が聞けて良かったぜ!それじゃみんなに連絡しとくな。もうこのまま車乗ってくか?」
「少し隊室に寄って支度してくる。だから別に待ってなくていいぞ?」
「なら準備出来たら連絡しろよ!俺はこっちで出来ることをやって時間潰してるからよ。ゆっくり準備しろ」
「…あぁ、ありがと」
「おう!んじゃ連絡よろしくな」
林藤は手を振りながらその場を後にした。真昼もそのまま準備をするべく隊室へと向かった。
先の戦闘の影響か、あまり頭が働かない真昼はわずかにふらつきながら隊室に入った。
すると、中から突然手が出てきては、真昼を掴みそのままものすごい勢いで中へ引っ張った。
完全に油断していたのだろう、なんの抵抗も出来なかった真昼。
「…遅い」
雑に床へ振り投げられた真昼はなんとか受け身を取ることに成功した。
だが、そんな真昼の上にドカッと馬乗りしてきたのはトリオン体の小南だった。
彼女はいつもの明るい感じではなく、明らかに機嫌が悪そうに冷たく真昼を見下ろしていた。
「…いたのか」
「なによ、悪い?」
「そうは言ってない。なんの用だ?晩飯のことなら先ほど林藤から話は聞いた。今日はそっちに帰る」
「…そう、賢明な判断ね」
「何をそんなに怒ってる」
「わからないの?」
「わからないからこうして聞いているんだろ。俺に何かを察しろとかってのは無理だぞ」
訳が分からない、と声に出さずともわかるぐらいには真昼は困惑していた。というのも今の真昼は先ほどの戦いの影響で脳が正常に機能していない。先ほどの会議室での話は状況を読んで内容をすぐに理解できていたから問題なかったが、こういった相手の心情を考えろというは今の真昼には荷が重すぎる。
「…なんであんなことしたの」
「どれだ」
「自分を傷つけるような事よ!戦いを知らない人達に現実を教えるためとしても、アレは過剰すぎる」
「…だが一番効果的だ。取返しがつかない状況になってからでは遅い」
「だからって!……だからって、やりすぎよ」
小南は戦闘体を解除し手を振りかぶって真昼の胸を力いっぱい殴りつけた。
なんどもなんども自分の感情を直接流し込むかのように。
それと同時に小南の頬を雫が伝いぽたぽたと真昼の服を濡らしていく。
やがて殴る力も入らないのか弱弱しく振り下ろされた拳は真昼の胸に収まった。
「そうか、今後は気を付ける」
「…そこはもうしない、でしょ」
「それは約束できない。あれが最善だと判断したなら、俺はまた同じことをする」
「だったらそれ以上の最善を一緒に探してあげるわよ。だから今度はまずこっちに相談しなさいよ」
小南は真昼の手を掴むとそのまま自分の頭に誘導する。
撫でろ、という事なのだろう。
真昼は自身の胸に頭を押し付ける小南の頭をそのまま優しく撫で、空いている方の手を彼女の背中に回してポンポンっとリズム良く触れる。
それからしばらくして二人は林藤の車で玉狛支部へと向かったのだった。
真昼とボーダー組織の激戦から数日後。
遠征メンバー決定の連絡が各隊員たちに届いた。
「それではこれより、近界遠征についての会議を行う。まずは、この場に集まってくれたことに感謝する」
ボーダー上層部がいつもの様に自席に座り、中央の城戸が話を始める。
今ここにいるのはボーダー上層部である、城戸、忍田、林藤、鬼怒田、根付、唐沢の6名、そして今回の遠征に参加する隊員たち。
最初から決まっていた真昼と東のほかに、本部所属からは戦闘スタイルなども加味して選ばれた風間、二宮、太刀川。支部からは初の遠征という事で万全を期するために迅が選ばれた。
そしてOPには東隊の月見、玉狛支部で近界も経験している林藤ゆり、そして一ノ瀬隊の三上が選ばれた。
ここに、玉狛支部の支部長である林藤匠を入れた10名が、今回の遠征メンバーである。
「今回は初の試みでもある。一ノ瀬隊員の遠征艇はもとより、我々の遠征艇もシステムテストは無事に済ませてある。だがセキュリティ面と搭載された防衛武装、そして燃料となるトリオン量の観点から、予定通り戦闘員は本部の遠征艇、OPは一ノ瀬隊員の遠征艇に別れて乗船することになった」
「一ノ瀬の遠征艇にはOP用に日頃から使っているものを取り付けておる。操作方法はさほど変わりはせんだろう。あとは各OPのトリガー情報を登録すれば良い」
鬼怒田が自慢げに語る。今回、本部の遠征艇のメンテナンスを主に請け負ったのが鬼怒田だった。そのため、本人にとってかなりの力作になり、それを自慢したいのだろう。
「遠征開始は今日から一週間後だ。皆の前にあるのは遠征艇のマニュアルだ。詳しくは各自で読んでほしいが、今回は大まかな機能等を知ってもらいたい。ぜひ手に取ってくれ」
忍田が【遠征艇マニュアル①】と書かれた冊子を手に取る。それに続いて全員が冊子を開き、中をパラパラとめくっていく。
「へぇ~電気じゃなくてトリオンで色々できんのか。てことは飯は結構期待できる感じか?」
「
「だからと言って菓子ばっか食っていいわけではないからな迅」
「あはは、少しくらいは勘弁してよ風間さん」
太刀川、迅、風間が漫才染みた会話を繰り広げる中、OPチームは女の子ならではの会話を繰り広げていた。
「貯水庫があるってことはやっぱりお水に限りがあるのね。毎日お湯につかるのは難しいかしら」
「一応、向こうにも湖とかはあるから補給はできると思うよ。こっちが問題になりそうなのはトリオン量かな?」
「確かに、真昼さんのおかげで両艇のトリオン量のバランスは取れてますが、逆を言えば真昼さんの負担が大きくなりますからね。トリオンの節約も念頭に入れてシャワーで済ますのが妥当だと思います」
さすが成績優秀組というべきか。月見、ゆり、三上は現状の問題を加味したうえで何を節約できるかを話し合っていた。
「俺たちが乗る遠征艇は燃費が良い。一度チャージすれば下手に防衛システムが起動されない限り1ヶ月は保つ。
風呂に関しても同じだ。三人が抵抗なければ貯水庫を飲料用と風呂とでわけ、風呂の水を温泉などにもある循環式で殺菌し綺麗にすれば毎日浴槽には入れる。トリオン技術をうまく使えばこっちの技術よりもより綺麗にろ過出来るだろう。もちろん水の補給が見込めるのであれば全て入れ替えるがな」
三人の話を横で聞いていた真昼は間から口をはさんだ。変に節約をしてストレスを抱えればそれだけで様々な問題に発展しかねないと判断したのだろう。
真昼がただ事実を述べるよう発した話を聞いた三人、一斉にピタッと動きが止まった。
まるでロボットの様にゆっくりと真昼の方を見る三人。
その瞳は恐ろしいほどきらきらと輝いていた。
「その話は本当かしら真昼君!?」
「本当に遠征艇でお風呂に入れるの!?」
「そんな事ができるんですか真昼さん!?」
「……出来るから落ち着け」
もの凄い速さで真昼に詰め寄るOP三人娘。予想外な圧にさすがの真昼も若干押されている。
女の子のお風呂好きを改めて実感した一同。すると、真昼たちのやり取りを聞いていたある人物がその重い口を開けた。
「…おい、一ノ瀬」
「なんだ、二宮」
真昼を除いた現ボーダー隊員で一番のトリオン量を有する二宮が、鋭い眼差しを真昼に向けている。
その迫力に先ほどまで騒がしかったOP達も思わず静かになる。
一気に空間が静寂に包まれ、異様な緊張感が漂い始める。
「その風呂の改造はこっちの船でもできないか」
男特有の低音で聴き心地の良い声が部屋に響いた。
決して声量が大きいわけではないのに、確かにこの場にいる全員に聞こえたのは、それだけ皆が二宮の発言に注目していたからに他ならない。
それゆえに、意外とお風呂問題を気にしていたのだろう発言に、皆の脳が情報を処理するのが遅れた。
「おそらく可能だが、手が足りない可能性がある。鬼怒田もメンテナンスに力を入れる以上、オプション染みたももに時間を割くのは難しいだろう」
「力になれるかわからないが俺でよければ手伝うぞ。疲れが取れる手段はいくつあってもいいからな」
「ありがとうございます、東さん。一ノ瀬、俺も手伝う。頼まれてくれないか」
余程入りたいのだろう、二宮が普段とは比べられないほど暑い眼差しを真昼に向けている。そしてその二宮の想いを感じ取ったのだろう、東もやる気満々に答える。
「ふんっ、まさかここまで風呂に意見が集まるとは考えもつかんかったわ。一ノ瀬、一日時間を作る。お前さんらの艇の作業を見させてもらうぞ。そうすればあとはこっちでやっておくわい。二宮、東、手伝ってもらうぞ」
鬼怒田が若干呆れながらも初めての近界遠征に向けて万全を期すため、風呂設備の改造を決めた。
その決定に、迅たちは笑い、林藤は「若いねぇ~」っとおっさん染みた感想を零す。
そうして場が和やかになったところで、話は遠征艇の風呂から、遠征そのものに切り替わった。
今回の遠征の目的、期間、掟など、いくつもの大事な話がされていく。
「二日後から遠征前日までは調整もかねて実際に遠征艇で過ごしてもらう。そのため本番と同様の荷物を持参してもらい調整に臨んでもらいたい。わからない事が有れば林藤支部長に連絡をするように。…それではこれで会議を終了する」
城戸によって終わった近界遠征の会議。
そして時が経つのは早く、あっという間に遠征の日はやって来るのだった。
これからも不定期ですが更新していこうと思いますのでよろしくお願いいたします!