独りにしませんいつまでも   作:残念G級

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気づいたらたくさん評価をいただいていてとても驚きました!
そして感想まで書いていただき本当にありがとうございます!

モチベが凄いあがりましたので今後ともよろしくお願いいたしま!



ボーダー本部

真昼と陽菜が旧ボーダー本部─現玉狛支部に帰ってきた次の日、真昼は迅と共に現ボーダーへと向かっていた。

 

「今日は遠征艇を解除すればいいのか?」

 

「最初はそのつもりだったんだけど、どうやら城戸さんと忍田さんが上手くやってくれてたみたいでね。今日、ボーダーの入隊式があるんだけど、そこに真昼の席をねじ込んでくれてたみたいでね。本日付で真昼も復帰ってことだ」

 

「…復帰か。なら今日は何をすればいい?」

 

「まあ入隊式だけやって次に開発室、そのあとはフリーでいいんじゃない?俺も基本真昼と一緒にいるしさ」

 

「そうか、わかった。今日もよろしくな、迅」

 

「おうよ!きっとこれから楽しくなるよ。今日はその一歩だ」

 

迅は真昼を見てニカッと笑う。それを見て、真昼もまたわずかに口角を上げると、2人はそのまま本部へと向かっていった。

 

 

 

 

「私はボーダー本部長 忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する」

 

本部に着いた真昼たちは、入隊式での忍田の激励を貰い、新人隊員はそのまま訓練へと向かった。

 

「あまり入隊する人はいないんだな」

 

「まあ、まだ設立されて1年だしね。だんだんと理解は得られてきてるけど、それでもまだ若い子どもたちを戦場に出させることに良い印象を持たない人はいるってこと。まあ、気長にやるしか今はないよ」

 

「…そうだな」

 

「それじゃこれから開発室に行こうか。ささっと終わらせて、トリガーの説明とかしないとね。小南もうるさいし」

 

「ふっ、元気なのはいいことだ」

 

「…なんかそれおじいちゃん臭いね」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく本部内を歩くと、開発室という標識がある部屋へと着いた真昼と迅。

そのままノックなどもせずズカズカ入る迅に、真昼も後に続いた。

 

「やっほー鬼怒田さん。来たよ~」

 

「ん?やっと来おったか迅!それに一ノ瀬も!ほれ、来て早々だが、時間がないのでな、早速着いてきてもらおうか」

 

流れるように鬼怒田の言うがままついていく真昼たち。

鬼怒田とはボーダー本部に所属する、トリガーの分析や開発、またシステムなどを管理する、技術者(エンジニア)を束ねる本部開発室長である。

見た目は小太りの狸っぽい容姿をした中年男性である。

 

「それにしてもお前さんがあの(・・)一ノ瀬真昼だとはな」

 

道中振り返ると、真昼の顔を見て鼻を鳴らす鬼怒田。

なにやら含みのあるその発言に、真昼は思わず首を傾げた。

 

「どの一ノ瀬真昼だ?ここには他の一ノ瀬真昼がいるのか?」

 

「そういうわけじゃないわい!わしはお前たちが昔に残していた研究データや資料を基盤に、それを改良し開発し、この本部のシステムに落とし込んだ者じゃ。だからお前らの事は知っておる。正直、あれらがなかったら、この本部はもう数年、形にするのが遅かっただろうからな」

 

「そうか、覚えていないが、役に立ったならよかった」

 

「ふん!役に立ったどころじゃないわい!あんなものわしら大人でもなかなか思いつかないものを、お前らは幼少期でその考えに辿り着き、深く理解をしておった。恐ろしいほどの知能だな」

 

「要は、真昼や陽菜ちゃんを褒めてるんだよ。鬼怒田さん、こんなにつんけんしてるけど、密かに2人のファンなんだ」

 

「おい迅!変なことを言うな!」

 

「だって前に聞いてきたじゃん!これを書いた子たちはいないのか~って」

 

なにやらぎゃいぎゃい騒ぐ迅と鬼怒田。狭い通路だから声が響くそれに、少し目を顰める真昼。進みながら話すならまだしも立ち止まってこの騒がしさは少々きついのだが、と目で2人に訴える。

その視線に気づいたのか、2人はそそくさと歩みを再開する。

 

「さて、では早速解除してもらおうか」

 

広い部屋に出ると、そこにはトリオン兵のような見た目をした黒い艇が佇んでいた。

真昼が玄界に帰ってきた時に、一緒にこちらの世界に来た艇だった。

 

「わかった」

 

真昼はその艇に近づくと、左手をかざす。刹那、艇に緑色の線がいくつにも枝分かれしては全体に走っていった。

艇全体に走り終わると、セキュリティロックが解除され、ドアが自動的に開く音がした。

 

「開いたぞ」

 

「うむ、ご苦労。一ノ瀬も一緒に入って、船内の説明をしてもらうぞ」

 

「了解した」

 

それから真昼と迅、そして鬼怒田と数人のエンジニアと共に船内へと入っていった。

中には様々なモニターがあり、それぞれがなにやら違うデータを表示していた。

他にはソファやベットなどの生活家具が揃っており、中はなかなかに広い造りになっていた。

中を色々観察していくなか、鬼怒田があるものを見つけて立ち止まった。

 

「…おい一ノ瀬。これはなんじゃ」

 

「それはトリガーだ」

 

「それはわかっておる。なぜこんなに厳重に保管されているのかを聞いている。どんなトリガーだ」

 

「なにも特別なトリガーじゃない。ただの記憶保管用(・・・・・)トリガーだ」

 

「なんじゃと?」

 

「真昼、それってもしかして」

 

鬼怒田と迅がそれぞれの反応を示して真昼を見る。

鬼怒田が見たそれは、様々な機械につながれた2本のトリガーだった。

それぞれ血痕が滲んでいた。

記憶保管用、その言葉通りなら、誰の記憶なのかは容易に想像できた2人。

 

「そうだ。俺と陽菜の記憶らしい」

 

「らしいじゃと?なんでそんな曖昧なんだ」

 

「俺たちを捕えた国はもう滅んでいる。その時に、俺たちの名前が刻まれたところに置いてあったのがこれだ。中身は視ていないから確認はしてないがな。恐らく、記憶のコピーをしたのか、直接抜いてそれに保存したのかは分からないがな」

 

用途は不明だが、それが本当なら真昼の記憶が取り戻せるかもしれないと一瞬喜ぶ人たちだったが、それと同時に真昼にとって地獄の日々を思い出させる可能性があるということに気づき、思わずその顔に影が差した。

鬼怒田もそれを理解したのか、なにも言わなかった。

そんな2人の様子に気づいた真昼は、そのトリガーの下へ向かうと手をかざし、ロックを解除してその2本のトリガーを取り出し鬼怒田へと渡した。

 

「見たいなら見ればいい。陽菜のデータはあまり見ないでほしいが、俺のデータなら消さなければ好きにしていい」

 

「…いいのか?」

 

「あまりためになるものはないと思うがな。好きにしろ」

 

そう言って真昼は再び船内を確認していった。

そんな彼の背中を眺めながら、迅は鬼怒田へと近づき、冷たく小さな声で話した。

 

「鬼怒田さん、それ」

 

「わかっておる。いったん解析に回して閲覧できるか確認する。出来たら、まずはお前さんらでどうするか決めろ」

 

「…ありがとう、鬼怒田さん」

 

「ふん!そんな殺気むき出しで睨まれたら、こうするほかあるまい」

 

「あはは、悪かったって。ほら、さっさと終わらせましょ!」

 

 

それから約1時間ほど、みんなで遠征艇の中を点検や解析などをしては真昼に質問するという流れが出来たのであった。

 

 

 

「いや~ありがとね真昼。鬼怒田さん凄い喜んでたよ」

 

「役に立てたならよかった」

 

真昼と迅は遠征艇の件が終わり、現在本部の食堂に向かっていた。

休日で時刻もお昼頃ということで、だんだんと数少ないボーダー隊員がこぞってラウンジに集まっていた。

 

「さすがに休日だと混むなぁ~」

 

「それでも席はありそうだな。おい迅、おすすめを教えてくれ」

 

「お、任せろ!麺か米、どっちの気分だ?」

 

「…米だな」

 

「なら炒飯か海鮮丼だな」

 

「海鮮丼だな、わさび欲しい」

 

なんて雑談を交えながら食券を購入し、並んで昼ご飯を受け取った。

迅はうどんにしたらしい。

そうして2人で席に着くと黙々とご飯を食べる。

少しお互いのを交換して食べながら仲良く食べていると、そんな2人に声をかける者がいた。

 

「お、なんだ迅。こっちにいるの珍しいな」

 

「本部に何か用事か?」

 

1人はもさもさした髪に目が格子状に刻まれた男。

そして背は小さいが、どこか冷静な雰囲気を纏っている少年。

その2人もこれから昼食なのだろう、もさもさはうどんとコロッケのセット、冷静少年はカツカレーの大盛りを持っていた。

-

 

「太刀川さんに風間さん!どうも~、今日はちょっと親友の付き添いでね。ちょっと開発室に用があったんだよ」

 

「親友…?あ、こいつか」

 

「…親友です」

 

もさもさが真昼へと視線を移す。上から下までじっくり見るもさもさ。それに対して首をかしげる真昼。

 

「…お前の彼女か?」

 

「男だろ、どう見ても」

 

「…男です。こう見えて」

 

「…マジか!めっちゃ女子じゃん」

 

もさもさが驚いた様子で真昼を見ていた。

そして、それとは反対に冷静少年は真昼の容姿を視るやすぐに男だと見破っていた。

やはり見た目よりも視野が広いように感じると考える真昼。

 

(見た目よりも年齢が上なのか、もしくは精神年齢が上なのか)

 

なんて考えてるうちにもさもさが席に座る。しかも真昼の隣にズカズカと。真昼もスペースを空けるべく横にずれた。

 

「おい太刀川。勝手に座るな、迷惑だろ」

 

「まあまあいいじゃん風間さん。どうせこの後も話すんだし別にいいでしょ。迷惑か?」

 

「俺は別に構わない。迅はどうだ?」

 

「おれも真昼がいいのなら全然!知ってる人だしね」

 

「なら大丈夫だ。どうぞ」

 

もう座っているが、改めて席を促す真昼。もうすでに座っていたもさもさ男が太刀川で冷静少年が風間、と脳内で整理していると、改めて自己紹介をしてくれたのは風間だった。

 

「馬鹿が失礼した。俺の名前は風間蒼也。高3だ」

 

「俺は太刀川慶。高2、よろしく」

 

風間蒼也に太刀川慶。どちらも年上だったことに気づいた真昼は、敬語の方が良いかと改める。

 

「一ノ瀬真昼。歳は迅の一個下の15歳…です」

 

「年下か!雰囲気とか背が高いから年上お姉さんかと思ったぜ」

 

「太刀川、一ノ瀬は明らかにお前よりも礼儀正しいぞ。慣れないながらも頑張って敬語を使っている。お前はいろいろ参考にした方が良い」

 

向かい合わせで言い合いをする風間と太刀川。まあ太刀川が真昼の性別や年齢を間違えるのは仕方ない。

というのも、真昼は容姿が非常に整っている。しかも誰がどう見ても美女だというほどには。加えてそのすらっとした長い脚を持つスタイルはそこらのモデル顔負けであり、15歳でその身長は180程。しかもまだまだ成長期ということでこれからも伸びるだろう。

それらが原因なのか、周りには真昼を見て何やらコソコソと話し込んでいる者が男女問わずたくさんいたのだが、真昼にはそれが日常茶飯事なので特に気にしていなかった

 

「性別と年齢はよく間違えられるので別に気にしてないです」

 

「ほら、真昼もこう言ってるんだし大丈夫でしょ。それじゃ、いただきます」

 

太刀川は意外にも手を合わせてから食事を始めた。ズルズルと軽快に麺を吸い込んではコロッケを美味しそうに頬張る。なかなか豪快な人である。

 

「それで、一ノ瀬は新人か?初めて見るが」

 

「そそ、今日付けで復帰したのよ」

 

「…復帰だ?どういうことだ?」

 

「真昼はもともとうちに所属してたんだよ。旧ボーダーにね」

 

「なんだと?」

 

「歴だけで言えば俺たちの誰よりも先輩だよ。なにせボーダー創設者の1人だしね。うちのボスや城戸さん忍田さんなんかと一緒」

 

「マジか!?真昼お前何歳からボーダーやってるんだよ?」

 

「ほら、この前話したでしょ。向こうの世界に連れ去られたうちの隊員。それが真昼」

 

にこやかに笑いながら真昼の事を紹介する迅とその話に興味津々な2人。迅の最後の話になにか合点がいったのか、風間が納得した顔で口を開いた。

 

「…まさか、あの一ノ瀬真昼か?兄から聞いたことがある。最強の双子の話を。確か忍田本部長が負け越しているとか」

 

「はっ!?それマジかよ風間さん!?…ってそういえば忍田さん、そんなこと言ってた気がする。俺より強い子どもがいるからお前なんかまだまだひよっこだ~的な」

 

「あはは!そうそれがここにいる真昼だよお二人さん。真昼、風間さんはあの風間進さんの弟さん、太刀川さんは忍田さんの弟子なんだよ」

 

「そうだったのか、確かに、風間さんは写真でどこか見覚えがあると思っていた。太刀川さんはそうか、忍田の弟子か」

 

「なるほどな、一ノ瀬の事は迅から話は聞いている。記憶の大半を失っているんだったな。俺自身、昔のボーダーの事はわずかにしか聞いていないが、なにかあったら気軽に聞いてくれ」

 

まっすぐに真昼の眼を見る風間はそっと手を差し出す。

真昼はそれに自身の手を合わせた。感謝の言葉も添えてしっかりと。

そんな2人のやり取りを見て、うんうんと笑顔で頷く迅と、ぼーっと真昼を視る太刀川。すると突然眼が鋭くなると真昼の肩をガッと掴んだ。

 

「…おい、真昼」

 

「はい」

 

「お前、この後は暇か」

 

「迅…どうだろうか」

 

「特にはないよ。しいて言うならこっちのトリガーに慣れてもらおう(・・・・・・・)かなと」

 

「良し来た!なら早く飯食って今から俺と戦おう!」

 

眼をキラキラ輝かせる太刀川。この眼を真昼は知っている。この眼は戦闘狂(バトルジャンキー)のそれだ。こういう人はいくら断っても必ず戦うまで付きまとう。その真昼の考えは当たっているのか、迅は視線で諦めろ、というような意を込めている。

 

「まあその方が今後の未来にはいい影響かな?それは真昼だけじゃなく、太刀川さんや風間さんにもね」

 

「……俺もだと?」

 

「そそ、風間さんにとっても」

 

「そうか。おい太刀川、さっさと食え。迅がここまで言うんだ、なるべく多く時間を取りたい」

 

「わかってるって!俺よりも風間さんの方が大盛りなんだからそっちの方が遅いで「俺はもう食い終わっている」…はっや!さっき食べ始めたばっかでしょ!?あんたの胃はブラックホールか!?」

 

風間の前にある新品のようにピカピカにされた大きなお皿。さきほどまであった山盛りのカツカレーがいつのまにかなくなっていることに気付き、驚愕の目を風間へと向ける3人。

そんなことはどうでもいいと言った表情の風間は、その鋭い眼光で太刀川のご飯を急かすと、太刀川は冷や汗をかきながらも、まるで掃除機のような吸引力で残りの麺を吸い込んだのであった。

 

 

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