独りにしませんいつまでも   作:残念G級

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太刀川慶と風間蒼也

「映像は念のため切っておいた方が良いだろう、それでどっちからやる?」

 

「俺が先でいい?風間さん」

 

「いいだろう。…迅、一ノ瀬のトリガーはちゃんとセットされているのか?」

 

「一応、こっちの世界にいた時のをセットしてるから大丈夫だと思うよ。ほぼ真昼たちが開発したものだからすぐ慣れると思うし、多分2人ともびっくりすると思うよ」

 

「…ほう?それは楽しみだ」

 

「それじゃ、とりあえず10本で。よろしく、真昼」

 

「こちらこそよろしく頼みます、太刀川さん」

 

広大な市街地マップに向かい合う形で転送された2人。

太刀川の得物は攻撃手のなかで1番人気を誇る刀型のようなブレードである【孤月】。

それを2本腰に差しており、まずは様子見と言ったところか、片方だけを抜いている。

対して真昼の得物はというと、その形に思わず太刀川どころか、部屋で観戦している風間ですら驚愕のあまり眼を見開いた。

 

「…おいおい」

 

「……なんだあれは」

 

それはあまりにも大きかった。

現在、身長が180ある真昼の背よりも全長がでかく、そのおぞましい刃は見た者に畏怖の感情を植え付けるだろう。それはまさしく『命を刈り取る』ためだけに作られた武器。

死を司る神の象徴ともいえる恐怖の武器。

真昼の背に大きな三日月が存在するような、圧倒的な存在感を与えていた。

 

「あれが真昼が開発した孤月の派生版トリガー─その名は【オルサイズ】。性能は孤月と大体同じ、高い攻撃性能と頑丈さが売りなんだけど、その数値が孤月の数倍上。もともと馬鹿多いトリオン量を持っていた真昼だからこそ扱える、俺が知るなかで最強の破壊力を持つトリガーだよ」

 

迅の説明に風間が再度モニターに映る真昼の【オルサイズ】に視線を移す。

見るからに風間よりもでかいその武器。

サイズがでかければその分、武器自体の重さも計り知れない。それどころか戦法も正直イメージが出来ない。当たればでかいが、逆に言えば当たらなければ怖さは何もない。重さに振り回され隙が生まれやすければ、自分のような速さで戦う相手には良い的だろう。

それは太刀川も分かっているようで、ニヤニヤしながら真昼を見ては話していた。

 

「そんなバカでかいモノ、本当に扱えるのか?」

 

「問題ないだろう。不思議と手に馴染む」

 

「まじか、なら…」

 

太刀川はぐっと身を低くすると、思いっきり地面を蹴り、一気に自身の間合いに真昼を捉える。

 

(あのデカさならっかなり重いだろ。戦い方はほぼ中距離。刃がついてるのは先なら柄分まで近づければこっちの間合いだ)

 

持ち前の戦闘センスで【オルサイズ】の弱点を刃を交える前に理解した太刀川。

この大鎌の弱点は、間合いの内側に入られた時の対処の難しさにある。相手に手傷を負わせられる刃は長い柄の先にある。刃自身のサイズも大きいため、有効範囲は確かに広いが扱いにくさで言えば、既存のボーダーが扱うトリガーの中でも最も扱いにくいだろう。

担い手を選ぶその武器は、正直に言えば武器の純粋な強さは測れないだろう。ただ、担い手が見つからなければ、だが。

 

自身の間合いに入れようと真昼に近づいた太刀川。その手に握る一本の孤月を、真昼の胴体めがけて振るう。

 

(まずは1点…っ!)

 

太刀川は本日何回目かの驚愕に襲われていた。

それはなぜか……

 

(腕が……ない!?)

 

太刀川は振った腕を見る。そこにあった真昼の胴体を斬る刀どころか、自身の片腕が肩から失っていた。

あまりにもあり得ないその現象。油断はしていなかったからこそ、理解が出来ないそれに、太刀川どころか風間ですら理解が出来ないでいた。

 

思わず急ブレーキをしてバックステップで距離を取る太刀川。

追撃が来ないことにまず安堵すると、どうやってこちらの肩を奪ったのかを探らなければいけないと、真昼の全身を観察する太刀川は、その答えがすぐわかった。

 

(あの大鎌の持ち手が、右手から左手に(・・・・・・・)変わってる。…これは)

 

「まさか、あの大鎌をこちらが視認できない速さで持ち替えたのか?…いや、だがそんなこと」

 

「普通ならできない。そもそも今のはそれ以外にも武器の重さを利用したり、太刀川さんがどこに警戒してるのかを瞬時に察して、その意識外から武器の形状も使って肩を下から斬り飛ばした。まあ初見じゃほぼ躱せないでしょ」

 

迅が現在起こったことを説明した。なぜ、風間が視認できなかったことを迅が話せたかというと、それは単純な話で、昔よく真昼と戦闘訓練をしていた迅が、何回もそれで負けていたからである。

未来予知のサイドエフェクトを持つ迅は他と比べても圧倒的防御センスを誇る。未来予知によって相手の動きを先読み出来るため、どこから攻撃がくるのか、隙はどこかなど戦況を掌握することが出来る。だが、真昼はそんな迅に対して過去の勝率は、なんと驚異の90%以上。未来予知を完全に攻略していると言ってもいいだろう。

ではどうやって迅に勝つのか。それは一気にいろんな攻撃パターンを視させて未来視に集中している間に畳みかけるか、未来視を無視して動いたらそのまま潰すか。

言うは易しとはこのことであり、実際に迅を相手にしてそれが出来る相手は限りなく0に等しい。

しかもそれを毎回行うことがどれだけ人間離れなことなのか、迅を知る人ほどあり得ないというだろう。

逆にそれをやってのけてしまう真昼の実力こそあり得ないと言われるにふさわしいだろ。

 

迅と同じような説明をした真昼。その話を聞いた太刀川は戦う前よりも眼を輝かせてはもう片方の刀を抜いていた。

 

「さあ、じゃんじゃんいこうか」

 

 

 

太刀川慶 :××××××××

一ノ瀬真昼:○○○○○○○○

 

現在のスコアは9─0で真昼の勝利は確定していた。

途中から孤月を2本抜いていてもすぐに崩してくる真昼に、太刀川は新しい玩具を与えられた子どものように、ただ楽しそうに戦っていた。

 

フェイントを交えては2本の孤月を匠に扱う太刀川に対して、真昼はその大鎌を右へ左へと持ち替えてはクルクル回し太刀川の攻撃を全ていなしていた。

真昼の扱う大鎌はその重さを感じさせないほど、速かった。

大鎌の形がまるで鞭に変わっているかのように一本の線になってその猛威を振るっていた。

地面を抉り、建物をやすやすと斬り壊す。

真昼が太刀川つっかける。

前かがみになり、大鎌を背中に回し持ち替えて斬りつける。

太刀川はその攻撃を受けようとはせず、ただ後ろに跳んでは回避を続けていた。

真昼は涼しい顔して振り回しいているがその一撃一撃は受け止めればあの孤月ですら刃に罅が入り、脚が地面に埋まる。

そのせいで、受け方やいなし方を模索してる途中で全てやられている。

 

思わず冷や汗をかく太刀川。彼の目の前には、まさに死神だった。

戦う前、食堂で話していた時も確かにおとなしそうな印象を与えるような眼をしていた。覇気がないようなそれ。だが戦闘が始まってからの真昼はその印象ががらりと変わった。

ただ暗く深い海の底に落とされたかのような、見た者全員を凍らせるような冷たい眼をしていた。実際、真昼の戦闘方法は相手を殺すためだけに目的を置いた動きだった。

その大鎌もそうだが、僅かな隙をついて太刀川が近づいても、真昼は鋭い蹴りを放ったり関節技を入れたりと格闘戦を取り入れていた。しかもその技術はあまりにも洗練されすぎていた。それだけで飯を食っていけるほどに。

だからか、真昼はわざと懐に入れて肉弾戦をして太刀川を崩し、最後にその首を斬り飛ばしたり、一刀両断でとどめを刺していた。

つまり、隙が無かった。

 

冷静にまっすぐ太刀川を見る真昼。

脚を前後に揃え、優雅に立っている。その足元を見てみると、ヒュンヒュンと空気を切り裂く音と共につく斬撃痕。太刀川の眼には真昼の持つ大鎌(・・)が見えていなかった。

正確には、真昼の両手も見えていなかった。

答えは単純、太刀川の視認できない速度で大鎌を振り回しているのだ。

思わずどうやってるんだと突っ込んだ太刀川に、やっている張本人である真昼はけろっとした顔で答えた。

 

「トリオン体になって振り回す」

 

いやそうなのだがそうではない。ツッコミそうになる太刀川に対して、真昼はさらに言葉を紡いだ。

 

「トリオン体の身体能力は素の能力も大事だが、想像力がモノをいう。例えば、建物の壁を走ることはトリオン体であれば可能だが、現実はそうじゃない。じゃあトリオン体になれば誰でも出来るのかというとそうではない。

壁は走れないものという現実の認識がトリオン体になっても消えず、トリオン体の能力を最大限活かせなかったら走ることはできない。これが個々に起きるトリオン体での身体能力の差の原因だ。

なら想像すればいい。壁を走れる自分を、敵に視認できないほどの速度で武器を振るう自分を」

 

そういうや真昼はさらに大鎌を振るう速度を上げた。最早真昼を中心に地面が削り取られ、不可視のバリアのようになっていた。

 

「そんな簡単に出来るわけないだろ…」

 

思わず苦笑いを浮かべる真昼。あまりにも規格外の事をやっていることに自覚はないのだろうことを納得した太刀川。

 

(さっきは旋空やってもそれごとはじかれたし、ああされたらもう攻撃通らないか?…だからと言ってただ待ちの姿勢ってのは…)

 

不意に笑みを浮かべる太刀川。この場でどう動くのが一番面白いか、わくわくするかを考える。

 

「つまらないだろ」

 

グラスホッパーを展開しそれを思い切り踏み抜く。

最後の試合の決着は一瞬で幕を引いた。

 

 

 

 

「あれは無理だ。攻撃手殺しの絶対防御だ」

 

「確かに孤月で壊せないのなら、スコーピオンも歯が立たないだろうな。だがやりようもある」

 

「まあ真昼はトリオン体の扱いが俺の知る限りでも一番上手いし、もし【オルサイズ】を他の人が使ってもあれはできないから、本当、真昼専用だね」

 

戦闘体を破壊されて待機部屋に飛ばされた太刀川。その様子を見て、風間と迅がそれぞれ言葉を話していた。そこにいったん試合が終わったことで隣の部屋にいた真昼も太刀川達の方へ入ってきた。

 

「楽しかった。ありがとう太刀川さん」

 

「お~!こんなにやられたのは久しぶりだった。またすぐにやるぞ」

 

「了解。次は風間さんがやりますか?」

 

真昼は風間の方を見ると、風間も意外と楽しみにしていたのか、すぐに移動しようとしたところで、彼のスマホが鳴り響いた。

風間はその画面を見ると、メールだったのか真剣な眼差しで画面を見る。

読み終えたのか、風間は静かに眼を瞑ると、一息呼吸を整いて口を開いた。

 

「城戸指令から招集の連絡が来た。悪いが、俺はまた今度相手をしてもらおう。悪いな真昼」

 

「わかりました。いえ、いつでも大丈夫なので声かけてください」

 

「ああ、頼む。今日はいいものを見せてもらった。ありがとう」

 

風間は、またなと言って部屋を後にした。

そうして残った3人はこのあと真昼のボーダートリガーに成れるため、太刀川と迅が色々レクチャーをするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風間は真昼たちと離れた後、本部の上層階に向かうと1つの大きな扉の前に立ち止まった。

 

 

「失礼します」

 

風間が室内に入るとそこにいたのは現ボーダーの上層部の人たちだった。

玉狛支部の林藤支部長、忍田本部長、そして最高司令官の城戸指令という、ボーダー創設者たちの3名が各々の席で入室した風間を迎える。

城戸の後ろには大きなモニターがあり、そこに映し出されていたのは先ほどまで風間と一緒にいた真昼の姿だった。

 

「よく来てくれた、そこにかけたまえ」

 

城戸に促され、一番近くの席に着席した風間。

 

「さて、単刀直入に聞くが、一ノ瀬隊員はどうだ?」

 

「昼食を迅と太刀川を含めて4人でいただきました。こちらに食事に対しても特に抵抗感があるようには見えませんでした。コミュニケーションに関しても、太刀川が相手というのもあるかもしれませんが、比較的早く心を開いていたのではと思います。年上に対しても敬語で話そうという努力も見られましたし、日常会話も問題はないかと。

その後は太刀川と模擬戦を行いましたが、結果は10本全勝。トリガーの特異性もありますが、トリオン体での格闘戦も眼を見張るものがありました。戦闘に関しては少なくとも現在の隊員内で一ノ瀬に並べる者は居ないでしょう」

 

「……そうか、報告ご苦労だった」

 

「いえ、遅かれ速かれ一ノ瀬真昼という人物には興味があったので、この任務を受けなくとも気にかけていたので」

 

表情を変えずに本日の流れを報告する風間。というのも、もともと風間は城戸指令から一ノ瀬真昼の観察を命じられていた。理由は主に2つ。

まず1つは真昼の事を気にかけていたというもの。しばらくは玉狛に所属している迅たちに真昼のケアをさせていたが、これからは他の人たちとも接する場面が増えてくる。そうなった時にまともな対応が出来なかった時に真昼自身に不利益が被ってしまう可能性があるため、その練習という意味。

2つ目に、真昼というよりも真昼が囚われていた近界に対しての警戒だった。

真昼の話だと、真昼たちは近界に連れ去られたあと様々な非人道的人体実験を受けてきた。その人体実験の詳しいことが分からない以上、もしかしたら真昼の身体に監視や何かを細工していてもおかしくない。

そのため、城戸たちは心苦しいが風間に命令し、真昼の監視を命じたのだ。

入院中は何もなくても、玄界の最終防衛線を担うボーダー本部に入った時になにか起きるよう設定されていないか。

真昼には申し訳ないが、それでも本部に何かあってからでは遅いのだ。守るものが多くなってしまったからこそ、大人の判断で行った今回の命令は、例え真昼と古い付き合いである旧ボーダー隊員の迅や小南たちにも伝えていない。

そのため、この話を知っている者だけを集めて話ているのだ。

 

一通りの報告を終えると4人の話は雑談交じりの会話へと変わった。

 

「それにしてもあの慶を完封するとはさすが真昼君だな」

 

「あいつは昔から強かったからなぁ。一時期陽菜ちゃんと一緒にオルサイズ使った時は絵面が怖すぎてしばらく戦いたくなかったもんだ」

 

「君たちが組んであの兄妹と戦った時は後始末が大変だった。いつも私たちを巻き込んで被害を無駄に拡大させていたことを私はいつまでも覚えているぞ」

 

「「…それは面目ない」」

 

上層部3人が揃って普段は見せない懐かしそうな表情を浮かべて話すその光景をジッと見ていた風間。

その胸中にあるのは実の兄である風間進の事だった。

 

『蒼也、聞いてくれ。今日も兄ちゃん蒼也よりも年下の子にぼろ負けしてさ…』

 

まるで負けたことを嬉しそうに話す兄の顔。

その顔がいま目の前で話している3人と重なる。

 

面白い。純粋にそう思った風間。

これから彼がこのボーダーでなにをしていくのか、どんな光景を見せてくれるのか、未来に楽しみが増えた風は静かに笑った。




現状、風間さんが戦っても太刀川さんと同じ結果になるので風間戦はカットしました!
流石に高校生太刀川さんに完封はやりすぎかなと思ったのですが、真昼くんの経歴的にまあいけるかって思ってスルーしました!
それに今後の真昼君はハーレムになるためにも色んな人を弟子にしないといけないので強さは大事なので!

真昼君のイメージ画をAIで作ってもらったのですが、今後の展開のネタバレになるかなと思い、出すか迷っていますが、気が向いたら真昼くんのプロフィールと共に出します!

それでは今後ともよろしくお願いします!
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